未熟児に関すること /A

・PVL(脳室周囲白質軟化症)

脳には、大脳、間脳、中脳、橋、延髄、小脳から成り立っている。
その中で人間では一番大きい大脳は、主に、神経細胞の集まりの白灰質と神経繊維の集まりである白質から成り立っている。
また、大脳には髄液がたまる隙間のような脳室がある。
PVL、脳室周囲白質軟化症は、その名のとおり、脳室の周りにある白質部分の組織が壊滅しやわらかくなってしまうという病気である。

白質の壊滅はその辺りで血流が悪くなること(虚血)で起こるのだが、原因はいろいろな説があり不明。
確実に言えるのは未熟児に起こりやすいということ。
また、壊滅してしまった脳細胞を元に戻す治療法は現在ないため、PVLが治ることはない。
一方でPVL発症後、新たにPVLが起こることはなく、非進行性の脳の病気であると言える。

PVLによる脳の壊滅部分は主に下半身の運動機能の神経が集中する部分であり、下半身に麻痺がでる可能性が高い。
治療法はないとはいえ、あかちゃんの脳は急激な発達をする。
よって、麻痺の出方は、その子その子によって千差万別であり、麻痺がでない子もいるらしい。

<ゆーさくの場合>
PVL告知の時点でゆーさくの脳の壊滅部分の範囲がとても広いと言われていた。だからなのか、のちに下半身の麻痺だけでなく、全身の麻痺がでる。(とはいえ、新生児仮死が重度だったので、ゆーさくの麻痺はPVLだけでなく、出産時の低酸素脳症の可能性も否定できないらしい)また、壊滅部分が近くにある大脳の目で見たものを認識する視覚野まで広がっているらしく、視覚の面でも障害がでる可能性があるとのこと。

・未熟児網膜症

人間の視覚は、目で外界の光を感じ(目そのもの)、視神経を通じ脳へ光情報を伝達し情報処理されることで、初めて”そこに何があるか”が見えることになる。

光を感じる部分である目はカメラに似ている。
簡単に言うと外界の光は眼球の外壁である角膜を通過させ屈折することで、眼球に取り込められる。
そして取りこめられた外界の光は眼球の内壁(網膜)でピントが合わせられ、情報として変換され、視神経へと情報が流れる。
よって、網膜は光の情報を得るという大切な機能をもっている。
網膜が駄目になると、脳へ情報を送ることが出来なくなり、失明状態となるのである。

未熟児網膜症とは、名前のとおり未熟児に起こる網膜の病気である。
目そのものは妊娠の早い時期に完成しているが、栄養や酸素を運ぶ網膜の血管は妊娠9ヶ月くらいにならないと完成しない。
その血管は、目の一番奥底にある視神経から放射状に網膜の隅まで伸びていくのだが、未熟児で生まれるとその伸びていく最中にお母さんのお腹の外の世界の影響を受けることとなる。
よって、早く産まれれば産まれるほど発症率が高くなる。

主に酸素の影響を受けやすいといわれている。
まず、お母さんの胎内にくらべ胎外では酸素の圧力が倍増することや、また未熟児救命のための高濃度酸素投与により、伸びかけてきていた血管に圧力がかかり閉塞をおこし、その先へ栄養や酸素がいかなくなる。
しかし、栄養や酸素は必要なため、閉塞した付近の血管から、未熟で異常な新たな血管が周辺に向かって伸びていく現象がおこる。
本来の血管は網膜の隅までしか血管は伸びないのに対し、この血管は網膜からでて眼球の内部まで出てしまう。
重症となると、その異常な血管から出血したり、その血管は線維性の組織であるため網膜を引っ張り網膜剥離(失明)をおこすこととなってしまう。

とはいえ、未熟児医療における適切な管理である程度予防はできるらしく、また未熟児網膜症が起こっても異常に伸びた血管も落ち着き網膜内に戻り、正常になる場合もある。
よって、網膜剥離まで進行する危険になった時点で、治療を行なうことになる。

治療法としては、現在、光凝固治療と冷凍凝固治療とある。
光はレーザー光線を当て異常な血管の先を焼いて固めることで、冷凍は-60〜70℃の液体窒素で異常な血管の先を凍らし固めることで、それ以上の危険な血管の伸びを抑える方法である。
しかし、いずれの治療も治療効果の判定は出ておらず、現時点での最良な治療法であるという。
また治療で固めてしまった部分の細胞は傷口となっており、のちのち目が成長し網膜も大きくなるにつれ、その傷口の部分だけが成長せずひきつられることにより、そこから結局、網膜剥離を起こしてしまうという可能性もなきにしもあらず、というらしい。
よって、未熟児網膜症の治療を行い網膜剥離が避けれたとしても、定期的に眼科で網膜を調べる眼底検査を受ける必要がある。

<ゆーさくの場合>
未熟児網膜症を発症。しかし、早い段階からこまめに検査をしていており、また未熟児網膜症も進行性の早い遅いがあるようでゆーさくは遅かったのか、そのおかげで光凝固治療をしたものの、レーザーをうった回数は少なかったとのこと。
しかし、この未熟児網膜症発症や治療の時期が、PVL判明の時期と重なることから、とうちゃんかあちゃんは治療法がとりあえずある未熟児網膜症はさほど大きなできごとではなかった。
もちろん、網膜剥離は恐ろしく、網膜剥離は絶対起こってほしくはない。
ところが、情報を得る網膜が正常であっても、ゆーさくの場合は情報を処理する脳の視覚野が一部ダメージを受けている。
さらには目の眼底検査の際に、情報を伝達する視神経の異常も指摘されている。
つまり、未熟児網膜症だけでなく、視覚機能全体で今後の経過をみていきたい、ととうちゃんとかあちゃんは思っている。