呼吸に関すること/A

・舌根沈下

顔の下あごの筋肉のコントロールが効かなくなり、舌の付け根(舌根)が重力で気道に垂れ込み、気道を塞ぐこと。
通常の場合、下あごは無意識下でも筋肉がある程度の緊張がありコントロールできているが、舌根沈下は舌が無緊張状態になっている為に起こるようである。
事故などによる意識障害時や、顔の麻痺によりあごがうまく使えない人、さらにはあごや舌などの形が異常な人、などに起こる。

仰向けで寝ているときに、おきやすい(数年前、世間に広まった”睡眠時無呼吸症候群”の原因の一つでもある)。
症状としては、寝ているときにいびきがあり、次第に無呼吸や呼吸困難、チアノーゼなどが起こる。
また、顔の麻痺が酷くなると、起きていても起こることも。

慢性的な舌根沈下の場合、治療というより予防としての処置の仕方は何種類かある。
当然のことだが、いずれも”気道確保”の仕方である。
主なものは、姿勢変換(横向きなどにより、重力で落ちる舌根を気道方向とはちがう方向に。また、あごを支える道具などを管理人は見たことも・・・)、管を使う方法(経鼻エアウェイ:鼻から気道用の管を舌根までいれ気道を確保、気管切開:後の項参照)、気道に圧をかける方法(ネーザルCPAP:人工呼吸器で鼻から加圧した空気を持続的に送ることで気道を確保)などがある。

<ゆーさくの場合>
生まれつき口から食事をとることができずあごをあまり使っておらず、顔の表情も乏しかったゆーさくは1歳半をすぎたころから、いびきをかいて寝るようになる。いびきはだんだん酷くなり、酸素療法をしていてもSPO2(血中酸素濃度)の値が寝ているときは低めになり、寝起きはいつも汗だくに。さらには、血液検査の際、血中二酸化炭素の値が高めと言われることが多くなる。そして、チアノーゼがでることも。
そこで、ネーザルCPAPを開始。大人の睡眠時無呼吸症候群に使われる小さな人工呼吸器を夜間使用していた(大人用の機械の為、鼻マスクがとてもゆーさくには大きく、少々苦労もあり。)。ネーザルCPAP,導入後は、寝ているときの舌根沈下もSPO2も落ち着き、血中二酸化炭素の値もよくなる。
ところが、2歳になる直前に、細気管支炎により重度の呼吸困難に陥ったが、その時、舌根沈下も細気管支炎の重症化に大きく影響することに。慢性肺疾患や小児喘息で呼吸トラブルが多いゆーさくにとっては、舌根沈下は事態をより悪くさせてしまう要因となるため、結局気管切開術を行なった。
一度、経鼻エアウェイを試したこともあるが、咳反射が異常なほど強いゆーさくにとっては、管を入れるたびに、咳こみ続けることになるため、即中断。



・酸素療法

肺の機能が低下していると、普通の呼吸では体の活動に必要な充分な酸素を得ることができない症状に陥る。
慢性的な肺の機能の低下の場合、息切れや全身倦怠感、ときには呼吸困難などを引き起こし、普通に生活を送ることが難しくなってくる。
その症状に対する処置として、大気より酸素の濃度の濃い空気を吸うことで、症状を改善することを酸素療法という。

また、慢性的な肺の機能低下の場合、治療というより日常的な活動を送るために酸素療法が必要になってくる。
技術や保険制度の発達により、近年ではむりに病院で入院していなくても家で生活を送りながら酸素療法をおこなえるようになった。
それが在宅酸素療法である。

在宅酸素療法は、健康保険医療の対象となるのだが、法律で定められた基準がある(ここでは専門的になるので省略)。
また、不必要な過量の酸素投与は、かえって患者の体に危険をおよぼす。。
よって、主治医の指示、指導の下で在宅酸素療法はおこなわれる。

必要な器具は以下のとおりで、これらは医療酸素を扱う業者からのレンタルである。
<在宅酸素療法に必要な器具>
 〇酸素供給源となる装置・・・大まかに2種類あり、以下のとおり
     *酸素濃縮装置(電源が必要。空気中の窒素を取り入れることで酸素を供給。本体の交換は不必要)
      +携帯用酸素ボンベ(移動用に圧縮酸素を詰めたもの。業者による交換が必要)
     *液体酸素親機(-183℃の液体酸素が入っている。業者による交換が必要)
      +子機(移動用に液体酸素を詰めるもの。親機から充填するので交換は不必要)
 〇酸素を体に取り込む器具・・・鼻カニューレ、酸素マスク、気管切開人工鼻コネクタ、など。   
    
             

<ゆーさくの場合>
未熟児で生まれたことによる慢性肺疾患をもつゆーさくは、1歳を過ぎてから、風邪などひいては喘息性気管支炎を言われ入院をするようになった。その際、病院で酸素療法をしたのであるが、元気になり退院に向けて酸素療法をやめようとしても、なかなか酸素療法なしではSPO2が正常値になりにくい。
よって、そのまま在宅酸素療法に踏み切ることになった。

在宅酸素療法に切り替えてからの、ゆーさくはとても活発てきに動くようになった(といっても、脳性麻痺なので、寝返りとかいう動きではないが)。
しかし、感染症に弱く酸素療法をしていても呼吸困難に陥ることがあり、また舌根沈下も起こるようになったため、2歳になるときに気管切開をおこなう。
しかし、気管切開手術後からは、小児喘息発作が本格的になってしまう。、
聴診ではそれほど強い喘鳴音ではないにもかかわらず、ゆーさくの発作は止まらなくなり呼吸困難に陥ることが多く、さらには喘息が治まっても慢性的に肺の分泌物(痰)が多く、痰の吸引の多さに日常生活に支障がでるようになる。
そこで、人工呼吸管理(後の項参照)を導入することに。

人工呼吸器導入後の成果については、いろいろあるのだが、その一つに、人工呼吸器を使うことで、酸素療法が要らなくなったことがあげられる(ひどい喘息発作のときは要るけれども)。
しかし、人工呼吸器だと回路が邪魔であまり動くことはできない。
そのため、保育園で遊ぶときやリハビリを受けるときは、人工呼吸器を外し、酸素療法に切り替えている。 

液体酸素親機(ゆーさく使用)

液体酸素子機(ゆーさく使用)

鼻カニューレ(気管切開前使用

人工鼻コネクタ(気管切開後使用)