呼吸に関すること/B
「気管切開」とは肺に空気を送るために、のどの部分の気管に孔を開けること。
孔に気管カニューレという気管用の管を入れて、そこで呼吸をすることになる(下図参照)。
また、気管や肺の分泌物をカニューレから吸い取ったり(吸引)することになる。
上気道(喉までの気道)に問題を抱えていて呼吸がうまく出来ない場合、長期にわたり人工呼吸器が必要となる場合、痰がうまく出せなくて窒息の危険がある場合、などに行われる。
緊急時の気道確保としての気管内挿管という、口から気管用の管を入れる方法にくらべ、本人の不快感が少なく口からの食事も可能(とはいえ喉に管があるので食べにくくなるという話もある)。
痰や気道に誤った入った誤嚥物もとりやすくなる。
よって状態がよければ、ケアは必要だが、日常生活を送りやすくなる(ケアについでは、今後日常生活に掲載予定)。
逆に状態が悪くなればすぐに人工呼吸器につなげることもできる。
一方で、手術が必要であり、気管に直接孔を開けるので、ウィルスや細菌などが気管に入りやすく感染症(気管支炎や肺炎)を起こしやすくなる。
また、気管にカニューレという異物が入っているので、気管壁のトラブル(肉芽というできものや、出血、他)も起こすことがある。
さらに、呼吸の空気が声帯をとおり口や鼻に抜けないので、声がでなくなる(気管切開のみの場合、スピーチカニューレなどの特別な装置などで声を出すことが可能な場合もある)。
また、気管切開をすることになった原因が克服できれば、気管切開を閉じ、また普通に鼻やくちから呼吸をし発声もできるようになることが可能。
気管切開をしたのに、食べ物やよだれなどが誤って気管に入り呼吸状態が改善されない場合、「喉頭気管分離術」が行われる。
(病院や施設によっては、重度の障害の方には気管切開と同時に行われる場合もあるらしい。)
気管切開の部分の気管を切ってしまい、気道を独立させる(下図参照)。
気管と口や鼻がつながっていないので、口の中のものは食道から胃に入り、気管に入ることはなくなる。
しかし、声帯から口や鼻に呼吸の空気が全く通らなくなるので、声は出なくなる。
さらに、この喉頭気管分離手術は一度やってしまったら、修復は不可能。
よって、気管切開と一生お付き合いをすることになる。
<ゆーさくの場合>
1歳半のころ、舌根沈下を発症。舌根沈下による上気道狭窄が起こるようになる。
それ以前に嘔吐物を誤嚥に喉に詰まらせて窒息したり、細気管支炎で呼吸状態が悪化した際舌根沈下によりさらに酷い呼吸不全を起こし意識不明の重態になり気管内挿管が必要になったりするなど、日常生活に危険が多すぎるため、気管切開を決断する。
気管切開後は窒息の危険性や舌根沈下による上気道狭窄問題は解決され、何かあっても人工呼吸器もすぐ使えるようになった。。
しかし、気管切開はあくまでも気道確保であり、ゆーさくは気管切開後が気管支喘息が本格化し、日常的に痰が多くなり、呼吸状態そのものの改善には至らなかった。
そこで、呼吸状態に悪影響を及ぼしている可能性があるよだれや嘔吐物の誤嚥を何とかしたい、ということになり、喉頭気管分離術を決断。
ゆーさくが一生声がでなくなることに対し、抵抗はあった。
しかし、そもそも、呼吸状態が悪いと発声が困難であった。
またゆーさくの生活が呼吸することにエネルギーを費やしているようでは、ゆーさくの発達にも影響することもあり、「ゆーさくの生活が人生がもったいない」と思うようになる。
また、手術決断当時は、長期入院をしていて退院のめどが立たない状態でもあったので、手術することでまた「在宅生活がはじめられれば・・・」という思いがあり、手術を受け入れることになった。
(追伸:手術の際、ゆーさくの既にあった気管切開の孔の上の気管の長さが短いことが判明。
結局ゆーさくの喉は右図のような構造となった。)