■7月5日 ゆうが急に「伊勢エビ食べたーい」と言うので、伊勢に行こうということになり、大阪から一番近い高速の降り口を地図でさがし、ゆうの体を考えて、二見に行くことになる。車椅子でもOKの宿をさがし、体に良い食事を考えているということもあり、岩戸館に決めて、予約した。ゆうも一泊旅行が楽しみな様子。

■7月6日 伊勢一泊二日の旅。ゆうの体調を考え、昼から出発する。夕方に到着し、お部屋でゆっくりしたあと、海を見たり近くを散歩したりする。夕食は念願の伊勢エビを食べて大満足。他の料理も大喜びだった。

■7月7日 朝、ゆうの病気のことを知ったおかみさんが「8月23日に花火大会があるので元気になって必ず来るのよ!」と見送ってくれる。ゆう「必ず来るから・・・」と答える。おかみさん自身が作ったにがりとお塩をゆうに沢山いただいた。「心温かい人との出会いを大切にしなければ」と家族一同心の中で思う。おかげ横丁でゆっくり過ごす。昼食は、松坂牛でと思うが、ゆうの様子がおかしい。寒気がして、お腹が痛いと言う。食欲もなく、何も食べたくないらしい。この時、体の異変に気づかず、ただ疲れたのだろうと思う。あんな体で疲れないほうがおかしいのだから・・・

■7月8日 いつものように週のはじめは、午前中には病院に行かなければならないが「お腹が痛い」と言って動けない。「病院に行かないと」と言っては、何時間もゆうの回復を待っていた。やっとの思いで体を動かし、病院へ行く。腹痛があるのでエコーを撮ってもらう。エコーの先生が何度も同じ箇所にエコーをあてるので、私は「あれ、おかしいな?」と思ったが気にしていなかった。Drもゆうに何か伝えないといけないと思ったのか「たんのうが少しはれているみたい」と言う。ゆうも「たんのうがはれてるのか」と納得する。夕方、主治医と廊下で会い、「先生、お腹痛いと言うからエコー撮ったらたんのうはれているんですってー」と言うと、Dr「うーん、転移していた」と立ち話。Dr「リンパ節にね・・・」といろいろと話していたが、私はこんな重い話を病院の廊下で立ち話することか!と腹立たしく思った。以前からお腹が痛いからと、研修医の主治医に伝えると、触診をしてから「便がたまっているだけ」と言っていたことも頭にきて、この間のキツイ治療もとうとう効かなくなったのかと思うと、心の中で「治療はやめよう」と決めていた。「苦しい思いをしても手術もできず、ましてや転移までしたのなら、最後の時間は本人らしくそして残りの時間を大切にしよう」と。でも、主人はどう思うか分からないので、相談することにする。

■7月9日 朝から熱あり(38.0℃)。足のだるさと腹痛あり。AM11:50ボルタレン(座薬)入れる。PM10:00も入れる。月曜日から尿が出にくい。夜9:00頃、無理に出して今日は帰る。

■7月11日 主治医来る。「お腹の痛みは胸に水がたまっているので、痛みがあるかもしれないから、水をぬこう」と話をしてもらう。金曜日の午後、水ぬきをすることに決める。腹痛はあるが、かなりがまんをしている様子。ガンの痛みはそうとうなものだと感じる。と同時に、ゆうは本当にがまん強い子だと感心する。今日は泊まる。

■7月12日 午後から水ぬきをすることもあり、主人も昼から休みを取って来てくれる。ゆうは水をぬく為、処置室へ行く。当然、前回は主治医がぬいてくれたので、今回も「お願いします」と言っていたので、ぬいて頂けるものだと思っていたら、もう一人の主治医(研修医)がぬいていた。初めてのことだったと思う。2度も注射針をつき、失敗。麻酔でゆうも気分が悪くなり、吐く。そして息も苦しくなり、結局、上の主治医がぬき、400mlだけ取れる。ゆうにとっては、苦しく、痛い思いをしただけで終わった。水をぬくのは気休めだったのか・・・?大学病院は、“研修医を育成する場”だとつくづく思った。痛みがあり、苦しさもあったので、主人も心配して病院に泊まる。

■7月13日 今日は中学の担任、友達が卒業アルバムを持って、面会に来てくれた。体はキツイが車椅子で会いに行く。でも、やっぱり呼吸が苦しく、途中でベッドに戻る。いままでだったらどんなに苦しくても友達と会っていたのに・・・

■7月14日 少し食事もとれるようになる。今日も泊まる。

■7月15日 熱もさがってきて、ボルタレン(座薬)も使用しなくなる。食欲も少し出てくる。夜、10時頃やっと点滴もとれる。

■7月16日 今日はCTと皮膚科の先生が小児科に往診。治療の時、ずっとオムツ生活で、オムツ荒れをして、かゆみが止まらない。年頃なのでなかなか言えず、困っていたが、あまりにもひどくやっと診ていただくことに。今日からお薬をきちんと飲めるようになったので、看護婦さんにお願いして帰る。

■7月17日 昨日は私が泊まらなかったせいか、朝4:00頃まで眠れなかったそうだ。朝から看護婦さんに好きなビーズを選んでもらい、指に合わせて指輪を作る。今日は2人の看護婦さんにゆうが手作りで指輪を作った。お腹の痛みはあるが、元気に過ごしてくれる。今日は主人が泊まる。

■7月18日 朝から詰所に遊びに行って、楽しんでいる。今日もまた看護婦さんのビーズの指輪作り。主人も私も「1年以上入院して、みんなにお世話になっているので、1人1人お礼の意味で作ったら?」とゆうに言う。看護婦さんだけでも30人からいるが、ゆうも指輪作りをすることによって、お腹の痛み(ガンの痛み)も少しはやわらぐらしく、気もまぎれるので、「うん」と言って作り出す。

■7月19日 今日も朝からビーズの指輪作り。6月ぐらいから急にビーズで遊ぶようになり、指輪作りにはまっている様子。自分でオリジナルに組み合わせたものが出来上がるのが楽しいようだ。ゆう自身、看護婦さん1人1人に対して感謝の気持ちをこめて作っているようだ。今日は夜中に便2回する。お腹に転移した腫瘍がどんどん日増しに大きくなって腸を圧迫している。便がつまるとそれで終わりと言う。考えたくもない事態もあるので、毎日便が出るよう祈るばかりだ。週末なので外泊。

■7月20日 お昼までゆっくり寝ている。37.9℃熱あり。熱があるので、氷で冷やす。昼間便あり。

■7月21日 今、外泊中で、看護婦さん1人1人にお礼の指輪を作っているため、ビーズを沢山買いに行く。だんだん体も細くなってきて、体力的にもしんどいが、やっぱり家で過ごすと、ごはんは沢山食べてくれるのでうれしい。今はゆうの食べたいものを食べさせてあげて最高の素材を作って、お料理をしてあげている。母親として、してあげれることは、これぐらいのことしかできない。

■7月22日 週末は主人がいたため、ゆうをおいて買い物に出かけたが、今からの時期1人で家に留守番させておくのは怖いので、母に買い物をたのみ、買い物をしてきてもらった日は3人で昼食をして楽しく過ごした。ゆうもおばあちゃんが来てくれるので、すごくうれしそう。夕方から、やっぱり熱が出る。ボルタレン(座薬)入れる。背中、足は常にだるいようだ。私もいつの間にか1日中ゆうの体をさすりっぱなしが普通になっていた。今日の午前中、メイク・ア・ウィッシュというボランティア団体にゆうの夢を叶えていただこうと東京に電話した。(勿論ゆうには内緒で)。ゆうがウィッシュチャイルドになれるのを祈るばかりだ。

■7月23日 午前中、昨日申し込んだメイク・ア・ウィッシュ・オブ・ジャパンの書類が主治医宛に届くので、症状等を書き込んでほしいと病院に連絡する。ゆうは昼頃起きる。元気ではいるが、今日はかなりお腹が痛むようだ。体全身がだるく、歩くと貧血もひどく、唇も青白いし、きっと採血すると赤血球の輸血が必要だと思うが、家で過ごす。

■7月24日 昼過ぎ、娘が家庭教師に習うため、おばあちゃんと来る。ゆうは「体がだるい、だるい」と言うので、ずっとさすっている状態。夕方、熱が38.7℃もあるが、座薬を入れたくないというので氷で冷やす。主治医(研修医)より「どうですか」と初めて電話があった。夜、主人が帰ってきて座薬を入れてくれる。やっと熱が少し下がり、夜ごはんを食べてくれる。

■7月25日 お腹の腫瘍がだんだん大きくなってきている。痛みもあり、胃のあたりまで痛みを感じるようだ。夕方、あまりにも痛いようなので、ボルタレン(座薬)を入れる。1つ失敗して、もう1回入れなおす。夕方、妹がロブスターと毛ガニを買ってきてくれる。ゆうも大喜び、ロブスターのおさしみが一番おいしいと喜んでくれた。

■7月26日 午前中、久しぶりに病院へ行く。腰の痛みはあるが、なんとか行ける。病院へ行くと、Dr、看護師とほかのみんなが「ゆうくん、元気?」と声をかけてくれるので、痛みもそんなに感じないようだ。“病は気から”と昔から言うが、本当にその通りだと思う。今日は座薬を入れずに1日過ごせた。

■7月27日 昨日、病院に行って、みんなのパワーをもらったのか、なぜか元気。夕方、ゆうのお友達のお母さんがゆうが長崎のカステラが大好きなのを知っていて、わざわざ長崎から取り寄せてゆうに持ってきてくれる。夜10:30頃、古本やゲームソフトを買いに行く。ゆうも外出ができてうれしそう。今日もボルタレンなしで過ごせる。熱は37.2℃ある。腰は痛みがあり、全身だるいと言う。

■7月29日 朝から腰が痛いと言う。口を開けば、文句ばかり。あげくのはてに大暴れ。私も「どうにでもなればいい」と思ってしまう。夕方、手作りのパンを焼いて過ごす。夜、座薬を1回入れる。

■7月30日 相変わらず、腰とお腹が痛いと言う。1日中、ゆうの体をさすりっぱなし。今、何を一番してあげることがよいのかを考えるが、よくわからない。共に一緒に過ごし、体をさすってあげることがしかできない。夜、深夜まで開いている本屋さんへ行く。外に出れると、ゆうもうれしそう。やっぱり、ストレスがたまっているみたいだった。今日はお風呂場で体を拭いてあげる。

■7月31日 朝から、先月旅行をしたときにお世話になった岩戸館のおかみさんより電話がある。ゆうの様子を心配して連絡をくださった。ゆうはみんなから心配してもらって、本当に幸せものだ。ゆうは昼頃起きるが、腹痛があり、PM12:50にボルタレン(座薬)を入れる。効いてきたところで、ご飯を食べさせる。夕方は「お鍋が食べたい」と言うので、作ってあげる。久しぶりなので、ゆうもうれしいはずだが、腹痛で食卓までがなかなか歩けない。やっとの思いで、席に座り、食べてくれる。夜中、やっぱり痛みがひどく、座薬を入れる。AM2:00まで足などをさする。今日も便あり。よかった。