CNNの台風被害報道に対する台湾人の見解

8月19日付け『聯合新聞網』では今回の台風被害に関して、馬英九政府の対応は国内メディア
の厳しい批判を浴びただけでなく海外の主要メディアからも「無能」と形容されたことを反省す
べきだが、一方で、CNNの記者が「ネットアンケート」により「台湾のリーダーは辞任すべきか」
という調査をしたのに乗じて、一部の論客やメディアがその調査結果を必要以上に利用して政
治的論争を行っていることは、やりすぎのように思えるとした。記事は、ハリケーンがアメリカを
襲来したとき北京のメディアが記者に中央電視台で「アメリカ大統領は辞任すべきか」というア
ンケートをさせたとしたら、アメリカ人はどう思うだろうか、また、なぜCNNはイタリアの首相は
スキャンダルにより辞任すべきか、日本の麻生首相は失政により辞任すべきか、という「グロ
ーバルアンケート」を行わないのだろうかと疑問を投げかけ、CNNは「プロのアンケート業者」
及び「プロのメディア」の名にそぐわないこのアンケートを恥じ、台湾に誤るべきだとしている。さ
らに、台湾は独立した主権国家であり台湾の有権者にのみ総統を決定する権利があると主張
した。
 8月20付け『中時電子報』に掲載された羅珮瑩氏のブログでもCNNの報道に関する見解が
述べられている。羅氏は、CNNのアンケート結果では80パーセントの人が馬英九は辞任すべ
きと考えているとしているが、CNNはこの種のアンケートをクイック投票と呼んでおり正式なア
ンケート調査(poll)ではないと指摘し、その性質は『アップルデイリー』紙(ゴシップや三面記事
がウリの日刊紙)がよくやる芸能人の噂話についてのネット投票のようなものだとする。こうし
たネット投票ならば大体のところは一笑に付してしまえばいいのだが、ただ最近、台湾の国内
で正式なアンケート調査が実施され、その結果、CNNの調査はこのアンケートとやや差がある
とはいえ、「中らずと雖も遠からず」といってよいほど民意を反映したものであることが立証され
たという。
 今回、馬英九政権に批判が集中したのは、羅氏によれば、救済活動とその結果が毎日映像
で全世界に伝えられるため政権側は粉飾しようがなかったことによる。ただ単に救済が遅いと
いった官僚体制によく見られる悪い癖だけならともかく、今回は官僚の白眼視的言動や傲慢な
心理に人々の嘆息が止まらないまでになり、加えて馬総統の軽率さや無能、再三の失言がこ
れに輪をかけ、批判の主たる原因となったのである。10年前の集集大地震でも問題は山ほど
生じたが、当時は李登輝総統のリーダーシップが極めて鮮明であった。
 また羅氏は、今回注目すべきはインターネットが演じた役割であるという。日ごろ、社会の隅
にいるオタクたちが、被害がおきるやネット上のあらゆる手段を使って情報を収集し、物資や
ボランティアを集めたのである。こうした人々は教育レベルが高く70年代〜80年代に生まれた
若い世代であり、普段は政治に冷淡で与党支持が野党支持かといった強烈なイデオロギーを
持たない人々である。だが、今回の場合、彼らはストレートに反応し、大胆に発言、批判し、世
論形成の上で大きな役割を担った。
2009年8月22日


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