台湾・新聞局の補助を受けて制作された映画『渺渺』 メルボルン映画祭に出品中止
   中国映画の撤退と歩調合せる?

8月5日付け台湾の新聞『自由時報』は、2005年度に台湾の新聞局から400万NTD(1NTDは2.
9円)の補助金を受け取って制作された映画『渺渺』が出品予定だったメルボルン映画祭から
撤退すると伝えた。報道に拠れば、この映画は2つの点において台湾当局の不満を引き起こし
ている。
 第一点:『渺渺』は台湾の補助金を受けていながら台湾映画であることを明確にしていない疑
いがある。映画の制作会社・台湾澤東公司の責任者・陳宝旭氏は、『渺渺』は「台湾/香港」の
名義で映画祭に出品し、当該制作会社の名前は映画祭登録名簿に記載されていると主張。こ
れに対して台湾当局は、澤東は別の2つの映画祭の登録証明書しか出しておらず、ぜひともメ
ルボルンのものを見たいと要求している。
 第二点:中国の映画は、メルボルン映画祭にウイグル人人権組織の指導者・ラビア氏が主
人公の映画『愛の10個の条件』(The 10 Conditions of Love、ジェフ・ダニエルズ制作)が出品
されることに対してこの映画の出品中止を要求したが主催者側から拒否されたために、映画
祭をボイコットした。一方、『渺渺』は台湾映画でありながら、中国側のこの動きと歩調を合わ
せるかのように出品中止を決定した。制作会社は台湾の法令に違反していないこと、如何なる
外部の圧力も受けず独自に決定を下したと説明するが、台湾当局は補助金を出している以
上、政府としては台湾映画を多くの人に知ってもらいたい、制作会社も国家の尊厳と国際的な
イメージを守るべきである、今回の事件は世界のメディアに台湾が中国の出品中止に合わせ
たかのように受け取られかねず、台湾のイメージを傷つけたと主張。当局は行政処分、当該
制作会社の今後の補助金申請禁止も辞さない構えで、補助金の返還を求めることも検討して
いる。
 また『自由時報』では、『渺渺』は台湾、香港の合作映画であれば資金に困らなかったはずだ
が、どうして新聞局の補助金を申請する必要があったのか、政府が台湾の納税者の血税で、
独立を勝ち取ろうとするウイグル人のドキュメンタリーの反対に関与したいわゆる「台湾・香港
合作映画」に補助を出したことに、台湾人は耐えられない、といった見方を掲載している。
 なお、8月3日付け『人民網日本版』では、『渺渺』を香港の程孝澤監督の作品とだけ紹介して
いる。

2009年8月7日



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