<マイアミナショナルホテルは、でかいのになぜ安いか>
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アメリカ大陸横断旅行の途中、たち寄ったジャマイカから戻ったマイアミで、レンタカーを借りようとカウンターに行ってみたらば手頃な車がない。赤いカウンターも黄色のカウンターも緑のカウンターも(お解りですね)たずねてみたけどない。そこで「1日くらい、何でもいいか」と、ちょっとの太っ腹と、車なしでは困るという小心とで、『何でもいいから貸して』と 借りた車はなんと“ムスタング”しかも真っ赤。 最初で最後ですこんな車。女ふたりでとりあえず乗り込んでマイアミビーチへ。ガイドブック片手にホテル捜しです。マイアミビーチはパステルカラーのかわいいホテルやアールデコ地区なんておしゃれな外観のホテルが立ち並んでいるのですが、なんせ初めてなもんでわからない。そこへ、じゃじゃじゃぁ〜んと現れた『ナショナルホテル』手持ちのガイドブックにはすごく安い値段が書いてあるのですが、目の前に建つのはでっかいホテル。ほんとかしらと思いつつ値段だけでも聞いてみるかとムスタングでエントランスにすべりこみ(かっこいい!)イグニッションからキーを、キーを、ん?キーが抜けない。とりあえずキーはわたしに任せて、友達がフロントへ、(結局キーは、ハンドルロックがきっちり入ってなかったから抜けなかったようで、ハンドルを少し動かせばちゃんと抜けたのですが)遅ればせながら駆けつけたわたしに友達が「ガイドブックに載ってた値段だって」とちょっとびっくりした口調で告げ、二人は今夜の宿をそこに決めたのでした。 ・・・安易にも。
8階なんて見晴らしがいいねなんて・・・・その後の展開を知る由もなく。
部屋の広さは申し分ないし、キッチンも付いてるし、安かったねと云いながら窓を開けると、うらはマイアミビーチなのですがシーズンオフらしくて人影もまばら、おまけに、隣はつぶれたホテルかアパートかなんかの朽ち果てた建物で、なんだかちょっとイメージしていたマイアミビーチと違うなぁというかんじ、そう思ってみるとビーチにいるのはお年寄りばかりだし、お店も早い時間に閉まるし。リゾート地とはいえマイアミだから、夜になるとあまり出歩かない方がいいよ、なんてもいわれるし、“マイアミバイス”(テレビ番組、ギャングも出てくる)だもんなぁなんてお気楽につぶやきながら、KFCの列に並んで、今夜もフライドチキンとビールでディナータイムだ。
『さあ、風呂入って寝るか』と、バスルームに入るとささっと動く影。「ええ〜、おるやんか!ちゃばねぇ〜」茶バネゴキブリです。この旅でかなり慣れてきていたのと、小型のやつだったのと、疲れと、一泊だけだったことで我慢することにして熱湯攻撃で奴らを流し、それでもやっぱりおびえながら(本当にだめなんです、わたし)シャワーを済ませ、もう寝る!とベッドに入ってコンタクトレンズを外すと、床のカーペットに黒い染みがぼんやり見える。わたしって近眼なもんで、回りがよく見えないのです。はたしてそれが染みなのか、天敵である、家庭の台所などに出没する茶色い害虫(名前を口にするのもいや)なのか!?悲しいかな見えない。動きださないかと気になって眠れない。そうだったらどうしようと思うとメガネに手を出せない、確かめることもできない。だって、もうベッドから出られない動けない。でも、悲しいかな、しばらく葛藤を続けた後、眠ってしまいました。翌朝目覚め、おそるおそるメガネをかけてみると例の黒い染みは、カーペットの染みだったのです。あ〜こわかったよぉ。
しかし恐怖はそれだけではなかった。ほんの序曲、これからだったのだ。
荷物をまとめてエレベーターホールへ、なかなかエレベーターが来ない。待てど暮らせど来ないのです。同じフロアーに泊まっているらしき人が「故障みたいだよ」と云ったので、いったん部屋に戻り、フロントに電話をかけてみると、「故障だから、5分待ってくれ」と言われました。しばらく待ってエレベーターを見に行ってもまだ同じ状況。「どうする?」と思いあぐねていると掃除人がにっこり笑って指をさす。果たしてそこは、非常階段。おいおい、ここは眺めのいい8階だぜぃ。でも、待ってもエレベーターは動かずフロントに電話してもあと5分あと5分と繰り返すばかり・・・
ため息ひとつついて、顔を見合わせた我々は、よいしょと長旅で増えた荷物をそれぞれ腕、肩、背中にしょい込んで非常階段へ、これでも充分拷問ものでしょ。なのになのにその非常階段にはそこここに、昨夜わたしをカーペットの染みでよかったとはいえ苦しめたあの虫の死骸が・・・・あぁ今思い出してもぞっとする。えっちらおっちら1階までたどり着いたときは汗だく、翌日の筋肉痛を予感していたわたしたちに、申し訳ございませんの一言もなし!(怒)
安かったとはいえ、「こんなホテルつぶれてしまえばいいんだぁ!」と本気で呪ったマイアミでした。
その後、もう2度と行かんといっていたマイアミを別の友達と訪れたわたしはそのホテルの前を車で通りかかった時、ホテルの回りが囲ってあってあってクローズになっているのをこの目でしっかりと確認し、ニヤリと笑い心の中で叫んだのでありました。「やっぱつぶれてやんの、あたりまえじゃぁ。恨み忘れず」そして、この話をその時同行していた友人にくどくどと、多少おおげさに興奮気味に話し、心新たにマイアミ宿捜しをスタートしたのであった。執念深いのよ。
<旅の記録;1992.6(一泊37USj+TAX)同行者:S>
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