逃げるように背けられる顔。当然、重なっていた唇は遠のく。
オレはまだ柔らかな熱い肉を味わいたくて乱暴に顎を掴み引き寄せる。力の加減などしなかったから、彼は小さな悲鳴を上げたけれど、今はそれよりも彼の中を荒らしたい。
だから、再び歯列に割り入り貪るように自らの舌を躍らせる。オレは浮き立つ欲望を抑える術を知らず、彼の舌を吸っては絡ませ、逃げようとすれば顎を捕える手に力を込めた。
幾度か唇の角度を変える度、僅かな隙間から洩れていく彼の甘い声が勿体ない。彼は存在が希薄だから、知覚出来る全てくらいは自分が支配したいのに。
現在自分が支配下に置いている口腔内を酸素にも犯されないようにぴったりと隙間もないよう守ってやれば、彼は苦しそうな音を上げ、背を引かいてきた。まるで自分を拒絶しているようで腹が立つ。けれど、人間は酸素がなくては生きていけない。仕方なく唇を解放してやれば、彼は夢中で酸素を求める。
彼に放り出されたような気がしてオレは腹が立った。
彼の薄く開いた唇にオレの指を二本強引に割りいれる。びくりと怯えるように肩を揺らした彼の舌を指でなぞる。指に掛かる、温い吐息がくすぐったくて気持ち好い。戸惑ったように見上げてくる彼の瞳は熱に潤み、不安に揺らめいている。其処には確かな恐怖も埋まっている。俺の中で嗜虐心が煽られる。どくりと欲望が鼓動を打つ。
ああ、どうしてやろう。いいや、違う。したいことなど決まっている。今すぐ、泣かせたい。泣かせて泣かせて、ぐちゃぐちゃにしたい。表情筋など固まっているようなその顔を、歪ませたい。そして、散々貪ったその舌に乗る甘い悲鳴が聞きたい。
想像すれば、肌が粟立つような愉悦が沸き起こる。期待するように、唇を釣り上げオレは舌なめずりした。それを見て彼は体を震わせた。そのまま俺を恐れるように、華奢な体を引く。
それで逃げているつもりなのか。可笑しい、笑いそうだ。だって、逃げを打つ痩躯はいまだにこの手の中だ。微かに戦慄く口の中から指を引き抜き、彼の唾液で濡れたそれで顎なぞり小さな喉仏を擽る。おびえる彼の瞳に欲望は治まることはない。濡れた指は、彼が纏う制服に掛かる。
オレは獣のように唇をなめずり、獲物にかぶりついた。


恐れることなんて、何もないんだよ。
一緒に快楽に溺れていよう?
ずっと、ずうっと、オレと一緒に。

なんなら、








肺の奥まで侵してみせよう

(そうしたら くろこっちのすべてを しはいできるよね?)







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