祈りにも似た想いで紡ぐその名。



落ちてくる口唇を拒もうと、顔を背けば、肩に届く長い金の髪が男の節ばった指に絡まり、頚動脈が裂けるほど後ろに反らされた。
再び落ちてきたそれは、まるで噛み付くようで。
掴まれた髪、反らされた首は痛みを訴えてくる。それにほんの少し、身じろげば、抵抗だと思ったのか、唇を噛まれた。愛撫ではないそれは結果、合わせられた互いの口唇を紅く濡らす。
息をする暇すら与えられず。離れることはなく、角度を変えるだけの濃厚な口づけ。
口腔に広がるのは鉄の味。自分の血だ。追うように歯肉を、歯列を辿り、絡まる舌。
なんとも言い難い感覚に襲われても、息苦しさに咽喉を鳴らしても、成す術がない。
細い指は男の服に縋りつく。
その瞬間、男はきつく囲い込むように、幼い身体を掻き抱いた。
背に回り、身体を拘束するような腕の力の余りの強さに漏れた悲鳴をも呑み下そうと、さらに口唇を押し付けられ深くなる口付け。
いたい。くるしい。
早く放してくれないと、さすがに窒息してしまう。
舌が痺れても、満足するまでは開放されない。幾度という経験から、知ってはいるが。酸素不足に、痛み、霞みだす頭は解放を願う。
がくがくと震える膝、今にも落ちそうな腰。そんな身体を支えるのは今、口腔を貪るように荒らすこの男だ。最早、遮る役目の理性は働きを失い、本能のまま、身体は従う。
紅く色付いた口唇は開き舌を差し出す。それは快楽への欲求か、ただ酸素を求めてのものか。
失敗したと、茫洋とした頭で気付いたのは口唇を放し、壁に力任せに押し付けられたとき。
強かな衝撃は確かに背中から広がっていくものだが、先ほどの接吻の余韻に痛いと思う余裕も、感覚もなかった。
爪が食い込むほどに、肩を強く掴まれ身動きが取れないまま、首筋に顔を埋めて荒らされる。
時折走る小さな痛みに、赤い鬱血した痕を付けられたのだと理解した。

男に与えられる痛みも悦楽も、朱痕も。すべてが鎖のようだった。
生涯、男の元を去ることが出来ないように、絡まり続ける、拘束の鎖。

「ロイ…」

呟きは、解放を願って?それとも。







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