No.00008 突然の援助再開、高まる操業再開への気運

弊社製品を試着する 小泉内閣総理大臣
 2003.3月上旬、禁猟期を目前にした八甲田から閉鎖中の本社に戻った
藤田社長が目にしたものは、首相官邸からの一通の封書だった。
消印は三日前、中には官房長官の名前で「至急連絡乞う」との官箋が。
半信半疑で官邸に連絡を入れたところ、小泉首相が来社したいとの事。
本音を言えば「何を今更・・・」という気持ちも無いではなかったが、
再建に向けた一縷の光である。藤田はその要請を快諾、至急LAの西専務を呼び戻した。
小泉首相の訪問はそれから僅か2日後のこと。まさに電撃訪問であった。

 閉鎖された工場施設や研究棟を西専務の案内で視察した後、特殊ゴーグルなどを試着、
小泉総理大臣の口から、

「これ程とは思わなかった、素晴らしい!感動した!」
との言葉が漏れる。そして続けて首相が口にしたのは、
役員、いや全社員が、ひいては世界人民が渇望していた一言であった。
「大強(やまきょう)の経営再建に向けた公的資金の投入を、来期の予算編成から前倒しで行う!」
力強いその言葉に、その場に居合わせた役員の間には嗚咽をもらす者さえいた。

写真と本文は一切関係が無いと思います

簡単な会食を終えて小泉首相が立ち去った後、役員たちには
悲願達成の喜びを噛み締める余裕はなかった。
何故ならば首相と入れ替わりに本社には大勢の財務官僚が詰めかけ、

「何故それほど急ぐのか」
と役員たちが怪訝に思うほどの勢急さで予算の摺り合わせを進めて行ったからだった。
そして、連日深夜まで及んだ予算会議が漸く落ち着きを見せたある日の午後、
社長室には藤田社長と西専務の姿があった。

「しかし見え見えの援助再開ですね、勝手な話だ。」と西。
「そりゃそうだが、おかげで業務再開ができるんだ、悪い話じゃ無いよ。手放しでは喜べないがね。」
と答える藤田も表情は複雑だった。
「いよいよ開戦ですか・・・、ウチの技術が戦争の道具になるなんて・・・」
厳しい表情でうつむく西の目を見据えて藤田が口にした、
「そうなるな、でも、大国のエゴに振り回されるのはここまでだ。ここで一気に力をつけるぞ。
我々に残された選択肢はそう多くない。前に進むんだ。強い意志を持とう!忙しくなるぞ!」

という言葉には、どこかしら藤田自身に言い聞かせている様な響きがあった。

そして以前を大きく上回る規模での政府からの援助が再開したのは、
奇しくも世界が大きく揺れた日の前日、2003年3月18日の事であった。