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1.試験準備
当日の予定試験開始時刻は10:00であったが、現地入りは9:00に行って欲しいとのカワチャン衛生曹長の要請をうけ、
我々は出発時刻を8:00に修正。しかし、その8:00をすぎても社屋前には専務の姿はなかった。
今回の試験地への移動には従来の強襲車両「のりしお」に代わり、西専務の開発した新型車両「つきなみ」の試用を予定していたため、
産業スパイの手による妨害も予想される事から、関係者の表情に緊張が走る。
慌てて社長が専務に連絡を取ったところ、電話は 「8:30!」 と謎の一言を残して切れた。その後、社長と今回の被験者であるミツノリ新兵は社屋ラウンジにてインスタントコーヒーの香りに包まれること約30分、それでも「つきなみ」は現れない。再び凍りつく二人の前に西専務が姿を見せた頃、時計は既に8:45をさしていた。
『いやぁもうめっちゃ事故!トレーラーが横転しててな、ガソリンダダもれ!なんやったらそこに普通車8台くらい突っ込んでた!』
彼の第一声である。 「なんやったら」 が非常に気になったが面倒なので深く追求しないことにして3人は一路段々山へ。
その道中も専務は道傍の放置車を指差し、
「あの車が事故っててん」 とか、 「ああ、もう片付いてるわ」 とか好きなことを言っていた。
その後は大きな渋滞もなく順調に距離を稼ぐ「つきなみ」であったが、いかんせん45分の遅れはいかんともしがたく、結局試験地に到着したのは大本営の依頼時刻から35分をまわってからだった。(車両の誘導を頼まれてたのに・・・)
「どうしよう、カワチャンの「瑞鶴」(これも輸送車両)のスペースが無いやん。また鉄拳制裁や・・・」
と沈む社長をよそに専務は
「すげー!めっちゃ集まってるやん!」
ご機嫌そのものである。その上、 「こういう事もあるって」 と社長を慰めることまでしてくれた。
とりあえず過ぎた事は忘れることにして、「すかぽんたん」のAXELさんらと
「やぁやぁ」 「どうもどうも」 「これはこれは」 「親の光は七光りなどと申しまして・・・」
と相変わらずよくわからない挨拶を交わしながら準備に励んだ3人であった。
ほどなくして準備も整い、ミツノリ新兵に試験に臨んでの注意点などを社長がレクチャーしているところへ「大和兵団」のまさや上等卒が現れ、
「大本営の到着が遅れてるから悪いけどフィールド説明してくれへん?」
とのこと。(俺もあんまり知らんねんけどなぁ)と思いながら返事だけは元気よく請け負う。新開発の「拡声型強化声帯(以下強化声帯)」で参加者に呼びかけると、予想以上に多い人数が集まってこられた。(あちゃー、責任重大やん)と内心冷や汗をかくが、そこは社長の貫禄で自信満々に
「じゃあ、ついて来て下さい!」
と、言い切ってみた。わからんところは適当に誤魔化しながらちょっと迷いそうになりつつ一通りぐるっと案内して周る。
フィールド下部から見て左側の丘はもともと傾斜が強い上に、前日の雨ないし雪で足元がにぬかるんでおり、滑りやすくなっているため参加者に転倒に対する注意を促しつつ、転倒した際のダメージ等こまかなデータ採取のため社長自ら転倒してみた。(あくまで”してみた”のである。そこんとこ誤解なきよう)すると後ろからバカにしきった笑いが聞こえたので振り返ると、「すかぽんたん」のロキ上等兵殿が
「見てたで」
とニヤニヤしておられた。(見てたのね・・・)
2.試験開始
2-1 ミツノリ新兵の登坂力テスト
本日市販を控えての最終試験を迎えたミツノリ新兵(以下ミツノリ型)は、より実際の使用状況に基づいたテストを行う為、初の実戦投入となった。
我々の所属する「黄軍」は下からの侵攻から始まった。我々の作戦はミツノリ型をポイントマンに配し(簡単に言うと弾除け)その後ろから社長と専務が追従すると言う形をとった。ミツノリ型の腰には新型オプションパーツである「書留カバン型個人携行具」が装着されていた。このパーツは郵政省使用の書留カバンに形状が酷似しているが、マガジン、ファーストエイドキット、地図、おやつ(バナナ含まず)、印鑑等戦闘時に必要なものがすべて収納できる優れものである。(予価1980円)
3-2-1の笛の合図とともに状況開始した我々は一目散に段々山左手の通称「二〇三高地」を目指した。さすがに新型パーツを多く搭載したミツノリ型は我々がとても追いつけないほどのスピードで山を駆け上り・・・駆け上がっただけだった。「ヒット〜」の一声とともに最初の試験は終了した。
残された我々はポイントマンを失い、また機体を無駄にした事に対する失意から「あっ!」というまに戦線を離脱した。というか「戦死した。」我々大強テストチームは初戦において1-2-3フィニッシュとなる見事な散りざまであった。
2-2 初のブッシュ侵攻
段々山での試験を幾度となく繰り返してきた我々であったが、斜面向かって右手の「ブッシュ地帯」の侵攻は実は未経験であった。その理由にボーディーアーマーによる機幅の増加等があげられる。しかし我々はミツノリ型の新たなデータ採取のために2ゲーム目はブッシュを侵攻することに決定した。
今回の作戦は先行する社長とミツノリ型を専務がバックアップするという形をとった。初のブッシュゆえ地形のわからない我々がルートを求めて、あっちへウロウロ、こっちへウロウロするうちに気が付けば敵兵からの発砲を受け、慌てて手近な窪みに身を潜めた。その頃専務は対岸で動く敵兵を観察しており、スコープ越しに映る敵兵を見て「ニヤニヤ」しているうちに二人を見失っていた。
「おいおい、どこいったんや〜」と心の中で叫んでいると、近くで社長の強化声帯からのヒットコールがあがった。「ワレ、バックアップするゆうたやないか!」と心のなかで叫んでいたのは彼も同様である。その後ミツノリ型は早々とブッシュ侵攻をあきらめ、対岸への移動を強行していたことが発覚、仲間を見捨てるあたりが今後の改良点と思われる。
専務は匍匐にてブッシュ侵攻を続けていた。横には友軍の「奈良大防衛軍」のみなさんがたくさん身を潜めており、恥ずかしがり屋の専務は敵兵を目指しひとり前進する。最前線らしきところでは敵兵約一名と奈良大の戦士がブッシュをはさみ激しい銃撃を交わしていた。専務はしばらく様子をうかがっていたが、状況が膠着しはじめており、気の短い専務は「前に敵兵一名」という声を聞いたが、心の中で「わしゃ膠着がえろうきらいじゃ〜」と叫びながら敵陣へ消えていった。その後の専務の消息は誰一人として知らない。
2-3 二〇三高地からの遠距離射撃
今回はミツノリ型と専務が二〇三高地上方を警戒し、社長が側面から敵陣に対し狙撃を行い、中央部の敵戦力の削減に努めるというめだちたがり屋の我々にとっては異例ともいえる「縁の下の力持ち作戦」をとった。
スタートコールののち、斜面を駆け上がる3人・・・と言いたいところだが、社長は泥濘地でのオートバランスの不調から何度も(5回も!)足を滑らせ、二人からかなり遅れてのポイント到着となった。
社長がようやく狙撃姿勢をとる頃には既に敵兵も中央部深くまで侵攻してきており、専務のHK51を手にした社長がスコープを覗きながら浮かべる笑顔はまさに「変態!」、その横顔をみて専務はふと既視感にとらわれた。「どっかで見たで、この顔?しかもごく最近・・・。」
「あっ!」専務の脳裏には二日前の出来事がくっきりと浮かび上がった。
二人はわが社の保養地でありまた整備場でもある十三の「ルームイン赤坂」で、自慢のラピッドファイアシステムのメンテナンスと調整を行ってきたのである。その時の待合室での社長の顔がまさしくそれであった。
その変態スマイルで「入れ食いじゃ〜!」とウヒャウヒャいいながら発砲を繰り返す社長に「いいなぁ、いいなぁ」と気を取られた専務は、敵の進行に反応が遅れ、慌てて窪みに身を伏せるもさらにそこへ敵銃弾が降り注ぐ・・・かのように思われたが、どうやら敵兵の単なる探り撃ちであったようで、その後「楽勝!楽勝!」と専務が社長の方を振り向くと、あからさまに木にあたって跳ね返った銃弾が
専務の手首に「ポトッ」
「ヒット〜・・・かな?」と煮え切らないコールを残して彼は戦線を去った。社長は彼の背中に「なんじゃいそりゃ!」ととりあえず突っ込み、さらに殺戮を続けた。しかし、ふとバックアップの専務が戦死したことを思い出し「ひょっとして俺ケツ丸出し?」ととんでもないことに気づいた。しかし、初参戦のミツノリ型に具体的な指示が出来ようはずも無く、しゃーなしに
「ミツノリ〜!とりあえず上から来るやつみんな撃て!一人も通すなよ!」と、無茶を承知でプレッシャーだけかけておく。(自分が安心して楽しみたいから)しかし、その後すぐ敵兵の一人が果敢にも突撃を敢行、ミツノリ型と相討ちとなった。連続したヒットコールに社長が振り返るとそこにはなんとミツノリ型とスレイブのFOX-K殿の死体が転がっていた。相討ちとはいえ、緒戦で彼を葬るとは・・・改めてわが社の製品のポテンシャルの高さを確信した。(民間への販売予定なし)
その後の社長であるが、スポッターを失ったスナイパーなんざ、「野口五郎」改め「GORO」のように特筆すべきものでもないため、敢えて言及は避けておく。
2-4 大和兵団とともに・・・
セイフティゾーンにさわやか笑顔を振りまく大和兵団に洗脳されたのか、昼をすぎたあたりから社長の行動がおかしくなった。
最初はカワチャン衛生曹長の戦闘服を見て「たかいんちゃうのそれ。」とか、「ラッパってほんまに吹けんの?」などと、大和兵団を喜ばせるような台詞を口にするだけであったが、連隊旗を見る目つきが先ほどまでと異なっている事を、付き合いの長い専務は見逃さなかった。
連日の調整や会議等の激務による疲労が蓄積され、正常な判断がつかなくなったところへ彼らの笑顔は巧みに入り込んできたのであろう。
宗教団体とは常にそんなものである。恐るべし「大和兵団!」次の瞬間、社長の口からは思いもよらない一言がこぼれた。
(軍刀を見て)「それ・・・貸して。」
それに驚いた専務が社長を見ると目の色がすっかり変わって緑色になっている。必死に止める専務や、「突撃嫌いって言ってませんでしたっけ・・・。」というFOX-K氏の冷ややかな笑いに日ごろの社長からは想像もつかない「うっさい!アホ!」という暴言まで飛び出す始末であった。結局、専務は「神●風」ハチマキ、社長は「日●本」ハチマキをつけることになり、突撃の準備が淡々とすすめられた、が、社長は前後不覚に陥っており、ハチマキが上下逆になって「本●日」になっていることにも気づかなかった。(これは同兵団憲兵隊の指摘により改められた)
戦闘準備も整った頃、突撃志願兵は僅か3名の守備隊を残して作戦会議のために一箇所に 終結 集結する。突撃第一陣に専務とミツノリ型が配され、社長は第二陣の指揮をとることになった。
会議の席で軍刀しか持っていない社長に対するカワチャン衛生曹長の「社長、銃は?」との問いかけに対し、「そんなもんいらん!!」と一蹴した社長は、セイフティー解除の号令に一人軍刀を抜き放っていた。「私はその刀身に映った陽光を一生涯忘れないだろう」と後に専務は語っている。
「突撃ぃぃぃ〜!前へぇぇぇ〜!」
連隊旗とともに華々しく散っていく第一陣を犬死にさせじと
「連隊旗に続けぇぇぇ〜!」
と第ニ陣も突撃を敢行。皆にこやかにセイフティゾーンに帰っていった。
その中で専務はまた浮かない顔をしている。どうやら突撃の際にも敵弾が銃身にあたり、死に切れなかったようである。これは後述する強化下腿のテストにも大きな影響を与えた。
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