ゆう猿辞苑
さる【猿】 the Monkey
サル目(霊長類)のヒト以外の哺乳(ほにゅう)動物類の総称
かぞえ方…一匹・一頭
あと足で立ったり 前足で物を握ったり することが出来る。種類が多い
猿と言われるものに、こんなものがある
・雨戸の桟に取りつけた戸締り道具
(戸じまりのために戸の框カマチに取りつけ、柱や敷居の穴に突き挿して、しまりとする木片=竪猿・横猿・送猿)
・自在かぎを上げてとめておく用具
(自在鉤ジザイカギを吊す竹に取りつけて、鉤を望むままの高さに留めおく具)
・小紙片の四隅を折り返して、括猿ククリザルのような形をつくり、その中央に穴を穿ち、揚げた凧タコの糸に通して、凧の糸目の所まで上り行かせる装置の玩具
・蜜柑ミカンの実の袋を髪の毛で括って猿の形をこしらえる遊びで
(好色一代男に「自らが黒髪を抜かせられ、猿などして遊びし夜は」の文がある
(浴客の垢を掻くのを、猿がよく物を掻くのにたとえていう) 江戸で湯女ユナの異称
・岡っ引きの異称。(俚言集覧)
・万葉集に「酒飲まぬ人をよく見れば猿にかも似る」読まれている。
ずるく、模倣の小才ある者。特に、ののしりに使う。「あの猿め」
さる【申】 ・申年… the Year of the Monkey. 〈十二支の九番目〉
・申角…(方位)西から南へ30度の方角
・申時トキ…昔の時刻の名。今の午後4時ごろ。また、およそ午後3時から5時のあいだの時刻
さるお【猿尾】 (形が猿の尾に似ているところから) 琵琶・三味線の名所ナドコロの一
琵琶では「えんび」と読み、鹿頸の裏面の一部をいう
三味線では根緒ネオをかける棹の先端部分の称。中子先、根尾懸、堤防
さるおがせ【猿麻】 サルオガセ属の地衣類の一群。全長0.2〜1メートル、糸状でとろろ昆布に似る
温帯から寒帯の多湿の山地で、多くは針葉樹に付着、互いにからまりあって懸垂する。淡緑色
乾して松蘿シヨウラといい利尿剤とする。下苔サガリゴケ。キツネノモトユイ。クモノアカ
さるかい【猿飼】 猿まわし
さるがう【猿楽ふ・散楽ふ】 (「猿楽サルゴウ」を活用させた語) 滑稽な動作をする。たわむれる
枕草子140「男などのうち猿楽・ひ、物よく言ふが来るを」
さるかえこうとう
【猿替勾当】
狂言の一。 「猿座頭」に同じ
さるがえり【猿返り】 自在に身を転ずること。とんぼがえり
伎、お染久松色読販「縄に引付けられて猿返りをする」
さるがく【猿楽・申楽】 平安時代の芸能。滑稽な物まねや言葉芸が中心で、相撲御覧の時や内侍所御神楽の夜などに演じた。後には一時の座興の滑稽な動作をも猿楽と呼んだ。鎌倉時代に入って演劇化し、能と狂言となる。能楽・狂言の源流をなす。「散楽サンガク」の転訛という。広義には呪師ジユシ・田楽デンガクなどをも含む。(岐阜県能郷村の猿楽舞台の写真)
さるがくざ【猿楽座】 中世、猿楽師の結成した団体。多く寺社に属し、大和四座は有名
さるがくし【猿楽師】 猿楽の演者
さるがくだいこ【猿楽太鼓】 締太鼓シメダイコの一。短い胴の両面に枠付きの革をあて、紐で胴に締めつけたもの。台にのせて上側の片面を両手の桴バチで打つ。能楽のほか歌舞伎囃子や民俗芸能でも用いる
さるがくほうし【猿楽法師】 猿楽に従事する僧形の芸人
さるがくだんぎ【申楽談儀】 世阿弥の芸話を次男の元能が整理した聞書。1430年(永享2)成立。話題は能作・演出・演技・用具・演者など広範囲にわたり、具体例が多い点で重要。「世子ゼシ六十以後申楽談儀」が正称。
 文献資料--申楽談儀
 遊楽(ユウガク)の道は一切物まね也といへ共、申楽(サルガク)とは神楽なれば、舞歌(ブガ)二曲を以て本風と申すべし。さて、申楽の舞(マイ)とは、いづれを取り立てゝ申(モウス)べきならば、此(コノ)道の根本(コンボン)なるがゆへに、翁(オキナ)の舞を申(モウス)べきか。又、謡(ウタイ)の根本を申さば、翁の神楽歌を申(モウス)べきか。「志(ココロザシ)を述ぶるを歌といふ」と、古くもいへり。是(コレ)、万曲(バンキヨク)のみなもと成(ナル)べし。然れば、舞歌(ブガ)二曲を成さゞらん者をば、うるわしき為手(シテ)とは、いかゞ申(モウス)べき。  三道(サンドウ)に云(イワク)、「上果(ジヨウカ)の位(クライ)は、舞歌幽玄本風として、三体相応たるべし。上代・末代に、芸人の得手(エテ)  様々なりといへ共、至上長久の、天下(テンガ)に名を得(ウ)る為手(シテ)に於きては、幽玄の花風を離るべからず。軍体・砕動の芸人は、一たん名を得(ウ)るといへ共、世上に堪へたる名文(ミヨウモン)なし」と、云々(ウンヌン)。
 又、花伝(カデン)に云(イワク)、「和州・江州・田楽に風体(フウテイ)変(カワ)れり。然共(シカレドモ)、真実の上手(ジヨウズ)は、いづれの風(フウ)なり共(トモ)洩れたる所有(アル)まじ。只、人、一向(イツコウ)の風斗(バカリ)を得て、十体(ジツテイ)にわたる所を知らで、余を嫌う。風体・ぎやうぎは面々各々(カクカク)なれ共、面白しと見る花は、和州・江州・田楽にもれぬ所也」と。「殊に此(コノ)芸とは、衆人(シユニン)愛敬(アイギヨウ)を以て、一座建立の寿福なれば、時に従い、所によりて、愚か成(ナル)眼(マナコ)にもげにもと思ふやうにせんこと、寿福也」と、云々(ウンヌン)。
さるかけ【猿懸】 肩車カタグルマのこと
さるがしこし【猿賢し】 わるがしこい。都鄙問答「猿賢しき者は詫び人より礼銀を密々にうけとり」
さるかにかっせん
【猿蟹合戦】
昔噺ムカシバナシ。成立は室町末期か。猿の柿の種と自分の握り飯とを交換した蟹は柿の種をまく。柿の木に実を結ぶと猿は親切ごかしに樹上に登って、熟したものは自分で食べ、渋柿を投下して蟹を殺す。蟹の子は悲しみ怒って、臼・杵・蜂・栗 (卵)の助けで仇を討つという筋
さるがみ【猿神】 猿を神あるいはその眷族として祀るもの。山王日吉ヒエ神社のお使いと信ぜられ、広く山の神の姿とされている
さるがもち【猿が餅】 猿が、片方の手で銭を渡し、もう一方の手で品物をうけとるように、「即座に」「右から左に」という意。一方から得たものを手うつしに他方に与えるようなことのたとえ。「猿が餅買うよう」ともいう。東海道中膝栗毛4「ひろふたとおもひし銭は猿が餅右からひだりの酒にとられた」
さるかん【猿環】 自在に回転する金物の環。釣具のよりもどしの装置の類
さるぎ【猿木】 厩で馬をつなぐ木。猿を厩ウマヤの神とする習慣があるからいう
さるぐつわ【猿轡】 声を立てさせないために口に押し込んだり かませて後頭部に結んだりする、手ぬぐいなど
(a gag) 句例*猿ぐつわをはめる gag somebody; put a gag in somebody's mouth「猿轡(ぐつわ)をかませる」
さるぐま【猿隈】 歌舞伎の隈取りの一。紅ベニで額から眼のまわりを彩り、額には横に3本の筋を引き、猿の顔を表すもの。曾我狂言の朝比奈などに用いる
さるけ 泥炭のこと。燃料とする。青森津軽地方でいう。秋田地方では「ねっこ」、越後では「やちわた」、信濃では「やちまぐそ」という。
さるげ【猿毛】 馬の毛色で、鼠色のもの
さるこ【猿子】 綿入れの袖なし羽織。子供などの着るもの。仮子カリコに同じ。さっこ
さるこ【猿籠】 「もっこ」に同じ。宇治拾遺物語12「―に長き縄をつけておろすべし」
ざるご【笊碁】 囲碁のへたなこと。また、その人。(笊造りの碁笥ゴケに土製の白石・黒石を用いることから、また、笊の目のあらいようにあらい碁という意から)
さるごう【猿楽・散楽】 (サルガクの音便)滑稽なさまをすること。おどけ。たわむれ。宇津保物語国譲下「猿楽せぬはなし」。枕草子143「口をひき垂れて…猿楽しかくるに」
さるがまし・さるごうがまし
【猿楽がまし】
滑稽じみている。源氏物語少女「猿楽がましくわびしげに人わろげなるなど」
さるごうごと【猿楽言】 たわむれたものいい。おどけぐち。枕草子184「これはいますこしはなやぎ、猿楽言などし給ふを」
さるざけ【猿酒】 猿が木のうろまたは岩石のくぼみなどに貯えておいた木の実が、自然に発酵して酒に似た味となったもの。ましらざけ
さるざとう【猿座頭】 狂言の一。座頭が花見に出て妻の挙動をあやしみ、綱で自分の帯に結び付ける。猿曳サルヒキが妻と猿とを結び替えて妻をつれて逃げる。花見座頭。猿替勾当
さるさわのいけ【猿沢池】 奈良市興福寺南門の前、三条通りを隔てて崖下にある池。周囲約340メートル。インドの 猴ビコウ池を模したものという
さるしばい【猿芝居】 へたな演劇や、すぐ種の分かる あさはかなたくらみの称。
〔猿猿に衣裳・鬘カツラなどを付け訓練して芝居のまねをさせる見世物の意〕
( a monkey show)句例*猿芝居を打つ play an inept [a cheap] trick (on somebody)
さるしばり【猿縛り】 猿をしばるように手足を一緒にぐるぐる巻きに縛ること。浄、佐藤忠信廿日正月「猿縛りといふものに七重八重に縛り上げ」
さるすべり【猿辷り】 囲碁で、辺の第2線から第1線へ桂馬にすべりこみ、相手の地ジを減らすこと
さるすべり
【猿滑り・百日紅・紫薇花】
ミソハギ科の落葉高木。中国南部の原産。幹は高さ数メートル。平滑でこぶが多く、淡褐色。葉は楕円形で四稜のある枝に対生。夏から秋に紅色または白色の小花が群がり咲く。日本で庭木として古くから栽培。材は緻密で細工用。ヒャクジツコウ。サルナメリ。
(幹の皮が滑らかなので猿もすべるの意)
さるたひこ【猿田彦】 (古くはサルダビコ) 日本神話で、瓊瓊杵尊ニニギノミコト降臨の際、先頭に立って道案内し、のち伊勢国五十鈴イスズ川上に鎮座したという神。容貌魁偉で鼻長7咫アタ、身長7尺余と伝える。俳優・衢チマタの神ともいう。中世に至り、庚申の日にこの神を祀り、また、道祖神と結びつけた。
さるぢえ【猿知恵】 一見、気がきいているようで、実際は まぬけな△考え(たくらみ)
句例*猿知恵がある be clever in managing petty matters
さるど【猿戸】 庭の入口にある簡素な木戸
さるとうじん【猿唐人】 人をののしりあざけっていう語
さるとびさすけ【猿飛佐助】 戦国時代の忍術家。戸沢白雲斎に忍術を学び、真田幸村に仕えて大坂夏の陣に戦死したというが、実伝は不明。真田十勇士の一人として、その武勇伝は講談などで有名
さるとりいばら ユリ科の落葉蔓性小低木。高さ2〜3メートル。茎は細く他物にからみ、強い角質のとげをもつ。葉は円形ないし楕円形で基部に2本の巻鬚マキヒゲがある。初夏、黄緑色の小花を球状に多数つけ、雌雄異株。赤い液果を結ぶ
さるつかい【猿遣い】 「猿まわし」に同じ
さるつなぎ【猿繋ぎ】 戸・扉などのあおりどめ。うしろ手に縛り、木などへつなぐこと
さるなし【猿梨】 マタタビ科の蔓性落葉低木。葉は広楕円形で葉柄は赤い。雌雄異株。5〜6月、白色五弁花をつける。緑黄でやや球形の液果を結び、食用にする。シラクチヅル
さるなめり【猿滑】 サルスベリの異称
さるに【猿似】 血縁のない人の容貌が互いに似かよっていること。そらに
猿に烏帽子(えぼし) その人柄にふさわしくない服装や言動のたとえ
さるのいきぎも【猿の生肝】 世界に広く分布した寓話性童話の一。日本では特に動物形態の説明伝説としての意味を付加。治病の妙薬として猿の生肝を取りに竜王から遣わされた海月クラゲが、猿をだましてつれ帰る途中、その目的をもらしたため、猿に生肝を樹上に置き忘れたとだまされて逃げられ、その罪を責められ、打たれて骨なしになったという話。海月のお使い。使者が亀になっている古い形もある。
さるのこしかけ
【猿の腰掛・胡孫眼】
担子菌類サルノコシカケ科に属する木質のきのこ。樹幹に半円形または疣イボ状で棚状に生え、厚くて堅い。上面は褐色、同心円状の紋を具え、下面は白色。木材を腐朽させる害菌。細工物を作る。
猿の尻笑い (猿が自分の赤い尻に気づかないように) 自分の欠点を省みずに他人を笑うこと。御前義経記「我を忘るるなど猿の尻笑いぞかし」
さるのぼり【猿幟】 括猿ククリザルをつけた幟。祭礼などの時に立てた
さるばかま【猿袴】 労働用の袴の一種。上部がゆるく下部をつめて縫う。雪袴と呼ぶ地方もある
さるはし【猿橋】 山梨県大月市の町名。もと甲州街道の宿駅。この地の桂川に架かる木橋を猿橋といい、日本三奇橋の一。橋脚を用いず、棟と桁を何段にも重ねて、両岸の崖からせり出してかけ渡す。
さるひき【猿引き・猿引】
さるひき【猿引・猿曳】
さるまわし
さるぼお【猿頬】 猿が食物を頬のうちにつめこんで貯えるところ。ほおぶくろ
さるぼおてんじょう
【猿頬天井】
竿縁サオブチに猿頬面をつけた天井。普通の竿縁天井より上等なもの
さるぼおめん【猿頬面】 (建築用語)45度以上の角度で猿の頬のように面取りするもの。竿縁などに用いる。えてぼお
さるぼぼ【猿ぼぼ】 這子ホウコの一。赤い布で作り、中に綿を詰めた人形。岐阜県高山の郷土玩具
さるまいごし【猿舞腰】 猿の踊るような腰つき。へっぴりごし
さるまた【猿股】 腰から股をおおう、男性の短い下ばき
さるまつ【猿松】 猿をののしっていう語。腕白小僧。悪がしこい子供。狡猾で多弁な者、または一般に人をののしる語
さるまなこ【猿眼】 猿のように大きくくぼんだ眼。また、猿のように赤い眼
さるまね【猿真似】 他人の言動についてその本質的意味をよく理解せず、むやみに真似すること。無批判な、うわべだけの真似。〔猿が人の動作の真似をする意〕○猿の人真似
)(an awkward [a poor] imitation)文例*猿真似は止(よ)せ. Stop your cheap [pathetic] imitations!
さるまるだゆう【猿丸大夫】 三十六歌仙の一。平安初期頃の人か。古今集真名序に見え、伝説的人物
さるまろ【猿丸】 猿の異称。今昔物語集26「舅具して猿丸どもを前に追ひ立てて行きて」
さるまわし【猿回し】 猿に種々の芸をさせ、見物客から金銭を貰い受ける芸人。縁起物として多く正月に回った。さるつかい。さるひき。(猿は馬の病気を防ぐという俗信から、大名屋敷では厩ウマヤで舞わせた)
さるみの【猿蓑】 俳諧集。(巻頭の芭蕉の句「初しぐれ猿も小蓑(コミノ)をほしげなり」による命名) 。6巻2冊。去来・凡兆の共編。1691年(元禄4)刊。発句・連句のほか「幻住庵記」などを収め、円熟期の蕉風を示す
さるめ【猿女】 神祇官の職の一。大嘗ダイジヨウ祭・鎮魂祭などの神楽カグラの舞などに奉仕した女
さるめ【猿目】 ひそかに人の様子をうかがう目つき
さるめん【猿面】 猿の顔にかたどった仮面
さるめんかじゃ【猿面冠者】 猿の顔に似ている若者。木下藤吉郎のあだ名
猿も木から落ちる その道に長じたものも、時には失敗することがあるというたとえ。「弘法も筆のあやまり」も同じ意 (Homer sometimes nods.)
さるももひき【猿股引】 猿股サルマタの別名
さるわか【猿若】 歌舞伎の役柄の一。阿国オクニ歌舞伎の時代に道化ドウケた滑稽を演じた者の名に起り、道化役の意に用いる。 猿若 を主人公とした能狂言式の所作事シヨサゴト。猿若座(中村座)の家狂言として伝えられたものが残り、歌舞伎最古の現存脚本という。
さるわかざ【猿若座】 江戸の歌舞伎劇場。1624年(寛永1)猿若勘三郎が中橋南地に創建。51年(慶安4)堺町(後の人形町)に移転、勘三郎の本姓中村を取って中村座と改称。
【中村座】:歌舞伎劇場。江戸三座の一。1624年(寛永1)猿若(中村)勘三郎が江戸中橋に創立、初め猿若座と称したが、51年(慶安4)堺町(後の人形町)に移り中村座と改称。1842年(天保13)猿若町に移り、明治になって都座・猿若座と改称。ついで浅草鳥越に移り、また中村座・鳥越座と変ったが、93年(明治26)焼失、廃座。
さるわかちょう【猿若町】 東京都台東区の旧町名。水野越前守の天保の改革の際、風俗取締りのために、江戸市中に分散していた芝居類の興行物を浅草聖天町の一郭に集合させて名づけた芝居町。3区分して一丁目(中村座)・二丁目(市村座)・三丁目(守田座)と称した。明治以後町名だけ残る。
さんえん【三猿】 3様の姿勢をした猿の像。両眼、両耳、口をそれぞれ手でおおう。猿に「ざる」をかけて、「見ざる・聞かざる・言わざる」の意を寓したもの
さんえん【山猿】 山にすむ猿。やまざる
アウストラロピテクス
【Australopithecusラテン】
(南の猿の意) 南部アフリカ・東部アフリカの第四紀層下部から発見された化石人類の一群。約400万〜150万年前に生息した最古の人類と考えられる。脳の容積は現生ゴリラと同じ位だが、頭蓋骨の形状や歯は人間的で、直立二足歩行をしたとみられる。猿人。オーストラロピテクス
アカゲザル (サル目オナガザル科)インド、インドシナ、中国南部などに広く分布。人間の血液のRh因子は、アカゲザルの血液中の抗原と共通。医学、生理学、心理学などの分野で広く実験に用いられる実験動物として輸入される。ニホンザルに似ているが尾はずっと長い。遺棄などによって野生化。最近では、千葉県でニホンザルとの混血とみられる尾の長さの中間のものが多くみられ、ニホンザルの純血が失われることが懸念される。
犬と猿 仲のわるいもののたとえ
いばしんえん【意馬心猿】 煩悩・欲情・妄念のおさえがたいのを、奔走する馬やさわぎたてる猿の制しがたいのにたとえていう語。仏語 煩悩の犬
うつぼざる【靱猿】 狂言の一。狩に出た大名が猿曳サルヒキに会い、猿の皮をうつぼにしようとして無心するが、猿の不憫さに心動き許すので、猿曳は礼に猿を舞わす。 歌舞伎舞踊劇の一。常磐津。本名題「花舞台霞の猿曳」。1838年(天保9)中村重助作詞、五世岸沢式佐作曲。 を歌舞伎化。大名は女大名三芳野に、太郎冠者は奴橘平に代る。 長唄の一。1870年(明治3)頃、二世杵屋勝三郎作曲。 の長唄化
えん【猿】 さる。「犬猿・猿臂・意馬心猿」
えてこう【猿公】 「えて(猿)」を擬人化していう語。えてきち。
えんこうすぎ【猿猴杉】 スギの園芸品種の一。枝条が甚だ長く伸びて猿が手をのばしたようになる。通常花果を生じない
えんこうそう【猿猴草】 キンポウゲ科の多年草。山地の水辺に自生。茎は地を這い、葉は円い心臓型。6〜7月頃花茎を長く出し、黄色の小花を開く。鉢植として吊る時は、花茎は垂れて手長猿の手のようになる
えんこうそくげつ
【猿猴捉月】
(僧祇律の寓言) 猿が水にうつる月を取ろうとして溺死したように、身のほどを知らぬ望みを持って、失敗することにいう。猿猴取月とも
えんぴ【猿臂】 猿のひじのように長いひじ
おけざる【をけ猿】 大猿。宇治拾遺物語10「横座に居たるをけ猿」
おながざる【尾長猿】 サル目(霊長類)オナガザル科(狭鼻猿類)オナガザル属の哺乳類の総称。約20種があり、熱帯アフリカに分布。サバンナモンキー・ダイアナモンキーなど
かわらざる【瓦猿】 土焼の猿の像。「変らざる」の意にとって無事平安を祝うものとされた
木から落ちた猿 たよる所を失ったもののたとえ。「木を離れた猿」とも
ききざる【喜々猿】 大阪府堺で作られる土人形の一。手捻ビネりの猿を組み合せたもの
きざる【生猿】 まだ飼い馴らされない猿。野生の猿
きょうびえんるい
【狭鼻猿類】
サル目オナガザル科の猿類。左右の鼻孔は接し、尻だこがある。尾は長短さまざまで、巻きつくことができない。旧世界に分布
くくりざる【括猿】 布に綿を入れて作った猿の縫いぐるみ。着物・幟ノボリなどや絵馬堂に下げてお守りにしたり、念願の成就を祈ったりした
けうつぼ【毛靫】 表面に猪・猿などの毛皮をはった靫ウツボ
ゲラダひひ【―狒狒】 霊長目オナガザル科の猿。頭胴長は雄で約70センチメートル、雌で約55センチメートル。手足が黒いほかは全身褐色の毛で覆われ、雄の肩には長い毛が垂れる。標高2500〜4000メートルのエチオピア高原に分布、夜は断崖にかたまって眠る。(gelada baboon)(ゲラダは現地語で狒狒の意)ヒヒに似るが別属
げんえん【玄猿】 (顔が黒いからいう) 手長猿テナガザル
げんえんるい【原猿類】 サル目(霊長類)のうち、真猿類に対して原始的な猿類の総称。一般に小形で、顔面は被毛し、必ずどの指かに鉤爪があり、大脳の発達は低い。アイアイ・キツネザル・ロリス・インドリ・メガネザル科を含む。擬猴類
こうるい【猴類】 猿の類
こけざる【こけ猿】 (猿をおとしめて呼ぶ語) 群猿の中からはね出されてひとりになった猿。 愚かな猿。 汚れた、垢まみれの猿。また、痩せこけた猿
こころのさる【心の猿】 煩悩ボンノウの騒がしくしずめがたいのを猿にたとえていう語(「心猿シンエン」の訓読)
こざる【小猿・子猿】 小さい猿。また、猿の子。 小猿鉤の略。
こそん【胡孫】 猿の異称。椿説弓張月後編「賓雁の伴をうしなひ胡孫の枝に離れたるここちしつ」
このはざる【木の葉猿】 (木の葉の間に見えがくれする小猿の意か) 小さい猿。こっぱ猿。拾玉集1「柴栗の色づく秋の山風に梢を散らぬ木の葉猿かな」 郷土玩具の一。熊本県玉名郡木葉村(現、玉東町)から産する素焼の猿。
こめつきざる【米搗き猿】 玩具の一。木製で、糸を操ると猿が米を搗く動作をする
さご【さ子】 鹿・猿の胎児。黒焼にして用いると、血の道の妙薬という
ささのさいぞう【笹の才蔵】 福岡県博多・宮崎県佐土原で作る土偶。猿が裃カミシモに袴をはいた姿。壱岐には同じ姿を描いた札があり、いずれも疱瘡除ホウソウヨケという
しかざる【鹿猿】 広島県宮島に産する郷土玩具。宮島神社の鹿の背に猿の乗った土焼製のもの
しょうじょう【猩猩】 中国で、想像上の怪獣。体は狗イヌや猿の如く、声は小児の如く、毛は長く朱紅色で、面貌人に類し、よく人語を解し、酒を好む。 オラン‐ウータンのこと。 よく酒を飲む人。大酒家
しりだこ【髀】 猿の尻の、皮が厚くて毛のない部分
しんえん【心猿】 心にはたらく煩悩・妄念の制し難いことを、猿がわめき騒ぐのにたとえていう語
しんえんるい【真猿類】 サル目(霊長類)のうち、原猿類に対して高等な猿類の総称。広鼻猿類と狭鼻猿類とに大別
せんびきざる【千疋猿】 くくり猿を数多く糸で連ねたもの。女児の災難よけや芸能の上達などを祈るために鬼子母神・淡島アワシマ明神などに捧げる
そこう【狙公】 猿を飼う者。猿まわし。猿ひき
そこう【狙猴】 猿サルの異称
タイワンザル (サル目オナガザル科)台湾にだけ生息。ニホンザルよりはアカゲザルと近縁。動物園などで飼われていたものが遺棄され野生化。農作物被害に加えて、ニホンザルと混血してニホンザルの純系の集団が失われることが危惧される。和歌山県ではすでに相当の混血がすすみ、混血個体は和歌山市周辺のほか紀伊半島の南端でも観察される。研究者らは群から混血個体を除去することを県に求めている。
たかのみこ【高野御子】 日吉ヒエ神社の神使といわれる猿の異名。永久百首「高野御子いともあやしと見ましけり猿まろをしも引きたててとや」
たてさる【竪猿】 雨戸・開き戸などに装置し、上下に動かす猿 。上框カマチのものを上げ猿、下框のものを下げ猿または落し猿という。(建築用語) 横猿。
ちょうさんぼし【朝三暮四】 [列子黄帝](春秋時代、宋の狙公ソコウが、手飼の猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ暮に四つとしたところ猿たちは少ないと怒り、朝に四つ暮に三つとしたら大いに喜んだという故事) 目前の違いにばかりこだわって、同じ結果となるのに気がつかないこと。朝四暮三。 口先でうまく人をだますこと。
といみさき【都井岬】 宮崎県最南端、志布志シブシ湾東端に当る岬。山地が海に突出し、周囲は絶壁をなす。野生の馬と猿で有名
のうざる【能猿】 芸を仕込んである猿。芸をする猿
のぼりざる【幟猿】 端午の幟の下につけた括猿ククリザル。風が吹くにつれて竿を上り下りするようにした玩具ガング。宮崎・岡山の郷土玩具
はえん【巴猿】 (中国湖北省巴東県地方の渓流、巴峡の付近に猿が多いのでいう) 巴峡の猿。山の峡谷に鳴く猿
はじきざる【弾き猿】 竿に抱きつかせた紅布製の猿を下部に取り付けた竹発条タケバネで弾いて昇り降りさせる玩具
はなざる【鼻猿】 (長野県伊那地方でいう) 猿の一群の頭領。木曾駒ヶ岳付近では「めみ」という
はなれざる【離れ猿】 群れを離れて単独で行動する猿。独り猿
ハヌマーン
【Hanum nヒンデイ】
ヒンドゥー教の神猿の名。風神バーユと天女アンジャナーの子。叙事詩「ラーマーヤナ」で、猿の軍勢を率い、ラーマを助ける。民衆の守護神ともされる。ハヌマット。
びこう 猿。ましら
ひとりざる【独り猿】 猿は群棲の習性をもっているが、その群れから離れてふつう1匹だけでいるもの。ほとんどの雄は成育すると群れを離脱すると見られる。離れ猿。一つ猿。一匹もの。入道
ひよけざる【日避猿】 広くはヒヨケザル目(皮翼類)の哺乳類の総称。分類上、モグラ目とコウモリ目の中間とされ、サル目ではない。フィリピンヒヨケザルとマレーヒヨケザルの2種がある。体長40センチメートルほどで、体側に飛膜が発達し滑空できる。体色は灰色、黄白色の斑。森林にすみ、夜行性で、木の葉・花・果実・昆虫を食べる。クルゴ。コウモリザル。フライング‐リーモア
まさる【真猿】
まし【猿】 さる。ましら。紫式部集「猿の木の葉の中よりいと多く出できたれば」
ましら【猿】 サルの異称。まし
もっこう【沐猴】 猿の類
沐猴にして冠す [史記項羽本紀](故郷を懐かしんで中国統一の大業を疎んじた項羽を嘲った言葉から) 猿が王冠をかぶっているように、所詮、人君にはふさわしくない人物だというたとえ
もりそせん【森狙仙】 江戸後期の画家。名は守象。初号、祖仙。大坂で活躍。初め狩野派を学び、のち円山派に接近、精細な写実画風で猿・鹿などの動物画に妙を得た。(1747〜1821)
モンキー【monkey】 猿。 (建築用語)杭打ちに用いる落し槌。 モンキー‐スパナ・モンキー‐レンチの略
やえん【野猿】 野生の猿。また、猿。狩人は「猿」が「去る」に通じるとして忌んで「野猿」という
やまこ【山子】 山中にすんでいるという妖怪。山の精気の凝ったもの。また、猿の年を経たもの。〈和名抄18〉 投機などの山事ヤマゴトをすること。また、その人。
やまざる【山猿】 山にすむ猿。 山に住む人を礼儀を知らず洗練されていない者としてあざけっていう語
るいじんえん【類人猿】 一番高等の猿類。チンパンジー、ゴリラなど(a monkey; an ape )