アホもカシコも一緒くた

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 明石市の高校入試総合選抜制度は各高校の学力レベルが均等になるように、合格者を各高校に振り分けます。これは第二章で述べた通りですが、これは学校間の学力格差をなくす目的で行なわれています。

 しかしながら、このような総合選抜制度をとっている地区は、珍しい方なのです。(総合選抜を導入していること自体が珍しいのですが)どちらかというと、生徒の居住地を優先して考慮する地区の方が多いようです。兵庫県では西宮や尼崎がそうです。

 余談ながら申しますと、居住地の考慮が優先ということは、希望の高校の近くに住めばその高校に入学できる可能性が非常に高いわけです。つまり学力の地域差を生じさせる危険性があり、これはこれで問題だと考えます。

 話を明石に戻します。明石の総合選抜は各高校の学力均等が基本ですから、同レベルの生徒が入学してくる単独選抜地域の高校とは異なり、一つの高校に上は難関国立大志望の生徒から下は中学レベルの学習内容さえもどれだけ理解しているか定かでない生徒まで、様々な学力の生徒が在籍しています。

 「アホもカシコも一緒くた」というわけです。当然、単独選抜校でも子供たちに学力の差は生じるでしょうが、明石総合選抜校では、もっと極端に顕著にその差が生じます。先生方は様々な学力の生徒の指導に苦労します。

 こうなることは、当初に総合選抜導入を推進された方々もわかっていたことでしょう。ですから当初から対策が検討されていて然りですが、明石市はこのことについては何も考えていませんでした。「学校内の学力差をどうするか?」ということを計画の一環として考えておかなければならなかったと考えます。しかし、そんな考慮はどこにもありませんでした。これが明石総合選抜の最大の失敗だった思います。

 この点について、総合選抜導入に関わった方々には大いに反省して欲しい点ですが、「アホもカシコも一緒くた」といっても小中学校のように極端に学力の差がある子供が同じ教室に同居しているというわけではありません。一応はどこの高校も進路別、学力別のクラス編成を行なっています。

 明石南高校は、平成元年に学力別クラス編成についての研究報告書を文部科学省に提出しています。総合選抜が始まったのが昭和50年ですから10年以上もの間、何もしていなかったのかと思いましたが、それはともかくとして、生徒の学力分布や、定期試験によるクラス編成替えについて、事細かく分析しており、先生方の努力がうかがえます。

 しかしながら、生徒の学力差があまりにもバラエティーに富んでいてクラス編成は困難を極めるのではないかと思います。

 少し古い資料ですが、昭和52年に行なわれた同高校の先生方を対象とした調査では、「総合選抜導入で学習指導がしにくくなった」という回答が62%に上りました。(かわらない 25%  指導しやすくなった 13%)。

 私の明石南高校時代の思い出を申しますと、クラスの環境はあまりよくなかったように思います。高3の時私は約40人程度の理系大学進学クラスに所属しておりました。そんなクラスが2クラスありましたが、国公立志望はクラスで10数人以下だったと思います。私も国公立大を志望していましたが、私立志望でセンター試験(当時は共通一次)の勉強は関係ない者、遥か低偏差値の私立文系に志望を変え、物理の時間に内職で日本史の勉強をしている者が、教室にゴロゴロといて、どう考えても学習方法が違うのではないかと思っていました。

 「せめて私立文系に文転した奴とはクラスを分けてくれないか?」

 高校の時、そんな風に思いました。何も彼らのことを嫌っていたわけでないのですが、全く受験に関係のない授業で内職をせっせとやっている彼らを見て、それが彼らのためになると思いました。

 今もそうなのではないでしょうか? いやもっとひどい。明石南高校の大学合格実績をみればある程度、推測できます。

 もし明石が単独選抜であったならトップ校に少なくとも30人程度の京阪神大志望(あるいはその程度の学力)の生徒が入学したとして、その彼らが総合選抜で明石6高に分散し1校5人程度になっているわけですから、その5人のためのクラスを設けてもいいと思います。1クラス40人程度を維持しなければならないとか、教室の数、先生の数の限界などで、そうもいかないのでしょうか?

 総合選抜維持派の先生が「総合選抜校は単独選抜校とは生徒の層が全く異なる。1クラス20人学級にし、先生の数を倍にしていてくれていれば、学力別、進路別クラス編成もやりやすい」という意味のことを言っておられましたが、実現可能かは別として、総選を維持するならこの意見は賛成です。

 総合選抜の困難な状況下で、補習授業や特別クラスを設けて頑張っている先生方もおられると思いますが、生徒の層や大学合格者の分散状況などを客観的に分析し、単独選抜にすれば簡単に解決するようなことがあるのかもしれないと思うのです。


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