「総選をたたえる会」レポート

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 掲示板の方で活発に意見しておられる明南OBさんより、先日行われました「総選をたたえる会」についてのレポートが届きましたので、ここに掲載致します。

 先日、「総選をたたえる会」に参加して参りました。本当の名前は「総選をたたえる会」ではありません。開催の要領は以下の通りです。

第25期兵庫県民大学「今、学力とは何か」−総合選抜制度をとおして−
開催日時:2002年11月30日(土) 受付13:30 開会:14:00
開催場所:サンピア明石5Fフロイデホール
演者:神戸の高校の先生1名(座長)、中学の先生2名(明石と西宮)のパネルディスカッション形式
主催:明石市教職員組合(明教組)

 参加者は100名を超えていたと思います。学校の先生が多かったと思います。
内容はパネルディスカッションということなので、総選の「良い点」「悪い点」の話かと思いましたが、これはまさに「総選をたたえる会」でした。ただ、明石の中学校の先生は、総選の「悪い点」をしっかりと認識している様子でした。

ではこの「総選をたたえる会」での先生方の発言をまとめ、私の主観で反論します。

1.神戸某高校の先生の発言

兵庫教育委員会が述べる「単独選抜の長所」を徹底批判していました。

(1)自己の志望する学校を目標に努力するので学習が真剣になる。(兵庫教育委員会)
→中学3年3学期が受験中心となり、有意義なクラス活動ができない。

明南OB:これについては、100%同意。ただ、たかが公立高校受験ごときで、受験受験と大騒ぎするのもおかしいと思う。単独選抜地区でも、マジメに受験勉強しているのは、クラスに10名もいないと思います。ちなみに、私の頃、総選高校にギリギリ合格の生徒や低レベル私立受験の生徒に対しては、成績上位の生徒が勉強を教えていました。総選地区において高校受験は、クラス対抗の団体競技の感がありました。これは総選の一番良いところかも知れません。

(2)校内での学力差が少ないので、学習指導がしやすい。(兵庫教育委員会)
→私が教鞭をとっているU高校(偏差値60)には高校入試数学で100点の生徒が入学してくるが、入学3ヶ月で学力格差が拡大する。夏休みには、落ちこぼれ生徒を対象に数学の補習を行わなければならない。

明南OB:中学時代に非常に優秀でオール5でも、高校入学してすぐに落ちこぼれる子は沢山います。中学教師は、そのような内申稼ぎに神経すり減らし、頭の切れ味が鈍くなった生徒をキチンと見抜いて、2ランク下のS高校(偏差値53)に無理矢理にでも行かせるべきです。高校数学のレベルは、中学数学とは比べものにならぬ程に奥が深く、中学時代に教科書中心でしか勉強していない生徒は、落ちこぼれても当然です。進学高校に行って、一流国公立大学を狙おうとするならば、教科書レベルを遥かに超えた灘、甲陽、白陵(兵庫県の私学進学校)あたりの味のある入試問題で勉強する必要があります。最低でも白陵程度の問題なら60%は得点できるようにすべきです。そもそも、公立高校の入学試験にも問題があります。あまりにも、簡単すぎます。長田高校(神戸のトップ校)と高塚高校(同底辺校)の入学試験が同じなんてことがおかしいのです。

(3)高校の特色化に有効である(兵庫教育委員会)
→U高校には、中学時代に学級委員長をやっていたような優等生ばかり入学してくるので同じような生徒で高校に個性がない。

明南OB:学力レベルが同じなのだから、生徒も同じような連中ばかりで当然です。高校の特色化は、高校教師と生徒とが長年かかって作るもの。U高校は、特色のない高校だと言ってしまうことが、U高校の大学進学実績の凋落を象徴しているのではないでしょうか?(京阪神大学:4名、関関同立:136名)。入学時、同じ偏差値の加古川西に完璧に負けています。

(4)希望の高校にいける(兵庫教育委員会)
→U高校には、11月時点で800名もの志望者がいるのに、実際に入学できるのは400名(最近280名)である。単独選抜地区のほうが希望の高校に行けない生徒が多い。

明南OB:総選地区では、努力して勉強できる生徒ほど明南や明高に飛ばされやすいのです。単独選抜地区において、「希望の高校にいけない」のは、本人あるいは親の責任です。

 この先生は会の終わり頃に「総選と単独選抜は制度が違うのに、高校の先生が受け持つ生徒数は同じ。総選の方が幅広い学力の生徒が入ってくるのになぜ同じなのか?総選開始時に1クラス20人程度を実現していてくれていればよかった」と言っておられ、これについては、1クラス20人が現実的に可能かどうかはともかくとして、総選導入時に高校内の体制について何も考えなかったという点においては、同意しました。

2.西宮某中学校の先生の発言
 中学時代に単独選抜学区のピリピリした受験勉強の雰囲気を体験し、今思えば異常だった。そして教師になった後、総選地区である西宮に配属となり、中学生がのびのびとした中学時代をおくっているのを見て、総選とは非常に良い制度だと思った。

明南OB:先生の出身地区は、合格倍率2倍という公立高校としては珍しい高校が存在する激戦区ではありませんか?こんな極端な地区を例に挙げ、単独選抜を批判するのはおかしい。また、西宮地区の総選は居住地優先であり、それに私学が多いので成績の良い子は総選を嫌って私学に入学する率が高い。これらにより学力における地域格差、経済格差が生まれており、「総選=のびのび教育」と安心しているわけにはいかないのではないですか?

 次に1992年(古い!)における西宮と神戸第2学区の国公立、関関同立(甲南)の合格実績を提示して、総選地区の大学合格実績は単独選抜に勝っている。

明南OB:14年度における西宮総選高校の京阪神大学進学率は、神戸第2学区の3割、明石の7割なのです。

 単独選抜地区においては、高校入学時点でほとんど人生が決められてしまう。なぜなら、神戸第3学区における底辺4校からは、関関同立に一人として行けないからである。総選地区なら、すべての高校からまんべんなく、国公立大学、関関同立に行ける。

明南OB:大学進学で人生が決まる筈がないといいたい。学歴とか学力は人生を上手く渡って行く為の道具に過ぎない。また、総選高校において、有名大学に進学できる可能性があるのは、入学時上位50%(オール4)で、そのうち3年間マジメに勉強した10%だけです。 関関同立合格者数→加古川:600名、明石:300名

3.明石の中学の先生の発言
 明石総選の歴史を語っていました。とにかく、新設校の明北、明西を底辺高校にさせないということで、総選は始まったのです。当初、心ある先生方は、明石の学力低下の恐れを非常に心配されていたそうです。
 昭和50年の総選開始初期、明石からも加古川東に進学できた(昭和53年まで)。しかし、そのような生徒も明石の高校でキチンと育てようということで、越境入学は止めてもらうようにしたとのことです。

4.当会での明南OBの発言
 会終了15分ほど前に会場から意見、質問が求められたので私は以下について発言しました。
(1)明石の大学合格の低迷(加印地区との差)に驚いたこと。
(2)塾の業者テストにおいて単独選抜学区の中学生との学力の差が明らかであること。
(3)明石総選初期の頃は高い合格実績を挙げており、総選そのものが悪でないこと。
(4)今後、改善がなければ、総選廃止しかない。

5.以下、当会終了後の明石の中学の先生との個人的な雑談
 当会終了後、明石の中学の先生が私に「やはり大学合格率に拘るのですか?」という問いかけをして来たので「そんなことはありません。それが人生の全てとは言いません。ただ、関関同立文系の合格は英検2級クラスの学力です。大学合格率が高校がどれだけ生徒の学力向上に努力しているかのバロメーターになることは否定できません」と言いました。そう言うとその先生も納得しておられるようでした。
 先生は、明石総選高校の大学合格実績が平成13年、平成14年に極端に低迷しているが、これは総選だけが原因ではないとおしゃっていました。私は「平成4年から始まったゆとり教育にも原因があるかもしれない」と返答しました。
 総選がこのようになったのは、明高の先生が総選の生徒のことをバカにしていたからです。明高の先生は「以前の明高生は、放っておいても勉強したのに、総選の生徒は全然勉強しない」と言っていたそうです。それに引き換え明北の先生は、素行の悪い生徒にも生活指導キチンとしていたし、勉強も熱心に教えていたそうです。
 私は全くそのとおりだと思いました。明南の場合もマジメに授業しない先生が沢山いました。(我々が授業中騒ぐのも悪いのだが)

6.明南OBの私見
 総選がこのように失敗してしまった原因は、明教組(または日教組)、明石市教育委員会が、末端の教師、保護者、生徒に対して、「総選の目的・意義」「目標設定」「目標達成のための方法」について十分な説明しなかったこと、彼らが理解し納得していなかったことだと思います。総選に反対する者に対して、「学歴主義者」「受験戦争煽動者」「差別者」のレッテルを貼り、総選に対して何も言えない雰囲気を作ってしまったのです。
 小学校の先生、中学の先生、高校の先生が「総選にしたら生徒が勉強しなくなる。なにしろ生徒は怠け者ばかりだ。しかし、俺たちが無理やりにでも勉強させて、学力を上げてやる。そして、明石6高を全校 明石高校(かってのトップ高)にしてやる」という共通認識を持って指導に当たっていれば、総選導入から27年後の明石の人口は、40万人くらいになっていたかもしれない。白陵なんて、昔のアホ高校のままだったかもしれません。


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