明石の子供たちの学力低下

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 第一章で明石の高校の一流大学合格実績が極端に少ないことを紹介しましたが、この問題は、数量的な見方をすれば、あまり大きな問題ではないかもしれません。なぜなら明石と加古川の一流大学の合格実績の差はたったの50人です。極端なことを言えば、その50人の教育問題ということで、特別な措置を取れば解決できることかもしれません。

 それよりももっと問題にすべきは明石の子供たちの学力が全体的に低下していることです。

 では、ここで私が明石の教育について調査する中で、とある明石市内の塾経営者の方から戴いたメールを一部抜粋して紹介します。

明石市内塾経営者の方のメールより抜粋(2002年4月)
 特に3年前から高校生のレベルが一段と落ちており、今年の大学進学者数はかなり落ちたのではないかと思います(実際に驚くべき進学実績が低下しています)。
 3年前より総合選抜制で10人程度しか不合格者がでない状況が続いた為、中学生が以前にまして勉強しなくなりました。クラスで真ん中に位置する中学生になら「明石6高※に合格しないぞ」と言って、少し尻を叩けば必要に迫られて勉強するのですが、今では主要5科目に2があっても合格する状況なので、真ん中の生徒は安心しきって勉強をしなくなりました。
※明石の総合選抜高校の総称として「明石6高」あるいは「明石6校」といいます。

 第三章で私が述べました「ぬるま湯のような中学生活」が実際に起こっているのです。少子化により県立高校の合格枠が拡がっているということもありますが、少なくとも明石には単独選抜学区のような「それぞれのレベルにおける戦い」(第三章参照)はありません。

 中学時代に上位6割に入っていれば確実に明石の県立高校のどこかに潜り込める…。そんな総合選抜下の緊迫感のない油断した状況の中、明石の子供たちの学力は中学時代からどんどん低下しているのです。

 では、そんな低学力の子供たちが入った高校ではどんなことが起こっているでしょうか?

 明石6高のひとつに在学する現役高校生の生の声です。理系クラスに中学校で習う球の体積・表面積の公式を忘れている者、三角形の相似の条件を十分に理解していない者といった、中学レベルの学力すら十分に身についていない者が多くてびっくりしたとのことでした。

 データ的にも驚くべき状況が表れています。私が調査した明石南高校の資料によりますと、入学前の宿題から出題した「英語の課題テスト」の得点分布は、100点〜30点に分布し、30〜40点に多くの生徒が分布しています。中には0や10点の生徒もいます。

 中学の英語で、30〜40点ということは、英単語の数としては、500個以下しか覚えていないでしょうし、It is difficult for me to stop smoking.といった簡単な不定詞構文すらも理解できないでしょう。これではもう高校の授業にはついていけません。

 公立普通科高校の授業は、実際は中学時代に主要5科目オール4以上でないとついていけない内容だと思います。明石南高校の資料から察するに、かなりの数の生徒が入学間もなくに落ちこぼれに近い状態になっていると考えられます。

 落ちこぼれの3年間は、落第の不安に悩まされながらの高校生活。高校資格は貰ったものの、ろくな就職はありません。こんなことなら工業高校に行って専門技術を身に付けておけば良かったと、後悔しても後の祭りというものです。

 明石では、中学時代に怠けたツケが、大学受験、就職試験でやって来るのです。


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