第一章では、明石と加古川の県立高校の大学合格実績を紹介しました。紹介したのはデータの一部で、少々乱暴な捉え方だったかもしれません。もっと多くのデータは追々紹介することします。今の処は一応ご納得頂きますようご容赦願います。歴然とした差があるのは事実です。

　それにしてもなぜこれほどの差があるのでしょうか？　加古川に住む親たちが特別教育熱心なのでしょうか？それとも明石に住む親たちが教育不熱心なのでしょうか？

　あるいは、明石は勉強以外にもっと重要な何かがあり、それが評価し得るものであり、私が嘆かわしい事実と悲観するのは間違っているのでしょうか？

　これは調べなければならない、そう思いました。明石を愛する一市民として何ができるか…？

　まず、私は高校教育における明石と加古川の明らかな違いからアプローチすることにしました。明らかな違い…、それは高校入試制度にあります。

　毎年、明石の高校の合格発表では異様な光景が繰り広げられます。普通、合格した子は大喜びし、不合格だった子はがっくり肩を落とすのですが、明石では、合格した子の中に喜んでいる子とがっくりしている子の２通りがあるのです。

　この言葉をよく聞きます。明南とは明石の不人気高校・明石南高校の略称です。明石では高校に合格しても志望する高校に入学できるとは限らないのです。志望校ではない高校に「飛ばされる」わけです。

　明石にはそんな独特の高校入試制度があります。それが総合選抜です。明石市民には馴染み深い言葉です。

　総合選抜では１つの通学区域内にあるすべての高校を１つの高校と考えて願書を受け付けて選抜を行い、合格者を決定し、いずれかの高校に合格者を振り分けます。このような高校入試制度を取っている地域は、現在、全国で７県にあると聞きます。(内３県は廃止の方向で検討。後に詳しく述べます） 明石では、明石、明石南、明石北、明石西、明石清水、明石城西の６校が総合選抜の対象になっています。（明石商業は含まれません）

　逆に１校を受験する選抜方法を単独選抜といいます。それぞれの高校が独自に入学願書を受け付けて選抜を行い、合格者を決定します。勿論、加印地区（加古川、加古郡、高砂市）はこの方式を取っています。総合選抜の意味がわからなかった国立以外の公立高校の出身者の方は、おそらく単独選抜校の出身です。そういうと簡単にわかることでしょう。

　総合選抜では、居住する地域も考慮されますが、明石では特に「各高校の学力均等」を重視しているようです。その結果、学力調整のため、毎年、約400人が志望の高校に行けないと言われています。

　明石の高校受験では、一応出願時に志望校を書くことになっています。当然、人気のない高校には、志願者が少なくなります。昭和55年頃は、久しぶりに新設校が出来た時期でした。現在の明石清水高校です。先輩のいない新設校は人気が低くなりがちです。伝統校の明高、「勉強の北」と言われた明石北の人気が高かったようです。因みに上半身裸で5分完走の「スポーツの明南」は人気が低かった。当時はそんな志望校の集中が激しく、今より沢山の受験生が飛ばされていたと思います。

　特に勉強できる生徒は飛ばされやすいと考えられます。できる子に「どこでもいいから」という子は少ないということは感覚的にわかるでしょう。できる子の志望は少しでも条件の良い高校へと集中しやすく、その分、飛ばされる子も多いわけです。

　勉強ができる生徒が飛ばされてがっくりしているのに、中学でろくに勉強もぜず滑り止めの私学すら落ちた子が、志望校に合格して無神経に大喜びする。そんな不条理が明石にはあります。

　できる子曰く、「先生、あんな奴が志望校に行けて、何で私が飛ばされたん？」
先生曰く、「あんたは成績がええ。あんたやったら飛ばされてもしっかり頑張れる」
という具合です。

　「15の春を泣かせない」といいますが、明石では「400人が勝手に進路決められて、世の不条理さに泣いている」、「15の春に世の中の不条理さを思いしらされる」 のです。

　単独選抜では、生徒は一か八かで目標とする１高校にチャレンジします。万が一、不合格となってもそれは「納得できる涙」。自分の努力のなさ、甘さを思い知らされ、「次は大学受験で勝ったる」と意欲を燃やすことでしょう。個人的な意見ですが私はそう思います。

　総合選抜。これが明石の一流大学合格実績が低い原因なのか？今後、少しずつ検証して行くことにします。