大学院へ行こう

はじめに
 日本語教育を始め、経験年数はどんどん増えていくが、ふとある時に立ち止まってみると「これでいい
のかな?」と思うことがありました。私の場合、職場でコンピュータの担当者をしていることもあり、コンピ
ュータを取り入れ、いろいろなことを試した。それなりにうまくいったこともあった。だけどなんとなく自分
の中で「物足りない」「これでいいのだろうか」という気持ちが起こり、やはり自分を指導してくれる人が
いないとだめだと思うようになり、大学院にいかなきゃと思うようになりました。
 しかし仕事もあるし、家庭もあるし、現実には無理だと思っていたのですが、ある時、インターネットで
放送大学に大学院があることを知り、資料を取り寄せてみました。これがことのはじまりです。

入試
 思い起こせば2年前(2003)、秋に資料を取り寄せ、学費や試験のことを調べて、「これならがんばれば
なんとかいけるかな」と研究計画書の作成に取り掛かり、必要書類を送り、あとは返事を待つだけと思
いながら、仕事をしておりました。
 研究計画が通ったようで次に2次試験を受けることになり、学習センターへ行き、小論文と英語のテス
トを受けました。その後、千葉の幕張にある本部まで行き、面接も受けました。面接官は現在、論文の
指導を担当して下っている杉浦先生と姫野先生でした。緊張しながらも無事面接も終わり、後日、合格
通知が届いたときにはもうもどれないなあと思いました。

放送授業
 普段はスカイパーフェクTVで放送授業を見て、郵送されてくる課題を提出します。昨年は前期、後期で
合計9つ登録し、なんとか全部、単位をとることができました。 私が驚いたのは授業を担当している先
生がその道では本当のエキスパートの先生方ばかりで固められていることでした。登録して教科書が送
られてきて、授業を見るのが楽しみでした。どの教科も楽しく視聴できました。普段は昼に仕事をしなが
ら、空いた時間に教科書を読んでおき、夜、ビデオに撮った放送授業を教科書を見ながら視聴していま
した。難しい内容もありましたが、何度も教科書を読んで理解するようにしていました。

 一般的に大学で講義形式の授業を受ける場合、授業に集中しないで、聞いたりしていることもあると
思います。しかし私の場合、家族がテレビを見ているので、テレビを使って視聴することはできません。
自宅のパソコンにテレビチューナーとビデオデッキをつないで視聴していたのですが、ヘッドフォンを耳
につけ画面を見つめなければならないので、かなり集中して勉強できたように思います。自分が勉強す
るのに邪魔するものはいないから主体性を持って勉強する人にとっては最適かもしれません。生涯学
習の時代とも言われていますが、情報化が進み、勉強を続けていかないと古い知識だけでは解決でき
ないことが起こったりします。これからは機器を使った学習方法もどんどん進んでいくような気がします。

授業名
担当講師
感想
国際社会研究T阿部 齋  久保文明アメリカの社会についていろいろ知識を得ることができた
文化人類学研究江渕一公 小野沢正喜フィールドワークの大切さがよくわかる授業です
情報化社会研究柏倉康夫素晴らしい授業です。情報化社会に生きる私たちは必修です!!
総合情報学中島尚正 原島 博 佐倉 統パソコンを使う人だけでなく、多くの人が受けてほしい内容です
情報教育論菅井勝雄 赤堀侃司 野嶋栄一郎教育に機械を使おうという人は是非、受講すべき
比較文化研究原 ひろ子ジェンダーを考えるいい機会になりました
国際関係論小和田恆 山影 進雅子さまのお父様ですが、実務の経験から素晴らしい内容です
日本文化研究高木昭作江戸時代の奉書などの研究 いろんな形式があったんですね
地域文化研究U浜口允子 川勝 守 吉田光男東アジアについての研究で私は主に韓国について勉強
発達心理学内田伸子 児童心理、教育心理のいい勉強ができました
教授・学習過程波多野誼余夫 永野重史 大浦容子
「学ぶ」とはどういうことか。根本的に考えられた内容です
学校システム論竹内 洋
教育を行う「学校」とは何かを考えさせられる内容です

単位認定試験
 通常、前期後期の終わりに単位認定試験があります。だいたい期の途中で通信指導が郵送されて
きて1000字程度のレポートなどの課題がありますが、それに通れば単位認定試験が受けられます。
結構大変ですが、放送授業を視聴しながら自分の意見もしっかり書いていけば通るものだと思いま
す。期末の単位認定試験も論文形式の問題が多いですが、習ったことを元に自分の意見も取り入れ
ながら書いていけば単位はもらえます。

 私も気合を入れて書きまくったのに評価があまりよくなくてがっかりしたこともありました。でも無事、
登録したものは全部単位が取れて一安心。

論文指導
 論文の指導は指導担当の先生によっても違うと思うのですが、学習センターに集まり、ゼミ形式で
行われます。私は東京まで行くのは時間的にも金銭的にも無理ですから、いつもインターネットのテレ
ビ会議で参加させていただきます。インターネットを利用した遠隔授業というやつですね。これがなけ
れば大学院なんて私には無理でしたからね。

 ソフトはFujitsuのJoin MeetingWEBカメラをパソコンにつけ、ヘッドセットを頭につけ、ゼミのあ
る時間に接続します。センターに集まっている人の様子も見えますし、こちらの様子もあちらでモニタ
ーしています。遠く離れているのに集まって指導を受けられます。時代は本当に変わったんですね。

 私は日常的にメッセンジャーを使っているのですが、地球の裏側の教え子や同僚ともテレビ電話と
いう感じでやり取りしていますが、ちょうどそれと同じような感覚ですね。

 レポートはメールの添付書類で指導を受ける前に担当の先生に送っておきます。指導当日はそれ
をもとに詳しく指導を受けながら仕上げていきます。

論文指導中の画面です


机の上にある私のノートパソコンです。右はデジカメをWEBカムとして使っています。

 論文指導中のパソコンの画面をキャプチャーしたものです。左上に自分の姿が映っているのですが、動作中にキャプチャーすると映らないようですね。左中央の方は私と同じく自宅でパソコンを使ってアクセスされています。左下は先生と本部へ直接指導を受けに行っている方です。画面右は予め先生にメールの添付書類で送っておいた自分のレポートや論文です。
ネットワーク利用による遠隔授業

 放送授業の中でとった「情報教育論」-教育工学のアプローチ-第9章「ネットワーク利用による遠隔授業」で学んだことですが、早稲田大学の野嶋栄一郎教授は日本の高校進学率は100%に近く大学進学率は限りなく50%に近づいていて、日本はユニバーサルアクセス型に突入していると述べています。言葉をかえるとかなり多くの人が大学へ進学する時代になっていて、少子化、生涯教育との関連もあり、高等教育のシステムが多様化しなければならない時代を迎えているということです。

 いったん社会に出た後再び大学に回帰してきた学生など多種多様な動機を持った学生の比率が高くなり、就学目的はより鮮明になり、個別化され、このような多様なニーズに対応するには業時間の多様化個別化された自己学習方式の導入通信機器、コンピュータ・教育機器などの利用性を高めるため教材の映像化、デジタル化などへの要望が高まってくると野嶋教授は述べられています。

 最近は多くの大学でITが活用されている状況になっていると思いますが、ますます普及するのではないでしょうか。私のように仕事をしながらでも、時間を気にすることなくマイペースで進めていくこともITを利用した学習環境では可能になってきます。私の論文のテーマは「日本語教育での有効なパソコン利用」です。そのテーマで研究を進めていくうちに機材を使った授業やインターネットを使った遠隔教育などについても勉強することができました。何より論文指導を通じて、「教えること、学ぶこと」について深く考えさせられたことが自分にとっての大きな収穫だったような気がします。教育とは何ぞや?という大きな話になってしまいそうですが、学習者にいい教育を提供したいと思えば、必然的に多くの人と交わり意見を交換したり、批判を受けたりしなければなりません。そうしてより洗練されたものが出来上がっていくような気がします。そのためにどんどん従来のメディアも含め、ITを活用して研究を進めていく必要性を感じます。

 論文を仕上げている時にふと思ったのですが、TV会議室システムを利用して論文の指導を受けていること自体が自分の研究していた「有効なパソコンの利用」だと感じるようになりました。遠く離れたところでゼミが行われ、とても参加することができないのに、ITはそれを可能にしてくれます。NOVAの駅前留学とかお茶の間留学といった感じです。コンピュータで何が出来るのか、どんな機能をどんなところで活用できるのか考えていかなければならないような気がします。

 メールでレポートを送っておき、指導の日時を連絡してもらい、あとはインターネットで時間が来たらパソコンをオンにしてシステムを起動すれば、すぐに授業が開始できます。はじめはいいシステムだなあ〜とか感心していましたが、だんだんTV会議システムを利用していることを意識しないで自然に先生や他の学習者と双方向的にやり取りをしているのだと感じました。IT活用というのは使っていることを感じさせないのが本来の役目という気がします。ユビキタスコンピューティングという言葉がありますが、一歩一歩近づいて来ているのでしょうか。
 時間的・距離的制約から解放されて、勉強したい人が勉強できる時代になったのだと思います。

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