社会的構成主義

 ここ数年で授業の形態に変化があるように思います。どんな理論に基づいて授業が行われてきた
のか考えてみたいと思います。

構成主義による学習環境
社会的構成主義による学習環境
年代
〜90年
90年〜
提唱者
ピアジェ(1896〜1980)
(スイスの児童心理学者 ジュネーブ大学、ソルボンヌ大学
でも活躍 人間の知的発達の研究で大きな成果を残した人)
ヴィゴツキー(1896〜1934)
(ロシアの心理学者 知識獲得の過程における言語の役
割を明確にし、子供の発達が社会性にあると考え、コミュニ
ケーションの大切を強調)
キーワード
シェマ(Sheme)同化(assimilation)調節(accomodation)均
衡化 自己中心性 発生的認識論 認知発達理論 個人的
構成主義
社会的相互作用 最近接発達領域(zone og proximal
deveropment) 外言 内言 知的行為の多段階形成理論
 社会的構成主義
共通点
二つの学習理論の共通する部分は名前のとおり構成主義であるという部分です。知的発達の過程は下位の構造を積み重ねていき、次第に高い水準まで引き上げられていくという部分では共通しているものと考えられているようです。しかしピアジェが生得的に発達していくという立場をとるのに対してヴィゴツキーは「発達の最近接領域」の理論による教育の重要性を説き、名前のとおり社会的な要素に主眼を置いている部分に大きな違いがあるようです。
学習活動
刺激-反応を基にしたドリル
個人が能動的な活動を通して知識を構成していく学習感 
グループ活動 協同学習 社会的相互作用による学習感
コンピュータスタンドアローン型 ローカルネットワーク
ドリル・シミュレーション型CAI
マルチメディア型 インターネット
ネットワークを利用したグループ研究

 上記の表は構成主義と社会的構成主義を簡単に比較したものにコンピュータに関することを加えた
表であるが、私自身が学習理論にコンピュータも深く係わっているので追加しました。

 ご覧のとおり大きく1990年頃を境に変わってきているように思います。文部科学省の学習指導要領に
も大きく係わっている部分で豊かな人間性や社会性を持ち、自ら学び考える力を育成することに主眼を
置いています。つまりグローバリゼーションの進む国際社会に生きるための国際感覚を身に付けたり、
生きるための力を付けることが重要視されているように思います。そのためには上記の社会的構成主
義に基づいた学習活動を展開していくことは意義のあることだと思います。

 日本の小、中、高等学校では学習指導要領に基づき授業が行われていますが、留学生に対する日
本語教育でも大いに参考になる部分で異文化を持った学習者に豊かな人間性や社会性を持ち、グロ
ーバリゼーションの進む国際社会の中でたくましく生きて、国と国の架け橋になることのできる人材を育
成していくことは意義あることだと思います。

  


 上記の図は大阪大学大学院の菅井勝雄教授が一部加筆して社会的構成主義の学習理論を図示したものですが、知識が習得される段階を3段階に分けています。私が重要だと思うのは「学習」と現実世界での「経験」です。菅井教授はアドバンスレベルでは最後のエキスパートレベルとふかく関わることから学校外での現実世界での経験から戻り再度学習活動を進めるルートを加えていらっしゃいます。
図だけではちょっと抽象的なのでもうちょっと具体的に日本語教育にあてはめてみます。
 
授業形態
 教師の役割
学習活動
初期レベル
教科書を使って、たくさんの語彙や文型を一斉
指導による形態で知識を積み上げていく段階
指導者
文型積み上げ式の教科書の学習
 アドバンスレベル
学習者が能動的に主導権を握りグループ学習を
中心に協力し合い学習を展開していく段階
コーチや師匠的
な役割
グループでの活動を中心に学習
エキスパートレベル
学習者がアドバンスレベルでの知識をもとに現
実の世界で自らの力で多くの経験を積んで行く
段階

 従来、市販されていたテキストは文の構造に着目して初級段階から順次積み上げていくタイプのもの
が主流でした。しかしコミュニカティブな活動を取り入れたテキストも徐々に増えて、実際に日本人の会
話に近づけるように工夫されたものも多く出ているような気がします。現在ではグループ活動を中心にす
えた教材もあり、課題を達成するためにグループで協力しながら共同で作業を進めていく活動を扱った
教材も多くなったように思います。
 
 私がプロジェクトワークとして行ってきた活動もすべてこの学習理論を応用したもので、初級レベルで
積み上げてきた知識をアドバンスレベルで現実の社会世界と関わりながら、また自分たちの力で達成
感を味わいながら活動を進めているように思います。より確実なものとして定着させていくことができる
ようにアドバイス役として教師は存在しますが、同じ土俵で共同しながら作業を進めていくことは学習者
中心の活動で学習者が力強く生きていくための知識や知恵をつける訓練になっていると思います。

ちょっとまだ工事中の部分がありますが、とりあえず、アップします
 

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