さまざまな教授法

 教員養成の授業で教授法についての話をする機会もあるので、ちょっと今までパワーポイントで
まとめてきたものもあったので、教授法について書いてみます。教授法には様々なものがあり、そ
の学習理論も様々ですが、多くの教育機関で行われているオーディオリンガル法とコミュニカティ
ブ・アプローチを特に取り上げて考えていきたいと思います。



 外国語教授法もいろいろなものが提唱されて、そのデモンストレーションをやっているビデオなども
市販されるようになりました。それぞれの教授法のもとになっている理論はそれぞれもっともなことが
書かれています。現在、多くの日本語教育機関ではオーディオリンガル法的な授業にコミュニカティ
ブ・アプローチの手法を取り入れたことも併せてやっているところが多いのではないでしょうか。




様々な教授法の中でもよく用いられているオーディオ・リンガル法の長所や短所について考えてみましょう。




 次にポストオーディオリンガル法として発展を遂げてきたと言えるコミュニカティブ・アプローチについて考
えてみましょう。キーワードは「インフォメーションギャップ」「自由な選択があるか」「フィードバック」ですが、
実際に人間が行っている会話を想像しながら考えていくと、教師主導型の機械的なドリルとは違い、実際の
会話に近い活動をやっていくのがコミュニカティブ・アプローチなのだとわかると思います。




 ここで代表的なオーディオリンガル法とコミュニカティブ・アプローチ(正確にはアプローチなので教授法という
よりは考え方のような感じですが…)の二つを比較してみることにします。オーディオリンガル法は略して「AL
法」、コミュニカティブ・アプローチは「CA」と略しています。




 いかがでしょうか?考え方がずいぶん違うというか、まったく反対のような感じもします。
目的とするところも違い、実際の授業の展開にも大きな影響を与えるものだと思います。

 ここでちょっと教授法の話とは離れますが、新しい項目を提示する場合に最初に「導入」とか「イントロ
ダクション」という形で授業を展開していくものだと思いますが、そのポイントについて考えてみたいと思い
ます。




 新しい項目を導入の際には、学習者が持っている今までの知識をフルに活用して頭の中を活性化させる
ことが必要だと思います。人間の脳は考えているときに、電気信号が激しく流れています。
活性化させるためにはインタラクティブにやり取りを行う必要があります。

 教師が分析した文法規則を学生にわかりやすい言葉で伝えているだけでは教えたことにはならず、教師
の自己満足に終わってしまうことにもなりかねません。

 英語教育で日本に初めてLLを導入した羽鳥博愛教授は帰納的に教えることをすすめています。
演繹的に授業を展開するか、帰納的に授業を展開するかで学習者の反応は大きく変わるものだと思いま
す。インタラクティブに授業を展開していくことが頭への定着という面では効果的だと思います。




 パソコンのメモリやハードディスクを引き合いに出していますが、実は人間の頭と似ているものだと私は
考えています。特に聞いてもすぐに忘れてしまう友達の電話番号とかの短期記憶は電源を落とすと消えて
しまうメモリと海馬はよく似ていますし、過去の楽しかった思い出などの長期記憶はハードディスクに保存さ
れた情報と同じようにいつでも引き出すことができる点で脳の大脳皮質と同じ役割を持っていると思いま
す。

 外国語教育で大事なのは授業でやった短期記憶の情報をいかに効率よく長期記憶の方へ蓄積できるよ
うに工夫するかがポイントだと思っています。何度もリピートすることも大切ですが、インパクトが強い事項
は一度聞いただけでも忘れられないということもあります。教室活動も工夫しだいで学習者の長期記憶の
中にため込んでいくような活動はできるものじゃないかと思います。CAを授業に導入し、手を変え品を変え
授業を展開することによって記憶を強化することもできるのではないかと考えています。




 上の図はもうおわかりかと思いますが、前輪に当たる部分がAL法的なことです。右はもちろんCAの具体的
な活動の例です。つまり授業を展開していく上でバランスを取ることが大切で、AL法だけでなく、CAも取り入れ
ていくことが効果的だと思われますし、最近は多くの教育機関でもそういった授業を展開しているように思われ
ます。

 言い換えれば、新出語彙・文型など新しい項目をドリルという形で訓練することも大事で、一方では習った項
目も実際に使いながら現実のコミュニケーションに近づけていく活動も必要だということです。inputも大事です
がoutputする活動も大切です。四技能をフルに活用させる活動を取り入れていくことが理想的だと思います。

 もしこのバランスが崩れて前輪だけ大きく、後輪が小さい場合、学習者はどうなると思いますか?
反対に前輪が小さく後輪が大きい場合はどうなると思いますか?

答えは控えておきます…(*^-^*)。よく考えてみてくださいね。

もし、ご意見交換したい場合は掲示板の「日本語教師塾」の方へ書き込んでくださいね。



 これは「第二言語習得研究に基づく最新の英語教育」という本からの抜粋ですが、外国語教育で行われる
教室活動を分類したものです。メカニカルなドリル(一般的に言われる文型練習)から始まり、より意味を持
たせ、現実の会話に近づけた活動へ段階的に移っていくのがわかると思います。右へ行くほど創造性も高く
なり、上へ行くほど意味があり、より具体的な内容になることがわかると思います。

 これをやったら完全だ!とか王道だ!というものはないと思います。日々、実践を通して教師が悩み、改
善していくことが大事だと思います。これからもいろいろな教授法が出て来るかもしれませんが、教師自身
が今の状態に満足せず、まずはやってみて、振り返ってみて、よりよきものを模索していくことが大切だと思
います。


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