コンピュータと日本語教育
はじめに
 現在、コンピュータはいろいろなところで活用されています。語学教育でもコンピュータを活用することで、よりよい教育ができる可能性があり
す。しかし現状はコンピュータを自由に操り、たくさんのアプリケーションを操作し、自由にネットサーフィンを楽しむ方もいれば、せっかくパソコンが
あっても単なるワープロとしか使っていない方もいらっしゃるようです。語学教育という分野で教師がどのようにコンピュータを利用していくかは、こ
れからの課題であると思います。コンピュータを導入し、学習者にどのような効果が出るのか、実際にやっていかないと分からない部分がありま
す。幸い、筆者が勤める学校では以前からコンピュータルームがあり、(しかし、使用に耐えうるものではない、、)コンピュータルームを整備していく
ことで、よりよき教育を目指そうと新しくコンピュータを買い替えることになりました。これを絶好のチャンスとばかりに筆者はどういった活用ができる
か、また活用することでどんな効果があるのか、これから試行錯誤を繰り返していこうと考えています。これを読んで下さっている皆様からも御意見
を頂戴し、よりよき活動を目指したいと思います。


コンピュータルームの配置図

まず、具体的にどのような教室なのか、御説明しますと、コンピュータ(Apple IMAC16台、同DV1台)、ネットワークプリンターキャノンLBP-350、ネッ
トホーク300ネットワークカード、大型モニターとして25型テレビ、それにDVのVGA出力をビデオ変換して繋ぐ。全てのマシンは100BASEのイーサー
ネットで繋がり、LANを組んである。




どうしてMacintoshなのか?
ここで皆さんの疑問が浮かぶことと思いますので、お答えしますが、「どうしてMacなの?」理由は簡単!職場のみんながMacを使っているか
ら、、、でもこれだけでは説得力にかけるので、もう少し真面目な話に移ります。

  1. 昔からMacはネットーワークに強い。初めからイーサーネット内蔵
  2. Macは初心者でも扱いやすい!マウスはボタン1つだ!(ちょっと弱い、、)
  3. CPUの性能がすばらしい!(でも進化が速すぎる、、)
  4. 昔から外国語インプットメソッドのソフトが充実している。
  5. 筆者の勤める学校のコンピュータ担当者(つまり私!)がMac使い。(実はこれが一番大きい、、、)
  6. あとあと語学教育に活用できそうなソフトが学校にたくさんある。
  7. 多くの教師がMacOSを普段活用しているので、またWindowsを覚える必要がない。
  8. 昔から高いとかプロが使うマシンだとか言われているが、実は初心者にもすぐ扱えて、値段もかなり安くなっている。
  9. 教師全員にアンケートをとった結果、導入するならやはりMacintoshにという意見が多数。
  10. コンピュータ担当者が雑誌などで紹介されているMacを導入した学校の記事を読んで「やはりMacだ!」と思ったから
  11. 日本語教育学会の公開研究会「情報リテラシー教育の諸問題」に参加した時もプレゼンテーションにMacを使っていた。
  12. ハイパーカードなど語学教育に使えそうなソフトなどが結構あり、教師が工夫次第でいろいろなことができそう!

以上がMacintosh導入に至った経緯ですが、ここまで来るのには涙なしには語れない苦労がありました。(省略)



どういった活用法があるのか?

教師側の活用
  • データーベース、表計算ソフト活用による成績、学籍簿などの管理
  • ワープロ、データーベースソフトによる語彙帳、教案作成
  • インターネットを活用した情報収集、意見交換
学習者側の活用

  • インターネット(E-mail、チャットなども含む)の活用による情報収集
  • プレゼンテーションソフトによる発表
  • ワープロによる作文指導
  • インターネットの翻訳サイトの利用
上記のそれぞれの活用法は既にされている方も多く、大掛かりなコンピュータ教室を備えた教育機関もあることと思います。私がこれから進めて行
きたいと考えていることは学習者側の活用です。パソコンの値段が下がり、既に学習者の中にもコンピュータを持っている者もおり、個人的に活用
していることもあります。ややもすれば教師よりリテラシーの高い学習者が在籍することもこれからの時代、充分考えられます。私は高いお金をか
けて専用のソフトを開発してもらったり、特殊な機材を導入することまでは考えておりません。パソコンが置いてある教室があり、そのパソコンを
日々の活動の中にどのように組み入れていくかを考えて行きたいと思っています。21世紀を迎えようとしている現在、小、中、高校でコンピュータ
の授業を受けた子供たちが高等教育機関でコンピュータを使っていくことはごく自然なことになると思われます。そのためにも教師側が常に新しい
活用法を考え、コンピュータを特別な機器とは考えず、鉛筆と同じ、道具の一つととらえ、自由自在に活用法を作り出していくことが優先される問題
だと思います。 

どうやって活用するつもり?
 某機関では教科書に準拠した内容のソフトを開発し、ひらがな入力には専用のひらがなパッドを使い、短期間で効果的にカリキュラムを進めるた
めにコンピュータの導入をしています。理想的だと思います。また市販されているコンピュータのソフトには漢字の練習をするもの、場面が提示され
発音まで出てくる物もあります。学習者が自分のペースで自習することができて素晴らしいものだと思います。私が現在考えていることはそれらの
ソフトを使って、学習を支援していくものではなく、私達、教師が普段使っているパソコンを学習者にも道具の一つとして自然に使っていくことで、日
本語学習の助けになるようにすることです。キーボード一つをとってもパソコン初心者にとっては高いハードルです。それでそれらを回避するために
マウス一つの操作で入力もでき、グラフィカルなインターフェイスでクリックすれば学習が進めていけるものが結構開発されてきたように思います。
もちろんそれらのソフトを活用することも考えてはおりますが、パソコンの基本的な操作方法から学習していき、自由に操ることができるようにして
あげることが、結局は効果的なコンピュータの活用になるのではないかと思うんです。ややもするとコンピュータ導入というと専用のソフトがあり、最
先端を行くといった風潮があるようにも思えますが、そんな大袈裟なことではなく、とにかく台数をそろえ、学習者と教師が一緒になって、活用して
いくことを目指したいです。そのためにも教師側がコンピュータの操作に慣れておくことはもちろん、たえずどこにコンピュータを導入するかを考えて
いかなければならないと思います。

とりあえずやってみたこと
  1. まずはキーボードの練習(楽しみながらできるものが理想ですが、「激打」などは効果音がうるさそう、、)現在はフリーソフトの〔Ozawa-Ken〕
    を利用させてもらっています。
  2. ワープロ(全てのパソコン操作の基本のため。教科書の課が終わるごとに本文を打ったり、短い作文を書かせてキーボードに慣れさせる、
    後期ではアンケート調査のインタービューに使う用紙の作成なども)
  3. チャットソフトを使っての討論会(これはキーボードの練習になりそう、、、)
  4. データーベースによる住所録作成(自分でデーターベースを作り、卒業後の連絡にも使える。自主的にやらせたい)
  5. E-mailを使った日本人との生の情報のやり取り(これはある程度日本語のレベルに達してから)
  6. インターネットを利用した情報収集(ブラウザを使い、あるトピックについて調べさせる)
  7. プロジェクトワークとしての新聞作成(記事集めから、新聞のレイアウトまで。使用ソフトはグラフィックソフトからワープロソフト、などいろいろ)
  8. プロジェクトワークとしてのホームページ作り(自分達で自主的に情報発信。LAN内でのWEBページ作成に始まり、できればwwwへ)
  9. 市販ソフトを使っての漢字の補強
  10. 年賀状、暑中見舞い作り(使うソフトはいろいろありそうです。学習者の方が豊かな想像力でいいものを作りそう、、)
コンピュータの機能で語学教育に使えそうなもの
  • ワープロ、ドローなどのDTPソフト
  • レポート作成、
  • 市販の日本語学習用ソフト、フリーウェアなど
  • 会話の練習、文法、(ひらがな、カタカナ、漢字)文字の練習
  • インターネットの利用
  • ホームページ閲覧、情報収集
  • Eーメール
  • チャット

 

筆者の実際にやってみた活動 
キーボード練習


使用ソフト
コンピュータに付属のタイピングソフト(もぐらたたキー、フリーウェアのOZAWA-ken)
内容
何よりもキーボードに慣れることがコンピュータの早道と考え、週2コマあるコンピュータの時間のはじめに練習。
感想
ゲーム性が強く、アルファベットで文字を打ち込むことにすぐ慣れてくれた。しかし、出てくる言葉をアルファベットで正確に打つことにはすぐ慣れるが、自分で自由に文を打つと発音からくる間違いで、タイプミスが目立つ。でも続けることによって早く打てるようになり、後々の活動の基礎になると思われる。 
 
名刺作り


使用ソフト
コンピュータに付属のワープロソフト(クラリスワークス、
写真加工できるソフト(グラフィックコンバーターなど)
内容
キーボード操作にある程度慣れた頃、ワープロソフトを使
い、自分の名刺を作ってみる。完成したら印刷。
感想
自分が実際に使うことを考えてみんな真剣に作ってい
た。操作を覚えるにも日本語を使うので、会話の練習に
もなった。 
 
 作品例 (内容は架空
のものです)
データーベースを使った単語帳作り


使用ソフト
ファイルメーカーなどのデーターベースソフト
内容
初級の段階から既習の単語を各品詞ごとに入力し、個人の単語帳を作成
する。レイアウトは教師側で準備する。操作に慣れれば、各自でカスタマ
イズも可能。
感想
習った言葉を一つ一つ整理するのに役立っているようだ。特に動詞は動
詞のグループや活用した形も入力するので、復習になる。
教室内チャット

使用ソフト
LAN内で使用できるチャットソフト
内容
キーボード操作にある程度慣れた頃、チャットソフトを使
い、チャットを行う。質問内容は単純なQAから始まり、自
由QAへ移っていく。
感想
全員に一度に質問すると、反応に時間差が起きる。文
型練習のようにこちらから質問を出し、答えを送信させる
形で利用し、中上級レベルに進んでから、全体で討論
形式に進むのが理想的だと思います。
 

とりあえず、こんなことを続けています。当然、これらのことをするためには教師と日本語で会話をしなければなりません。つまり作業を行うために
「聞いて、話して、書いて、読んで」を絶えず繰り返さなければならないわけで、教科書で習ったことを実践的に使っていかなければならないわけ
です。うまくいく場合も失敗する場合もあると思いますが、「教師が楽しいことは学習者も楽しい!」という気持ちで進めればきっと効果は上がると
考えています。 

今後の課題 
 上記のような活動を(1999年)から現在(2004年)まで続けております。幸い、大きなトラブルもなく運営しています。学校関係でインターネットを導
入する場合、セキュリティの問題、モラルの問題が必ず絡んできます。機械的にいくらシステムを強化しても、上を行く者がいます。また使用する
者のモラルも問題になってきます。インターネットという情報の渦の中に入って行くわけですから、当然、好ましくない情報も多々あるわけで、それ
らを含む多くの情報の中から必要なものを選びだし、語学の向上に活用していかなければなりません。また学習者の中にはコンピュータに触れた
こともない者からずっと活用してきた者もいて、コンピュータリテラシーに差があるのが普通です。まずは基本的な操作から始め、慣れることから始
めなければならないように感じました。それと同時にスタッフの養成も急がれます。コンピュータに対し、苦手意識がどうしても先に立ってしまう人も
いるでしょうし、自分でどんどん活用していく人もいます。一昔前のLL機材の導入を思い出します。「私は機械は苦手で、、」という人でも、安心して
使えるコンピュータやシステムが開発され、家電製品と同じレベルで使えるようになる日が来ると思います。パソコンの値段はどんどん下がり、そ
れに反比例するように性能は上がっています。素晴らしいことだと思いますが、まだまだ家電製品と同じレベルで扱えるものではないと思います。
フリーズやコンフリクトなどのトラブルがあってもすぐに対処できるようになるには時間がかかります。またシステムがどのような仕組みになっている
かを理解できるようになるにも時間と経験が必要です。これからは個人で日本語教育用教材を作成することができるソフトも出てくるでしょうし、ま
た作成した物もWEBを通して紹介され、活用されていくことと思います。これらのことは今後、もっと盛んになるでしょうし、それを活用する側も選択
肢が増え、授業に活用することができるようになると思います。学習者だけでなく教師側も普段からコンピュータをいろいろなことに使い、慣れ親し
んで、その職場単位でリテラシーを高めていくことが何よりも急がれることだと感じます。

是非、叱咤激励のメール待ってます。また「こんなことをやってみたら?」とか「うちでは既にこんなことをやって、こんな効果があったよ!」といった
こともお待ちしております。狭い地球に住んでいる者同士でお互い助け合って情報交換しましょう!!


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