ここに一冊のノートがある。「親分の骨オレちゃった伝説」と題字が書いてある。今から遡ること13年前の5月、十代の作者がリンカーン(アメ車)にホーミング魚雷のように突っ込み、事故って入院してた時に付けてた記録帳というか日記というか、ただの落書き帳というのが正解のような代物である。ちなみに「親分」てのは当時の作者のあだ名である。
十代の頃の落書き帳なので、とてもではないが公共にお見せ出来るようなもんじゃない。
ま、興味のある方はご一報頂ければPDFファイルにでもして差し上げます。
作者は世間の皆様よりは沢山の転倒を経験し、沢山の骨折をしたりしてますので、今後、これをお読みの皆様が骨折することは無い方が良いのですが、万一、骨折された時にはこの戯言を参考に素敵な骨折ライフを送れるといいなぁ、なんて思いながらダラダラと酔っぱらいながら書いてみました。
1992年5月17日PM2:30頃
その日はとても天気の良い日曜日で、当時乗ってたSRXー4のマフラーを前日に外品に交換して、今日は爆音を轟かせながら走り回るぞ!と意気込んで走り回ってた。
そりゃもうバカ満開で、ツレのバイトしているガソリンスタンドの前を、どうよ?このステンレス製マフラー!どうよ?この爆音!どうよ?このオレ様!!てな感じで通り過ぎ、見せびらかしてやった♪と大満足でとあるカーブにさしかかったのである。
そのカーブはS字カーブで道幅がとても狭く、大体3m程の道幅でブラインドコーナーになってて、おまけに横には竹藪があり、道の端には沢山の砂利があり、滑るのでバイクは自然と道の真ん中よりのラインをとるハメになる。
で、当時、想像力の乏しい作者は対向車をあまり意識せず、というか、当時の普通車(今ほど3ナンバー車は無かった)程度なら離合出来ると確信してたので、相変わらずのバカ満開で一つめのコーナーをクリアし、一つ目のコーナーの立ち上がりでスロットルを開け、次のコーナーに向けて切り返した瞬間!目の前に道幅いっぱいの黒い塊が視界に飛び込んできた!
「ヤバッ!」っと思いフルブレーキングで左端に避けようとしたけど砂利があるもんだからフロントブレーキが掛けれない!
「ンガァーッ!」っと心の中で叫びながらリアブレーキを目一杯ロックさせても止まらない!しかも、どう見たって離合出来る隙間が無い!
ダメダコリャ・・・っとあきらめた瞬間、ズガン!!という衝撃と共に作者は空中へ!この間約1〜2秒。
あぁ〜あ、やっちゃったよオイ・・・なんて思いながらしばし空中を漂い、高さ2mの柵の向こうの田んぼを眺めながら、「オレってえらい飛んでるよな・・・」と認識した瞬間、見る見る地面が近づいてくる!が、高さ2m、距離5m位の放物線を描きながら空中散歩をした作者は、俗に言う「吹っ飛んでる」てな状態なので、受け身なんてとてもとれずに腰から地面に直撃した。この間約0.5秒。
地面に激突した瞬間は痛みも無くて、腰から全身に衝撃が伝わっていく感じだけはあった。地面に這いつくばってからも腰から下の感覚がしばらく無くて動けなかったところへ、通行人が助けに来てくれた。
が、この人が親切なんだけども、とても頭の悪い人で、作者の身体を道の端に引きずって移動させようとしてくれるのは有り難いんだが、フルフェイスのヘルメットを被ってる作者を、ヘルメットのアゴの部分を掴んで引きずったんである!
当然、アゴ紐がグイグイと喉に食い込んで息が出来なくなる!なんせ首つり状態で引きずられてるんだから(笑)
きっと頸椎を損傷した負傷者がこの人に助けられたら、間違いなくトドメを刺されてるやろね。マジで。この時、素人が負傷者を勝手に動かしちゃイカンってのを身を以て理解した瞬間でした。
で、そんな小さな親切、下手すりゃ殺人未遂な通行人に移動させてもらって、道の端であぐらをかくように座ってた身体が段々と感覚を取り戻してきた。
よく辺りを見ると野次馬も集まり始めてるし、転倒しっぱなしの単車からはガソリンが漏れてるし、起こさなくっちゃと思い、足が痛いのを我慢して立ち上がろうとした時、「アリャ?立てへん。何で?」
力は入るんやけどなんか力が逃げて、爪先まで伝わってない感じやなぁ・・・ン??右足の関節が増えてる??ていうか、おかしな方向に足首が向いてて、膝は外向きなのに爪先は内向き??こんな足って漫画「北斗の拳」か、競馬の故障した馬でしか見たことないぞっ!!
そう、作者の足はスネの部分でポッキリと折れてて「ひでぶ!あべし!」の直前みたいな事になってたんである。
またしてもダメダコリャ・・・と思い、集まった野次馬の方々に「すいませーん、完全に折れてますんで、救急車呼んでくださーい。」とか「ガソリンが漏れてるんで火の気に注意して下さいねー。」なんて言いながら現場を指示しててあることを思い出した!
以前、友人が骨折した時に医者に行ってギプスをする際、きれいに治す為に、医者が折れた部分を思いっ切り延ばしてからギプスをしたらしく、それがとんでもなく激痛を伴った、と、言ってたのを思い出したんである。
で、こう判断した。
今なら交感神経バリバリ全開状態で、エンドルフィン&ノルアドレナリン出まくりだから大して痛みも感じないし、自分でいける!!今、思えばバカな判断である・・・
まず、深呼吸をしてから両手で足首の辺りを持ち、正しい向きに捻り直す。そしてずれてるスネを真っ直ぐにするのに、膝の裏と足首を掴んで歯を食いしばり、うりゃぁあぁぁぁ〜!!(←心の中で叫んでる)と伸ばした!
すると何かがフクラハギの中にズルッと入っていく感触がしたと同時にパッ見は普通の足になったのである。で、その格好を両手で保ちつつ、これで後は医者に行ってこのままギプスをすれば一段落♪オレって頭良いー♪なんて思いながら、水溜まりみたいな自分の血を眺めながら救急車の到着を待ってた。
その時点で大事な事に気が付かなければいけなかったんだけど・・・
そうこうしてるうちに救急車が到着したんだが、当時は救急救命士という制度も無かったし、当然、救急車は今のように豪華な装備は無かった。
作者をストレッチャーに乗せ、救急車に格納した際、隊員の一人が「忘れ物は無いかー?」と聞いたから、「バイクとヘルメット。」と作者が答えたら、「減らず口が叩けるなら大丈夫!」とか言いながら発進した。まぁ、本人的には励ましてるつもりなんだろうけど・・・
で、間抜けな救急隊員がそのヘルメットを患部の横の一段高い座席に置いたもんだから、救急車がカーブを曲がった時に転がり落ちて折れた所を直撃し、大絶叫した作者を見て、笑いながら「スマン、スマン。でも、そんだけ元気があれば命は大丈夫やな♪」なんて事を言いやがる!本気で泣きそうになりながら、「いつか殺してやるリスト」にその隊員を加えつつ、救急車は一路、病院へ。
その病院で、まさかショッカーに捕まった本郷 猛のような目に遭うとはこの時点では思ってもいなかった作者であった・・・
いやぁ〜、今、思い出してみてもやっぱり、リンカーンはデカイし堅いわ!!
次号 親分の骨オレちゃった外伝 改造人間編に続く!!
刮目して待て!!
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