B 親分の骨オレちゃった外伝 改造人間編 「前編」

 その後、救急車が到着したのは郊外のニュータウンにある某大学の付属病院。
 救急車に乗るまではノンビリした感じだったが、病院に着くやいなや、救急隊員や救急の受け入れに出てきた看護婦達が引き継ぎ処理みたいなことをテキパキとこなし、ドラマやドキュメンタリーでしか見たことがない風景がどんどん展開していって、あっと言う間にストレッチャーは降ろされて、ガラガラァ〜っと救急の処置室へと入ってく。

 で、まるでドラマのように、「1,2,3,ハイッ!」っとストレッチャーから処置室のベッドに移されて、血圧や脈を計ったり、折れた箇所以外のキズを確認したりと、テレビで見たことのある光景が進んでいき、まぁ、仕事なんだから当然なんだが真剣に処置を始めた医者や看護婦を観察しながら、作者は「なんか俺、中古車の査定されてるみたい・・・」なんて緊張感の無い事を思ってた。

 すると突然、年配で恰幅の良い(ようは太ったオバサンの)看護婦が「Gパン切ってもいいかなあ?」って聞いてきた!
 一瞬、「エッ?」っと思ったが、看護婦はすかさず、「折れてるのは下腿部って言って、スネだからGパン脱いでくれたらエエねんけど、痛いし無理やんな?」と言ってきた。
 しかし、このGパン、数週間前に買ったばっかりだったんである。
 既にこのGパンの右足は血まみれなので、洗ったところでシミだらけの超個性的なGパンの出来上がりなんだけども、ギプスのためにGパンを無駄にしたくないし、Gパンを履いたままギプスして後で脱げなくなったらマヌケ全開のバカ満開だ!(この時点で既に大馬鹿者・・・)なんて考えてから、「ぬ、脱ぎます!脱いでみせます!」なんて言って脱ごうとした。
 がっ、そう思って上半身を起こした瞬間、「ゴリゴリッ!」っと足の中で生まれて初めての感触がした!
 と同時に、虫歯で半分無くなって神経が出てる状態の奥歯に、思いっ切り歯ブラシを擦りつけたような激痛×20本分!が右下腿部に発生!!
 「〜っ!!!!」と、声にならない絶叫を上げるコント中の志村けんみたいになりながら、頭の周りに現れて廻ってたヒヨコを必死に消した!!!
 そう!足の中で折れた骨の先っちょ同士がゴリゴリと擦れ合ってるんである!

 さっきまでは興奮状態であまり傷みを感じなかったんだが、病院に着いて安心したせいか、右足を少し動かしただけでスンゲェ痛いんである!
 が、本気で「Gパンの脱げないギプス野郎」にはなりたくない!と思ってた作者は、耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、たまに「ヒッ、ヒッ、フゥ〜」とラマーズ法?なんぞも取り入れながら、膝を持ち上げると、折れたスネから先がブランブランになるから看護婦に手伝ってもらいつつ、「頑張れ!あと少し!もう足首が見えてるよ!」とか応援までされながら、やっとのことで脱ぎきった。
 その時、年配で恰幅の良い看護婦は、一気に三十歳は若返って白い羽が生えて見えたんだが、次の瞬間、脱いだGパンを洗濯洗剤のCMのように両手でバンッ!と広げて一言
 
「見事に突き抜けてるね〜、ズボンに穴開いてるわ(笑)」
 当然、白い羽は黒に変わってた・・・

 その後、麻酔か何かよく分らんが注射を何本も打ち、アチコチを縫ってからレントゲンを撮ったりして、整形外科の処置室へ移された。
 「はぁ・・・これで後はギプスして帰れるわ♪」なんて思ってた作者は当直の医者に、「ギプスは何週間ぐらいですか?」と尋ねた。すると医者は不思議そうな顔をしながら、「何言ってんの!これは入院して手術せなアカンで!」と答えた。
 またしても「エッ?」っと思ってると、「君の場合、飛び出た骨を消毒も何もせんと自分で勝手に中に入れてるし、最悪の場合切断もあり得るで!まあ、出血や炎症が治まるまで1〜2週間は様子を見んとな!」なんて言いやがる!というかおっしゃる!

 「はぁ・・・なんかえらい面倒臭い事になったなぁ・・・」なんて思ってたら医者が,「様子を見てる間は骨同士がくっつかないように足を引っ張って固定するから。」って言い出した。
 が、『入院決定&最悪は切断』なんて聞かされた落ち着きの無い19歳はスネスネモード全開で「もう好きにしてくれ!」って感じでスネていた。
 すると医者は、「じゃあ、かかとにピンを通すし、少し待っててや。」と言ってなにやら処置室の奥に消えて行った。

 「ん?」、「ピンを通す?」、「踵に?」、「???」

 きっと聞き間違いやな。なんて思った瞬間、医者がとんでもないものを持って現れた!!なんと、ステンレス製かなにかで、ピカピカした手回し式のドリルである!!ちょっとターミネーターちっくに!!
 「マジで・・・」なんて思って、スネスネモードからガクガクブルブルモードに切り替り、本郷 猛が仮面ライダーに改造される際、「やめろーっ!やめてくれーっ!」と叫んでた気持ちが充分に分った作者を見て医者は、「大丈夫、ちゃんと麻酔はするから。」なんて当たり前の事をぬかしやがる!

 まあ、これも珍しい体験やし現状を楽しもうと腹をくくり、目の前で繰り広げられる実写版スプラッター状態をしっかり見てやる覚悟を決めたんだが、前出のように作者の足はスネから下は自分で制御できないブラブラ状態。
 この足の踵に水平方向で穴を開けようとするならば、何か、若しくは誰かが固定しないとドリルの刃が入力できない。で、実際には左右から一人ずつ看護婦が足と足首を動かないように固定しつつ、医者が踵にドリルをグリグリと突っ込んでいくんである。
 現代医療の日曜大工的な側面である。つうか、小学生の夏休みの工作か?

 で、またしても何本か麻酔を打ち、踵の左右にマジックで印を付けて、右足の踵の左側の印からグリグリとドリルでカッポジリだした!
 麻酔が効いてて全然痛くない。が、踵なんてホジリだしたら皮の下はすぐに骨だから、次の瞬間にはゴリゴリと硬いモノを削ってるような感触がなんとなく伝わる。
 「何となく」ってのは、作者の足はスネで骨が離れてる状態だから伝わりにくいわけで、何となくな感じなんである。多分、まともな足だとかなりリアルに感じが伝わるんじゃないかと想像できます。
 これがなんともきしょく悪い感じで、
 んで、ジィーッと見てて、
 「おいおい!人の中にドリルが入ってってるよ!あ、今、ちょっと血が出た!つうか、俺の身体やん!!」なんて思ってたら、踵の真ん中ぐらいから段々痛いような気がしてきた・・・
 「先生、少し痛い気が・・・」と作者が言うと医者は「麻酔が効いてるから痛くない!じっとしててや!」とか言って作者の言うことを気にせずに更にドリルを回す腕をスピードアップさせた。
 と、その瞬間、作者は、「フギャーッ!!!」っと大声で叫び、踵の中を痛みが左から右へ動いてるのを実感した。
 直後、「バスッ!」っと右側の皮を突き破ってドリルの刃が出てきて、一度、刃の回転が止まった。
 で、右側で固定してたショッカーの手下、もとい、看護婦が困った顔をして一言。
 
「1センチほど下に出ました・・・」

 ほらみろ!言わんこっちゃ無い!!本人が、「痛い!」って言ってるのに、「痛くない!」ってトンチキな否定した意味不明な医者が失敗したんである。ある意味、改造失敗ですな(笑)

 ようは左の印から右の印に真っ直ぐ穴を開ける予定が、進入角度がずれて途中から麻酔の効いてない部分をホジリながら強行突破して、印の1センチ下に貫通したわけで、医療が途中から拷問に変わった結果、やり直す、つまり、ホジクリ直すことになった。

 「ん?ってことは一度、刃を途中まで戻してから再度、正しい出口に向かって掘り進むってことやけど、ドリルの刃って回さないと抜けないよなぁ・・・。」
 
!!。
 つうことは、また麻酔の効いてない所をグリグリしながら戻すわけで、その際にはあの強烈な痛みが!!
 って作者が0.5秒で理解した瞬間!!
 それに気付かれないうちに!!と言わんばかりに医者が突然ドリルを逆回転させながら抜き始めたんである!!
 またしても、「フギャーッ!!!」っと叫び、「痛いーっ!」って言ったら、今度はその意味不明な医者が言ったのは、「我慢して!!」だった・・・

 白衣を着たそのオッサンは間違いなく黒いデビルウィングが生えてて、ドリルじゃなく槍を持って、尖った尻尾があったように見えた・・・
 麻酔打てよ・・・鬼!悪魔!ショッカー!

 かくして、踵に穴を二カ所開け、棒を通して、折れた足を引っ張りながら、次の改造手術までの数週間をベッドの上で寝たきりで寝返りもできない状態という、軽〜い「張り付けの刑」を受けながら過ごすことが決定した。

 改造人間手術まであと数週間。踵をピンとワイヤーで結び、ベッドに取り付けた滑車で釣瓶(井戸に付いてるやつね)みたいな状態で重りを釣り、ベッドと一体化したことで作者は「怪人ベッド男」になる事になり、当然、パンツは履き替えられないので、T字帯(患者用フンドシ)に履き替えてくれと言われた際、
 「脱ぐのスゲェ大変だからパンツは切って下さい・・・」
 とショッカーの手下、もとい、うら若き看護婦に頼んだのであった・・・

後編に続く!