で、数週間、タバコも吸えない張り付けの刑で「怪人ベッド男」になった作者は、念願の「フレーム強化手術」を受けるまでの間、他の部屋が空いてなかった為、個室に入院することになった。
まず初めに清涼飲料水を扱う会社に勤める友人H君が見舞いと称して、くすねてきたジュース等を部屋の冷蔵庫に入れてってくれた。次に、友人Y君が暇つぶしにと、大量の漫画を持ってきてくれた。ココまでは「あぁ、有り難いなぁ。」なんて思えることなんだが、当時の作者は19才、まわりに暇な学生生活をしてる連中や、プータローをしてる奴なんかもいたりした!
当然、その後、見舞いと称して作者の部屋に来る連中は日に日に増え、無料で利用できる漫画喫茶と化していった・・・
なんか悔しいから作者は彼らを参拝者と呼んでた。
友人G君は毎日のように参拝し、漫画をむさぼり読んでは帰り、学生で金が無いのでデートで行く所に困ったら彼女を連れて部屋に参拝して記念写真まで撮り、その後、その写真を見たら彼女の方はピースなんかしてやがる!!
悪友Fなんかは何故かギターを持って来て、死んだ魚みたいな目つきで長渕 剛を熱唱し出すし、あげくには、「これで看護婦をビビらそう♪」と、寝たきりで動けない作者の折れてる方の足の指に、わざわざ買ってきたオモチャのゴキブリを挟んでみたり、野郎の入院の見舞いには定番のエロ本を買ってきて、寝たきりで動けない作者の手が届かない所に置いてみたりと、好き勝手なことをしてた。
そういや、別れてすぐの彼女と作者の部屋でバッタリ再会し、すごーく気まずい雰囲気になった奴もいたっけ(笑)
●教訓その一
「見舞い」とは、来る奴が楽しむもの!!決して患者は気を抜くな!!
そんな数週間を過ごし、無事に足も腐らずに済み、手術の日取りも決定し、前日からの絶食でフラフラになりながら、手術の当日を迎えた。
朝から右足のスネ毛を全部剃られたんだが、これがとても大変で、数週間ピクリとも動かせず、筋肉が痩せてルパン三世みたいになった右足は、棒のように硬くなってて、関節すら曲がらないのに、関節の無い折れたスネの部分だけが曲がる状態(笑)
裏も表も全面の毛を剃るために看護婦が三人がかりでギャーギャー言う作者を押さえながら剃った。
これがすんげぇー痛くて、折れた骨が引っ張られて数週間ずっと離れてたのに、重りを外したから、縮んでくっつこうとするもんだから事故当時より敏感になってる骨同士が接触する度に絶叫状態!
そんな状態で右足の付け根側から足首まで剃って、やっと終わった・・・と、「ホッ」としてたら、「もう一回、逆剃りするしね。」と看護婦が言い出した!
で、よくよく聴いてると、「○○先生はウルサイし綺麗に剃っとかな小言言われるで!」みたいな事を看護婦同士で言って、患者ほったらかしで○○先生の悪口で盛り上がって笑ってたりしている。
なーんか、映画なんかで悪の手下共がボスに言われて嫌々に拷問をしてる時の主人公の気持ちがホンの少しだけ分ったような気がした・・・
んで、ごっつい注射を打ったり、点滴を挿してストレッチャーに乗って手術室へ。この時の手術は全身麻酔ですることは既に説明を受けてたんだけど、よくよく考えたら、スネ毛を剃るのも麻酔してからにしてくれれば良かったのに・・・
●教訓その二
白衣の天使もタダの人!!笑顔が素敵でも患者は気を抜くな!!
念願の改造人間手術を受けに手術室へ入り、マスクをして全身麻酔をするわけだが、この全身麻酔ってのは何回しても不思議なもんで、人間って生き物にスイッチが付いてたらこんな感じかな?と思わせる。
映画「ロボコップ」で主人公のロボコップがスイッチが切れて次にスイッチが入ったら、時間的にはかなり経ってたってのはこんな感覚か?
麻酔が効いてる間は完全に意識は無いんだけど、睡眠とは全く違う感じで、気が付いた時に時間の感覚が全く無い。ほんのまばたきした瞬間に近い感じで、その間に全ての事が終わってる。
まぁ、たまに麻酔が体質に合わず、そのまま意識が戻らずにあの世へ旅立たれる方もいらっしゃるみたいですが・・・
作者はこの骨折以前にも何回か手術を受けてて、全身麻酔も既に経験済だから、スイッチが切れたみたいに気を失って、手術室から部屋に戻る途中で、看護婦に優しく顔を叩かれながら意識を取り戻すのがいつものパターンらしいってことは知っていた。
が、今回は違った!エライ意識の取り戻し方をした!
普通は意識を取り戻しても麻酔が残っていて全身がダルくてすぐにまた意識が途切れるんだけども、この時の目覚め方は強烈だった!
完全に意識の無い状態の作者は突然、呼吸が出来ないことに気が付いた!つうか、息が出来ないから意識を取り戻したってのが正解で、麻酔の段階でスイッチが切れて感覚的には一瞬しか経ってないのに次の瞬間には息が出来ずにもがいてる状態。完全に頭はパニクッってるが、目は開いてるし状況は見える。
それはアタフタする看護婦や医者達の姿・・・
「ゲェホォーッ!!!!」っと何かを吐きだした瞬間、思いっ切り息を吸い込んで「ゼェーゼェー」言ってる作者に医者が「手術は無事終わったよ。」って言ってきた。「ヘッ?」って思ってると、違う医者が、「喉に入れてた管が引っ掛かって抜けなかったんや、ゴメン、ゴメン。」って言ってきた。
そう、このヘボ医者が最後に挿管を抜くのに失敗して喉を詰まらせやがったんである。
美人看護婦に優しく起こしてもらうハズがいきなり窒息状態で叩き起こされて気分悪いわ!!
つうか、苦痛を無くす為の全身麻酔とちゃうんかい!!!
●教訓その三
医者だってミスをする!!全身麻酔してても患者は気を抜くな!!
その後、部屋に戻って点滴をしながら、全身麻酔が身体から抜けるのを待つんだけど、全身麻酔ってのは意識が戻ったあとがメチャクチャしんどい!
もう、全身がダルダルで、強烈な二日酔いを倍にしたような感じで、眠くはないが目を開けてるのもしんどいんである。
で、しばらくして意識もハッキリして喋る元気も出てきたぐらいに回復したときに下半身におかしな感覚を覚えた。
なんか付いてる・・・足と足の間に・・・胯間が変や・・・
そう!下半身の大事なアソコに管が通されてて何とも言えない妙な感じなんである!
これはバルーンカテーテルってやつで、そのまま尿道を通って膀胱まで入って風船みたいに膨らんでいて、男としてはとっても変な感じで、すごーく違和感があって、想像すればするほど「ウヘー・・・」ってな気分になりながら、「ど、ど、どんな具合になってんやろ??」となってくる。
で、ビビリながら覗いてみたら「ウヒャー!」な事になってて、医療っていうのはなんて恐ろしいことを平気でするんや!!と、少し怖くなった(笑)
この入院の間ずっと看護実習生の学生さんが作者を担当していて、この管を外すのを実習としてすることになった。
この時作者は19才、学生さんも平たく言えば若い女子。これは非常にマズイ!正確に言うと、作者にとって良くない!少なくとも、マムシドリンクは必要ないぐらいに元気な年頃だったから、些細なことでおかしな反応をしたらどうしよう・・・う〜ん困ったぞ・・・誰も悪くないのにすげぇー格好悪いことになっちゃうじゃないか!
なんて事を考えてたら「じゃぁ、管を外しましょうか。」と、実習生の女の子が登場した!
当然、むこうは実習だし真剣な表情で真面目に作者の胯間でゴソゴソしてるんだけど、作者は意識しないようにすればするほど意識する悪循環が発生し、「マズイ!とにかく平常心やっ!!」と、思いつつ、何か違う事を考えなくちゃ!!と、思い、必死にバイクの事を考えたり、昨日、一昨日、一昨昨日の晩ご飯を思い出したりしながら必死で気をそらしてた。
すると、一瞬、胯間に激痛が走って、「イタッ!」って思った瞬間、実習生が、「ゴメーン、ちょっと失敗した。」って言いながら全部の管を外してくれた。
当然、痛い目に遭ったおかげ?で作者の胯間はおかしな反応をすることはなく、マジマジと見られて恥ずかしかったぐらいで管をはずせた。ギリギリセーフ!って感じ(笑)
●教訓その四
実習生もミスをする!!下半身関係は特に患者は気を抜くな!!
で、その後は日にち薬で回復しながら、リハビリなんかもして、念願の寝返りも打ち放題だし、車椅子から歩行器、歩行器から松葉杖へと確実に行動範囲を広げていって人らしい生活を取り戻していったんだけど、不便なことが一つあった。
それは骨が完全にくっつくまで右足には体重を掛けてはいけないことと、手術のキズが塞がるまでは膝が曲げれない事で、日々の入院生活の中でこれが原因で大変な思いをしたことがあった。
入院生活ってのは、毎朝同じ時間に起こされて同じ時間に朝食が届いて、入院患者全員が一斉に食べだすことになる。って事は朝のトイレラッシュが発生するってことになる。このトイレラッシュは片足しか体重を掛けれない作者にスゴイ経験をさせてくれた。
作者が入院してた病院は男子トイレの「大」の方は洋式と和式があったんだけど、当然、ラッシュ時には選んでる余地がない。なんせ「出物腫れ物所嫌わず」って言いますから。
で、ある日、片足にしか体重の掛けれない作者は「大」のためにトイレに駆け込んだら、和式しか空いてない・・・が、もう、我慢も限界だったので「何とかなるやろ!」と入ってみた。
すると膝を曲げれない上に体重を掛けれない作者は、右足を右前方に伸ばしながらしゃがんで和式便器で気張ることになったんである!コサックダンスを一時停止したような状態で!
これが非常につらい!そのうちに反対の左足がプルプルし出して、立ち上がりたいんだけども、立ち上がるためには一々ケツを拭かなくっちゃならない!
気張って、プルプルして、拭いて、立ち上がって、休憩。を何回か繰り返してやっと終了。
まあ、普通に気張ってても人に見られることは無いけど、まさか扉の向こうの和式トイレでそんな光景が繰り広げられてるとは誰も想像しなかったと思う(笑)
●教訓その五
和式トイレは片足で使うとロシア式!!プルプル中は絶対に患者は気を抜くな!!
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