有識者会議


 近頃、皇室典範改正に向けた動きがあわただしい。先日平成十七年(二○○五)一月二十五日、小泉純一郎内閣総理大臣の私的諮問機関である『皇室典範に関する有識者会議』の初会合が首相官邸で開催された。この会議は、この秋まで月一回のペースで開催され、その報告書がまとめられることになっている。だが、一回あたり約二時間、回数にして約十回、こんな短い時間では碌な議論もできないのは分かりきっている。皇室典範改正ともなれば国体に関わる大問題なのに、何故このような短期間で改正しようと急ぐのか。はじめから女帝容認ありきではないのだろうか。

 そもそも皇室典範改正が必要とされる事態に至った理由は、秋篠宮文仁親王以降四十年間一人も男子皇族の誕生を見ていないためによる。皇室典範第一章・第一条において、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定められており、現時点(平成十七年十月末日時点)で皇位継承権を持つ「皇統に属する男系の男子」は継承順に、1皇太子徳仁親王・2秋篠宮文仁親王・3常陸宮正仁親王・4三笠宮崇仁親王・5同寛仁親王・6桂宮宜仁親王、のわずか六方がいらっしゃるのみなのだ。


 では有識者会議のメンバー十人はどういう方たちなのか。

 ●岩男 壽美子(70) 武蔵工業大学教授、慶應義塾大学名誉教授 (社会心理学)
 ●緒方 貞子(77)  国際協力機構理事長
 ●奥田 碩(72)   日本経済団体連合会会長、トヨタ自動車会長
 ●久保 正彰(74)  東京大学名誉教授 (西洋古典学)
 ●佐々木 毅(62)  東京大学総長 (政治学)
 ●笹山 晴生(72)  東京大学名誉教授 (日本古代史)
 ●佐藤 幸治(67)  近畿大学法科大学院長、京都大学名誉教授 (憲法学)
 ●園部 逸夫(75)  元最高裁判所判事
 ●古川 貞二郎(70) 前内閣官房副長官
 ●吉川 弘之(71)  産業技術総合研究所理事長、元東京大学総長 (設計学)
 (五十音順・年齢は第一回開催時のもの)

 この中で皇室と関連があると思われるのは、平成十四年(二○○二)に「皇室法概論」を出版した園部氏と、紀子妃のお妃教育を担当した笹山氏のわずか二人のみである。みなさん素晴らしい経歴の持ち主でいらっしゃるのは確かだが、そもそも何故このメンバーが召集されるに至ったのか非常に疑問だ。高崎経済大学助教授の八木秀次氏をはじめ、この問題に関する提言を活発にされている方はいくらでもいらっしゃるのに。
 二月十八日には第二会会合が開かれたが、なにせ専門知識の無い方々が多数を占めているので、会議といいながらも単なる勉強会にしかなっていないのが実状のようだ。

 皇室のありかたを問うということは、今存在している日本人だけの問題ではなく、日本の国体・歴史に関わってくる最重要課題だ。断じて今の時代の人間の都合だけで決めていいものではない。一時的な感情や世論の建て前にとらわれず、あくまでも「男系」による皇統の永続に向けた更なる議論が望まれる。


参照
首相官邸オフィシャルサイト
『皇室典範に関する有識者会議』


【平成十七年二月二十三日 開設】

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