女帝について1


 最近の世論調査では女帝容認派は全体の八割を超えている。その理由の一つとして、過去十代八人の女帝の存在がある。かつて日本にも女帝が存在していたのだから、内親王・女王に皇位継承権を与えてもいいじゃないかというのだが、本当にそうなのだろうか。

女帝一覧

天皇 歴代 配偶 御所生
推古天皇 33 欽明天皇 敏達天皇 竹田皇子(早世)
皇極・斉明天皇 35・37 茅渟王(敏達天皇皇孫) 舒明天皇 天智・天武天皇
持統天皇 41 天智天皇 天武天皇 草壁皇子
元明天皇 43 天智天皇 草壁皇子 文武・元正天皇
元正天皇 44 草壁皇子(天武天皇皇太子) なし なし
孝謙・称徳天皇 46・48 聖武天皇 なし なし
明正天皇 109 後水尾天皇 なし なし
後桜町天皇 117 桜町天皇 なし なし

 過去の八人の「女性天皇」は、寡婦もしくは未婚であったかの違いはあるが、全て「男系女子」である。「女性天皇」は多くの場合、皇位を継ぐべき皇子がまだ幼少であったため、一時的な繋ぎとして践祚し、その皇子がしかるべき年齢に達すると譲位するのが常だった。「女性天皇」になられた方の御配偶も天皇もしくは皇太子に限られていた。だが御配偶がご存命のうちに皇位につかれた「女性天皇」は存在せず、崩御(薨去)された後に限られている。また「女性天皇」が在位中に出産されたことは、只の一度もない。「女性天皇」の後を受けて皇位についたのも、言うまでもなく「男系」の男子皇族である。このように皇位は約二千年来、代々「男系」のみで継承されてきた。
 仮に女帝を認めたとしても、一番の問題は配偶者をどこから選ぶかだろう。ヨーロッパの場合では、各国王室は血縁関係にあり、女王の配偶者は他国の王族、もしくは上級貴族に限られている。ちなみに、イギリスのエリザベス女王の皇配殿下エディンバラ公は、ギリシャ旧王家の出身である。しかし、日本には「皇配」など前例も無く、当然ながら皇配を出すべき家など存在しない。結果的に女帝の配偶者は民間から選ばざるを得ない。果たしてこのような民間人を父に持つ人物を、天皇・皇族としてお慕い申し上げることができるのか。女帝が三代も続けば、もはや一般人としか言えないだろう。象徴や元首として頂く意味など既に失われている。
 再度イギリス王室を例に出すと、現在の家名はウィンザー家であるが、チャールズ皇太子が即位すればマウントバッテン・ウィンザー家と変わる。女帝を認めてきたヨーロッパですら、「女系」に移行すれば「王朝交代」と認識されていることになる。女帝を許せば日本も同じ運命を辿ることになる。

 古代よりこのかた、日本は支那(シナ)より様々な宗教・文化・思想を受け入れてきた。だがその中にあっても「科挙」・「宦官」・「革命思想(易姓革命)」など絶対に受け入れなかったものも存在した。
 女帝の夫が皇族でなければ血統は異姓に移ることになる。結果、日本史上初まって以来の「易姓革命(王朝交代と同義)」が起こるのだ。いうまでもなく「万世一系」の日本においては、一度たりとも「易姓革命」など起こっていない。社会主義者、共産主義者などの天皇廃絶論者達は、この点について故意に触れていないものと考えられるが、その他の女帝容認派たちは、「男系」・「女系」について一体どれくらい認識しているのかはなはだ疑問だ。ほとんどの方が「女性天皇」と「女系天皇」の違いについては、全く理解すらしていないというのが実情だろう。一部を除きマスコミもこの点に関しては、全くといっていいほど報道しない。皇位が百二十五代にわたって、「男系」のみで継承されてきた事実は重い。

※女性天皇・・・文字どうり女性の天皇
※女系天皇・・・母親は皇族だが、父親は非皇族の天皇の意(女系に移った時点で、もはや天皇とはいえないが、便宜的にこう呼んだ)


【平成十五年六月九日   開設】
【平成十七年二月二十三日 更新】

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