● OMソーラーとの出会い(1995年から1999年)

1995年1月の阪神淡路大震災当時、神戸の震度7地域に住んでいました。住んでいたマンションは全壊判定を受けるほどの被害だったものの怪我はなく、その後通常の生活に戻っていくまでのことを振り返ってみても、被災者としてはかなり幸運な部類だったと思います。それでも、と言うより、そういったこともひっくるめて、地震は圧倒的な体験でした。あれからまもなく9年になりますが、それより前の出来事は「地震の前」、それより後の出来事は「地震の後」、と別々の記憶の引き出しがあるような感覚は今も続いています。そして、地震だけが要因なのではもちろんありませんが、ものごとの捉え方が少しづつ変化してきた9年でもありました。

「地震の後」読んだ本に、岩波新書「共生の大地−新しい経済がはじまる−」(内橋克人著)があります。そこには、生活レベルで大切と思われる技術や仕組みを、人々のネットワークを築きながら実現していく、地に足着いた取り組みが紹介されていました。経済には全く疎いながら、こんなことが起こっているのかと驚き、こういうことが本来の経済や社会というものではないかと思いながら読みました。中でも強く印象に残ったのがOMソーラーの話でした。屋根で集めた太陽熱を直接熱として暖房や給湯に利用するという、その地域のその日の天候によって受ける恵みを活用する仕方。

1995年、地震の年に
出版された、内橋克人著
「共生の大地
地震後、「大地の守り神」と言って、
遠くに住む友人が送ってきてくれた
カバの置物

一方、好きな家を建てるなんて高嶺の花、という感覚だったので、OMソーラーの考え方はすごいと思いながらも、自分たちが建てることにはすぐには結びつきませんでした。

地震の年の秋に住み替えたマンションから最寄の駅へ行く道沿いに、1999年、一軒のOMソーラーハウスが建ちました。その家を見ながら通勤するうちに、Ysの会話は、「OMソーラーだ、いいね」からだんだんと、「OMソーラーハウスを建てたい」、「建てよう」、と変わっていきました。こうして、家作りへ向けての動きが始まりました。

「地震の前」だったら「共生の大地」が目にとまったかどうかわかりません。おかしいかもしれませんが、著者の内橋氏が神戸出身ということにもつながりを感じます。(Ys'妻 記)

● いろいろな見学(1999年から2000年)

まずOMソーラー協会の「ひまわり会」に入会し、協会加盟の工務店のモデルハウスや完成見学会に足を運ぶようになりました。

最初に見たのは職場近くの住宅公園にできたモデルハウスでした。OMの説明をしてもらい勉強になりましたし、冬のお天気のいい日だったのでOMのほんわかあったかさを初めて体験しました。ただ、大きく立派なモデルハウスで、自分たちが建てられるような家ではないと最初に思ってしまい、なんとなく家作りが遠のくような気もしてしまいました。

その後、ひまわり会の見学会情報や、工務店から届く案内で、兵庫県内の明石市、神戸市、西宮市などで開かれる完成見学会を見てまわりました。最初の1年で5、6軒だったでしょうか。見ていく中で思ったことを順不同でならべてみました。

というような感じで、OMを建てようと始めた家作りへの第一歩でしたが、かえってOMが本当にいいのかを考え直すことにもなり、また、考えてもみなかった建築家に頼むことを視野に入れたりすることになりました。(Ys'妻 記)

● TさんのOMソーラーハウス訪問(2000年6月)

ある日、Ysふたりの大学時代の同級生のK夫妻と会った折、これまた同級生のT夫妻が「凝った家」を建てたという話が出てきました。よく聞くとOMソーラーらしい。T夫妻とは大学時代を含めてこれまでほとんど接点がなかったYsですが、K夫妻に頼んでもらって訪問が実現しました。

OMの考え方に感銘を受けてOMソーラーにしたというTさんは、家作りに力が入ったようでした。建設中は毎日現場に通ったそう。大工さんと仲良くなって、図面にない棚をタダで作ってもらったとか。明るく気持ちのよいお宅で、奥行きを感じられる玄関アプローチや、和室を取り囲むデッキなど個性的な工夫も楽しく見せてもらいました。

そして、OMソーラーに住むのがどんなものなのか、じっくり話を聞かせてもらうことができました。たとえば....

もちろんそのおうち一軒のお話ではあるのですが、毎日のくらしから出てくる話なので、見学会を見ているのとは違って具体的なイメージがわいてきます。

なお、音の問題は、音が気になるYsが質問したので出てきた話です。Tさんは特にネガティブにとらえているようではありませんでした。また、その後OMのファンがシロッコファンに変わり、装置からの音の問題は改善されたようです。

おもしろかったのは、階段の上がり口に引き戸がついていたことです。家族みんなが一階にいるときは、この戸を閉めれば二階に暖気が上らず無駄なく一階が暖かくなるという工夫です。それまでの見学会で、大きな吹き抜けを設けて家全体を暖めるのがOMの常識だと思っていましたので、こういう考え方もあるんだな、と。

雨水利用も取り入れ、OMの使い方を工夫しながら住む、自然の変化と親しく付き合いながらの暮らしぶりに、やっぱりOMいいなと思ったのでした。この訪問は、その後の検討に大いに役に立ちました。Tさんありがとうございました。(Ys'妻 記)

● 土地の検討とハウスメーカー(2000年後半)

家の勉強と平行して土地もぼちぼち見て行こうと、新聞の折込広告に目ぼしい物件をみつけると不動産屋に問い合わせ始めました。OMソーラーハウスを建てることを想定しているので、「建築条件無し」が条件です。広告に出ている物件は、実際に見てみると今ひとつだったりすでに商談中だったりで、自然と別の物件を紹介してもらう流れになります。

ところが、「建築条件無しの土地」と言っているにも関わらず、多くの不動産屋は新築一戸建てや建築条件付土地を紹介してきます。OMソーラーを考えているという話は営業マンの耳を素通りのようです。どの客の顔も「一戸建てに住み替える客」最大公約数にしか見えないのでしょうか?強引な営業マンもいて、うかうかしていると「建物のプランをお見せしましょう」と事務所につれて行かれそうにもなりました。

ただ、確かに建築条件の無い物件はそう多くありません。広告を見てここよさそう、と思う土地には建築条件がついていることが多く、建築条件無しの土地を探すのは難しいのかな?とも思い始めました。そこで、近所で開かれるハウスメーカーの構造見学会や完成見学会を覗いて、話を聞いてみたりもしました。震災後の区画整理が進み、戸建て住宅が次々と建つ時期でした。案外いろいろなタイプのプランがありますが、話を聞いてみると、おすすめ以外から建材を選んだりするのは非現実的で、国産材を使いたいというようなYsの希望とは重なりそうもありませんでした。

そんな中、Ysの希望をよく理解してくれる不動産屋が出てきました。2年ほどのインターバルののちに実際に土地の仲介をしてもらうことになる、地元のH不動産です。営業のMさんは、Ys希望の場所、広さ、値段を考え合わせ、もちろん「建築条件無し」の土地情報、しかも、まだ一般に出回る前の情報をまめに連絡してくれました。強引さもなく、こちらが本当に気に入る物件が出るまで粘り強くつきあってくれそうでした。不動産屋選びも大切だということがよくわかりました。

ところが今度は、Ys夫の転職や転勤の可能性が出てきて、すぐに家づくりを始められる状況ではなくなってきました。家づくりの勉強をしながら仕事のほうが落ち着くのを待つことにしましたが、やはりそのような状況ではあまり力が入りません。見学会などからも足が遠のき、実質しばらくお休みになりました。 (Ys'妻 記)

● それは折込チラシから始まった 2002年10月 

Ys'夫は02年10月に転職しました。転職先が関西圏であったことで、やっと土地探しが再開できるようになったのですが、すぐにパワー全開で探すつもりはありませんでした。でも、02年10月下旬のある日、日経新聞に入っていたA不動産の折込チラシをきっかけに、突然「はまる」ことになってしまいました。

その土地は、住みたい地域のひとつだった芦屋市平田町にありました。住んでいるマンションからも歩いていけますし、ごく軽い気持ちで場所を聞き、現地へ行ってみました。残念ながら、高速道路や国道の音が結構聞こえるので、すぐに買いたいという気持ちにはなりませんでした。しかし、散歩ついでその周辺を歩いていると、もう少し高速道路から離れたところに、格好のサイズと値段の土地が売りに出ていました。

芦屋川と六甲山

早速看板に表示されていたB不動産に連絡しました。しかし、建築条件つきです。そこで、指定建築会社でYs'が希望するような自然素材の家をできないか、確認をお願いするとともに、他に物件がないかファックスも送ってもらいました。

建築条件つきの土地は、Ys'が希望するような家は無理とわかりましたが、他にも結構よさそうな物件があるのです。家の北側に借景できそうな庭のある土地も出ていました。でも、間口が少し狭そうです。どう判断すべきか迷っている内に、その土地は売れてしまいました!

でも、これをきっかけに不動産屋さんから土地の話がくるようになり、結果的に土地探しにはまっていくことになったのでした。(Ys'夫 記)

● 建築家探し開始 2002年11月末 

家作りは建築家+工務店という組み合わせで行おうと考えていました。過去に見学した工務店設計のOMソーラーハウスはデザインが今ひとつだとと感じていたこと、また施工になったときに監理をしっかりしてもらいたいというのが理由です。ただし、土地探しは建築家探しより前でもいいと思っていました。

しかし、10月の土地探しで学んだことがありました。Ysの財力では、広さを確保しようとすると、どうしても形が細長だったり、旗ざおといった変形になること、そして変形だと我々が希望するような家が建てられるかどうか、我々自身では判断できない場合が多いということです。そうなると、建物の専門家の手助けが必要です。そこで、できれば先に建築家を決めたほうがいい、すくなくとも並行して進めるべきだということになりました。そこで土地探しをしつつも、お願いする建築家探しも行うことにしました。ますます忙しい!

インターネットや雑誌で建築家、工務店を探しました。主に以下の三つを使いました。リンクのページにもアドレスを掲載しています。

カーサウエスト 雑誌ですが、ホームページも充実してます。ときどき自然素材住宅などの特集があります。
建築系検索エンジン 地域別に建築家を探すことができます。
OMソーラー協会 OMの工務店が掲載されています。

その上で、以前OMソーラーの家の見学会でお会いした建築家のCさんに会いに行きました。その際、「自宅建築に関する相談のメモ」というA4一枚の紙を持っていきました。

自宅建築に関する相談のメモ
1.自分たちについて
- 共働き 家で仕事をすることもある(電話会議など)
- 家事は分担 (同時に台所にたつこともある)
- 長期休暇:旅行(海外が多い、自然や景色が主な対象) などなど
2.家についての希望
2−1 基本コンセプト
- 自然の力を利用したり、折り合っていくこと。
- 木や壁のぬくもりが感じられること
-「和」を取り入れること。例:畳コーナー、縁側
- 化学物質が極力減らせること   などなど
2−2 その他考えていることで、比較的重要だと思うこと
- できれば国産材をある程度使いたい
- 料理していて楽しい台所(使いやすさ、外に繋がっている感じ)
- 家のなかのシンボル。例:梁、柱   などなど

このようなものを作った目的は、設計をお願いするにあたって、我々の方向性と建築家の方向性が合うかどうかの確認することでした。もちろん雑誌などでだいたい合いそうな目星はつけているわけですが、こちらが勝手に思い込んでいる場合もあるかもしれないからです。Cさんからは「自分の方向性と合う」とのお答えをいただき、完成間近の家を一軒案内していただきました。(Ys'夫 記)

● 建築家? 工務店? 2002年12月 

建築家Cさんと会った後は、たまたまYs'夫が東京出張中に展示会をやっていた建築家Dさんに会い、さらに別の建築家Eさんの事務所へも訪問しました。

これらを通じて、工務店の選択についてYsが予想していなかったことがわかりました。Ysは建築家と工務店は組み合わせ自由だと思い込んでいたのですが、どの建築家もOMソーラーについては一つか、せいぜい三、四の工務店と仕事していて、我々の家でもそのどれかと組むことになるのでした。別に建築家と工務店が結託しているわけではなく、自分の考えや指示を的確に施工するには、ある程度気心がしれた工務店がいいということでした。 言われてみればその通りです。でもYsは、それならばデザイン力がある工務店に直接頼めば、建築家に頼むのとそう変らないかもしれないと思い始めました。ただ、前回書いたように、工務店の設計で気に入る家は見たことがありませんでした。

Eさんが「OMソーラーならば、ケイ・ジェイ・ワークス(以下KJ)が一番いい仕事をする。」と言っていたので、一応メールで問合せてみることにしました。『現在芦屋市に住んでいまして、この付近で家を新築することを考えております。現在お願いする工務店と建築家を探しています。但し、建築家については、特に頼まずに工務店に設計をお願いする可能性もあります。(中略)施工事例等、資料をいただけますでしょうか。』

早速代表の福井さんから返事をいただきました。そこには、『私どもの会社は、国産材の木の家づくりに特化した会社です。』からKJの家作りへ紹介が纏められていました。しかし『本当の建て主の為の木材を!使いたいと訴え続けて...』というようにびっくりマーク(!)が使われていたりして、「結構ぶっとび、かもしれないなあ。大丈夫かなあ」というのが正直な第一印象でした。でもパンフレットのセンスはいいし、まあ会ってみるか、ということで大阪府吹田(すいた)市のKJへでかけました。(Ys'夫 記)

● ケイ・ジェイ・ワークス訪問 2002年12月21日 

土曜日の午後にケイ・ジェイ・ワークス(以下KJ)を訪問し、代表の福井さんと設計部の山口さんにお会いして、こちらの考えを話したり、KJの家作りの説明を受けたり、建築例の写真を見たりしました。基本設計(1/50平面図と立面図まで)は二人で共同で行うとのこと。福井さんはしっかりと売り込みされますが、別に前回のメールで心配した「ぶっとび」ということもなく、楽しい話の中にも自然素材の家作りへの考え方が伝わってきました。また、山口さんはYsよりも若いですが、しっかりした感じ。写真でみせてもらった家もなかなか良く、あっという間に二時間以上経っていました。そして帰るときにはKJが一気に有力候補のひとつに浮上していました。(Ys'夫 記)

建築家に依頼するか、工務店に設計してもらうか
(ちょっと堅い話です)

最近は建築家に設計、監理を依頼するのがちょっとした流行のようです。それは本当に工務店に設計監理を依頼するより良いのでしょうか。Ysはまだ家作りが終わっていませんので、断定はできませんが、かならずしもそうとは言えないと考えています。むしろ大事なのは、建築家を使うことのメリットとリスクを理解し、さらに依頼しようとする建築家なり工務店の設計士と自分達が合うかどうかを判断した上で、建築家に依頼するかどうかを決めることではないかと思います。

建築家に依頼することのメリットは、より洗練されたデザインとなるが可能性が高いこと、よりじっくりと設計する可能性が高いこと、また監理者と施工者が別であることにより、施工に第三者の目が注がれることでしょうか。ただし、これらはいずれ建築家を使えば自動的に得られるものではありませんし、建築家なしでも満足できるレベルとなるかもしれません。

一方リスクもあります。一番大きいのは「作品」になってしまう可能性ではないでしょうか。設計者はだれでも自分の設計するものに、自分なりの考えを反映させたいと思うものです(Ys'夫も別の分野ですが設計をしたことがありますので理解できます)。ただしそれが強すぎると、住む人のためよりも「作品」としてどうかということが設計上の判断基準となってしまう可能性があります。工務店やハウスメーカーの設計士よりも、独立した建築家の方がその危険性は高いと思います(これも一人一人違いますが)。

振り返ってみれば、Ysは建築家や工務店が自分達に合うかどうかで選択したと思います。その際、建築家や工務店が設計した家のテイストが自分達の好みとあうかどうかはもちろんですが、それと同じくらい大事なことが二つあったと思います。ひとつは自分達の思いや考え方を理解してもらえるかどうかです。具体的な希望なら伝えやすいですが、施主が全ての方法を知っているわけではありません。設計者が、施主がうまく表現できない「思い」や「考え方」を分かってくれて、施主が考えつかない案を出してくれるかどうか、ということです。「あ、わかってもらえてる。」という感じとか、うれしい驚きがあることなどです。

もうひとつは、説明を受けたときにしっくりくるかどうかだと思います。建築家の中には、「ここはこうあるべき」ということをいう方もいますし、その理由がかならずしも理解できないこともあります。そういう場合に「この建築家が言うのだから素直に従おう」というのであれば、それはそれでいい組み合わせでしょうが、Ysはそうではありませんでした。建築家や工務店の方と話していると、こういったことが割と早い段階で見えてきました。

YsはKJならば別の建築家をつかうメリットはないか、かなり小さいし、福井さん、山口さんという設計を担当される方々とうまく合うと判断したので、独立した建築家は使わないことにしました。実際依頼してみて、もちろんコミュニケーションが100%正確などということはありません。でも、かなり「うれしい驚き」もあって、今のところは大正解だったと考えています。(Ys'夫 記)

● 土地決定まで 2002年12月末 - 2003年2月 

年末から建築家Cさん懇意の工務店が紹介してくれた土地を見たり、それまでに土地探しを依頼していた大手のB不動産、さらには別の大手F不動産紹介の土地を見たりしました。Cさんにわざわざ見ていただいた土地や、ケイ・ジェイ・ワークスの福井さん、山口さんに12月29日という年末に見ていただいた土地もあり、その中には一時は購入を決めかけた物件もありました。しかし、結局値段の折り合いがつかなかったり、希望よりちょっとだけ狭かったりして最終決定には至りませんでした。これが1月中旬でした。その後、しばらく目ぼしい物件はでませんでした。

長期戦になると踏んだYsは、まず朝日新聞をとることにしました。日経新聞だけをとっていたのですが、不動産のちらしはあまり入りません。

さらに、大手不動産会社だけではなく、地元に密着した不動産屋さんにも土地探しを依頼することにしました。以前マンション探しをしたときも、まだ大手には出ていない物件を紹介してもらったからです。2月はじめの週末はG不動産へ行き、翌週はH不動産へ行きました。

初めてH不動産へ行ったときに見せてもらった土地がありました。Ysの希望する広さの倍くらいあるのですが、東側の半分は他に買う人を探してもいいとのことでした。また、半分にしても値段がぜんぜん高いのですが、売主は企業で、しかも年度末が近いからかなり下がるかもしれないとのことでした。問題はYsが買うかもしれない西側の土地は細長いこと(間口8メートル弱、奥行き29メートル)でしたが、Ysが買うならばH不動産は売りやすい形の東側の買い手があるかもしれないと考えたようでした。

その日のうちに土地を見に行き、10日後には決定し、20日後には契約していました。もちろんケイ・ジェイ・ワークスの福井さん、山口さんには土地を見てもらって、OMソーラーの家を建てるのに問題なさそうであることは確認してもらいました。結局東側はH不動産が自分で買って、あとから転売しました。やはり大手ではできない芸当です。

地元の不動産屋さんを使うという作戦が成功したわけですが、それにしてもあのタイミングでH不動産に行かなければ、今頃はまだ土地を探していたかもしれません。やはり「縁」なのかな、と思います。それにしても、一年契約した朝日新聞は、、、まあこれから買う電化製品のチラシも入っているので、無駄にはなってません。(Ys'夫 記)

● デザインコンペ依頼 2003年3月 

土地はきまりましたが、設計、施工の依頼先はまだ決まっていませんでした。そして、庭との関係が依頼先選定の大きな要素として浮上してきました。なにせ、幅8メートル弱、奥行き29メートル(223平米)という思いがけない広い土地に、建坪せいぜい60平米くらいの建物です。特に奥のほうは幅が7メートルちょっとで、井戸もありますから、庭にするしかありません。

候補は二つに絞られていました。ケイ・ジェイ・ワークス(以下KJ)と最初に訪問した建築家Cさんです。後者の場合は、L工務店を使うことになります。最終的にはKJを選ぶことになるのですが、その経緯にしばらくお付き合いください。

何故これらの二つを選んだかと聞かれると正確には説明できません。多分、テイストが合うことよりも、自分たちの思いを聞いて、理解してもらえるかどうかが大きいと思います。その上でKJは、Ysが建てたい国産材で真壁(柱が見えている壁です)の家を多く手がけていて、しかも工務店なのに(失礼!)センスがいいと思いました。また、OMソーラーの技術レベルも高そう。一方Cさんは、土地の持つテーマ(井戸がある、など)をうまく生かすのが得意で、しかも先生ぶらず住み手と一緒に考えていこうという姿勢の方でした(まさに思いを聞いて、理解してくれるのです)。また、過去の実績から、広くなりそうなYs'の庭をふくめた総合的な提案をいただけそうでした。

Cさんが真壁はあまり勧めないのと、L工務店に少し不安があったので、KJに7割くらい傾いていましたが、決めてしまえる程ではありませんでした。そこで、不遜にも(?)デザインコンペと大雑把な費用見積もりをお願いすることにしました。両者の設計スタイルが違いましたので、まったく同じ書類に基づいたコンペにはなりませんでしたが、Ysが重要と考える点は同じように伝えました。ここでは、KJにどんな風に依頼したか書きます。KJは通常の基本設計として行いたいということで、A4で10ページ近い「設計カード」という書類を渡されて記入しました。そこには、特に大事な「訴えたいこと」から、普段の生活、個々の部屋や外観に関する希望、はては手持ち家具のサイズまで記入するようになっていました。

「設計カード」に書いたことを、いくつか拾ってみましょう。
  * 自然の力を利用し、折り合う。ただし、人工エネルギー利用時は、無駄なく利用。
  * 木、壁のぬくもり。「和」の取りいれ。
  * その家を、その家たらしめる何らかの特徴やシンボル。ただし、さりげない特徴であってほしい。
といった、大上段に構えたような項目もあれば、
  * 自転車置き場二台分必要
  * 照明は白熱灯主体にしたい
なんていう、すごく具体的な項目もあります。

さらに、庭を生かす、という点について、わざわざ別紙にまとめて渡したのですが、これはまた次回。 (Ys'夫 記)

● 「庭を生かす」という依頼 2003年3月 

デザインコンペ依頼の続きです。

「庭を生かす、という点についての希望等」というA4一枚のシートを作成してケイ・ジェイ・ワークス(KJ)に渡しました。また、建築家のCさんにも同様の内容を依頼しました。以下は抜粋ですが、「庭とつながった感じ」といいながら、Ys'夫と妻はそれぞれ別の意味で庭とのつながりに重きをおいていることがわかります。

庭を生かす、という点についての希望
Ys 2003年3月xx日

この土地は南北に細長く、しかも北の井戸を生かしたい(たとえ水がでなくても、景観的に)ため、どうしても南北に庭がわかれるものと思います。これらの庭、特に北側の庭をうまく生かす設計が一番の希望です。ただし、必ずしも庭のデザインが優先ということではなく、むしろ「家の中から、外につながった感じになれる」ような建物のデザインが大事ではないか、と考えています。

a. 建物の概要
(省略)

b. 部屋の配置
LDKは一階(気軽に庭にでたり、犬と触れ合えるようにするため)。(以下、省略)

c. 庭とつながった感じ
一番重要な要件。一階については、Ys'夫の持っている感覚では、庭に接していない部屋からでも庭の光や風を感じることができることであり、視線が庭まで抜けている部分があることである。ただしその部屋が明るければいいということではなく、むしろ若干の陰影がある方がいいかもしれない(その方が庭の明るさを感じられるから;田舎の家のイメージ?)。Ys'妻の持っている感覚では、内と外が分断されていない感じで、縁側や土間の利用が考えられる。また、台所については庭に視線をのばせること。また、二階についても部屋や廊下から、どちらかの庭が望めると良い。(さらに口頭で補足します)

d. 庭の大きさ分配としつらえ
南北同じ程度の大きさでもよいし、北を広く確保してもよい。(以下、省略)

もう一度土地を見てもらい、「設計カード」と「庭を生かす...」で3時間ほど説明して、設計案の提示をお願いしました。期間は約二週間です。どうなるか楽しみでした。(Ys'夫 記)

● 実例見学と自然乾燥の杉 2003年2-3月 

建築家Cさん+L工務店とケイ・ジェイ・ワークス(以下KJ)の二組にデザインコンペをお願いするのと前後して、Ysはそれぞれが建築した家を見学させてもらいました。

まずL工務店が作った真壁の家です。Cさんの建築例では真壁がほとんどないため、YsはL工務店が真壁の家を作ったとき、どうなるか心配していました。そこでL工務店自社設計の真壁の家を見学させていただくことにしました。土曜日の午後、すでに施主が住んでいる家に工務店の方とお邪魔しました。

この方は茶道教室を自宅で開かれている一人暮らしの方でした。玄関を入ると左に茶道教室でつかう和室、玄関まっすぐはリビングで、リビングと和室は小さいけれど落ち着いた和風の庭に面していました。さて、建物ですが、Ysの心配は全く外れていました。仕上げも非常にきれいで、まったく問題なしです。また、次にL工務店がつくる一戸建ての茶室について施主の方がアドバイスするなど、信頼関係が伝わってきました。我々までお茶とお菓子をいただいて、楽しく一時間近くも過ごしてしまいました。これでL工務店についての心配はほぼ解消しました。

ケイ・ジェイ・ワークスの方では、三軒見学しました。一軒目は、住んで一年半経った家を十何人かで訪れて見学したり、お話を聞くという企画に参加しました。コストの関係でOMソーラーではありませんが、土佐杉を使った家でした。人工乾燥の土佐杉で、すこしこげ茶っぽい色ですが、これでもいいかな、という感じでした。なぜかこの家にも茶室があり、順番によばれて奥様が点てたお茶をいただきました。あと、このときKJの方が何人かいたのですが、うまく言えませんがほぼみんなYs好みの「ちょっとほんわかした、いい感じ」で、好印象を持ちました。

翌週、二軒目は土佐杉OMソーラーハウス。この時は大きな収穫が二つありました。まず、見学会場へ行ってみると、たまたま基本設計担当の山口さんがいて、案内をしてくれました。構造、材料やいろいろな工夫などの説明がわかりやすく、しかもYsの質問に対して的確に答えてくれます。見学会場を去る時には、Ys'は二人とも、「この人とならばコミュニケーションがきちんと成立し、信頼できそうだ」という印象を持ちました。このコミュニケーションの成立というのはとっても大事だと思います。

もうひとつは、こちらの土佐杉が自然乾燥だったことです。自然乾燥だと、どうしても着工までの期間が数ヶ月長くなってしまいます。前週の人工乾燥の土佐杉を見たときは、人工乾燥でいいと思ったのですが、自然乾燥のきれいな(まさに自然な)木肌を見てみると、自然乾燥にちょっと惚れてしまいました。そして結局Ysは自然乾燥の土佐杉を選ぶことになるのですが、この見学会に行かなければ人工乾燥になっていた可能性大です。

さらにその翌週は吉野杉の家の完成見学会。こちらはKJ代表の福井さんが自らエネルギッシュに案内してくれました。そして、構造材としては、吉野杉よりも土佐杉(しかも自然乾燥)が好き、という印象を持ちました。

色々な不安は解消し、Ysの細長い土地を生かすデザインが選択の決め手として残りました。(Ys'夫 記)

● 設計プレゼンテーションとパートナー決定 2003年3月 

いよいよ建築家Cさん+L工務店とケイ・ジェイ・ワークス(以下KJ)の二組から設計のプレゼンテーションを受けました。

プレゼンテーションの進め方は、これが一般的なのでしょうか、どちらもよく似ていました。平面図を見ていきますが、渡辺篤の「建物探訪」風とでもいいましょうか、あたかも実際の家を見学しているような想像をしながら説明をうけました。門扉をあけると、アプローチはこうなっていて、玄関ドアを開け、玄関内部はこんな感じで、さらに戸をあけるとリビング、見上げると吹き抜けがあって、ちなみにここには便利な収納が、なんて感じです。結構理解できたような気がしました(実際は、後から細かい話になって勘違いもあったことがわかりました)。

家の向かい、道路を挟んで細い路地がまっすぐ見えます。建築家Cさんのプランは、そんな土地の特徴をテーマとして生かすプランでした。もちろん居間からは南庭も北庭も見渡せます。おまけに、見せていただいた1/50模型には植物や塀、自転車置き場まで配置されていました。

KJのプランは、通り土間がありました。土間を設けることは、Ys'妻の要望でもあったのですが、細長い家にさらに通り土間を作るとは予想していませんでした。しかし、これで一階に空間的ゆとりが生まれました。また、台所からは南、北、さらに東に作った坪庭も見られます。正直なところ、工務店が「庭を生かす」なんていう無茶な(?)依頼に対応できるか、やや不安が残っていたのですが、そんな不安は見事に裏切られました。

両者のプランに優劣をつけることは難しいことですが、結論はすぐにでました。南北の庭の使い方がざっくりとしていて、全て使い切ることができる点など、全体的にKJのプラン方がYsにはしっくりきました。そしてKJに設計施工を依頼することを決めました。 (Ys'夫 記)