◆【山行日時】 2005年5月3日〜4日
◆【参考コース・タイム】
□5月3日 快晴のち夕刻一時ガスのち快晴
保井野・登山口=1時間15分=から池=35分=水呑場=20分=稜線(梅ヶ市コース合流点)
=30分=堂ガ森下=60分(旧、白石小屋先の水摂り含む)=五代の分れ=20分=鞍瀬ノ頭(泊)
□5月4日 快晴
鞍瀬ノ頭=15分=二ノ森=35分=西冠のコル(最低コル)=55分=石鎚山(弥山)(=25分=天狗岳、南尖峰方面往復)
=30分=夜明峠=35分=八丁=20分=成就=20分=ロープウェイ・成就駅
◆【正味歩行時間】
□5月3日 4時間00分(旧、白石小屋付近での水摂り含む)
□5月4日 3時間55分
◆【詳細】
四国の山には'99年秋初めて剣山を訪れて以来、その翌年の'00年秋から機会を見てはその山域のもうひとつの盟主とも云うべき三嶺に何度か足を運んだ。
剣山系もまだまだ行き尽くしたとは言い難いが、自分の気持ちのなかではひと段落付いたように思われるので、この連休は四国での未知の領域、西日本一の標高を誇る石鎚山を主峰とする石鎚山系に初めて足を向けることにした。
ここで問題となったのはそれぞれの山域の主峰を一般的なルートでピストンとなると人の多さは見え見えで、石鎚だって同様に違いないこと。
早速、Webや市販ガイド・ブック等で情報収集してみると、この山域の西端に位置する堂ガ森を経て石鎚へと縦走するルートは未だ俗化されていないとの紹介が目に付いた。
「このコースならのんびり歩けそう・・・。」
コース・タイムも加味した上、稜線上で一泊したのちこのルートで石鎚へ登頂することが最良の経路との結論に達し、山行前日の5月3日夕、(あ)と二人自宅を後にした。
自身にとっても石鎚山系に足を向けるのは初めてのことだが、(あ)にとってはこの山行でもうひとつ初めて経験することがあった。それは、宇野から高松までで利用することとしたフェリー乗船。
この日は西条市内で宿を予約しておいたので到着時間に制約がないことをいいことに航路を使って四国に渡ることを考えた。
本州側の乗り場である宇野港に着いてみると、かつてはこの経路が四国へのメインルートだったこともあり、当時の賑わいは当然のことなのだが、今や瀬戸大橋ができたことによりずいぶんさぶれたかと思いきや、まんざらでもない様子だ。
直前の船が出港したばかりだったのをいいことに、近くのスーパーで買い出しを済ませ乗船時間までしばらく駐車場で整列して待つ。やがて乗船時間になったら係員の方の誘導により乗船する。
(あ)にとってみればこの動作自体が信じられないように見えた。それもそのはず車が順次、船の中に吸い込まれていくのだから無理もない。
所定の位置に駐車し、車を離れたら一目散に最上階の展望デッキへ向かい、先ほど買い出しで調達したもので夕食。刻々移り変わる風景を見ながら食べる夕食は、
「きっと違う味がした?」
はずだが、
「ちょっと風が冷たかったのと、瀬戸大橋が思わぬ遠くて、意外と小さくしか見えなかった。」
のがちょっと残念だったな〜。
親とすればフェリー代がかつてのことを思うとずいぶん廉価になったことと、ただ単に彼の体験のためとの思いの一石二鳥で航路も利用しての道中となったが、(あ)にとっては新鮮なことの連続だったようだ。
宿で一夜を過ごしたら伊予西条駅よりJR予讃線で壬生川駅へ向かい、駅前からはTAXIで登山口の保井野へ。
当初は壬生川駅から周桑バスで登山口の保井野へ向かうことも考えていたが、この便は一日5便しかなく午前中の適当な時間帯にそこに着く便がなかったためTAXIを利用することにした。
(壬生川駅〜保井野登山口間の料金は7,040円だった)
 |
|
 |
JR予讃線、壬生川駅 |
|
登山口より歩き始める |
|
登山口の駐車場にはすでに数台の車。到着が10時近くだったことを考えれば当然だろうか?
道標に従い廃屋脇から歩き始める。しばらくは左右に放牧場跡を見ながらの歩行が続く。
左上方に堂ガ森稜線が見え隠れするものの気が遠くなるほどの高さに、うんざりさせられる。
小さな沢を渡り、ナメ滝風の沢を横切ると自然林を歩くようになり、やがてはジグザグに急登する。
新緑が目に眩しく右手の青滝山稜線も次第に低くなるので励みにする。
登山路脇にササが現れだすとやがてから池。
 |
|
 |
から池 |
|
慰霊碑の建つしゃくなげ歩道入り口 |
|
ここで一旦、傾斜は緩くなるが長くは続かず、今度は尾根の急登となる。
この付近は県内きっての石楠花の名所らしいが、残念ながらその時季にはもう少し早かったようで花は見られなかった。
左に見える沢が小さくなると右の稜線が低くなり、上方にスカイラインも確認できるくらいになると水場に出くわす。
たっぷり詰め込んだら稜線に向けもうひと頑張り。ロープの手も借り足元に気をつけながら登ると、ササ原が広がるようになり稜線が近いことを察知できるようになる。
やがて樹はなくなり青空が目の前いっぱいに広がると梅ヶ市からのコースと合流、稜線に出た。(下画像)
「うーん、素晴らしい!」
この瞬間は何度体験してもたまらない。
|
 |
稜線に出ると一気に景観が広がる |
ここで遅めの昼食を摂ったら笹原を縫って堂ガ森目指し歩く。
傾斜が緩くなったことでずいぶん歩行が楽になったのは当然の事なのだが、それ以上に歩調を軽快にさせたのは、何といっても眼前に広がる素晴らしい光景。
山座同定できればもっといいのだが、それができなくても気分は爽快!
見上げれば、堂ガ森のササ原の彼方の蒼いキャンバスに飛行機雲が白い絵を描く。
稜線まではあんなに暑くて汗だくだったのに、ここでは吹き抜ける風がこの上なく清々しい。
これまでもある程度の風は吹いていたはずなのに、こうも感じ方が違うのだから目に入る光景がいかに人の気持ちを左右させるかを身をもって体感する。
 |
|
 |
堂ガ森を左に見て歩く |
|
鞍瀬の頭を目指し堂ガ森をあとにする
(左より西ノ冠岳、石鎚山(弥山)、鞍瀬ノ頭、五代の分れ) |
堂ガ森下の峠まで来ればさらに新たな展望が開け、一際大きな鞍瀬ノ頭が目に飛び込む。
左に西ノ冠岳とその間に小さいながら弥山も見て取れる。 右下のコルへと続く稜線の中間辺りが五代の分れ。さらに尾根は五代ヶ森へと続く。
ここでの主役はやはり鞍瀬ノ頭。他の山はいくら石鎚と言えども脇役に回らざるを得ない。
しばらく談笑し情報交換したら、ササ原の稜線漫歩。緩やかに下っているので鼻歌交じりで歩きたい気分だ。
小さな沢(ほとんど水なし)を渡りテント場からは白石小屋を見がてらその先の水場へ向かう。
白石小屋は朽ち果て使えた物ではなかったが、その先の水場は貴重な存在だ。
枯れていては大変と多少の心配をしていたが2、3日前に降雨があったこともありザーザー流れている風ではなかったものの数リットルくらいならすぐに満たされるくらいの流水はあったので、ホッとした。
水は稜線下で確保していたが、ここのお陰でこれまでに飲んだ分とさらには明日の分を補充できた。
 |
|
 |
鞍瀬ノ頭が大きくなる |
|
堂ガ森を振り返り見る |
テント場に戻り、ここからは五代の分れへ向け緩やかに登る。
これまでのことを想うと、
「この登りをこなすとどんな光景が目の前に広がるのか・・・。」
大いに期待しながら登高する。
 |
|
 |
二ノ森と岩黒山、筒上山 |
|
五代ヶ森へと続く五代尾根とwaiwai隊ご夫婦 |
そこに着くと、やはり予想に違わぬこれまでとはひと味違う雄大な光景が広がった。左手に二ノ森が大きく顔を見せ、正面には面河谷を隔て岩黒山や筒上山。これまで見えなかった景色が目の前に現れた。
展望は欲しいままになったが、ここで思案。
「さて、今日の寝床をどこにするか。」
これからはこれが最大の懸案事項。
入山前、”松山のTさん”より得た情報によると、
「鞍瀬ノ頭が展望抜群で申し分なく、二ノ森山頂でも一人用のテントなら張れなくもない。」
とのこと。
「五代の分れの方が白石小屋テント場に比べるとより展望は優れている。」
との情報も堂ガ森下では得ていたものの、いざここに来て見ると、
「石鎚・南壁が見えないじゃないか・・・。」
目の前の二ノ森まで行けばそこは見えそうだけど、手前の鞍瀬ノ頭も展望抜群との情報もあるし・・・。
「一度、二ノ森まで行って状況確認のうえ最悪、引き返してくるか、あるいは鞍瀬の頭に登り、やはり状況確認のうえ二ノ森に足を向けるか。」
「さて、どうしたものか・・・。」
思案していると二ノ森方面からこちらに向かってくるひとりの人。
「二ノ森山頂とこことではどちらがテン場に適所でしょう?」
尋ねてみると、
「ここの方がいいですね。」
ここでさえちょっと無理がありそうな場所なのに、ここにも増して条件が悪いとなると・・・、二ノ森山頂はあえなく棄却。
残るはすぐ上方に見える鞍瀬ノ頭のテッペン。
しばらくすると、到着したときから気になっていたデポしてあるザックの持ち主二人がそこから下山してこられた。
これは聞くしかない。
「この三者で最善はどこでしょう?」
「もちろん”テッペン”でしょう!」
「360度見えますよ。」
心配していた、
「石鎚南壁もバッチリ。」
らしい。
「経路もここから直登するより二ノ森方面から登り返したほうが楽かもしれませんね。」
生情報を得てずいぶん気分は楽になった。
彼らは、自宅からでも鞍瀬ノ頭が見えるほどのうらやましい所に住まわれているらしい。現在は転勤の都合で大阪暮らしらしいが、今回は何と、一般道ではない五代ヶ森方面への縦走のため遠征されて来られたらしい。
あまり人のことをどうの、こうの言えた義理ではないものの、
「世の中、どこに行っても”好き者”はいるもんだ。」
 |
鞍瀬の頭へ向かう(右は二ノ森) |
「これで恐れるものはなくなった。」
意気揚々、二ノ森方面へ向け歩き出す。
戻り気味に登り返し鞍瀬ノ頭に着くと、これまでの助言をいただいた方々のおっしゃったとおり、そこからはすん晴らしい景観が広がっていた。早速、テント設営しこれからが至福の時間。
 |
|
 |
鞍瀬の頭にて幕営(左より西ノ冠岳、石鎚山、our tent、二ノ森) |
|
写真撮影のまね事をする(あ) |
幕営地となった鞍瀬ノ頭付近からの光景は私の稚拙な表現力では言い表すことができませんので、画像をご覧ください。
 |
|
 |
五代尾根と五代ヶ森(先端) |
|
waiwai隊のツエルト方面を見やる(あ) |
|
|
|
|
|
 |
|
|
堂ガ森と赤く染まりゆく伊予灘 |
|
|
|
 |
|
 |
ガス湧く石鎚山と飛行機雲 |
|
石鎚山と二ノ森 |
|
|
|
 |
|
 |
ガス湧く石鎚山と二ノ森 |
|
ブロッケン現象 |
落日が近づくと西の空でショーが始まり、その後もしばらくは行き交うジェット機が見事な演出を見せてくれる。
 |
|
 |
伊予灘に沈む夕陽 |
|
飛行機雲 |
夜の帳が下りると天空には満天の星空が広がり、地平線近くには街の明かりがきらめく。
心行くまでこの空間を満喫したらシュラフにもぐり、就寝とする。
夜半から風が強くなりフライを揺さぶる音で熟睡とまでは行かなかったまでも、外がほんのり明るくなった頃を見計らって外を覗いて見ると、東の空はすでにあかね色になりかけていた。
「(あ)っ!、起きろっ!!」
(あ)の頭を揺さぶり、起こす。
昨夜、
「明日の朝、起こしてよ。」
と頼まれていたのだ。
テントから外に出ると相変わらず風は強かったが、そこにはそんなことは気にならないほどの素晴らしい光景が広がっていた。
 |
黎明の空に三日月(左は二ノ森) |
次第に石鎚山の山頂部の彼方が明るさを増し、やがて日の出の時間を迎えると、「ダイヤモンド富士」ならぬ「ダイヤモンド石鎚」の様相で山頂部、南尖峰の右端からキラリと太陽が顔を覗かせ二人の顔を照らした。(表題画像)
 |
|
 |
日の出 |
|
強風にふくれっ面のテント |
テント撤収したら石鎚に向け、まずは二ノ森へ。
 |
|
 |
まずは二ノ森へ |
|
二ノ森方面より鞍瀬ノ頭を振り返る |
二ノ森山頂は聞いていたとおり二人用テントを張るにも少し無理がありそうなほどの狭い山頂だった。
石鎚方面の眺望はよかったがwaiwaiさんからお聞きしていたとおり、確かに鞍瀬ノ頭方面の眺望が優れなかった。
 |
|
 |
二ノ森山頂より石鎚山 |
|
二ノ森北方より石鎚山 |
二ノ森をあとにしたらシコクシラベも茂る縦走路を行く。
1,866は高瀑側をトラバースするので難なく過ぎる。
「快調、快調。」
振り向けば昨日から歩いてきた道のりが遥かに遠い。
 |
|
 |
1,866は高瀑谷側を巻く(奥に見えるのは弥山〜天狗岳) |
|
西冠ノコルより二ノ森、鞍瀬ノ頭、堂ガ森 |
西冠のコルまで来れば石鎚がその様相を急峻な鋭鋒に変え、聳え立つようになる。
 |
|
 |
次第に弥山が大きくなる |
|
シコクシラベと二ノ森、鞍瀬ノ頭、堂ガ森 |
きつそうに見えたトラバース道も、いざそこに足を踏み入れると周りの景観を楽しみながら歩けることもあり、いつしか面河分岐まで到達していた。
樹林帯に入り弥山を北に回りこむと初めて北や東面の展望が開けた。
瓶ガ森の特徴ある山容が印象的だ。
小さな雪渓を過ぎると三の鎖下でメインルートと合流。
ザックの重みもあるので鎖場はパスし鉄骨組の立派な階段で山頂を目指す。あえぎながら一歩々々歩き、石積みの階段を上りきると弥山山頂に到着だ。
 |
|
 |
天狗岳より瓶ガ森と赤石山系 |
|
天狗岳へ向かう(あ) |
弥山からは写真で見慣れた天狗岳の三角錐が目に飛び込むが、それ以上に印象に残ってしまったのはあふれんばかりの人、人、人・・・。
これまでの静かな山旅は何処へやら。逃げるように天狗岳へ。
こちらは弥山のことを思うとずいぶん人は少なく、岩に腰を下ろしたら、しばらく風景を楽しむ。
(おにぎりを下さった群馬からのおじさん、ありがとうございました)
 |
|
 |
石鎚北壁 |
|
瓶ガ森を見ながら下る |
弥山に戻ると先ほどにも増して人だらけ。
温存していたリンゴを頬張ったら、ここでの長居はあまり意味もなさそうだし、時間もそれなりの時間になっていたので足早に下山する。
夜明峠までは足元に注意が必要だが、要所では鉄骨の階段があったり土止めの木があるので問題ない。
 |
ミツバツツジ |
ここからが意外と長かった。
八丁までがことのほか長く感じたが、何と言っても想定外だったのは成就からロープウェイ駅までの道のり。
成就=ロープウェイ駅と思っていただけに、この間は余計な道のりに感じられて仕方なかった。
ロープウェイ下に着いたのは14時を少し回っていた。15時17分の伊予西条行きのバスまで約1時間あったので近くの食堂で遅い昼食を摂り、定刻にバスの人となった。
 |
ロープウェイ前バス停 |
バスに揺られること約1時間、無事伊予西条駅前に降り立った。
宿に戻り、帰り仕度が出来たら来る際、目をつけていた武丈の湯で汗を流し帰路に着いた。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
ガイド・ブックで見たとおり保井野〜堂ガ森〜二ノ森〜石鎚山は人気の山域とは思えぬほどの静かな山歩きを堪能できた。
特に堂ガ森付近から見たササ原の向こうに鎮座する鞍瀬ノ頭や鞍瀬ノ頭からの夕景、朝景は素晴らしいのひと言。
一転、石鎚山に着くと、それまでとは比べものにならない人で溢れ、うんざりさせられてしまった。
◆【他の画像はこちら】
|