三年ぶりに見た三嶺からの西熊山稜線は、初めて目にしたときよりもさらなるインパクトで目の前にその姿を魅せてくれた。
今回の登山口、名頃登山口に着いたのは午前9時半。かつてはなかった立派な駐車場が完成し登山者の駐車車両ですでに満車状態。マイクロバスも停まっている。
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対照的に、かつてのここの駐車場だった川の対岸のお堂脇の小さな駐車場に車はなく、うっすらと雑草が生えていた。
歩き出して(9時55分)すぐのイノシシ牧場は荒れたままだが、林道路面はきれいになり左斜面の崩壊地は立派なコンクリート製防護壁。
あちらこちらに、目新しいものが目に付き、この三年間の時の移ろいを感じさせる。
林道は第一カーブからショートカットすれば、次に林道に出た際には登山口のすぐ下方なのでいくらかでも時間短縮できる。
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以前は踏みあと程度だったこのルートも、歩く人が多くなったせいかしっかりとした登山路となり、道を外すことはなくなった。
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先行のご夫婦と親子連れをダケモミの丘までにパス。
ダケモミの丘で一服するうち(11時10分〜35分)彼らは追い着き、しばし談笑ののち先へ進む。
ここから樹林を抜ける辺りまでは、ササの広がる斜面に広葉樹が広がる雰囲気のいい大好きなところだったはずなのに、どうも様子がおかしい。
あるべきはずのササがほとんどといっていいくらい無くなってしまっているではないか。
初め、昨今この近辺でシカの食害が問題となっていることを何かで見たことを思い出し、それがためのものかと思いきや、その面積が尋常ではなく、きっと別のところに原因がありそうな枯れようだ。
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斑紋的な枯れようではなく、ほぼ全面が枯れてしまっているのでかなり重症のようにも見えたが、実際のところはどうなんだろう。
たくさんの実をつけたマユミを見ると、やがて潅木帯を抜け展望が開ける。 |
剣山、次郎笈と、そこへと続く縦走路もくっきり見える。
一方で登山路脇のササの様子はというと、水場分岐まで来ても(12時10分〜45分)標高の低い辺りとさほど変わりなく、色合いは冴えない。
見上げると色づいた木々が鮮やかだが、足元の枯れたササの白っぽい色だけがここの風景には不似合いだ。
それでもここから上部ではササも色合いを取り戻し、三嶺らしい光景を見せてくれるようになる。
頂稜に出れば、あるべき三嶺がこれまでどおりの素晴らしい情景で出迎えてくれ、心安らぐ。 |
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まずはヒュッテへと向かい「今宵の寝場所確保を」と思いドアを開けると、そこには誰も居らず宿泊者では一番乗りだった。(13時ちょうど)
店を広げ終わった頃、ダケモミの丘で会い、その後水場分岐でもあっていた親子連れの二人が到着。
今後の行動予定を伝えた後、小屋を出てササを縫って頂稜を歩き、山頂を目指す。
天気も良く、最高の尾根歩き。
山頂に着いて、今日初めて見えた向こう側の光景にハッとした。
「ここからの光景はこんなに素晴らしかったんだ」と。 |
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これまでにも何度か見たことのある風景のはずなのに、まったく初めて見たかのようなとても新鮮な感覚だった。
大きくうねりながら西熊山へと続くササの海原と、最奥にちょこんと頭をのぞかせる天狗塚山頂。
彼方へと延びる稜線とそこから左右に落ち込む大きな谷が目の前に広がり、山懐の大きさを存分に感じさせてくれる。
眺望も絶好で、幾重にも重なる小さな尾根の彼方には遠く石鎚山系〜法皇山脈稜線までもくっきりと見渡せる。
この風景を見ながら遅い昼食をとり、それが終わったら西熊山へ向け歩き出す。(14時10分)
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山頂に到るまでもそう多くの人に出会ったわけではないし、山頂に着いても居る人はまばらで、これまでは人の少なさに少々拍子抜けのところがあったが、稜線を歩くようになるとその感覚はさらに増し、すれ違う人はごくわずか。
のんびり歩き、大タオを経て西熊山へは一時間ほど。いつ振り返っても、素晴らしい山容の三嶺がそこにある。
西熊山滞在中は稜線にガスがかかり展望は良くなかったが、三嶺へと戻る時間帯になってガスが晴れてきたので道中は終始展望を得ながらの歩行となった。
三嶺山頂へ戻ったのは17時過ぎ。今日の日没時刻はほぼ17時30分なので、計算どおり戻ってこれた。
あとは素晴らしいサンセット・ショーを期待しつつ、そのときを待つだけ。
日没時の光景は100点満点とはいかなかったものの、その後に繰り広げられたショーは、それなりに満足のいくものだった。
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小屋に戻ると、予想に反し宿泊者はほとんど増えておらず、総勢12〜3名だった。
夕食後、隣の寝床となった例の子供連れの方と談笑したあとシュラフにもぐりこんだ。
日の出の時刻は6時頃。
5時過ぎに目を覚まし、少しばかり腹ごしらえをしたら小屋をあとにする。
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朝の光景は昨夕同様、地平線付近には雲がかかりくっきりとした日の出は見れなかったものの、太陽がその雲の上に顔を出してからはほぼ快晴状態だった。
しばらくは昨晩小屋で夜を明かした何人かの人たちと一緒に山頂からの光景を楽しむ。
7時半過ぎ、小屋に戻り遅い朝食をとったら、一晩お世話になった親子の方と小屋に別れを告げ、山頂へ向け再出発。(8時15分)
山頂で昨晩カヤハゲテント泊の青年と、白髪テント場から到着の姫路工大生たちとしばらく談笑ののち、カヤハゲへ向け急坂を下る。(8時45分)
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カヤハゲ付近まで来ると、稜線部の歩行ではつい忘れていたササの立ち枯れがさらに深刻であることに驚かされた。
この南斜面一帯がもっともひどい状態で、青い葉っぱが一枚もないほど無残な状態をさらけ出していた。
(カヤハゲ着、9時20分 発、同30分)
韮生越えを経て、コルからふた登りすると白髪別れ。
(10時ちょうど)
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ここのササも枯れてしまっているが、お陰でずいぶん展望が良くなり、特に西方は視野の下方に目障りなものがなくなった格好となるので綱附森〜天狗塚〜西熊山〜三嶺の大展望を得ることができる。
東には丸笹山、双耳峰の剣山〜次郎笈と、やや骨太の稜線がそこへと続いている。
白髪小屋をあとにするとアップダウンのあまりない尾根歩き。
樹林帯の歩行では展望はあまり得られないが、ササ原を歩く際は雲ひとつない快晴だから剣山系の大展望を欲しいままにできる。
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これまでに二度この尾根は歩いたことがあるが、そのどちらも雨にたたられ展望皆無だったので、好天下、展望を得ながら歩くのは今日が初めてのことだった。
ササ原に浮かぶように見える三嶺〜西熊山〜天狗塚の稜線をようやく目の当たりすることができたのだった。
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石立分岐を過ぎると(11時45分)木漏れ日の気持ちの良い二重山稜の尾根道を行く。
高ノ瀬山頂着はちょうど昼となったので、腰を下ろしわずかに見える剣〜次郎を見ながら小休止。
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あいにく三嶺方面はここからは樹間にわずかに望めるに過ぎない。高ノ瀬からは露岩のある少し急な下りがあるので足元に注意しながら歩く。
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高ノ瀬は今や尾根通しのルートが当然のルートとなっていて、かつて難儀した伊勢の岩屋へのルートはその入り口でさえササが生い茂り、倒れかけた道標がなければどこが入り口かさえ分からないほどになってしまった。
その分岐を過ぎると快適な尾根歩きに戻る。
左手の樹間に見え隠れする塔ノ丸を見ながら広葉樹の林を歩くと荒廃した高ノ瀬小屋跡に出くわす。
屋根は抜け落ち、床らしきものは朽ちて無残な姿となり、どう見積もっても使用不可。
やがて下山路分岐に出合い、丸石小屋へは立ち寄らず国体橋へと下って行く。(12時55分)
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このルートを利用するのは初めてだったので、まったく予備知識はなかったが、ルート脇や視界には絶えずブナ林が広がりとても気持ちの良いルートだった。
終始、急坂で、かつ大小のジグザグを切るように下るので
「登りに使ったら大変だろうな〜。」
なんて考えながらも
「やっぱりブナ林は癒しの森やな〜。」
と、今は下っているのをいいことにブナの尾根を森林浴気分で下って行った。
右手から聞こえてくる沢音が大きくなると間もなく国体橋で沢に降り立つ。(13時30分)
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標高が低くなったにもかかわらず、ここから奥祖谷かずら橋までの沢沿いを歩くようになってからのほうが、ルートが荒れている箇所があり足元に注意を要した。
左手下方に見えていた渓流が足元に近づくようになると、ひょっこりかずら橋のたもとに出くわした。
こわごわ渡る観光客を尻目にスリット状の橋を足早に渡りきり、人工的な階段を上るとパークランドに下山した。
(14時20分)
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車の回収にバス利用も選択肢にあったが、その時間(15時35分発)までにはまだ一時間以上もあり、事前のリサーチではここから名頃までの距離は2.6〜7キロだから、歩いても30分程度とみて国道を歩く。
名頃までは予想通りちょうど30分で到着。
国道といっても、何といってもそこは山奥の道。車の往来は少ないし見上げれば三嶺方面は見えるし、そう気になるほどの歩行を強いられる前に駐車場に到着した。
見ノ越へ駆け上がるとあんなに立派な駐車場があるにもかかわらず、道端にまで多くの駐車車両。
いくら三嶺を訪れる人が増えたからといって、ここまでではなく、剣山を訪れる人はけた違いのようだ。
夫婦池までにある展望台付近で三嶺方面を見やると、逆光の中、三嶺ヒュッテの屋根がキラリと輝いているのが見えた。
ラ・フォーレ つるぎ山でひとっ風呂浴び、葛篭の「手打ちうどん・田舎で暮らそうよ」で手打ちうどんをいただきながらしばらく談笑したあと家路に着いた。 |