お亀岩から三嶺、さおりが原  
大タオより三嶺

大タオより三嶺を望む
◆【山行日時】 2002年5月3〜5日
◆【コース・タイム】
□5月3日  くもり(稜線付近はガス)のち雨

西熊渓谷・光石駐車場=10分=堂床キャンプ場=35分=八丁ヒュッテ=25分=カンカケ谷・渡渉点

=1時間20分=最終水場=5分=おかめヒュッテ

□5月4日  雨

天候不良の為、停滞

□5月5日  早朝まで雨のちくもり時々晴れ

おかめヒュッテ=3分=お亀岩=30分=西熊山山頂=1時間10分=三嶺山頂=50分=カヤハゲ=37分=フスベ谷分岐

=25分=さおりが原=25分=フスベ谷=15分=駐車場
◆【正味歩行時間】
□5月3日  2時間35分

□5月5日  4時間15分
◆【詳細】
光石から八丁、カンカケ谷、お亀岩。西熊山を経てゴールデン・トレイルを三嶺へ。カヤハゲへ下り、さおりが原経由、光石。

昨年も今年と同じくG・Wに出向いた三嶺だが、その際は二つの目的があった。一つは新装の三嶺ヒュッテに家族で泊まること。そして、もう一つは満天の星空を同じく家族で見ること。前者はそうむずかしいことではなく、登って泊まればいいので簡単に達成できた。しかし、簡単に行かないのが後者の星空。そもそも、この時期に満天の星空を見ようとしたこと自体、少し無理があったようで達成出来ず終いになっていた。

大体、五月初旬、G・Wの頃と言えば例年でも天気傾向は周期的に変化するとしたもので、今日好天だからと言ってなかなか長続きしないもの。
ましてや、今年は春先からかなりの暖かさで季節の進行が例年になく早く、天気図を見てもすでに梅雨前線も現れたりして、走り梅雨のような状況も見られる。

こんな調子なら今年も星は期待できそうにないので、この際、星を見ることは半ば諦め、それならば、(あ)も一つ歳を重ね昨年よりは足も強くなっただろうから、自分しか見たことのない西熊山方面からの三嶺の雄姿を見ることを目的とし、カンカケ谷をお亀岩へ登り久しぶりにお亀ヒュッテに泊まり西熊山方面から三嶺を目指すことにした。
□5月3日
長笹谷
西熊渓谷、長笹谷に架かる橋
光石駐車場に着いてみると、
「ありゃッ、えらい少ないなー」
こんなに車が少ないのは初めてだ。天予報が芳しくないのと、今日から四連休でわざわざ天気の悪い日を選んで登らなくてもこれから先、三日の間には今日よりも天気のいい日があるだろうからと考える人が多いからこんなに少ないのだろうか。
まー、空いてるに越したことはないので、楽々と奥のほうに駐車。
おにぎりで腹ごしらえをして、
「しゅっぱーつ!」

駐車場を後にしばらく下ると堂床キャンプ場。渓谷を見ながら長笹谷に架かる鉄骨の橋を渡ると、すぐにさおりが原への分岐がある。
「ここへ下山のつもりだが・・・、果たしてどうなることやら」

フスベヨリ谷に架かる吊橋を渡り、しばらくすると綱附森への分岐。八丁へは遊歩道が続くが丸太で整備されているので、ちょっと苦手。
八丁ヒュッテ脇をカンカケ谷へ
八丁からはカンカケ谷を目指す
八丁からは、直進すればフスベ谷経由して三嶺だが、今回の目的地お亀岩へはカンカケ谷を目指し左上への登山路を取りトラバース気味の道を進む。すぐに、天気がよければ西熊山方面の展望を得られる蓮華野展望所があるが植林とガスとで展望なし。
どうせ、見えたところで、
「まだ、あんなに登らないといけないの」
と、幻滅させられるだけなので、むしろ見えないほうがよかったのかもしれない。

わさび田を過ぎ、しばらくすると右下にカンカケ谷の渓谷美を見ながらの歩行となる。少し足元が悪いので注意が必要だ。
河原を歩くようになるとやがて渡渉点に着くが、ぐずついた天候のせいで少々増水気味。
この水量で渡渉するには小さな(あ)にはちょっと酷だったかもしれない。結局、(あ)は素足になり渡渉。一苦労し、やけに時間を費やす。
渡渉点 樹林帯を登る
カンカケ谷渡渉点 カンカケ谷を遡行
ここからは、これまでの登山路とは打って変わって自然林帯の少し急坂を進む。小さな沢を沢山集めたところを登るようになると傾斜は益々増して急登だ。何度か小さな沢を渡りながらグングン高度を稼ぐ。お亀岩までではこの辺りが一番の頑張りどころだ。

ダケモミやササが現れだすと傾斜も少し緩くなり、左手に目をやれば木々の向こうには明るいガスが広がり展望が利かなくともずいぶん高度を稼いだことを実感できるようになる。
せめてもの救い
ツツジ、ヤマシャクヤク
大きな露岩の辺りまで来ると赤や白の花も見られ元気付けられるに違いない。
お亀ヒュッテへはもう少し。最終水場まで来ると辺りの木々はなくなり回りが開け、右上に三角屋根が見えてくれば間もなくお亀ヒュッテ着だ。
お亀ヒュッテ
お亀ヒュッテはガスの中
小屋内には祖谷側、西山林道〜イザリ峠からの徳島からの四人家族+二人の1パーティーのみ。
しばらくすると天気予報通り雨が降り出した。最後は(あ)も少しからだが冷えてきていた様なので、何とか降雨前に小屋に辿り着けてホッとした。
やはり悪天候のせいだろうか、この後小屋を訪れる人はなく、彼らのうちの一人は小屋前でテント泊のため、本日の宿泊者は7名。
お休み中
お疲れの(あ)
□5月4日

昨日から降り出した雨がやみそうにない。
予定では天狗塚ピストンし、その後三嶺へ縦走、三嶺ヒュッテ泊のつもりだったが、外へ出てみても視界が悪くすぐそこのお亀岩すら見えないありさまなので、外出もままならない。
早々に停滞を決め込んで小屋でゆっくりすることにする。いくらなんでもこの悪天候の中、(あ)を歩かせるわけには行かないからだ。自分ひとりならどうにでもなりそうなものだが、昨日のこともあるし(あ)に悪い印象を与えない為にも今日一日は小屋の主となることにした。

幸い徳島からのご家族も停滞だったので、小6、高1の兄弟と共にストーブに薪をくべたり、ダンボール箱の裏に絵や字を書いてすごろくを作りそれで遊んだり、あれやこれや自分達で工夫しながら遊ぶ様子は狭い小屋の中ながらそれなりに楽しそうだった。
スゴロクに興じる子供たち
『すごろく』製作中
午前中にはこの悪天候の中、高校総体を控えた高校生パーティーが三々五々この小屋を訪れた。話してみると、三嶺〜天狗塚がそのコースになっているらしく下見を兼ねての山行らしい。確かにこんな日に歩いていれば当日がたとえどんな天気であろうといい成績が収められるのではないだろうか。でも・・・、小屋内でびしょぬれのまま立ちつくす彼らを見ると、少しばかり可哀相な気もしたが・・・。

午後になると丸石からの単独行の人と、(あ)と同じく四年生の男の子を連れた高知出身、大阪からの、これまた自信と同じ年齢のお父さんとの親子連れが小屋を訪れた。

その後、訪問者はなく、本日の宿泊者は9名。(徳島からの家族連れ以外の二人は下山)
□5月5日

昨日もそうだったが、この小屋の目覚まし時計はうぐいすの鳴き声だ。夜が明けると共にあちらこちらでうぐいすの大合唱。
お陰で気持ちよく目を覚ませたが、
「当初の目的は達成できないのだろうか?」
「西熊山から三嶺を見るだけにして、再度カンカケ谷を下ろうか。」
天候が悪いと色々余分なことを考えなければならない。
未明には雨は止んだかに思えたが早朝から再び降り出していた。

それでも外に出て白髪方面を見てみると、ガスは低く垂れ込めているものの徐々に切れかかっては来ている。天気予報も回復傾向と報じていることもあり、これを信じとりあえず三嶺へ縦走することにする。
しかし、天狗塚へのピストンは、早い時間帯の天気回復は見込めそうにないとの予測を立て、時間的なことと(あ)の体力的なことも考慮した上、次回の目標としておこう。
徳島からの一家を見送る
お見送り
丸一日をご一緒した徳島からのご家族を見送った後、最後に小屋を出、長居したお亀ヒュッテを後にようやくお亀岩に到着。考えてみれば目と鼻の先の距離を二日かけて登ったことになる。
お亀岩 おかめヒュッテとカンカケ谷
ようやくお亀岩到達 カンカケ谷も次第に明るさを取り戻してきた
彼らに先だち、大阪からの親子連れは早朝より元気よく天狗塚へ向かったが、我々軟弱親子は天狗塚を諦め西熊山を目指すことに・・。

お亀岩からは、丸一日以上降り続いた雨でぬかるんだ足元を気にしながら登高すると、やがて西熊山だ。
「さぁ、ここからが問題だ。」
三嶺を見渡せる、ここ西熊山へ到着したが、これまで二日間、お亀で粘った甲斐があったかどうかはこれから先、約二時間ほどにかかっている。
と言うのも、いくらガスが切れて展望を得られても、ここであまり時間を費やすと下山の時間が気になるし、ここからの展望を諦め出発したところで約一時間後にガスが晴れたのでは既に三嶺山頂まで到達してしまうので目的の西熊山〜三嶺から三嶺を見ることは出来ない。
とりあえず一時間をメドにここにとどまる事とし、ゆっくりする。
ガス湧くカンカケ谷 西熊山
ガス湧くカンカケ谷 西熊山山頂
西熊山からは
天狗塚は顔を覗かせてくれるようになったが・・・
地蔵ノ頭方面
やがて西側、地蔵の頭方面のガスが切れてくる
しばらくすると、上空には青空も広がるようになり、また、時折ながら天狗塚も西、地蔵ノ頭〜イザリ峠稜線の向こうに三角錐の山頂を見せてくれるようになる。
あとは真打ち、三嶺を待つのみだ。

ゆっくりする間には二人の単独行の若者に出会った。
この連休を利用し、一人は剣橋から(見ノ越ではなく)、もう一人はコリトリ方面から一ノ森を経て延々雨中を歩いて来たらしく、感心させられることしきりだ。

話しているうちにガスが晴れれば良かったのだが、そう上手くは行かず三嶺はなかなか姿を見せてくれない。


それは、もうしばらく後のことだった。
本当はもう少し粘りたかったが、あたかも重い足を引きずるように西熊山を後にし、お亀岩への朽ちた標識を後にすると左手、祖谷側に大きなササ原が広がる。最も美しい景観を見せてくれるこの辺り。遥か下方には祖谷谷の集落もあちらこちらに見えている。
「かなり見えてきたな〜。」
「ここらのササ原は三嶺ヒュッテの辺よりも綺麗と思わへんか〜?!」
(あ)に話し掛ける。
「うん!!、そうかもしれへん」
前方に目を向けると祖谷側からガスが上がってきた。
やがて、その時が来たのだった。
再び(あ)に話し掛ける。
「すごいやろ!?、大ッきいやろー!!」
「うん!、大きぃナー!」

三嶺が見えた瞬間だった。(あ)もその大きさにびっくりだ。

ここからの君は完璧!
大タオと三嶺
ガスの三嶺 大タオを行く 三嶺
ガスが晴れて待望の三嶺が姿を現す 大タオを行く(あ)と三嶺の雄姿
最低コルの大タオへ下ると、これからは三嶺へ向けて次第に高度を上げる。徐々に大きくなる三嶺を見ながらのんびり歩こう。

振り返れば西熊山の山腹にシコクザサの中にコメツツジが点在する大斜面が広がり、彼方には天狗塚も見える。
三嶺はもうすぐ 振り返れば西熊山、天狗塚
三嶺がどんどん大きくなる 背後には西熊山と天狗塚
青ザレ脇を通過、少し下り小さなコルで先ほどから右手に見えていたフスベヨリ谷からの登山道を合わせると山頂は間もなく。
深く掘れた道を少し登ると、遠かった三嶺山頂だ。

(あ)にとっては一年振りの三嶺だが、今日は連休中でも天候がよいとの予報だったので山頂は大賑わい。昨年よりも多くの人のようだ。
三嶺山頂より西望 やったー!
山頂より西熊山、天狗塚方面 思わずバンザ〜イ
ゆっくりしたら山頂を後にする。
「さて、どちらから下りようか。」
ガスも何とか晴れ、白髪山や石立山方面は見えているので、さおりが原より下ることに決定。
下る 山頂方面を見上げる 左(東)に次郎
カヤハゲ目指し下る 大岩下より山頂を見上げる 稜線から樹間越しに次郎笈(剣は見えず)
大岩下までは急坂が続くが、鎖も頼りに慎重に下れば問題ない。それよりも、むしろその後の稜線上のぬかるみの方が注意を要する。登山路はヌルヌルしていて泥まみれ。手をついたり、尻餅をつこうものなら泥だらけになりそう。

少々喘ぎながら上り坂を登るとカヤハゲだ。
三嶺 石立山、白髪分岐
カヤハゲから三嶺、石立山、白髪分岐
こちらから見る三嶺も負けず劣らずなかなか堂々として風格がある。どこから見ても絵になる。


さおりが原へはここから西に延びる尾根を下って行く。すぐにある露岩からやその後しばらくは天狗塚が正面に見えるが、以降は樹間越しにしか見えなくなるので言わばここで見納めだ。
天狗塚遠望 三嶺 尾根上を下る
天狗塚遠望 名残り惜しい三嶺 樹林帯を下る
樹林帯に入ると同じ様なパターンの登山路を下って行く。
天狗塚や西熊山と同様、徐々に後方遠くになって行く三嶺の姿はそれにも増して何とも名残り惜しい。

露岩を過ぎトラバースするようになるとやがてフスベ谷からの道と合流。展望は利かなくなるが替わりに新緑が目に鮮やかだ。
韮生越え分岐を過ぎ、しばらく下ると沢に出会う。さらに下ったさおりが原には新緑のシャワーとバイケイソウ群落。
さおりが原 バイケイソウ
さおりが原の新緑とバイケイソウ群落
さおりが原からは今回の山行を振り返りながらしみじみ歩く。ダケモミ林の急坂を下り、左手から聞こえていた長笹谷の沢音も聞こえなくなり右手から沢音が聞こえてくると、ようやくフスベ谷に架かる吊橋が見えて来る。
最後の急坂を足元に気を付け下ると、「ここへ下山のつもり」をしていた場所から無事フスベヨリ谷の道に合流。
長笹谷
長笹谷に架かる橋
渓谷を見ながら最後の余韻に浸り、野営場からは少し登り返すと光石駐車場だ。

残念ながら、今回の山行でも(あ)は満天の星空を見ることは出来なかった。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
カンカケ谷・渡渉点での渡渉、増水時には特に要注意。

三嶺は山頂からの展望は言うに及ばず素晴らしいが、西の西熊山方面から見ればササとコメツツジの女性的な景観を前景に配し、男性的な雄姿がそこからよりもさらに素晴らしい景色となって目に焼きつくに違いない。

一方、南面のカヤハゲからの三嶺もまた違った様相を見せてくれ大変素晴らしく、三嶺(みうね)の名前の由来とも言われる三つの畝もよく解かる。

少し下流の集落、物部村・五王堂から笹川を遡ると、のんびり浸かるには持ってこいの温泉、笹温泉がある。
矢筈峠からの帰路に立ち寄る登山者も多い。

笹渓谷温泉
笹温泉


◆【他の三嶺へのコース・データはこちら



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