那岐山(西仙コース〜東仙コース)  
山頂東側よりみる那岐山山頂部

山頂東側よりみる那岐山山頂部
◆【山行日時】 2002年6月2日  晴れ時々くもり
◆【コース・タイム】
駐車地点=15分=林道・登山口=30分=避難小屋=35分=那岐の家、旧・三角点=10分=那岐山山頂

=17分=下山路・分岐点=15分=林道=23分=林道=15分=駐車地点
◆【正味歩行時間】 2時間40分

パタゴニア

◆【詳細】
美作I・Cより北上し、勝田町を抜け奈義町に入ると那岐連山が目の前に大きな姿を現すようになる。

那岐山は岡山県下では一、二を争う人気の山域だが、鳥取県下ではどうなのだろう?

感覚的に北側は裏側と言うイメージがあるせいか、これまで鳥取側から登ったことはない。

しかし、聞くところによると、こちらの登山道、八合目付近のサラサドウダンはすごいらしく手に取れるくらいの位置にトンネル状に無数の花をつけるらしい。
奈義町側、大神岩(C)コースにも沢山のサラサドウダンがあるが、智頭町側からのそれの方が遥かに素晴らしいとか。

そう言えば、この間も旧、三角点「那岐の家」から鳥取側登山道より登ってくる人を目にすることができた。もしかして、この人たちはドウダンを見るのが目的でこのコースを登ってきたのかもしれない。

時機を逃してはいけない、今日は、(あ)を伴って鳥取県智頭町側から那岐山に挑戦だ。


奈義町中心部からはR53を走るようになり、正面に見ていた那岐連山を左手に見て更に北上。ループ橋をぐるりと回り黒尾峠トンネルを抜ければ鳥取県に入る。

峠道を下りきった所にある『那岐山登山口』標識に導かれJR因美線、那岐駅前を通り山中へ。

ガードをくぐってすぐに左折、西宇塚集落を抜け、かわいい小さな踏切を渡り、か細くなった道を走るようになると登山口へは一本道だ。スギ林の中をもうしばらく車を走らせると、やがて立派な標識の立つ登山口(下、左画像)に着く。
登山口 林道歩き
東仙、西仙コース分岐点 しばらくは林道歩き
岡山側のように整備された駐車場があるわけではない。かと言って皆に親しまれていない雰囲気ではない。沢のせせらぎを間近に聞く静かな登山口だ。

鳥取県では最高峰、大山があまりに有名すぎるのだろうか?
大山には足元にも及ばず、また、岡山県側からに比べても駐車車両はほんの数台だから比較にならない。
「でも、それはそれで静かでいいじゃない。」
苦労なく駐車する。

しばらくは、わだち部分がコンクリートの林道を歩く。車ででも走れそうだが、西仙コース〜山頂〜東仙コースの周回コースを取るため車を林道の奥まで上げても、いずれ回収しなければならないので、しばし林道歩きは我慢しよう。(駐車地点には『車はここまで』の標識もあり)

しばらく林道を歩くと、ようやく登山口に着く。
林道登山口
林道・登山口
登山道を歩くようになると、すぐに渓流コース、尾根コース分岐がある。今日は湿度が高く蒸し蒸しし、尾根コースなら陽も当り更に暑そうなので、涼しげな渓流コースを進むことにする。
分岐 新緑
渓流コース、尾根コース分岐点 渓流コースの新緑
名前のとおり、渓谷沿いの道を登って行く。途中にあるいくつかの注意書きのとおり、このコースは増水時の通行には注意が必要で、悪天時や降雨後は尾根コースを選択したほうがよさそうなルートだ。

気持ちのいい渓谷の新緑を見ながらしばらく進む。ブナの大木を見て大岩の右を巻くと、沢を離れて右折。丸太の登山道を短く急登すると間もなく尾根コースと合流。避難小屋に着く。

小屋の屋根の上方には山頂方面が見えるが、まだ随分遠い。
避難小屋
避難小屋から山頂方面を望む
小屋を後にすると鎖も懸かる天然スギの林を急登。グングン高度を稼ぐ。

次第に自然林が広がるようになり気持ちのいい登高が続く。
ところで・・・、
「ドウダンは見当たらないなー」

登山路に落花した様子でもないし、つぼみをつけているでもなし・・・。
「どうなっているのだろう?」
新緑のトンネル 新緑のトンネル
サラサドウダンの並木付近を行く
タニウツギの花はちらほら見かけるが、ドウダンの花は全くなく、既に若葉になっているようだ。並木の辺りに来ても花の気配すらない。

そうこうするうち、いつの間にか潅木を抜けササ原を歩くようになり、右手には滝山方面が見えてきた。
「ワちゃー!!」
結局、ここまでに目的のドウダンの花は一切目にすることはできず、とても残念な思いだけが募る結果となってしまった。那岐の家はすぐそこに見えているにもかかわらず、あまり到達したくない気分だ・・・。

(あ)にも
「きれいな花を・・・」
と、思っていたが、しんどい目をして登ってきた彼にも申し訳ないことをした。


見えて来た右手、滝山方面の稜線に目をやると、鳥取・岡山県境が北へ折れるピーク近くに白木の三角屋根。

先週そこを通った際、何やら資材が置いてあったが、ここからでも『那岐の家』と同様の休憩所を建築中であることがわかる。

ほんの一週間しか経たないというのに工事がはかどったのか、それとも、そう複雑な工事ではないのか、影も形もなかった場所に立派な建物が出現したのには、少々びっくり。
この様子だと近日中には完成の運びとなるに違いない。
滝山方面を見る
右手に滝山方面
「No!」と首を横に振るのを承知の上、とりあえず(あ)に聞いてみた。

滝山方面を指差し、
「三嶺から見た西熊山に似とうやろー?」
「ホンマやな〜、よう(よく)似とうワ。」
「ほらッ、見てみぃ、歩いてる人が見えるやろ、あの人たち、滝山の方へ縦走してるんや。あっちから見た那岐山はええで〜。」

事実、今日は稜線を歩く人が多いようだ。
「父さんは向こうから那岐山を見るんが好きなんやけど・・・。どやッ!、(あ)も見てみたいと思わへんか?」

彼は二つ返事で
「いいやッ。ええワ(否定)」
「やっぱりか。」
心の中でつぶやく。無理やり連れて行っても仕方ないし・・・、すんなり諦める。

見せてやろうと思ってた花は咲いてなかったので、気分的にもしんどかっただろう。

今回は(あ)の言うことを聞いてやり、旧・三角点で腰を下ろすことにした。親子での縦走は、またの機会の楽しみとしておこう。

旧・三角点付近は大賑わい。天気はいいし、展望もまずまず。
「当然だナ。」
皆に習い、日本原高原を見下ろしての昼食とする。
那岐の家と滝山方面 避難小屋と山頂
那岐の家と滝山方面 避難小屋と那岐山山頂
それにしても、
「子供って元気だなー。」
感心させられる。

つい先ほど、縦走はしないと言っていた(あ)なのに、ちょっとお腹が良くなるとどうだろう。
「小屋、見て来ても、えぇ〜?(疑問文)」

所詮は
「お腹が空いてたから今は歩けない。」
ってことだったのかな。

「うん、いいぞ。」
子供にとっては遠くへ行って景色を見るより、付近をうろうろしているほうが嬉しいのかもしれない。それも、もっともだナ。

天気が良く視界が利き、道に迷う心配もないのでお任せにしておこう。

そのうち(あ)は稜線より北へ少し外れた水場にまで行って、水を満タンにして来てくれ大助かり。
彼は、満タンになった1gの『LE GRAND TETRAS』を目の前に差し出し、

「めっちゃ美味しいでぇ。父さんも飲んでみてー。」

「ホンマや、美味しいな。」
二人の飲んだ水は同じ水、違う味のはずはない。しかし、親としては
「彼が飲んだ水よりも自身が飲んだ水のほうが美味しかったに違いない。」
アカモノ
山頂手前のアカモノ
彼がうろついている間、隣に座った地元、智頭町から来られた人から、今年のサラサドウダンの話を聞くことが出来た。

聞けば、今年は里の木にはそれなりの花は咲いたらしいが、山中のそれは花をつけなかったとか。

その人も自身同様、近年では滅多に見かけることにない立派な三脚に、大き目の一眼レフ。この時期にこの風貌は花に対する期待度の現れだが、残念ながら互いに無用の長物となった。

しかし、その人は何故か昨年の見事なドウダンの写真を携行。

ここに来て今年初めて那岐山でサラサドウダンを見ることが出来た。写真なので実物には劣るが、なかなかのもの。
去年のそれは6年振りの見事なものらしく、この周期で行くともうしばらく我慢しないと見事なドウダンには巡り会えないかもしれないらしい。

これから先、何年かは『一日千秋の思い』で待たなければいけないのだろうか。
山頂より西望 山頂にて 山頂方面
山頂より見る滝山方面 山頂にて(子供に免じてお許しを・・) 山頂東より新・三角点(右)、旧・三角点(左)
白く見えるのは避難小屋
山頂で再度しばらくのんびりしたら尾根を東へと下山する。ここでもタニウツギは目にすることが出来るがドウダンは見当たらない。

岡山県側、奈義町へと下るBコースを右に分け、少し直進すると今度は同じく菩提寺へと通じるAコースとの分岐点。標識に従い左前方へ進む。
広葉樹帯 分岐標識
分岐路付近の広葉樹林帯 奈義町へのAコース、智頭町への東仙コース分岐点
タニウツギ
タニウツギ
山頂からずっと続いている自然林が気持ちいい。少し下ると、辺りにはさらにブナも目にすることが出来るようになり名残の森を満喫できる。

ところが、しばらく下り登山路が丸太造りのものに変わってからと言うもの気分は一転(ちょっと大げさかな?)。ここの坂は中途半端ではない。丸太の一段一段の段差が大きく急坂なので、苦悩の下山を強いられる。
階段 林道出合い
丸太造りの登山路を見上げる 林道(上部)・登山口
林道に出れば一段落するが、再び丸太が現れる。そんな中、役に立ったのが登山路脇の木々に付けられた名称の札。
サラサドウダン、ハウチワカエデ、エゴノキ、アセビ、ブナ・・・。
「ふむふむ、ホッほー、へ〜。」
納得しながら歩く。

駄目押しとも受け取れる最後の丸太の急坂を下れば苦悩から開放され、ようやく林道に出る。
急な階段
林道(下部)・登山口付近
しばらくコンクリートの林道を下れば西仙、東仙コース合流点の駐車地点に到着だ。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
詳細のとおり、那岐山〜滝山稜線上、岡山・鳥取県境が北へ折れるピーク近くに展望所建設中。
建築中 稜線上・東屋からみる那岐山
建設中の展望所と、そこから見る那岐山山頂方面
今回の下山路となった東仙コース、稜線より少し下ったところより現れる丸太の登山路には少々難儀する。

東仙コースを上りで利用する場合、目の前に丸太が延々立ちはだかるような感じになるので精神的に滅入るかも知れない。
しかし一方で、登山路付近の新緑は救いとなるに違いない。
◆【ちょっと寄り道】
岡山県・奈義町から那岐山へのA、B、C登山コースのうち、Aコースの基点でもあり那岐八景の一つの菩提寺に、帰路、立ち寄った。

境内には樹齢900年、国指定天然記念物、全国名木百選指定の大イチョウの他に大スギも。静寂の中にあって梵鐘の音が一服の清涼剤に。

奈義町ではイチョウを町木に指定し保護にも尽力。町民一人ひとりの心の中に大銀杏が息づいている。
菩提寺の大イチョウ
菩提寺の大イチョウ
樹齢900年、岡山県下では最大規模の大木


◆【那岐連山の画像一覧はこちら
◆【那岐山の他のコース・データはこちら



G A L L E R Y | 山のアルバム | 岡山の山TOPへ