大山、宝珠尾根〜三鈷峰〜大休峠〜川床  
象ガ鼻下部のオオバギボウシと三鈷峰

象ガ鼻下部のオオバギボウシと三鈷峰
◆【山行日時】 2002年7月20〜21日  
◆【コース・タイム】
7月20日  曇り時々霧、雷雨

大山ビューハイツ=25分=中ノ原スキー場、リフト終点=8分=宝珠山=5分=下宝珠越

=22分=中宝珠越=40分=上宝珠越=25分=三鈷峰、ユートピア小屋分岐=5分=ユートピア避難小屋

(ユートピア避難小屋=15分=三鈷峰山頂=15分=ユートピア避難小屋、泊)

7月21日  曇り時々晴れ

ユートピア避難小屋=35分=振子山=55分=野田ガ山=30分=大休峠=50分=岩伏別れ=25分=川床
◆【正味歩行時間】 5時間55分
7月20日 2時間40分

     21日 3時間15分
◆【詳細】
昨年の海の日の山行以来、二年続きでこの日にユートピアに可憐な花を求めて出向いた。

百花繚乱! 大山、三鈷峰・ユートピアではちょうどこの時期お花畑のお花が咲き乱れる。

花は昨年に較べると少し見劣りするような気もしたが、それでもなかなかのものだった。見頃とも重なりツアーと思しき団体客もかなり見られ人の多さにはびっくりだが、それ以上に驚いたのは夕方になってそこで出会ったある人だった―。


今回、宝珠尾根からユートピアを経て大休峠、川床へと下山予定の為、登山口と下山口が違うので否が応でも川床〜スキー場間の車道歩きを強いられる。
大山についてはしばしばチェックしている大山町・Dーclubのweb masterにいい手法はないものかと問い合わせてみると、思いもしなかった名案が返って来た。

先ず、ザックを登山口のスキー場近辺にデポする。そして車を下山時に備え川床へと回す。こうすれば空荷で車道をスキー場へと戻って来れ、少しでも楽を出来るって訳だ。
ところが・・、いざ川床に着いて身支度していると、思いの他、車の往来がある。
「歩くのも馬鹿らしいかな!?」
「そうか、そう言えばweb masterがヒッチハイクのことを書いてたな〜。」

香取方面から上がってくる車のエンジン音が聞こえてきたので、おもむろに右手を肩の少し上方にかざしてみると、近づいた車がスピードを緩めてくれ目の前で止まってくれた。いきなり成功だ。
「スキー場まで乗せてもらえませんか?」
「いいよ、乗りなよ。」
地元の人の運転するこの車はちょうどスキー場まで行くらしい。車道を歩くことなく登山口に到着だ。

丁重にお礼を言って下車、ビューハイツのフロントにデポしておいたザックを受け取り、登山開始だ。
中ノ原スキー場と宝珠山を見上げる スキー場リフト終点より豪円山、孝霊山
中ノ原スキー場と宝珠山を見上げる スキー場リフト終点より豪円山、孝霊山
ここから見上げると、そんなに高度差があるようには見えないリフト終点だが、歩き出すとまともに陽はあたり徐々に傾斜も増すので、いきなり苦しい登高だ。
上部になるほどに大きなジグザグを切り、約30分の苦闘をするとようやくリフト終点に着く。振り返れば豪円山や孝霊山がいつの間にか低くなっているので、ずいぶん高度を稼いだことを実感できる。
「あれだけ登ったんだから当然!」

樹林帯に入り登山路脇のヤマアジサイや見事なブナ林を見ながらしばらく歩くと宝珠山。あいにくほとんど展望はないが左前方には三鈷峰の崩壊を続ける荒々しい岩肌が見える。しかし、まだまだ遠く高い。
登山路脇のヤマアジサイ 樹間より見る三鈷峰
登山路脇のヤマアジサイ 樹間より見る三鈷峰
ブナ林帯を進むと大山寺、大神山神社からのルートとの合流点、下宝珠越。
右手下方からのルートが大神山神社からの登山路で、最後の急登はかなりの傾斜なので登山者は樹間から次々に沸いてくるよう。
ヤマジノホトトギス
ヤマジノホトトギス
中宝珠まで来ると三鈷峰・西壁が剣谷を隔てて大きく迫る。
三鈷西壁 三鈷西壁
三鈷西壁
小さなルンゼを登り、しばらく急登すると本来なら展望の利く場所に出る。左手の三鈷峰や稜線上の避難小屋は見えるものの右手の北壁や剣ヶ峰、弥山方面はガスの中。
崩壊が激しくロープの架けてある場所もあるが景色に見とれることなく強風の時などは特に注意して慎重に通過しよう。
ユートピア小屋を見上げる 上宝珠越え
上宝珠越まで来ればユートピアまでは、もう一息
上宝珠からユートピアまでは潅木帯をトラバース気味に登ればいいのだが、勝間ケルン辺りからあろうことか雨が降り出した。
とりあえず傘を取り出しては見たものの横着をしたのが間違いのもと。避難小屋に着く頃にはびしょ濡れだ。おまけに小屋内部はちょうど昼食時とも重なり立錐の余地もないほどの混みよう。

しばらく入口付近で立ちすくみ、ようやく座れる場所が確保できそうになったので中に上がりこみ昼食となった。

昼食後、隣に居合わせた出雲市のガイド、Oさんとの松江からのパーティーの方にお茶のお手前を頂戴したり、ガイドならではの話を聞かせてもらっているうち、徐々に小屋内は平静を取り戻しつつあった。
(クロモジの枝で作った自作のお箸を頂いた)
こんなところで野点とは・・・、感激 ユートピア小屋内部
こんなところで野点とは・・・、感激 ユートピア小屋内部
そして、あの喧騒はどこへやら・・・、小屋にいるのは一人となった。

雨は止んだが外は相変わらずガスの中。
それでも、しばらくすると象ガ鼻方面からズブ濡れの男女二人パーティー。倉敷からの彼ら、聞けば、一向平から地獄谷、駒鳥小屋、途中2、3度の、それも膝までの渡渉を経てようやくここまで辿り着いたらしい。
下半身には苦闘の跡がアリアリ。その筆頭はザックにくくりつけたビニルに納まった登山靴と素足に履いた運動靴。
お花畑 お花畑
百花繚乱!
ダイセンオトギリ シモツケ
ダイセンオトギリ シモツケ
コオニユリ ナンゴククガイソウ
コオニユリ ユートピアと言えば=クガイソウ
小屋付近で花の撮影をしていると、象ガ鼻方面からもう一組の男二人パーティー。やはり文殊堂から駒鳥小屋経由で到着。こちらもなかなか悪戦苦闘したようだ。
三鈷峰と孝霊山
三鈷峰と孝霊山
強風は納まる気配はないものの時間が経過するうち、どうにか三鈷峰は姿を現し、眼下に元谷や大山寺部落。米子平野、弓ヶ浜や中海、松江半島、日本海の彼方には隠岐・島前も見えてきた。

明日の天候も約束されてはいないので急いで三鈷峰山頂へ。
強風にさらされ快適な夕涼みとは言いがたいが、しばらく景色を楽しむ。北側の見晴らしはなかなかだが南に大きく立ちはだかる大山北壁は今もって姿を現してはくれず、少し残念だ。
夕陽が岩壁を照らす 中海、松江半島の彼方に沈む夕陽
夕陽が岩壁を照らす 中海、松江半島の彼方に夕陽は沈むが・・・
一方、東側の明日歩く予定の振子山、野田ガ山や矢筈山、甲ガ山方面は太陽の光をいっぱいに浴びて自然林がまばゆいばかり。
東谷の自然林 野田ガ山の向こう、甲ガ山〜矢筈ガ山
東谷の自然林 野田ガ山の向こう、甲ガ山〜矢筈ガ山
象ガ鼻下部に建つユートピア避難小屋
象ガ鼻下部に建つユートピア避難小屋
「さて、風も強いし真っ赤な夕日も見えそうにないので、そろそろ小屋に戻ろうか。」
ふと、目を上宝珠方面に向けると誰やら登ってくる人がいる。
「遅くからでも登ってくる人がいるもんだ。」
半ば感心しながらも足元に十分注意しながら小屋に戻ることにする。

今回、最もびっくりしたことが、この数分後に起こったのだ。三鈷峰、上宝珠分岐点まで戻った時、その人は既に小屋に向かっていたようでここで出会うことはなかった。小屋直下から見上げると小屋の外に先着の四人。
中に入ろうと入口まで来て、階段を上ろうと見上げると、今着いたと思われる人がそこにいた。そして、次の瞬間、驚きの時を迎えた。

「どッ、どこかでお遭いしませんでしたか?」
その瞬間、キツネにつままれたようだった。まさか、こんなことがあるとは・・・。

それは、ちょうど一年前の海の日、場所は今、自分たちがいる、まさにこの場所でのことだった。
この小屋で泊まり、翌日、剣ヶ峰から弥山へと縦走した際、同行した福山市のKさんが、まさに目の前にいるその人だった。
一年の時を経て、思いもよらぬこの場所で再会したのだ。
彼は、あれ以来、10回以上もこの大山に足を運び、一年振りでやって来た自分とは、ずいぶん思い入れが違うようだ。
ところが、話してみると判らないもの。明日の予定を聞くと、こちらと全く同じ、大休峠〜川床のコース。二年続きで同行することに決定!

このコースには一抹の不安もあっただけに、これで安心して床に着くことが出来た。
(さらに単独行の人が小屋を訪れ、本日の宿泊者は5名。倉敷からの二人パーティーは外でテン泊。)
昨日より吹き荒れた強風も明け方には少しは収まった。
ユートピア小屋をあとにする
ユートピア小屋をあとにする
しかし、依然、北壁や天狗ガ峰、剣ヶ峰はガスの中だ。あっさりと天狗方面のルートは諦め、象ガ鼻からは振子山を目指す。
右手に地獄谷、振子沢を見て、お花畑の中の急坂を下って行く。左手には三鈷峰の姿があり、自然林たっぷりの容姿は他の方面からのそれとは一風変わって一味違った様相を見せてくれる。

潅木帯に付けられたこの辺りの登山路はあたかも樹の海を泳いでいるよう。海中に入ったり海面に出たりで、急坂とも相まって少し歩きづらい。ぬかるんだ足元のスリップには注意が必要だ。
振子沢、駒鳥小屋分岐 オオバギボウシと三鈷峰
振子沢、駒鳥小屋分岐
オオバギボウシと三鈷峰
振子山付近から見る三鈷峰
振子山付近から見る三鈷峰 (福山市、Kさんより)
象ガ鼻、ユートピア小屋を見上げる 振子山から見る三鈷峰
象ガ鼻、ユートピア小屋を見上げる 振子山から見る三鈷峰
振子山からは進路を北に取り、今日の最難所、親指ピークへ向けてさらに急坂を下って行く。
親指ピークへ向け下る 間近になった親指ピーク
親指ピークへ向け下る 間近になった親指ピーク
親指ピークの通過
慎重に通過すれば問題ない 通過後、象ガ鼻、ユートピアを見上げる
慎重に通過すれば問題ない 通過後、象ガ鼻、ユートピアを見上げる
不安のあった親指ピークも難なく通過。左手、樹間から見え隠れする三鈷東壁を見上げながら歩くと、やがて野田ガ山。
残念ながら、展望皆無。
三鈷東壁 野田ガ山山頂
三鈷東壁 野田ガ山山頂
大休峠へは下りのみ。登山路脇のノイチゴをつまみながら、しばらく下って行くとやがて大休峠。
峠と言っても要衝って感じではなく、見上げれば歩いて来た三鈷峰〜象ガ鼻〜親指ピークも見え、辺りにはブナ林が点在する明るく開けた、とてもいいところだ。
ノイチゴ 大休峠避難小屋
ノイチゴ 大休峠避難小屋
水場付近から見る烏ヶ山 大休峠からは三鈷峰も見える
水場付近から見る烏ヶ山 大休峠からは三鈷峰も見える
名前にちなみ、一向平側の水場で水を汲んだり昼食を摂ったり、大休止。ついつい、のんびりゆっくり。

当初、ここから更に矢筈ガ山に足を延ばすことも視野にあったが、天候がいまいちなのと疲労度も考え、今日は川床へと下山する。
矢筈ガ山山頂を右手に見ながら緩い傾斜の石畳の道をダラダラ長らく下ると、ようやく岩伏分岐。
岩伏分岐 川床、阿弥陀川に架かる橋
岩伏分岐 川床、阿弥陀川に架かる橋
車の排気音も聞こえるようになり、急坂を下るようになると、ようやく阿弥陀川の沢音が聞こえてくる。
最近に架けかえられた立派な橋を渡ると車道はすぐそこだ。
川床、駐車地点
川床、駐車地点
◆【ワン・ポイント・アドバイス】

新ユートピア避難小屋は、木造平屋建てのとても綺麗な小屋で、旧小屋の面影は皆無。
(基礎の中には、旧小屋の基礎が埋蔵してあるらしい=単に、以前の基礎も利用しているということ)

かつて、小屋のあるじの”ねずみ君”と二人(?)っきりで朝を迎えたことを思うと、感慨もひとしお。

6〜7人、宿泊可。水場なし。

三鈷峰山頂、ユートピア付近からの眺望は言うに及ばず素晴らしく、特に、中海、宍道湖、松江半島の彼方に沈む夕陽、米子・皆生温泉付近の夜景や日本海に浮かぶ漁船の漁火、また、明るいうちでも、弓ヶ浜から境港、地蔵崎への湾曲した海岸線が印象的。

一方、小屋付近では、あたりが暗くなるとホタルも飛び交う。

大休峠避難小屋もユートピア小屋に負けず劣らずなかなか立派な小屋。ユートピアのそれに較べると二回りほど大きな規模の小屋で、10数人は宿泊可。
ただ、難点は小屋内部に併設されたトイレの匂い・・・。

それを除けば、シチュエーションも含め完璧に近い。一向平側へ少し下ったところに水場あり。

「機会があれば今度は是非ここで夜を明かし、のんびりしよう。」

川床付近では数台駐車可。

ヒッチハイク、思い切って手をかざしてみよう。思わぬ楽にありつけるに違いない。

車道を歩くことを思えば、ほんの小さな勇気を振り絞ればいいんだ。 Let’s try!

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