◆【山行日時】 2005年3月20〜21日 曇りのち宵のうちより吹雪(20日)、朝から快晴(21日)
◆【山行コース】 三ノ丸(幕営)〜氷ノ山

◆【詳細】
20日
そもそも今回の山行のきっかけとなったのは、先月、わさび谷を下降した際、例によって悪天候のため三ノ丸避難小屋に立ち寄った際、そこに備え付けてある利用簿に何度も登場するある人の名前を発見したからだった。
ある人とはちょうど一年前、この小屋を二人占めして泊まった、神戸・Sさん。
お彼岸ともなれば春たけなわの頃でもあり
「何処かへは出かけないと・・・」
と思いかけていた矢先だったこともあり、帰宅後、当のSさんに連絡を取ってみると、こちらのこともしっかりと覚えてくださっており、かつ、連休には三ノ丸へ出向かれるとのこと。
「一年振りに三ノ丸で再会!」
こうしてあっさりとこの山行は決まった。
しかし、二月になって以来
「せめてゲレンデくらいには連れて行ってやらないと・・・」
と、(あ)をどこかに連れて行ってやりたいと考えていたものの、これすらなかなか実現できず、いつも頭の片隅で引っかかった感を否めずにいた。
春からは中学生になることだし、それなら、この際(あ)を雪の氷ノ山に連れて行ってやろうと考え、二人で向かうことにした。
ただ、こうすることで一人で行くのとは大きな違いが生じたのも事実だった。。
「何がそんなに大きく違うか?」って。
無積雪期、ただ単に通りすがりに横目で見ながら、そそくさと氷ノ山へ急いだり、積雪期であっても「これが三ノ丸の雪原だッ!」と云わんばかりの広大な雪景色を意図も簡単に眼前に広げることの出来る状況の時(要は天気のいい日)にしかここへ足を運ばない者には、決してこの考えは及びもつかない。
小屋を覗くことすらしないから内部がどのような構造であるか知らないのだ。
腰掛けるにしても数人、横になるには基本的には二人しか利用できない小屋といえば、少しは想像できるだろうか。
要は二人しか泊まれないちっぽけな小屋だから三人で泊まること自体、物理的に無理があるのだ。
その小屋に、いくら(あ)が大人よりも身体が小さいとはいえ三人で宿泊するとなるとゆっくりは出来そうにない。
ましてや、我が親子がSさんの安眠の邪魔をするようなことはしたくない。三人であの小屋に泊まろうとすることが大問題なのだ。
ならば、これまではいかにも『大名登山』で山には登ってきた彼だが、これからはいくらかでも荷物を持たせ、これで「一石二鳥」、三ノ丸で幕営することとしたことでこの問題はあっさり解決した。
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ブナの森〜三ノ丸 |
やはり3月も下旬になれば天候も落ち着いたもの。
今日のような穏やかな日の歩行はこちらのようないつまで経っても初心者から脱皮できない者には打ってつけだ。ルートを間違えようとて、間違えようがない。
ブナの森から三ノ丸にかけてはこれまでに見たことのない光景が眼前に次々に現れた。
それでも風はそれなりに吹いていたので、小屋のお世話になり昼食とする。
しばらくすると滋賀労山の二人に続き、戸を開けるなり「○○さん?」とこちらの名前を呼びながら中へ入ってくる人。
その人はまさしくSさんだった。
時間的にそろそろ到着されるであろうと思っていたSさんと、一年振りに再会したのだった。
しばらく談笑した後、テント設営場所を模索する。
机上では、展望台を少しばかり北東へ下ったブナ疎林帯に幕営の予定だったが、少しでも登り返しが楽になるようにと展望台のすぐ北、天然スギの真東に設営した。
ここで威力を発揮したのが、今年年頭、町内のとんど祭りの際、こっそり端切れを戴いたうえ作成していた竹ペグ。張り綱は見事にピンと張れ、少々の風にもびくともしないテント設営を可能にした。
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our tent と偵察を終えたSさん |
今日のうちに氷ノ山山頂へ行くつもりだったが、設営後、テントに入ってしばらくすると急に雲行きが怪しくなり見通しがなくなりつつあったので、これは明日の楽しみとして東の谷へ何本か滑って時を過ごした。
(あ)はというと、ショベルを尻に敷き盛んに斜面を滑って遊んでいた。
スキーがあれば別の楽しみ方があるのだが、「それは今後の楽しみ」としておこう。
いつしか時は過ぎ、夕刻が来れば、
「夕食だッ!」
今回はいつになく豪勢。
焼き肉にバチ汁、雑炊も出来るしシャウエッセンもある。野菜に生卵もあるからこの上なし。
飲み物はビールにワイン。(あ)用にはコンデンス・ミルク。天然の冷蔵庫があるので気遣いなしに好きなものを持って来た。
「山でこんなに豪勢な夕食はいつ以来だろう?」
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今日の夕食は焼肉だッ! |
テント内の豪華さとは裏腹に外の様子はさらに悪化。吹雪の様相となってしまった。
テントに吹き付ける雪の音、フライシートを揺さぶる風の音は凄まじいばかりだが、特製竹ペグでしっかり固定できているお陰か、テントが倒壊の心配はさらさらなくテント付近に焼き肉の匂いをプンプン漂わせ、この上なく旨い夕食をいただくことが出来た。
21日
早朝、テントから外を見上げると、昨日の天気がまるで嘘のように展望台の上空に星がきらめいていた。
軽く朝食を済ませたら、日の出前より写真撮影に出掛ける。もちろん、そこには素晴らしい光景が広がっていた。
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三ノ丸とオレンヂ色が雪面に映えるour tent |
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氷ノ山 |
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シュカブラ |
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わさび谷の頭付近で何枚か撮ったら、三ノ丸へ。
小屋でSさんよりコーヒーをご馳走になりながらしばらく談笑。
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スギの脇に設営したテントと氷ノ山 |
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朝食中 |
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テントに戻ったら、昨日残しておいたバチ汁のだしを使った卵雑炊の朝食。ゆで卵もあり、昨日の夕食に続き豪華な朝食となった。
あまりのんびりするうち、時刻は出発予定の9時を回ってしまっていた。
9時という時間には自分なりに少しこだわりがあった。
それは、リフトの営業時間や天候と密接な関係があり、リフトが動き出すのが8時ということを考えると、この上天気、朝一のリフトに乗車した人は早ければ9時過ぎにこの辺りに到着するだろうと考えた。
そうすると、これ以上のろのろしていると、今日上がってきた人たちに先にトレースを付けかねられない。
ただ単に、稜線に泊まった者として、折角昨日から降った純白の絨毯に足跡を残すことが出来なくなってしまうことが、少しばかり気に入らなかったんだ。
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氷ノ山に向かう人 |
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稜線上の巨大雪庇 |
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準備する間にも何人かは氷ノ山へ向かいテント脇を通り過ぎていったが、何とか9時半前にテントを発つことが出来た。
当初のもくろみどおりヴァージンスノーにトレースをつけながら歩くことは出来なかったが、まだ「ズタズタ」でなかっただけよかった。
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三ノ丸方面を振り返る |
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氷ノ山直下 |
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わさび谷源頭で昨夜は山頂小屋泊だったらしい姫路・Yさんと短く話し、その先の雪庇は近寄らないように気をつけながら歩く。
山頂直下の雪原を沢山の山スキーヤーに混じり一歩一歩スキーを進めると氷ノ山山頂。
テーブル作成し、しばらく休んだら(あ)は同行したSさんにお願いして、ひとりで神大ヒュッテ方面へ滑る。
手頃な斜面なので
「快適、快適。」
東尾根を下る登山者はあっという間に後方になった。
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山頂より神大ヒュッテ方面へ滑る(Sさん撮影)
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氷ノ山山頂にて |
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滑降は適当な箇所で終わりとし山頂へ登り返し、二人と合流したら三ノ丸へ引き返すべく今度は南斜面へ滑る。
(準備中に津山・Nさんとばったり会う)
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テント撤収後 |
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テントに戻り、最後はスパゲッティの昼食を食したら、撤収。
展望台でSさんに今回の礼を告げ、再会を誓ったらブナの森目指し滑る。午前中ならクラスト気味で少し滑りにくいが、午後ともなれば雪も緩み、ほとんど気遣いなしに滑れるのが嬉しい。
あっという間にブナの森着。
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ブナの森 |
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ブナの森で後発の(あ)と合流したら尾根道をツボ足で下る。
直下の瘠せ尾根で雪面を踏み抜き転倒。「あわや!」の場面に肝を冷やされたが、その後は慎重のうえにも慎重に歩く。
やがてゲレンデの音楽が大きく聞こえるようになるとともに、リフト降車場が大きく見えるようになればゲレンデトップに降り立った。
ゲレンデをゆっくり滑り((あ)は終始歩き)、ゲレンデ下に到着した。
駐車場では大山で何度かご一緒した鳥取からのTさんにも遭遇し、今日一日で何人もの知り合いに出会った親子二人・氷ノ山テント泊山行を無事終えた。
当コースは見通しが利く日には何の問題もなく歩くことが出来るコースです。
しかし、荒天時となると状況は一転、稜線上では右も左も判らなくなり一般に云う「ホワイト・アウト」状態となります。
上記のデータを参考に山に入ることは各人の自由ですが、万が一の場合には「天井につばを吐く」ようなものともなりかねませんので、くれぐれも地元の方々や机上登山に秀でた方(探せば地元ではない意外なところにも居ます)の意見を参考の上、入山するようにしましょう。
俗に云う「わさび谷」には道標はもちろん進入禁止の標識やロープはありません。
ここを下降する際は、吐いたつばが大きな雫になって戻ってこないよう、特に注意して下降することが色んな意味で身を守る最善の手段と思われます。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
荒天時、地形図、コンパスは必携です。
ブナの森〜三ノ丸、三ノ丸〜氷ノ山、『晴れれば天国だが、一転、ガスれば地獄を見る』。
時には早期に撤退する勇気も必要だ。
◆氷ノ山の他のコース・データを見る
◆【冬の氷ノ山 画像一覧はこちら】
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