◆【山行日時】 2004年2月21日 晴れ

◆【詳細】
2004年、ようやく氷ノ山が微笑んだ。
今年に入り、ことごとく散々な目に遭ってきた氷ノ山だったが、ここに来てようやく好天に恵まれての山行となった。
朝、家の外に出てみると、予報に反し東の空にはうす雲が掛かっていた。
車を走らせるようになるとその雲が朝焼けで赤く染まり、なかなかのもののように見えたが、
「確か、朝焼けは天候が下り坂の証だったのでは・・・」
今日は、今こうしてテレマークスキーを行っているきっかけを作って下さったと言っても過言でない、津山のNさんと初めての同行ツアーだけに何とか晴れであって欲しいが・・・。
予定ではスキー場から三ノ丸に上がり、氷ノ山へと歩き適当に滑ったあと、帰路は三ノ丸より県境尾根を戸倉トンネルまで滑って降りるというものだが、三ノ丸からのダラダラとした下りが時間的にどんなものかと、これが一抹の心配事であった。
待ち合わせ場所の戸倉トンネル入り口で合流し、荷物を積み込んだらNさんの車で若桜氷ノ山スキー場へ向かう。
道中からは山頂小屋もくっきりと望め、朝の天候に対する不安は何時の間にかなくなった。
天気が良いのはいいのだが、あまりにも暑過ぎる。一体全体、冬は何処へ行ってしまったのか。
駐車場からゲレンデに向かうまでにも一汗かいてしまうほどの暑さだったので、

リフトを乗り継ぎ西尾根を登り始めると額や全身から汗が吹き出る。
氷ノ山が姿を見せてくれているのは歓迎だが、あまりの暑さに閉口するしかなく、招かれざる客も同行の格好になった。
それでも、
「ここからこんな風に見るのは、いつ以来だろう?」
こう考えるとそれも問題ではなくなるのが不思議なところ。

周りの景色を楽しみながら登り、ブナの森まで来れば三ノ丸の南斜面が大きく広がる。
見るもの全てがいつになく新鮮に感じてしまうのだから、これほどありがたいものはない。
また、景色が素晴らしいだけではない。
いつもは、まず、ここから三ノ丸小屋までの歩行でひと苦労させられるところだが、この天気では
「そんな苦労なんて存在自体が有り得ない。」
まるで嘘のようだ。
確かに、目を閉じていては歩けないだろうが、時折、目を開けさえすれば誰でも自然に展望台へと導かれる今日の状況は、荒天時の状況は想像しようにも想像のしようがない。
難なく三ノ丸に到着。ブナの森方面からは、明日が天気が下り坂ということもありスキーやボードを担いだ人が次々やってくる。
ところが皆、直接展望台目指してやってくるところを見ると、いつもお世話になっている三ノ丸の小屋だが、こちらが立ち寄ることを割愛させてもらったのと同じように、見向きもされない存在に成り下がってしまうらしい。
今日のような上天気の日は、目に入ってないはずはないのに、ほとんど見向きもされないのはこのタイプの小屋の宿命と言

えばそれまでだが、何だか気の毒になってしまう。
展望台付近からは先日の春一番の際の影響だろうか、黄砂によるものとも思われる黄色く濁った雪面が少し気になるがここからの景色はなかなかのものだ。
上に上がれば、モノクロームの世界に映える氷ノ山が、下から見るよりは少しは立派に見えるので是非、上がってみよう。
こちらがごそごそしている間もNさん親子があちらこちらと適当に滑っているのもよく見える。
少々重た目の雪も行動範囲の広いNさん親子にはほとんど問題ないらしく、ここに到着するまでに南斜面を坂ノ谷方面へ一本、そして、ここからは東斜面へもう一本。
こちら

がノロノロしている間にも、何度か短く滑っては登り返していた。
Nさん親子に遅れることかなり、単独の山ボーダー、年配の山スキー3人パーティー、若者のスノーシュー3人組のあとを、氷ノ山へ向かう。
正面に氷ノ山を見ながらの気持ちよい歩行も、ここではこれまでの苦い思いが蘇る。
わさび谷ドロップ地点では間違えようと思っても間違えようのない状況を目の当たりにし、あらためて荒天時の

ルート取りの難しさを再認識させられるばかり。
右(東側)に落ち込む谷に目をやり、しばらく反省する。
二ノ丸の夫婦スギまで来ると正面に氷ノ山がずいぶん近くなり、下方には気持ちのよさそうな斜面が大屋側源流に向け落ち込む。
これを見たNさん親子が華麗なテレマークターンを決め滑り込むと、その姿は見る見る下方に小さくなった。
この後、しばらくのアルバイトをこなすと氷ノ山山頂到着だ。
さすがにこの天気。小屋前には横たえられたり立てかけられているスキーが多数。
絶好の天気に誘われ、あちらこちらから集結したようだ。


昼食を摂ったら、待ちにまった東尾根・神大ヒュッテ方面へ滑降だ。
無積雪期には考えも及ばない一枚バーンとなった適度な傾斜の斜面を一気に滑る。
雪は決して最高の状態ではないが、クラストしていてもかえって滑りにくいだろうし、新雪では傾斜が緩いところではスキーが走りにくいとも考えられるので、自身のような下手っピにはちょうど頃合いの雪だったのかもしれない。
千年スギ付近ではスギの大木を縫って滑り、その下方ではブナの大木を見ながら滑降する。
まだまだこれからと思いきや、ふと見ると、左手に半分以上雪に埋もれた建物。
「もしかして、神大ヒュッテ??」

あまりの早くの出現に目を疑ってしまったが、それは、まぎれもなく神大ヒュッテだった。
いくらでも滑りたい気分だったが登り返しのことを考えると、そうも行かず、すぐ下の台地まで滑ったら滑降終了。
この調子で滑れば、下方に見えるようになった大段ヶ平へも『もうひとッ飛び』って感じに思えただけに、まだ滑りたいような、そうは行かないような、ちょっと複雑な気持ちにさせられてしまった。
滑降を続けるほど天国状態が長くなるなら、反面、登り返しという言わば地獄状態が長くなるのも当然のことである。
ここは地獄を少しでも短くするためぐっと我慢し、次に備えなければならない。
しばらく地獄状態を辛抱すると再度氷ノ山山頂着。
今度は南斜面へ滑りこむが、東斜面に較べると日当たりがいいのか雪が重くて先ほどのように上手く滑れない。
「やっぱり下手だな〜。」

稜線を三ノ丸へ向け進んだら、B、Cのツアー標識を確認後、戸倉へ下山する予定を変更しB標識よりわさび谷へドロップ。
(Bがわさび谷側のブナに、Cは大屋側のスギに設置されている)
滑り込むと、重い雪に全くと言っていいほど成す術がなく、これまで以上に自分の腕の未熟さを目の当たりすることになっただけだった。この雪にはさすがのNさん親子も悪戦苦闘。
何とか沢筋まで下ったらクラックを慎重にやり過ごし、トラバースしながら植林帯へ滑り込む。
最後の難関(実はここの通過が最も苦手)、植林帯を何とかクリアーしたら再度、沢筋を短く滑る。
林道が見えてくるとツアーも終りだが、すぐ手前で一旦スキーを脱ぎ、雪の切れたところを慎重に渡ると林道に出て、左へ行けばゲレンデに出る。
「何たる滑りやすさ!」
賑わうゲレンデを短く滑って今日の山行を終えた。
こちらの勝手から一部予定ルートを変更してもらったが、何時かは実現したかった方とのツアーが出来、好天に恵まれたことも手伝って思い出に残る山行の一つになった。
