厳冬期の流れ尾から氷ノ山へ

 日本海に近い氷ノ山(1510m)は、冬の季節風の影響を強く受け積雪量も多く天候が安定せず、 なだらかで広い尾根が数多く有る地形のため吹雪かれると尾根を間違え遭難に到ることが多い山域で知られている。 麓にはスキー場が在りわりあい簡単に取り付くことが出来る山でもあり、兵庫県の雪山を目指す岳人なら一度は経験したいルートでもある。
 今回は1月の厳冬期に氷ノ山国際スキー場最上部のリフトから流れ尾に取り付き、頂上を目指し東尾根を下降しスキー場へ戻るルートに挑戦した。 昨年は2度計画が組まれたが、悪天候のためいずれも中止となったコースである。今シーズンは雪が多く相当の困難を覚悟しての挑戦となりました。
 参加メンバーは、大西(敏)さんをCLに、いなみ山の会最強のメンバー6名が集まり、合計7名で行きました。 期待に違わず、午前中は晴天に恵まれ約3時間の苦闘の末無事頂上を極めることができた。 尾根上の樹氷をかいくぐり高度が上がるに従い展望も開け、鉢伏高原から扇の山など北部の雪を頂いた山々が日本海まで見渡せる晴らしい山行でした。


【山 域】兵庫県北部(但馬)
【場 所】流れ尾から氷ノ山
【地形図】氷ノ山
【日 時】2006年1月22日(日)
【コース】氷ノ山国際スキー場→流れ尾→氷ノ山、下山は東尾根を戻る。
【参加者】CL敏夫さん、公男さん、丈夫さん、一典さん、ひろみさん、裕美子さん、雲水 (7名)
【天 気】晴れ後雪


ロッジ逆水
期待と不安の入り交じった精鋭達(ロッジ逆水前で)
 早朝4時30分役場駐車場に集合し、当初参加予定者10名でしたが3名が抜け総員7名、2台の車に分乗し出発、 福崎から播但自動車道を和田山で降り関宮経由福定の国際スキー場リフト乗り場7時過ぎ到着。リフトが動く8時までに支度を調え暫し待機、ゲレンデ中央のロッジ逆水にあるパトロール事務所に登山届けを提出。 リフトを4本乗り継ぎ9時20分頃最上部到着。早速わかんを付け流れ尾に取り付く。

 「流れ尾」は、古生沼から北へ派生する逆Y字形の尾根で、上部で岩壁が帯状に広がりここを抜ける所が一番のポイント、雪庇は東側に出来る。以前この雪庇を踏み抜いて滑落死亡事故があった所である。 主稜線に抜ける最後の雪壁には雪庇が発達し、この雪庇の処理が第二のポイントである。

 取り付きから樹林帯の中を忠実に尾根を登る、思っていたより雪面は締まっておりあまり潜ることはない、所々テープもあり問題なく稜線の合流点に着く。 ここは2m程の小さな雪庇を乗り越す。傾斜も徐々に増し左側は谷、右側は樹林の尾根となる、小さいながらも雪庇には気をつけ境目を登る。 暫く登ると尾根上に岩峰が現れる。これを右側へトラバースし斜度40度程の斜面を這い登る。アイゼンであれば簡単に越えることが出来る斜面だが、 わかんを付けての登りでは足許が崩れ地面が顔を出す始末、深く蹴り込みが出来ない分苦労させられた。 尾根には2カ所岩峰が在りいずれも右側をトラバースし登る。斜度が有る分緊張するが慎重に登り切る。 天気も上々雪山の景色を満喫しながら楽しい登攀が続く。

流れ尾1
流れ尾中間部の樹氷、ここで一休み
流れ尾6
岩壁帯を前にルートを探す
 前方に高さ5m程の岩壁を見上げる所で休憩を取り突破口を探す。左は切れ落ち難しい。 右は少し離れた所に上部へ抜ける雪壁が有るように見えるがこちらも斜面を大きくトラバース。 少し右上に小さな雪壁が樹木の間から伺えるが斜度45度以上で所々氷結が見られるがなんとか抜けられるようだ。 覚悟を決めてここを登ることに決定。 さすがにストックとわかんでは突破は難しくストックをピッケルに持ち替えて登る。 流れ尾第一の難所、ピッケルをしっかり打ち込み一歩一歩登る。スリップは厳禁、ザイル無しのため緊張する。
 立木でも何でも利用して兎に角10m登り切り傾斜が落ちたところで緊張を解く。ここからはすぐ上に主稜線が望め右には氷ノ山頂上避難小屋も見える。
 最期の斜面を登ると前方に主稜線が見える。本来なら雪壁の上には雪庇が張り出し、雪庇の一部を切り崩して突破する所であるが、今日は雪庇はなし。

 小さなピークを登り切ると待望の主稜線に到着。全員で万歳を叫ぶ。辺りの杉は全て雪のため東北蔵王のモンスターの様に見える。

 天候の崩れる兆しか青空は無くなり、雲が多くなってきた。頂上へ続く雪原をゆっくり登り頂上避難小屋に到着。 2〜30人のグループが三の丸方面に降りていく、お陰で小屋の中は我々と2組の登山者だけ、ゆっくりと昼食を摂る。


バーナーでお湯を沸かし暖を取る。小屋の外では強風が吹き付けものすごい音が聞こえる。降りは訓練のためコンティニアスの実地訓練となる。
 3人一組になり、トップとミッテルとラストをザイルで繋ぎ、誰かが滑落した場合これを止める技の練習である。 それぞれがザイルを3巻ほど手に持ち間隔を開けて同時に歩くのであるが、スピードが合わずザイルがたるんだり引っ張られたりなかなか難しい。
流れ尾2
最後の斜面を登る
流れ尾4
稜線に登り着き万歳を叫ぶ、モンスターに囲まれて
 頂上から「上の千本」目指してガスの中を出発、磁北から110度の方向へ進まなければならないがザイルが気になり目標からずれる。 稜線上を左寄りに進むと上の千本のモンスターが現れコース間違いはないようである。

 次に目指すは「下の千本」先行者のトレースを辿ろうとするが先頭が見失ったようで次第に北に向かいはじめ、急激に尾根を下降するようになり、間違いに気付き登り返す。  順番が入れ替わりラストを歩いていた私がトップになり少し右の尾根を降る。かなり時間が経過していたので「下の千本」を過ぎ急斜面にでたと思い、斜面の左端を目指し降りかける。 この尾根も北へ落ち込んでいく、やはりルートではない。もう一度戻り更に右の尾根を進む。CLが偵察に行き「下の千本」を見つけることが出来やれやれである。

 「下の千本」が判れば急斜面を左寄りに進めば東尾根に乗ることが出来る。トレースも残っておりこれに沿って降る。
 相変わらずガスのため気をつけていても見失う。
 早く東尾根に乗らないと安心できない。出発からずっと歩きづめだが天気が悪いので休むことなく歩く。 大きな斜面を降りきりやっと東尾根に乗ることが出来た。細くなった尾根を更に降る。 以前の記憶では避難小屋までそんなに時間は掛からなかったと思っていたがいくら歩いても避難小屋が現れない。
 ひょっとして小屋を見落としたのではと又不安になる。稜線を忠実に歩いているのでそんなはずはない。一箇所40度以上の雪壁にでたが尻セードで楽しく降る。
左下にはスキー場が木々の間から垣間見られる。ルートをそのまま忠実にたどり、やっとの事で東尾根避難小屋を発見、風を避けて小屋で暫く休憩。全員安堵の表情が伺える。


流れ尾5
吹雪の東尾根を降るが尾根を間違い戻る
 ここからスキー場まではただ降りるだけ、全員に話し声が戻り和やかに降る。とはいえ急斜面の上に植林された杉林の中、 夏道とおりとは行かないが尻セードでドンドン降る。最期は一気に谷底目指し滑り降る。暫くして林道に出る。雪のない頃とは随分違い早く降ることが出来た。 逆水キャンプ場を通りスキー場の中央まで無事戻ることが出来ました。ロッジでわかんを外し、下山届けを出しリフトを2本乗り継いで駐車場へ帰還。

 一月の氷ノ山、それも流れ尾から登れました。天気にも随分助けられたが達成感のある雪山でした。 この時期は吹雪くのが当たり前、前半は快晴の下素晴らしい雪山を満喫し、後半はガスの中の下山で四苦八苦、 まさに冬山ともいうべき氷ノ山の樹氷とモンスターになった杉の木に感動した今日の山行でした。 一昨年の三の丸から頂上、氷ノ山越えに続き、昨年の春わさび谷から頂上、仙谷下降。今年度は流れ尾から頂上と 雪の時期の氷ノ山のルートはこれで終了、次はテレマークスキーで登りましょう。

 今年の冬は雪も多く雪崩には十分気をつけて楽しみましょう。そして今度は雪洞ビバークを体験し、県境尾根をスキー縦走に挑戦です。




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