<温度と野菜について>
野菜は、高温を好む野菜と低温を好む野菜とに分けられます。また、野菜全体の生育温度は15〜30℃位でしょうか。高温を好む野菜は20℃以上、25℃前後が生育に適し、主として春夏の時期に栽培します。低温を好む野菜は20℃以下、15℃前後が生育に適し、主として秋冬の時期に栽培します。また、発芽は野菜の種類によって異なりますが高温を好む野菜は、おおよそ25〜30℃、低温を好む野菜は15〜20℃位が適温になります。ただ、これらは野菜の種類や品種改良により異なりますので注意が必要です。生育温度が低すぎる時期ならビニール、寒冷紗、よしず、などで保温したり、高すぎる時期なら遮光ネット、ひさし、などの工夫が必要になってきます。また、野菜には花を咲かせて実を太らすのもあれば、反対に葉茎菜、根菜、いも類は花芽を抑えて抽苔(とう立ちと言い、花が咲く前に茎が伸びてくる現象)させないようにすることも必要です。
低い温度を好む野菜たち(生育温度は15〜20℃) | 高い温度を好む野菜たち(生育温度は23〜27℃) | ||
---|---|---|---|
寒さに強い | 寒さにやや強い | 暑さにやや強い | 暑さに強い |
エンドウ、ソラマメ イチゴ ダイコン、カブ ハクサイ、キャベツ ほうれん草 ネギ |
ジャガイモ ニンジン カリフラワー パセリ レタス 春菊、ミツバ |
カボチャ、キュウリ トマト トウモロコシ スイカ |
えだまめ ナス、ピーマン サツマイモ、里芋 紫蘇 ニラ オクラ |
<温度と野菜のとう立ちについて>
日長以外に温度によっても野菜の花芽が形成されます。イチゴは低温と短日によって花芽ができますので、その後に収穫が楽しめる事になります。これは花芽分化の利用ですね。逆に花芽が出来ると具合が悪い野菜もあります。
そのため、とう立ちを避けるためには花芽が形成されにくいような時期(日長と気温)にもってくる或いはとう立ちしにくい品種を選んでやります。
温度による花芽は、
1.苗の大きさに関係なく発芽直後から低温に感じて花芽をつけるもの
2.一定以上の大きさになった苗が低温に感じて花芽をつけるもの
3.高温で花芽ができるもの
にわけられます。
これらは、
1.について・・夏から秋にかけての栽培が中心になり、春まき夏とりの場合はとう立ちしにくい品種を選んで極端な早蒔きをしない。
2.について・・冬を越して栽培する物は低温を感じない程度の小苗で越冬させてやる。春まきの場合は低温期間中はトンネルの中で育苗して暖かくなってから畑に定植する。
3.について・・初夏から夏にかけての高温によって花芽ができる。
要因 | 種類 |
---|---|
低温で花芽が出来るもの | ハクサイ、大根、キャベツ、人参、タマネギ |
高温で花芽が出来るもの | レタス、春菊 |
<湿度と野菜について>
土壌水分(湿度)も生育に関して生育不良や病害発生をきたす野菜も多いことから、ここに列挙しておきます。
多湿に強い | 多湿に比較的強い | 多湿に弱い |
---|---|---|
レンコン クワイ |
ミツバ 里芋 タマネギ ナス |
サツマイモ ダイコン カボチャ ほうれん草 トマト、スイカ |
<光と野菜について>
光は、夏の光が一番強く、春、秋、冬の順に弱くなって行きます。植物は、昔習った光合成で大部分の野菜は育っていきますが、野菜の種類によっては日当たりを好む物、日当たりが悪くとも育ちがそれほど衰えない物、或いは暗い所を好む物に分けられます。日当たりを好む大部分の野菜は春から夏、夏から秋にかけて栽培する野菜が多いようですね。また、日当たりも必要なんだけれど温度・水分の方が育ちに影響する野菜たちもおりますよ。
日当たりが良い所を好む(陽性植物) | 日当たりが悪くても耐えられる | 日当たりが悪い所を好む(陰性植物) |
---|---|---|
キュウリ、オクラ トマト、ナス、ピーマン トウモロコシ ダイコン、ニンジン キャベツ、ハクサイ サツマイモ タマネギ マメ類 |
イチゴ 春菊 パセリ ほうれん草 ネギ レタス 里芋 |
ミツバ ミョウガ フキ |
<光と発芽について>
光は種子の発芽とも関係しますので列挙します。読んで字のごとく、光が当たると発芽しやすいものと光が当たると発芽しにくい種子があります。そのため覆土には気をつけます。
野菜名 | 対策 | |
---|---|---|
好光性種子 | レタス、シソ | 覆土を少なく |
嫌光性種子 | ナス、トマト、玉ねぎ、ダイコン | 覆土をきっちりと |
<日長と野菜について>
日長とは、日の出から日の入りまでの長さを示します。夏至が長く、冬至は短いです。また春分・秋分は昼夜が12時間ですので、この12時間を基準にし、それより短い日長の時に開花するのを短日植物それより長い日長で正常に開花するのを長日植物と言い、この両者の条件下でも開花するのを中間性植物となります。春から夏にかけて日が長くなると花芽が出来る「ほうれん草」は長日植物の代表です。
要因 | 種類 | |
---|---|---|
日長 | 長日 | ほうれん草、シュンギク、二十日ダイコン |
短日 | キュウリ、イチゴ、シソ |
<種の休眠について>
種を蒔いてから数週間もすれば芽が出てくるのが当たり前の様に思っていましたが、種にはある一定期間、休眠するものがあって種を採取した直後に蒔いても発芽しないものもあるようです。これらは種類によって異なりホウレン草、春菊、レタス、人参が2〜3ヶ月。ダイコンは1〜3ヶ月、牛蒡は3ヶ月以上の休眠期間があるようです。
参考:
・休眠の種類
1次休眠・・・成熟に従って自然に休眠すること。
2次休眠・・・種子がある不利な条件に遭遇したとき、耐えうる為に入る休眠のこと。
・休眠破りの方法
休眠の仕方により、休眠打破の仕方が異なる。
硬実種(不透水性の種)の様な種皮に原因の場合は、種を水(又はぬるま湯)に浸す或いは種に傷を付けて不透水性を破るようにする。
種内部の胚に原因がある場合は、胚をまず成熟させる事と発芽抑制物質を取り除くような処理が必要で自然の摂理条件を与える。
生理的な休眠の場合は、休眠は植物ホルモンの働きと関係があり、温度・光などの環境条件によっても制御されているので種を乾燥させる事によって消滅させる事が出来る。
要は休眠のメカニズムを知ってそれ相応の条件と刺激を与えてやれば休眠打破が可能となるようです。
<種の寿命について>
種は残さず使うのが良いのですが、どうしても残ってしまう場合があります。種の寿命に関係するのは主に光、温度、湿度で共に低い条件で寿命が延びますが、やはり古い種は使わない方が良いように思います。どうしても保管する場合は、蓋が出来るビン、お茶や海苔の缶等を利用して容器の底に乾燥剤として生石灰や
シリカゲルを敷いてその上に直接当たらないように種を置き、空気の出入りが無いように完全密封して冷蔵庫か風通しの良い涼しい所に保管します。
参考として種の寿命を列挙します。
寿命 | 野菜名 | コメント |
---|---|---|
1〜2年(寿命の短い物) | ねぎ、たまねぎ、ニラ、ニンジン、牛蒡、インゲン | 古い種は使用しない方がよい |
2〜3年(やや寿命の長い物) | きゃべつ、ハクサイ、大根、レタス、ピーマン、枝豆 | やむなく残り種は保管しておく |
3〜4年(寿命の長い物) | ナス、トマト、キュウリ、カボチャ | やむなく残り種は保管しておく |
<野菜の肥タイプについて>
輪作にて土壌栄養分の需給バランスを取る事も含め、野菜には小肥タイプから多肥タイプがあります。 肥料の過不足が無いようにそれぞれの野菜にあった肥料の与え方が大切ですね。
型 | 野菜名 |
---|---|
小肥タイプ | イチゴ、ジャガイモ、ダイコン等 |
中肥タイプ | キャベツ、トマト等 |
多肥タイプ | ナス、ピーマン等 |
<連作と野菜について>
畑の同じ場所に毎年同じ野菜(同じ仲間)を続けて栽培していくと、段々と生育が悪くなって栽培し難くなってくることがあります。これを連作障害と名付けています。詳しい原因ははっきりしていないようですが、同じ栄養分の吸収による栄養過多・不足や病原菌などの増加が考えられています。土壌消毒や肥料の加減や天地返し・・etcと方法があると思いますが一般的には同じ野菜を同じ場所に作付けしないで異なる種類の野菜を順番に作付けしているようです(輪作と呼びます)。
ここでは、連作に強い野菜と弱い野菜に分けて列挙します。
休み期間 | 野菜 |
---|---|
連作しても影響の少ないもの | ほうれん草、ニラ、大根、人参、タマネギ、サツマイモ、トウモロコシ、カボチャ、オクラ |
1年間休んだほうがよいもの | レタス、コマツナ、イチゴ |
2、3年以上休んだほうがよいもの | ハクサイ、キャベツ、ジャガイモ、里芋、枝豆、落花生、トマト、ナス、ピーマン、きゅうり |
5年以上休んだほうがよいもの | エンドウ、スイカ |
(補足)
連作障害はphや養分濃度のアンバランスもありますが、大きく分けて、
1.同じ土壌病原菌や害虫が増殖して障害を起こす。
2.作物からの忌地物質(有害物質)の分泌物の蓄積により障害を起こす。
が考えられているようです。
そのため連作の基本的な回避策は、幾つかの畝を用意し、異なる科の野菜を順番に栽培(ローテーション)していく方法が取られています。これも広い場所があればこのような問題は少ないかも知れません。しかしながら実際には、小生のような小規模な家庭菜園や市民農園等では場所に限りあったり、前作に何を栽培していたのかわからないことが現実だと思います。
そのため通り一遍な記述ですが、やむなく連作を嫌う作物を輪作するための対策法を下記に補足として掲載して見ました。しかしながらこれらは緩和策であり、確実に連作が防げるとは言い切れませんので誤解の無いように御願いします。また、2.で記述した連作障害で(ソラ)マメや牛蒡などに起こりやすい「忌地物質」については有害物質等の蓄積で育ちにくい現象があるようなので、この場合は違う科の野菜を栽培するか、場所を変えて栽培するしかないかな?って思っています。また、輪作するにしても野菜の相性と言うのもあるので時間を見てこれらについて記述したいと考えています。なかなか連作については難しそうです。
@土壌消毒、土作りをおこなう。
土壌に含まれる病原菌や害虫を殺すために太陽熱を利用して消毒を行います。この場合、天地返し(表層部の土と下層部の土をひっくり返して入れ替える方法)を忘れずに行います。また、消毒の際、温度を上げるために畝を古いビニールでマルチングして蒸し込むのも良いかと思います。(太陽熱消毒以外に熱湯や火炎による消毒、農薬を使った消毒もありますが一般では難しいかと思います。)
ここで気をつけなければいけないのは、土壌消毒などを行った際には有用な微生物まで殺してしまう可能性があります。そのため繁殖能力の高い微生物が残って悪さをしかねないので堆肥や微生物資材等を用いて有用な微生物も増やしておき、微生物のバランスを保つようにします。
A苗は、接ぎ木苗や耐病性品種を使う。
苗屋にいくと同じ野菜苗なのに価格の高い野菜苗を見かける場合があります。よく見ると、他の野菜(植物)を台木として接ぎ苗にしています。これらは樹勢も維持していますが、ある程度、耐病性を持たせた苗に仕上げています。また、キュウリなどにも「うどん粉病に強い」とか「何々に抵抗性を持たせた品種」とか書かれた特定病害に対する抵抗性品種も出ています。価格は高いですが、連作する場合、これらの事も考えておかれる方が良いかと思います。(接ぎ木苗も台木による連作障害があります)
<野菜の科目分類について>
野菜の連作で、ふと思い出しましたので項目を追加しました。ジャガイモはナス科なのでトマトやナスなどの同じ科を交代して植え付ける事も連作となり、好ましくありません。そのため違う科の考慮が必要です。
科目 | 野菜名 |
---|---|
ナス科 | ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ |
ウリ科 | スイカ、キュウリ、メロン、カボチャ |
アブラナ科 | キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ハクサイ、大根、カブ |
セリ科 | セリ、パセリ、ニンジン、ミツバ |
バラ科 | イチゴ |
ヒルガオ科 | サツマイモ |
キク科 | レタス、牛蒡、シュンギク |
マメ科 | エンドウ、ソラマメ、インゲン、落花生、えだまめ |
アカザ科 | ホウレンソウ |
ユリ科 | タマネギ、ニラ |