<野菜に必要な栄養素>

よく植物が生育するには、16の要素が必要だと言われています。特に「肥料の3要素」として、チッソ・リンサン・カリは有名だと思います。その他には「2次要素」と呼ばれるカルシウム(細胞の強化)・マグネシウム(葉の葉緑素の成分)・イオウ(新陳代謝に関係)があります。また、あまり多くは必要としないのですが健全に生育する上での「微量要素」があります。あっそうだ、水や空気中に含まれる酸素・水素・炭素も忘れる所だった。この中で微量要素については土壌や栽培野菜、購入肥料等に含まれている場合がありますのであまり取り上げられていませんね。むしろ大量要素の方が重要視されていますね。これらを整理すると以下の様になります。

◆野菜に必要な栄養素◆
要素 元素
大量要素 チッ素(N) リン酸(P) カリ(K) カルシウム(Ca) マグネシウム(Mg) イオウ(S)
微量要素 鉄(Fe) マンガン(Mn) 銅(Cu) ホウ素(B) 亜鉛(Zn) モリブデン(Mo) 塩素(Cl)
空気と水 水素(H) 酸素(O) 炭素(C)




<栄養素の効果>

さて空気や水から出来る元素を除いた栄養素はどんな働きを持つのかを調べてみました。普段はあまり気にしなかったけれど、調べてみると色々な働きがありますね。

◆栄養素の効果◆
栄養素 効果
3要素 チッ素 葉肥とも呼ばれ、葉・茎の生育を促進するのと植物を大きく育てます。
リン酸 実肥・花肥とも呼ばれ、花・実の着きや質および根の生育を促進します。
カリ 根肥とも呼ばれ、茎・根を丈夫にするのと暑さ寒さの耐候性や病害虫の抵抗性を増します。
2次要素 カルシウム 植物のからだ全体を丈夫にします。細胞の強化。
マグネシウム リン酸の吸収を助け、植物内での各種酵素を活性化させます。葉の葉緑素の成分。
イオウ 根の発達を助けます。タンパク質の合成に関わる。
微量要素 光合成を行う時に必要な成分。
マンガン 光合成を行う時に必要な成分。
花や実の付く成熟した株になるための成分。
ホウ素 根の成長と花つきに必要な成分。
亜鉛 植物の成長する速さに関係する成分。
モリブデン 硝酸還元を植物内で行う酵素成分。
塩素 光合成の時に出す酸素と関係する成分。

<肥料の種類と特徴>

原料によって肥料は、無機質肥料(化学肥料)と有機質肥料に大別されます。また、中間的と言えば語弊がありますが配合肥料と呼ばれる物もあります。

◆肥料の種類と特徴◆
肥料の種類 特徴
無機質肥料 植物に必要な物を化学的に合成した肥料で化学・化成肥料とも呼ぶかな。臭いも少なく清潔です。また、技術の進歩により長時間持続させる事も可能になってきたようです。この肥料は病害虫を受けにくいところもあります。ただ与えすぎると肥あたりや土を荒らす事があるので気を付けましょう。
有機質肥料 動植物を原料にした肥料ですので臭いはあります。有機物なので土の中で微生物に分解された後、ゆっくりとした肥料効果が現れますので元肥に適します。味の良い作物が出来るとも言われております。また、3要素に加えて微量要素がバランス良く入っているのもあるようですね。
配合肥料 有機質肥料と無機質肥料を混ぜた物もあるようです。この肥料は3要素と微量要素をバランス良く配合したものです。よくN5−P5−K5やN−P−K=5−5−5とかで肥料袋などに表記されているのを見かけると思います。また、袋の裏の品質表示にも3要素や微量成分表が記載されています。

<肥料と成分>

下表は肥料としてどのような物があるのか?また主な成分を列挙してみました。配合肥料は配合の仕方があるので割愛させていただきました。(肥料の名称によく短縮形が使われることがありますので()内に記述します)

◆肥料と成分◆

名称 成分
有機質肥料 油粕 チッ素が主体の3要素と微量要素が含まれる
魚粕
鶏糞
牛糞 3要素と微量要素
堆肥
骨粉 リン酸が主体の3要素と微量要素が含まれる
米糠
草木灰 カリが主体でリン酸も含まれる
無機質肥料 硫酸アンモニア(硫安) チッ素
尿素
過リン酸石灰 リン酸
熔成リン肥(ヨウリン) リン酸肥料だがカルシウム、マグネシウムも含む
硫酸カリウム(硫酸カリ) カリ
苦土石灰 マグネシウムとカルシウム
石灰 カルシウム

<肥料の性質>

肥料は原料によって効き方(肥効)が変わります。そのため肥料は、速効性肥料、肥効調節肥料、遅効性肥料に分けられます。

◆肥料の種類と性質◆
肥料の種類 性質
速効性肥料 その名の通り与えるとすぐに効果が出てくる肥料です。これらの肥料成分は主に水溶性の無機質肥料が多く、硫安・尿素・過リン酸石灰などがあり、それらの有効成分を含んだ配合肥料や液体肥料が該当します。これらは雨が多い時期や灌水回数の多い作物では流失が多くなります。また、与えてすぐ植物に吸収される反面、多量の施肥は濃度障害を起こしやすいの注意が必要です。普通は追肥として用いられます。
肥効調節肥料 与えたときから効果が出てきて、効果がある程度持続する肥料です。この肥料は化学的に肥効を遅らせた緩効性の物や水溶性の肥料を薄い膜でコーティングして肥料成分の溶け出す速度を調整した2種類の物に大きく分けられます。
@緩効性肥料
水には溶けないで弱酸でゆっくり溶けだしたりするもの、有機質肥料と同じ様に微生物分解で肥効が出てくるもの、加水分解により特定の成分だけが速効性とな り緩効性を増すものがあります。
A被覆肥料
粒状の速効性肥料を樹脂などでコーティングし、樹脂のコーティングの厚さ等をコントロールして溶出を調整したものです。
これらは元肥、追肥として用いられます。
遅効性肥料 与えてもすぐに効果が出ない肥料です。微生物によって分解されて初めて吸収出来る肥料で緩効性肥料とも言えます。有機質肥料や不溶性肥料などが該当します。これらは分解速度が地温によって左右される事や多量に施肥した場合、ガスや有機酸による障害があるので注意が必要です。これらの欠点をなくす肥料として、有機質肥料に米ぬかや籾殻などを混ぜた物に水を加え、発酵後、乾燥させた「ぼかし」肥料があります。これらは元肥として用いられます。

<栄要素の有効性と土壌酸度>
<栄要素の相互作用>

土壌中には色々な要素が溶けておりますが、それらは土壌の酸度に影響します。また、個々の要素は互いに協力しあったり、反発しあったりすることがあります。(土壌の酸度が出てきますので土作りの内容で記載しようと思いましたが、野菜の肥料成分と関わりが深いのでこちらに記述します。)

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左図はよく見かける「栄要素の有効性と土壌酸度(pH)」及び「栄要素の相互作用」を示したものです。この図から分かることは、

1.土壌酸度の適正化が作物の生育が旺盛になる一つの要因となっていることや極度の酸性やアルカリ性の土壌酸度の場合は生育に必要な要素が失われてしまっている。そのため、野菜たちには適正な酸度が重要な事が分かります。(一般には6〜7pH位の酸度です。)


2.土壌中の栄養素はお互いに影響しあい、拮抗作用と呼ばれる抑制現象や相乗作用と呼ばれる促進現象があります。その一例として、
・リン酸は苦土と一緒に施用すると相乗効果が期待出来る。
・カリ、石灰、苦土の成分は互いに拮抗作用があり、どれかが多量に施用されると他方の吸収を押さえてしまう。
・鉄、マンガンの過剰症が出た場合は石灰を施すと症状が軽くなり、逆に欠乏症の時には鉄、マンガンと一緒に加里を施すと良くなる事が期待出来る。


このようにこの図から色々と興味深い事が分かります。石灰は酸性をアルカリ性に改善すると共に色々な要素に影響し(作物の養分吸収をコントロールしている)、作物の生理状態を適性に保つ働きをしていますが闇雲に与えすぎると具合の悪い事も出てくるようですので気を付けなくてはいけませんね。


<肥料の酸度>

肥料の分類の仕方に酸性肥料、中性肥料、アルカリ性肥料と言った分類があります。何故、ここで取り上げたのかは普通、これらの性質を見るのに水などに溶かしてpHの識別をする事が多いのですが(化学的反応)、これとは別に作物に施用されてから酸度が変化(生理的反応)する性質もあるからです。石灰と言うとアルカリ性の代表的な存在ですが、過リン酸石灰は?これは化学的反応では酸性の部類ですが生理的反応では中性になっていきます(注)。このように肥料が土壌中で示す酸度は、肥料中の有効成分を作物が吸収した残り、すなわち肥料の副成分(根と呼ぶ)の性質が出てくると言った事です。また副成分がリン酸、ケイ酸、炭酸などの弱酸性の場合は、土壌の緩衝能(環境変化に対応出来る能力)以上に影響を与えることが少ないので生理的酸性とはならないようです。肥料にもこのような性質がある事も忘れないようにしたいものです。以下はその分類の一例で( )内はもともとの性質です。(注:過リン酸石灰はアルカリ性土壌では生理的酸性肥料として働く)

◆肥料の酸度◆
生理的酸性肥料 硫酸アンモニア(中性)、塩化アンモニア(中性)、硫酸カリ(中性)、塩化カリ(中性)、硫酸苦土肥料(中性)
生理的中性肥料 尿素(中性)、硝酸アンモニア(中性)、過リン酸石灰(酸性)
生理的アルカリ性肥料 石灰窒素(アルカリ性)、硝酸ソーダ(中性)、熔成リン肥(アルカリ性)

<肥料の配合適否>
hiryou_haigou 肥料の「配合適否」と言うのがあります。ご自分で配合肥料を作る場合、肥料の種類によっては配合できない場合や肥料効果の減少・ガスの発生などが出てくる場合があります。そのため親切なメーカでは左図のような表を印刷していますが、中には注意書きのみで済ましているのもあります。下表は小生なりに調べた事を表にしたもので、
×は配合してはいけない。
△は配合したらすぐに使用。
○は配合してもOK。をそれぞれ意味しています。(ヨウリンは過リン酸石灰と直接配合できませんが、ヨウリンの施用後に過リン酸石灰を施す事は可能な様です。)
◆肥料の配合適否◆
肥料名 硫安 尿素 過リン酸石灰 ヨウリン 硫酸カリ 塩安 石灰窒素 苦土石灰 消石灰 植物油粕 魚粕 堆肥 鶏糞 草木灰
硫安 × × × × ×
尿素
過リン酸石灰 × × × × ×
ヨウリン × × ×
硫酸カリ

<専用肥料>
kiseihiryou

専用肥料と書くと大げさですが、種苗店に行ったときに便利な肥料を見つけました。別にメーカの回し者ではありませんが、これ以外にナス・トマト・イチゴやジャガイモなどもありました。裏面には成分表が印刷されており、初めて菜園作業を行う方の配合の参考になるのではないかと思い、掲載しました。


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