体からの手紙

_自分で守ろう自分の健康_

著者:山崎 治

はじめに

1979年4月2日に「はり師」免許を取得して今年で二十五周年になる。

1997年頃からホームページに少しづつ掲載してきた内容を来院してくださる患者さんにも見てもらいたいと思って作成しました。

 はり院の仕事をしながら、患者さんにアドバイスをしてきました。その中で特に、これを知っていれば「役に立つのに」と思うことをまとめてみました。

 季節の変化と人体との関係について、食べ方・運動・睡眠・姿勢・呼吸・心の持ち方など、表現を変えて、くりかえし、繰り返し述べてみました。

 患者さんに言わせると「些細なことであり、特別な時間や費用をかけることもないので、だまされたと思って試してみてください」というのが私の口癖だそうです。

2004年4月2日

目次

はじめに
  1. 体の中のお巡りさんたち
  2. 胃袋さん達からのお願い
  3. 体のつぶやき
  4. 大切な話し合い
  5. 本当の責任者たち
  6. 習慣をチェックしよう
  7. 明確な目標の力
  8. 一日のエネルギーの流れ
  9. 一年のエネルギーの流れ
  10. ほのぼの嵐
  11. しみじみ大風
  12. 食と体
  13. 運動と体
  14. 姿勢と体
  15. 深呼吸のすすめ
  16. 睡眠と体
  17. 温度・湿度と体
  18. 自分で守ろう自分の健康
  19. 心と体

  ◇  ◇  ◇

1,体の中のお巡りさんたち

 ちょっと転んで膝をすりむいたら細胞が壊れてしまう。精神的なストレスが続くと内臓の細胞は弱ってしまったり壊れたりする。体の外にも内にも強盗やコソ泥とも言うべき輩が、体が弱るのを待っている。その連中がこのようなチャンスを見逃すはずはない。この弱った場所から体を食いつぶしに集まってくる。この時に働いてくれるのが自然治癒力である。この緊急事態に細胞の修理屋さんやお巡りさんも活動を開始するのである。お巡りさんと強盗との激しい攻防と、細胞の修復とが同時におこるのである。こんな大戦争や大工事が毎日のように体のあちこちで頻繁におこっているのである。

 このように間断なく働き続ける、お巡りさんや修理屋さんたちには、間断なく適切な給料を払い続けなければ、仕事への意欲はうすれてしまい、やがて仕事を放棄してしまうことにもなりかねない。

 じつはこの給料も、各人の不断の心がけの如何にかかっているのである。

 繰り返して述べるが、自然治癒力を作るのも、その働きを維持するのも、各人の不断の心がけ如何にかかっているのである。けっしてどこかで誰かが知らない間になんとかしてくれるのではないのである。

2,胃袋さん達からのお願い

 自然界のエネルギーを取り込み、自然治癒力の給料や、その他の必要なものに変化させるのである。自然界のエネルギーを取り込むのには原則があるのである。

 ここでは特に大地からのエネルギーを取り込む方法、つまり食事について考えてみる。食事にも原則がある。よく噛んで食べる。体の都合に合わせて食べる。旬の物を食べるなどがそれである。

 自然治癒力の給料や、その他の必要なものを作るのは、胃袋さんたちである。胃袋さんたちの同意を得なければ、いくら口に放り込んでも目的は達成できない。胃袋さん達の都合や希望を知っておくことが大切である。

 よく噛んで食べてあげる。よく噛むと唾液がでる。唾液は口の中の物を消毒し、同時に胃袋での作業の下ごしらえができる。さらに、よく噛んでいる間に熱い物も冷たいものも、適当な温度になる。その上、よく噛むためには、唇を閉じていなければこぼれてしまう。これによって、一回の飲み込む量は限定される。ほどよい量と温度で、消毒され、下ごしらえされた液体や固体が胃袋に入っていくことになる。これで胃は最大限の力を発揮できる。さらにゆっくりと時間をかけて、ゆったりした気分で食事をすれば、食べ過ぎる前に満足感があるし、吸収力も高まる。結果として胃に余計な負担をかけずに効率のよい仕事をしてもらうことができるのである。

 食事をするというのは、結構エネルギーを消費する作業である。エネルギーの消費は朝や昼が適している。夕方や夜は適していない。

 運動機能を発揮するには、まず栄養が必要である。朝や昼の食事がいかに大切であるかは、いうまでもない。

3,体のつぶやき

 AさんとBさんは幼なじみ。同じ会社に就職が決まり、同じ仕事をするようになった。どちらもまじめで黙々と仕事をする。やがて給料日がきた。Aさんは二十万円、Bさんは十万円の給料をもらった。こんなことが何回も繰り返された。やがてBさんはミスをすることが多くなってきた。Aさんは、Bさんの手助けをした。こんなことが続くようになった。そんな中、特別に忙しい仕事が入ってきた。二人も特別に頑張った。そして特別の給料が出た。Aさんは四十万円、Bさんは三万円であった。それからまた平常の仕事にもどった。ある日、突然Bさんは仕事にこなくなった。AさんはBさんの分まで頑張った。やがてAさんも来なくなった。会社はどうしてこんな困ったことがおきたのかと思った。会社はきちんと経営方針に従って、差別することなく二人に給料を支払ったという。  こんなことが、当たり前のこととして繰り返される会社があれば、あなたはその会社に就職を希望しますか。こう聞くと、「そんな馬鹿なことをする会社がどこにあるのだ」という答えが先に返ってきそうだ。そこで私が毎日のようにたくさんみている、このような会社を紹介しよう。

 Aさんは毎日、テレビを正面からではなく、横の位置から見てくつろぐのが日課だという。右の目も左の目も同じように一生懸命にテレビを見るという仕事をしている。右の目は横からテレビを見ようとして目のまわりが緊張している。左の目は周囲の緊張に加えて、肩や頸に引っ張られてさらに緊張気味。この頸や肩の中には、目に給料を運ぶ道路がある。右の目にいく道路は目の給料である四万円分をつんだトラック五台が走っていく。左の目の方の道路は、やや狭くなり渋滞している。なんとか給料日に間に合わせるために、バイクに切り替えることになった。しかし、一度に半分しか運ぶことができなくなった。やがて給料は届けられた。右の目には二十万円、左の目には十万円であった。こんなことが頻繁におこった。左の目はそれでも右の目と同じように一生懸命に頑張った。しかし、ミスがめだつようになった。右の目はつぶやいた。「左の目は調子が悪いんだな、私が頑張らなくては」と。やがて、この目が勤めている会社の責任者は言った。「このごろ頸や肩が凝る。なんだか目の調子もよくないし、歯の調子もよくない。どうしてだろうか。年のせいかな。」と。

 このAさんのとなりで、Bさんが横座りをして、同じように時間をすごすことが習慣になっていた。頭や上半身はなんとか少ない負担ですんでいた。腰の骨、そこから出ている神経、腰を支えている筋肉の右と左のそれぞれ給料の差が十万円くらいかな。股関節、座骨神経、膝の筋肉、膝の関節に潤滑油を送り込んだり古くなった潤滑油を処理したりする筋肉や血管は、右が三十万円、左が三万円といったところかな。体を支え、重たい頭を安定させるという仕事は右も左も同じように一生懸命である。社長さんいわく「給料はちゃんとはらっています」と。

 さらにそのとなりでは、脚を前へそろえてなげだして座っているCさんがいる。この人の膝は左右とも二十万円の給料をもらっている。体重を支えるという仕事を考えると十万円くらいの仕事かな。膝はつぶやく「二十万円もらえてちょっと得したかな」と。この人の腰や股関節もやはり二十万円の給料をもらっている。脚が楽をしている分、腰に負担がかかってきている。腰の負担は五十万円くらいの給料をもらっても割の合わない仕事になっている。しかし、文句もいわず一生懸命に仕事をしている。やがて、腰はミスをすることが多くなってくる。そして、病気による長期休暇願いを会社にだしたとき、社長さん「こまったな、何でこうなったのかな、年のせいかな」というのである。

信じられない経営をする会社、もう少し紹介してみよう。

 足を組んで腰をかける習慣がある人の右と左の脚や腰はどうだろう。右の歯だけで噛む習慣のある人の歯、歯茎、顎の筋肉、頸や肩の筋肉。

 噛むといえば、こんな例もある。

 仕事は、食べ物を二十回以上噛むこと、消毒すること、胃袋の仕事を助けるために下ごしらえをすること、温度調節をすることなど。これには、目や鼻などの助けを借りると言っても、どんな危険物(熱い、冷たい、有害物、バイ菌)が入ってくるかわからないので、危険手当がつく。それにもう一つ、話したり唄ったりという仕事もあるので、給料百万円。優先的に毎日、磨いてもらい、すすいでもらえるなどの特別待遇が与えられる。

 大変に責任があり、やりがいのある仕事なのだが、「最初の十数年はよかったが、上司が夜中でも、仕事を押しつけてくることが多くなってから、ついつい仕事をさぼる習慣が身に付いてしまった。二十回噛んだり、消毒したりなんてめんどくさいし。胃に仕事を押しつけても、特に大きな問題もなくすんでいるようだし」「この間、心臓がぼやいてたな『このごろ、冷たいものや熱いものが急に私のよこを通り過ぎることが多いよ、なんか調子がくるうな。肺も結構迷惑してるだろうな』って。でも、二十年もこれでやってきたんだし、まあいいか。」

 この会社も、このままでは悲惨な最期を迎えることになるだろう。さらに、へたをすると、社内から反乱者がでるかもしれない。

 『そんな馬鹿なことをする会社がどこにあるのだ』といっていたあなたの会社は、どうですか。あなたの経営している会社は大丈夫ですか。

4,大切な話し合い

 あなたの経営している会社は大丈夫ですか。大丈夫だとは思うけれど、それを確認するためにも話し合いを持つことにしよう。

 話し合いに参加するのは、お巡りさんたち、心臓、口と胃袋さんたち、肺、腎臓、その他、必要に応じて意見をもとめることにしよう。

肝臓 「まずは今までのことを反省してみましょう」

心臓 「反省するも何も、私たち全員、創業以来、一度も休んだり、さぼったりしていない。私たちが少しでも休んだりしていたら、この会社はもう存在していない」

肝臓 「その通りです。しかし、本当に、さぼったりしていませんか」

修理屋「給料が届かないことがあるのは、どうしてですか。道路が突然に狭くなるからだと思っていましたが、考えてみれば、会社の方針であれば、給料の不足は後からちゃんと補充されますよね」

目  「方針があいまいではないのか。いや、方針はあるのか」

胃  「給料の元を作っている立場から言わせてもらえば、方針はないと思うよ。夜中に何度もたたき起こされて仕事をしているが、突発事故に対処するためだと信じて、すぐに仕事をしてきたが、その後、いらないと言って、私の努力の結晶を捨てているそうですね。」

腸  「いえ、このごろでは、捨てるのが間に合わなくて、倉庫や道路もゴミの山になってます」

胃  「全部がゴミの山というのは言い過ぎでしょ。私たちは有害物やゴミと役に立つものと、ちゃんと分けていますよ」

肝臓 「まあ、そのくらいで。ところで、なぜ必要でもないのに、夜中に仕事をするのですか」

胃  「それは、口さんに聞いてください。そういえば、日頃あんなにお喋りな口さん、どうしたんですか」

口  「大切な話はどうもにがてでね(苦笑い)。最初のころは、夜中に急に仕事が入ってくるのは、突発事故の処理のために会社の方針だろうと思っていたんだけれど。会社の方針というより、習慣じゃないのかな。正直に白状すると、あんまり無茶苦茶なことが続くので、私も仕事をさぼる習慣が身に付いてしまったんです」

心臓 「習慣だって。習慣を取り入れるためには大変なエネルギーを必要としますよ。十分な話し合いもしないで、しかも仕事をさぼる習慣をとりいれたのですか。そんな危険なことをしたら会社が壊れてしまうかもしれません」

肝臓 「習慣といえば、昔こんな不思議な夢をみました。姿や形があるはずのない、習慣さんたちと、私が出会うという夢です。彼らは何を聞いても、どんな風に聞いても、いつも同じ答えを正確に繰り返すんです。彼らと話していて、感じたことは、彼らの中の誰一人として、良いことをしようとか、悪いことをしようなどと考えているものがいないことです。

そこで、気づいたことは、良い習慣と悪い習慣をどのようにして選ぶべきかということです。これがいかに重要で難しいかということです。。」

心臓 「そんな夢の話はともかく、新しく習慣を取り入れるのにも、習慣を変更するのにも、どれほど大変なエネルギーが必要であるかは想像することもできないほどですよ。私も昼と夜とを取り違えるほど大変な思いをして新しい習慣に対応するのです。もちろん、習慣が身に付いてしまえば、後は楽ですが。そのことを知らない者はいないはずです。口さんは、なぜ。いや、それよりも、どうやって、その莫大なエネルギーを動かすことができたのですか」

目  「耳さんとも時々話すのですが、それだけの莫大なエネルギーを簡単に使いこなす者がいるのは確かです。」

耳  「私や目さんだけではないかもしれませんが、ある種類の仕事をすると、心臓さんや血管さんたちが特に、大暴走をしているようなんです。」

心臓 「そうそう、それなんです。このごろよくあるんですが、大きなエネルギーに押しつぶされそうになるんです。大切な業務連絡も、何もかも忘れて混乱してしまう」

血管 「私も同じです」

胃  「心臓さんたちが、急に業務連絡しないことがあるので、みんな大変に困惑していたのですが、そんなことがあったんですか」

肝臓 「耳さん、話を続けて下さい」

耳  「莫大なエネルギーを簡単に使いこなす者がいるという話でしたね。」

目  「私たちの仕事は、周りの音や映像をできるだけ正確にとりこむことです。皮膚さんなどは周りの温度や湿度など、いろんな周囲の情報を取り込むことが仕事です。そのたくさんの情報の中のどれかが、特に心臓さんや血管さんたちを大混乱にしていると考えられるんです」

心臓 「あんなに大混乱するのは、こりごりです。」

血管 「こんどあんな大混乱が起きたら、私自身が壊れてしまいますよ」

肝臓 「そんな危険なことなら、対策を考える必要がありますね。困りましたね。血管さんや心臓さんが壊れてしまっては、大変ですからね」

胃  「そんなことが起きないようにするには、この際、目、耳、皮膚などのみなさんには、仕事をさぼって頂くのがよいと思うのですが」

肺  「そんなことをしたら、環境からのエネルギーの吸収はうまくいかなくなるし、危険から会社を守れなくなるではないか」

胃  「しかし、いつ心臓や血管がこわれるかもしれないという危険を考えるとやむを得ない」

肝臓 「口さんの仕事をさぼる習慣をどうするかについては、次回の話し合いにしよう。とにかく、目、耳、皮膚さんには仕事をさぼるように努力してもらうということで、よろしく。今日のところは、これで話し合いは終わります」

腎臓 「仕事をキチンとやる習慣をやめるのにも大変なエネルギーがいるはずだ。うまくいくのだろうか。口さんだって、さぼる習慣を変更できるのだろうか」

5,本当の責任者たち

思考 「彼らが言っていた大きなエネルギーを簡単に扱える者とは、私たちのことをいっているのだろう。しかし、私だって、こんな力をどう使えばいいのかわからないんだよ。しかし、このままにしておくと、彼らはやがて壊れてしまう。なんとかしなくては。」

悲恐 「なんとかしないと、不安で心配で。でも、どうしたらいいの。どんどん悪くなってしまったらどうしよう。今日まではなんとかなったんだから、これからもなんとかなるんじゃないかな。でも明日にも急に悪くなったらどうしようかな」

喜怒 「心配しなくても外交問題は、俺がにらみをきかしてやるから大丈夫だよ。病気がこわくて、やってられるか。」

思考 「そうだよね。今日までなんとかなってきたんだから、これからもなんとかなるよね。」

悲恐 「でも、どこかの会社では、胃がいきなり、周りの社員を壊しはじめて、手がつけられなくなったんだそうだよ。そんなことになったらどうしようか。口さんのさぼる習慣だけでも、なんとかできないもんかね。」

思考 「そうだね。私たちの力に何かの目的をもたせると、結構なんでもできるからね。」

悲恐 「俺たちの力が大きいと言ったって、習慣を変更するんだぞ。口の習慣を変更するとなると少なくとも、一日に三度も、それに三ヶ月とか半年はかかるんだぞ。習慣を変更するなんて、めんどくさいよ。今までなんとかなったんだから大丈夫だよ(根拠なし)。」

思考 「そうだね。めんどくさいのはたしかだな。もう少し様子をみてみようかな」

悲恐 「でも、どこかの会社みたいに胃が暴れ出したらどうしよう。(根拠なし)」

思考 「そんなに急にはならないと思うよ(根拠なし)。」

喜怒 「それはそうとさっきいってた『私たちの力に何かの目的をもたせると、結構なんでもできる』ていうのは本当か。」

思考 「喜怒さんもいってましたが、習慣を変更するのは大変なことです。でも、三ヶ月ほど、このエネルギーを集中し続ければ、不可能とも思える習慣の変更が出来るはずです。」

喜怒 「それじゃ、隣の会社に負けないくらい、うちの会社も大きくするのもできるのか。」

悲恐 「そんな、無茶なことは考えない方がいいよ。失敗したらどうするの。今まで通りでいいですよ。」

思考 「明確な目的にエネルギーを集中し続ければ、不可能と思える習慣の変更も可能なんだそうです。でも、そんなこと、やったことないし。今まで通りでいいですよね。」

喜怒 「思考はハッキリしないから、疲れるんだよ。お前が最初に話をはじめたんだろう。エネルギーの使い方だって、お前がいいだしたんじゃないか。もう、やめた。」

思考 「エネルギーの使い方をちゃんと考えているのは私だけなのか。だとすれば、私がエネルギーをしっかりコントロールすれば、すべてうまくいくのかな。目や耳からの情報でエネルギーが暴走しないようにもできるのかな。目的を持って、頑張ることを習慣にしてみようかな。うまくいくかな。心配だな。どうしようかな。」

思考 「喜怒さんのエネルギーの使い方は、場当たり的で乱暴だ。確かにこないだは心臓や血管が壊れるかと思った。悲恐さんのエネルギーの使い方も、やはり場当たり的で、ある意味で乱暴だよな。心臓や血管がどうにかなりはしないかと心配だった。  そうだ、私が悲恐さんや喜怒さんたちを説得して、とりあえずは口さんの仕事をさぼる習慣を変更することからはじめてみよう。胃さんたちが、いつ暴走をはじめるかなんて、毎日心配するのはもうこりごりだし。私がエネルギーを目的に合わせて集中し続ければ、必ず成功するはずだ。隣の会社も実は、そうして今の立派な会社になったときいているしな。間違いはないんだろうし、やってみるか。」

思考 「いや、やっぱりめんどくさいかな。」

6,習慣をチェックしよう

 天と地の法則は変更することはできない。よく調べて覚えていくしかない。

 自分の習慣は変更することができる。自分が今どんな習慣を持っているかチェックしてみることをおすすめしたい。

 『悪いことをしてやろう』とか『良いことをしてやろう』と考えている習慣はないという話を思い出してほしい。習慣を選択し、決定し、取り入れるのはあなた自身なのである。習慣は意識する、しないにかかわらず、全てあなたが選んだものであり、あなたが決定したものであり、さらに、あなたが変更することのできるものなのである。子供のころは親や周囲のひとから教わったものを取り入れた習慣がほとんどである。

 大人になって、経験をつみ、独自の目的を持ったときに、また、目的が変更されたときに『習慣をチェックすること』が大切なのではないでしょうか。

一、食事に関する習慣

コップの中身を一気に飲み干す習慣。一口飲んではコップを置く習慣。よく噛む習慣。あまり噛まずに速く食べる習慣。食べ物を残さない習慣。朝食をとらない習慣。寝る前に食べる習慣。臭いや味を楽しむ習慣。夏にクーラーのきいた部屋で冷えたものを一気飲みする習慣。

二、運動に関する習慣

毎日決めて運動する習慣。暇があれば家でごろごろする習慣。毎年水泳やハイキングなどをする習慣。毎日犬の散歩をする習慣。毎日山登りをする習慣。重心を踵に、あるいはつま先に乗せて歩く習慣。鞄をいつも右肩にかけて歩く習慣。ちょっとした買い物にも車や自転車を利用する習慣。涼しくなると草むしりをする習慣。

三、睡眠に関する習慣

夜更かしの習慣。朝寝坊の習慣。早く寝る習慣。早く起きる習慣。厚着をして寝る習慣。夜中に目覚めるとトイレに行く習慣。枕をしない習慣。

四、姿勢に関する習慣

足を組んで腰掛ける習慣。横座りをする習慣。何かにもたれて座る習慣。肘をつく習慣。顎を突き出す習慣。猫背の習慣。正座をする習慣。あぐらをかく習慣。

五、心に関する習慣

くよくよ考える習慣。諦める習慣。ひとつの事に集中して考える習慣。自分で決断する習慣。すぐに腹を立てる習慣。他人の話に割り込む習慣。他人の話や意見をよく聞く習慣。誰かがジュースをこぼすたびに怒鳴りまくる習慣。他人のミスを見るたびに納得のいくアドバイスをしてあげる習慣。確かな根拠もなしに『重い病気になるのではないか』と心配する習慣。『自分が健康ですべての目的を達成できる人間である』と毎日自分自身に言い聞かせる習慣。根拠もないことを大声で話し興奮する習慣。今日できる仕事を明日に回す習慣。

 もうこのくらいにしておきましょう。

 胃袋さんたちの話し合いを思い出してほしい。習慣は目的に合わせて集中して努力を続けないと変更できないということ。そのために莫大なエネルギーが必要であること。しかし、その結果として、現実に新しい結果を生みだしてくれるということ。大切なエネルギーを目的に合わせて集中し続けてやれば、それがやがて新しい習慣となり、新しい結果を手に入れることができるということ。

 繰り返して言うが、習慣を選択し、決定し、取り入れるのはあなたです。その結果を手に入れるのもあなたです。いろいろな習慣を試してみて、納得のいく結果が得られた習慣だけをさらに続けることをおすすめします。

 このようにいうと、悩んでいる人からは『すすめられなくてもそうするよ』といわれそうだし、それほど悩んでいない人からは『一つの習慣を変更するだけでも大変なのに、納得のいく習慣をさがすなんて、めんどくさいよ。』といわれそうですね。いや、ここまで読み続けてこられたのなら、習慣というものが、結構自分の健康に関係が深いことに気が付き、『習慣のチェックをしてみようか』と考えられているかもしれませんね。

7,明確な目標の力

 旅行に行きたい。趣味を続けたい。ひどい頭痛を治したい。原因不明の不妊症だが絶対に元気な子供を産みたい。などなど、何か目的がある患者さん。『絶対にやりたい』ことがあるという患者さんは、どんどん良くなっている。

 患者さんとの会話のなかで、適当ではない習慣(その時のその患者さんにとっては悪い習慣)に気が付いた場合は、アドバイスをしているが、やりたいことがある患者さんほど、目標が明確な患者さんほど、すぐに習慣の変更を試しているようである。さらに、そのことをきっかけに、ささいと思われる習慣が大きな結果を生み出すことに気が付くのか、いろいろの習慣の変更を試してみて逆に私に教えてくれる患者さんもいる。

8,一日のエネルギーの流れ

  •  朝。起床して、少しずつ体を動かしはじめる。食事をして、さあ、活動開始。
  •  昼。しっかり活動する。少し休息し、食事をし、また活動する。
  •  夕方。一日の疲れを癒すために家路につく。ゆったりと体を休める準備に入る。
  •  夜。就寝。体の中では、一日の老廃物が処理されていく。心も一日の出来事の整理整頓をする。

 一日の人のエネルギーの流れとは、こんな具合ではないだろうか。

自然界のエネルギーの流れから、この一日の流れをみてみよう。

  •  朝。自然界のエネルギーの流れは、太陽の動きに象徴されるように、朝は天から地上にエネルギーが降り注ぎはじめ、これを受けて大地もエネルギーを地上へと発生させはじめる。地上の万物がこのエネルギーの流れを受けて活動を始める。
  •  昼。自然界のエネルギーは大いに地上に溢れ、万物も盛んな活動により、エネルギーの循環が行われる。
  •  夕方。地上のエネルギーは減少していく。万物も活動を減少させる。
  •  夜。地上にはエネルギーがほとんど存在しない。万物の活動もほとんど見られない。

 人間の活動には、自然界とのエネルギーの交流が絶対に欠かせない。人間が活動のエネルギーを維持していくためには、この自然界のエネルギーの流れに従った生活が絶対に欠かせないのである。

 朝や昼に盛んに活動することで、内臓の活動も盛んになり、エネルギーを吸収する力も盛んになる。盛んに活動することで、周囲にエネルギーを発散することになるのであるが、周りのエネルギーを吸収する力も盛んになるのである。地上にたくさんエネルギーがある朝や昼にこそ、エネルギーを吸収することが大切である。朝にしっかり食事をすることは、このエネルギーの発散と吸収に必要なエネルギーを取り込むことである。しっかりとよく噛んで、しっかり内臓に消化吸収してもらい、その日の活動のエネルギーを準備してから、一日の活動をはじめることが大切である。

 朝食をあまり取らない習慣のある患者さんに『朝の食事を工夫してみて下さい』と話すことが多い。この話を素直に受け入れてくれる患者さんも結構多い。その結果、『頭痛がなくなった』とか、『だるさが無くなった』『夕方にお腹が空いて気分が悪くなることが多かったが、それが無くなった』という患者さんもいる。

 昼の食事もまた、その日の活動に必要なエネルギーを補充する意味からも大切なのである。

 夕方は、一日の疲れを癒すことが大切である。朝や昼に頑張ってくれた内臓も同じように疲れを癒してやるべきである。夕方の食事は、こんなことを配慮して胃に優しいものを選ぶべきである。

 夕方の食事を早く済ませたり、軽い物に変更することで、『朝の目覚めに変化がおきた』というのは患者さんからよく聞く話である。

 夜は体の中の大掃除の時間。大掃除の最中にご馳走が入ってきたのでは、かえって掃除の邪魔になるだけである。掃除が不十分なままで、すっきりとした次の朝をむかえることができるだろうか。

 一日の自然界のエネルギーの流れ。そのエネルギーを取り込んで、生きている人間。人間が昼に働いて、夜に眠るのは、この変更することのでいない自然界の習慣に従って、効率よくエネルギーを吸収するためであると言える。昼に働くためには、脳や手足をまかなう栄養が必要である。それが朝や昼の食事なのである。

 道路の真ん中で、ガソリンが無くなったことに気がついたらイライラしませんか。そのイライラが運転ミスの原因になりませんか。

9,一年のエネルギーの流れ

 一日には朝と昼と夕方と夜がありました。これと同じように、一年には春と夏と秋と冬があります。

 冬の寒さが未だにしっかりと残る立春(二月の初め)にはじまり、夏の暑さを感じはじめる立夏(五月の初め)に終わる。一日にあてはめれば朝に当たる。

 食事の量や運動の量を徐々に増加させはじめ、睡眠の量を減少していく時期である。

 地上にはほとんど無かったエネルギーが増大してくる季節である。枝のどこを切っても存在しなかった、おそらく大地の中で大切に暖めておいたのであろう花びらが満開になり、地上のエネルギーが盛んになったことを知ることができる。

 一年の計画や目標を心に秘めて、暖かい日を選んで、次第に家の外へ出ることが多くなる。自然の変化を見て、聞いて、感じる。この繰り返しが、やがて、手足や内臓をより活発にさせてエネルギー吸収力の増進となる。

 いつまでも、『眠たいから』『気持ちいいから、もう少し寝かせて』といっていたらすぐに五月はやってきてしまう。エネルギーの吸収力が弱いまま、夏を迎えたのでは、食欲不振の夏、食べないから体力減退の夏ということになりそうである。「夏痩せ」などという残念な状態はさけたいものだ。

 夏

 春の流れを受けて、体のエネルギー吸収力の増大がうまくいけば、次にくるのが夏だ。五月はじめから八月はじめまでの約三ヶ月間、よく運動し、適度に汗をかき、しっかりと食べて、体重が増えるくらいがよい。冬に体重が減少するので、夏にそれをとりもどす。結果として毎年同じ体重というのが理想的だ。とにかく、エネルギー盛んの夏。しっかり運動して、手足を動かし、エネルギーを盛んに発散させ、体内の循環を盛んにして、内臓の活動も盛んにして、自然界に溢れるエネルギーをしっかり吸収していこう。来るべき冬を乗り切るためのエネルギーは、ここでのエネルギー吸収の如何にかかっているのだ。

 秋になってから、エネルギー不足で異常な空腹感に陥り、十分に消化もできないのに食べ過ぎて病的な浮腫や肥満を招かないためにもしっかりとエネルギーをとりこんでおきたい。また、夏の冷飲食で、秋に極端に食欲不振に陥ったりしないためにも、冷飲食のとりすぎはさけたいものである。

 秋

 夏の暑さが未だにしっかりと残る立秋(八月の初め)にはじまり、冬の寒さを感じはじめる立冬(十一月の初め)に終わる。一日にあてはめれば夕方に当たる。食事の量や運動の量を徐々に減少させはじめ、休息の量を増加していく時期である。地上のエネルギーは結実し実りの季節、収穫の季節となる。天からのエネルギーは減少し、地上へと溢れていたエネルギーは大地の中へと収まっていく。  汗をかかない程度の運動を心掛ける。控え目に食べることを心掛ける。夏に大いに運動し、食事をしたのである。そろそろ手足も内臓も休めてやりたいものである。

 冬

 エネルギー減少の秋に続いて、十一月はじめから二月はじめまでの約三ヶ月間が冬である。地上にはエネルギーがほとんど無くなる。  手足も内臓も出来るだけ動かさずに、夏に取り込んでおいた、エネルギーをうまく配分しながら次の春を待とう。寒さのなかで無理をして体を動かせば、エネルギーを極端に消耗することになる。周囲からエネルギーを取り込もうとしてもエネルギーは無い。手足が冷えて活動的状態ではないときは内蔵も活発ではない。活発ではない内蔵にご馳走の消化吸収をさせるのは、かわいそうである。

 やっと寝付いた夜中の十二時に叩き起こされて仕事を押しつけられたとしたら、あなたならどうしますか。かりに一生懸命仕事をしようとして、絶好調の昼間と同じだけ仕事ができますか。さらにこんなことが夜通し、何度もくりかえされたら、いい加減にしてくれといいたくなりませんか。

 年末の大掃除、忘年会、新年会、お正月のご馳走。二月に救急車の音をよく聞くように感じているのは私だけでしょうか。

10,ほのぼの嵐

 冬の寒さが夏の暑さに変化する春。想像することもできない大きなエネルギーの働きである。もし石油ストーブで同じことをしようと思うと何台で何日燃やし続けたらいいのだろうか。こんなバカなことは考えない方がいいのかもしれない。

 春といえば、お花見を思い描くものである。しかし、天のエネルギーと大地のエネルギーは冬の寒さを夏の暑さに変化させるという想像できない変動をしている。地上も、動物である人間も、この激しい変化に一生懸命に対応している。この対応がうまくいかなければ、健康な生命活動を維持することはできない。

 冬にエネルギーをほとんど使い果たした体が、二月の寒さ、三月の気温の激変を乗り切って、ほのぼのしはじめた四月にたどりつくためには、この激変と戦わなくてはならない。

 冬に運動しすぎていたり、食べ過ぎていたりして、手足や内臓を弱らせていたのでは乗り切れるものではない。また、それ以前の秋に食べ過ぎて、内臓をいためていたり、余分な栄養物(ゴミ)を溜め込んでいたのではさらに大変である。もっといえば、その以前の夏に運動不足や食事の不足によりエネルギーをしっかり取り込んでいなければ、到底『ほのぼの嵐』を乗り切ることは困難になるのである。

 二月。春といっても、まだ寒さは厳しい。夏へ向けてときどき顔を出す暖かい日に運動をはじめるのもよい。起床はまだまだ、ゆっくりと、目覚めてから起きあがるまでにたっぷりと時間をかけて、体をいたわってやりたい。

 三月。寒さと暖かさが入り交じって、体調を整えるのが困難な時期。夏へ向けての準備のときであることを忘れてはならない時期。あせらず、しかし、しっかりと運動や食事、そして睡眠をきたるべき夏を意識して変更していく時期。

 夏へ向かって嵐の中を突き進んでいるんだということを忘れてはならない。嵐を乗り切るためには、この心掛けがなくては乗り切れない。この心掛けで、外へ出て、運動しよう。

 四月。この心掛けで、油断することなく、さらに食事もしっかりととりはじめよう。朝日と競争する思いで起床するのも必要かもしれない。

 この嵐を油断なく戦いきった後に、身も心も軽く、食欲旺盛で、短時間の睡眠でも元気で働ける楽しい夏を迎えることができるのである。

11,しみじみ大風

 夏の暑さが冬の寒さに変わる秋。うんざりするほどに溢れていたエネルギーが、地上から全部といってもいいほど消失してしまうのである。

 活発に手足を動かし、全快で内臓が働ききった、その後におとずれるのが、この地上のエネルギーの消失である。八月はじめから十一月はじめまでのわずか三ヶ月の間に起こるエネルギー消失現象。

 八月。運動も食事も徐々に減少の方向へ。手足も内臓も激しいスポーツのあとの整理体操の段階に入る時期。

 九月・十月。整理体操から家路に向かう段階。

運動の量も質もさらに控え目にしていく時期。運動が過ぎてエネルギーを使いすぎても、後で取り戻すことはできない。地上のエネルギーは消失の方向に向かっていることを忘れてはいけない。激しく波打ちながら、エネルギーは消失していくのである。

 この時期の食事も運動と同様に徐々に控える時期である。『せっかく栄誉たっぷりな食べ物が多いこの時期。これを食べないと絶対に損である。』しかし、栄養たっぷりな食べ物を、しかもたくさん消化するとなると、内臓は全力を振り絞って活動しなければならない。そのためには、内臓を適度に刺激し活発にするために手足を動かし、安定した暖かい気温を確保しなくてはならない。さらに疲れがたまっている内臓では困難である。

 『胃袋さんたちからのお願い』を思い出して欲しい。寒い春のはじめから、頑張りはじめて、全力を振り絞って夏を乗り切って、一年分の役目を果たしきって、やっと迎えた九月十月。エネルギーの消化吸収やゴミ処理をやりきってきたのである。この上、全力を出しきらなければ、消化できない、栄養たっぷりの秋の食べ物をたくさん処理する仕事をおしつけられるのなら、この会社を辞めることも考えなければならない。そんな人使いのあらい会社なら、反乱の一つも起こしてやりたくなる。そうならないように心掛けなければ健康な体を維持できない。

 この時期の病の原因は食べ過ぎや運動のやり過ぎが多い。患者さんに「食事を控えて様子を見てください」ということが非常に多い。このアドバイスを聞いた患者さんのなかには、「不眠が治った」「便秘が治った」「下痢や腹痛が楽になった」「肩凝りがらくになった」「手足の冷えが楽になった」などなど、おどろくほどの反応が返ってきた。

 『本当か。そんな事ぐらいで』という声が聞こえてきそうだが、本当かどうかは、自分で試してもらうしかない。自分にとって本当でなければ意味がないからである。食事や運動を控え目にしてみるだけで、悩んでいた不眠や便秘や頭痛や腹痛や冷え症が楽になればどうだろう。騙されたと思って試してみても損はない。特別なことを試してみてくださいといっているのではないのだから。

 とにかく、強い風雨があるたびに、激しい気温や湿度の変動があるたびに、地上からエネルギーが消失するという『しみじみ大風』の季節である。体内に蓄えた、大切なエネルギーを、来年の春までうまく配分していかなくてはならないのである。内臓をいじめたり、汗をかいてエネルギーを発散したりという危険な行動は絶対につつしむべきである。

 まじめに働いてきた内臓をいじめたりすると、呼吸が乱れたり、心臓がさぼりだしたり、脳へのエネルギーの配分を減らされたり、ゴミを溜め込んで排泄しなくなったり等々、どんな反乱がはじまるか分からない。

 「しみじみと紅葉を楽しむ季節」は、大風雨の度にエネルギーが激変して、暑さを寒さへと変えているのである。体も自然界の激変に対応しながら、寒い冬へ向けて激変しているのである。それだけに余計な負担をかけないように気を配ってあげたいものである。あなたの手足や内臓は、あなたのために一生懸命に激変に対応しているのだから、あなたも、あなたの手足や内臓のために気を配ってあげて欲しい。食べたいから食べる、運動したいから運動すると簡単に考えるのではなく、夏に頑張ってくれたことを思いだしてもらいたい。そして、食べたら誰が一生懸命に働いて消化吸収や排泄をしてくれるのかを思い出して欲しい。運動をすれば、内臓が疲れた体に鞭打って頑張ろうとしてしまう癖があることを思い出してやってほしい。あなたの内臓は、あなたに対して義理堅いのである。あなたが忘れていても、そんなことにはおかまいなく、誠実で義理堅いのです。

 ここまで繰り返していうのは、この大風の時期をしっかりと乗り切るかどうかで、きたるべき冬を健康ですごせるかどうかが、ほとんど決定してしまうからです。病気で寝正月をむかえるのか、健康で穏やかな正月を迎えるのかは、ほとんどこの時期の乗り切り方で決まってしまうことが多いのである。

 もう一度、繰り返していう。頑張ってくれた内臓さん達を大切にしてあげて欲しい。

12,食と体

 食べることは、体にとって大切なことである。このことは誰もが認めるところである。何を食べるかが注目されている。何を食べるかによって病気が治ったり、減少していることは注目するべき事実である。栄養素の分析は今後もすすんでいくであろう。おおいに学び取り入れていきたいものである。

 ここでは、栄養素について述べるつもりはない。自然界と体と食べることとの関係について考えてみたい。

 食べるとは自然界が地上に育んでくれたエネルギーの固まりを体に取り込んで生命活動の源にすることである。自然界は春夏秋冬のそれぞれにいろいろな食べ物を恵んでくれる。それぞれの季節に合った物を食べることがのぞましい。

  旬の物を食べよう

 例えば、夏の暑さに耐えて結実した物は、夏の暑さに耐える力を秘めている。冬には冬の秋には秋の春には春の季節を乗り切る為の力を秘めている。力をひめているからこそ、その季節に結実したのである。季節に合った物を食べることをすすめるのはこのような理由によるのである。旬の物を食べるとはこういう意味からであろう。

  体の調子に合わせて食べる

 春や夏は自然界にエネルギーが溢れ、これを受けて体のエネルギーの循環は活発になる。この運動しやすい時期にしっかりと運動すれば手足の循環も活発になり、さらに内臓の循環も活発になる。自然界のエネルギーの動きが活発になれば、これを受けて体も活発になる。結果として、春や夏はよく運動して手足や内臓の働きを活発にして、エネルギーをたくさん取り込むことが大切になる。大いに食べる時期である。

 秋や冬は自然界のエネルギーが減少し、これに伴って体のエネルギーの循環も停滞ぎみになる。エネルギーの少ない時期に活発に活動することには無理がある。運動を控えてエネルギーの消耗を少なくすることを心がけるべきである。手足が活発に運動をしなければ、手足の循環も活発ではなくなり、内臓も活発な働きをしなくなる。

 胃袋さん達の立場で考えれば、取り込むエネルギーが溢れているときは、おおいに頑張って、やりがいのある仕事ができると張り切っている。やる気満々の時期が春と夏ということになる。そして、一生懸命に働いた後は長期の休暇が必要である。取り込むべきエネルギーが減少していて、長期の休暇が欲しいという状態になっているのが秋であり冬である。当然、この胃袋さん達の都合を考えれば、食べる量を調整してあげる必要がある。

 春や夏の患者さんには「しっかり食べること」をおすすめしている。秋や冬には「食べ過ぎないように」とすすめている。

 一日のなかでも朝や昼の食事が不足していると感じる患者さんには「ためしにしっかりと食べてみてください」とアドバイスをしている。「夕方のだるさが無くなった」「体に踏ん張りがでてきた」などの反応がある。このアドバイスも春や夏には特に有効で、よい結果につながっている。秋や冬は「とにかく食事を半分に減らしてみてください」ということが多い。「便秘が治った」「下痢が治った」「熟睡できる」などの反応が返ってくる。

 胃袋さんたちにはエネルギーの吸収も大切な仕事だが、排泄も大切な仕事なのである。秋や冬に食べ過ぎるということは、休暇中の胃袋さんたちをいじめていることになる。いじめられたら、仕事にミスがでる。エネルギーの吸収や循環や貯蔵だけでなく、排泄の仕事にも当然ミスが出てくるのである。胃袋さんたちのやる気や都合をよく知ってあげて、忘れないよういしてあげて欲しい。一日では一年では、いつ張り切って食べて、いつ控えめに食べるべきかを考えてあげてほしい。あなた専属の胃袋さんたちのために。

 胃袋さんたちの都合といえば、やはり食べ方について、ここでもう一度おさらいしたい。

そう「よく噛んで」食べることだ。よく噛めば、消毒ができ、胃での消化の下ごしらえができ、温度が一定になる。おまけに一度に喉を通る量も適度に限定される。このことは季節に関係なく、あなたの胃を大切にする最高の方法である。

  食べることは重労働

 食べるということはエネルギーを取り込むこと。しかし、この仕事にも実はたくさんのエネルギーが必要なのである。胃袋さんたちが自分の持っているエネルギーを活用して消化や吸収や排泄という仕事をしているのである。出来るだけ無駄のないように胃袋さんたちのエネルギーを使わないと、体のエネルギーの浪費になってしまう。「食べ物が不足することは生命活動の元が不足する」ということ。しかし、必要以上に食べることは、やはりエネルギーの浪費になるのである。食べ過ぎてもエネルギーの不足につながるのである。疲労の原因になるのである。疲労すれば、手足がだるくなるだけでなく、頭の回転も悪くなるし、内臓の仕事である消化や吸収、排泄までもうまく行われなくなる。

 忘年会の次の日は、ただ寝不足だけで体がだるいのではない。エネルギーを消耗し、疲労物を体に残しているのである。こんなことが続けばゴミが溜まり、エネルギーが不足して、健康がそこなわれるのである。

  飲み過ぎると喉が渇く

 食べ過ぎると、胃腸や心臓がつかれ内臓全体が疲れ、手足頭がかえって栄養失調になる。同じように、飲みすぎるとかえって内臓に負担をかけて、循環がわるくなり、手足頭はもちろん全身の循環がわるくなり細胞に潤いがなくなる。飲み過ぎた液体は水毒となり体にたまり、そのために循環の妨げとなり、内臓に負担をかけることになる。結果として細胞の潤いがなくなり、体としては水分を要求するようになる。飲み過ぎると喉が渇くのである。そして、夜間の休息時に内臓の疲れが少しとれ始めたときに水毒の排泄をすることになる。のびすぎて、内臓が疲労して、夜間に排尿に起きる。ために、夜間の休息を妨げて疲労の蓄積の原因となるのである。

 「いつも飲んでる量の半分にしてみて下さい」「コップの中身をのみほすのではなく、一口だけ口に含んで、コップを置いておくようにしてみてください」などと患者さんにお願いすることがある。それを実行してくれる患者さんのなかには、喉が渇かなくなったという患者さんも結構いるものである。

  具体的な食事の量

 しっかり食べる夏、控えめに食べたい秋や冬をおすすめしてきたが、具体的にはどれくらい食べたらよいのだろうか。  隣の人のマネはよくない。他人にすすめるのもよくない。自分で決めるしかないのである。食後、二十分くらいは内臓が消化に頑張っている。内臓の邪魔をしないように安静にしておくことが内臓には親切というものである。

 この後で、眠いとかだるいというのは食べ過ぎである。三から四時間たって空腹で体がだるいというのでは、また夜中に空腹で目覚めるというのでは、食べる量が足りないということになる。こんなことが参考になれば幸いである。

 とにかく、体の大きさ、年齢、運動の量、人生の目的の違いなど様々な理由で食べるべき量は違ってくるのである。

13,運動と体

 春になれば暖かい日を選んで散歩をはじめる。散歩をすることで色々景色を見て音を聞き臭いを感じ、空気を肌で感じる。目耳鼻肌が活動を開始する。朝の散歩も暖かい日であれば、同じように体の活動開始になる。こころを落ち着かせて大いに思索するとよい。体の機能が徐々に目覚める。

 夏になれば、しっかり目覚めさせておいた体で、どんどん運動をすることだ。運動することで、さらに全身の循環がよくなる。ここで手足の運動が足りないと体のエネルギー循環は内臓だけで行うことになり、かなりの負担となる。特に夏の運動不足が疲労の原因になるのはこのためである。手足も内臓も適度に運動することで、手足と内臓がお互いにそれぞれのエネルギー循環を促すので、エネルギーの吸収や発散がスムーズに行われ疲労が少ない。夏は運動不足が疲労の原因になるのである。

 疲労すれば体内のエネルギー循環が悪くなり、内臓の働きや手足のエネルギー不足となり、内臓の不調や手足のだるさという結果をまねくことになる。

 「夏はしっかり運動して、しっかり食べてください」と患者さんにお願いしている。運動することで循環がよくなり「体が軽くなった」「便秘がなおった」という経験をしたことがある人も結構多いのではないだろうか。夏の十分な運動や、しっかりした食事は体のエネルギーの循環を促したり、エネルギー源の補充になる。この時に筋骨に栄養を十分に補充して、体重が増える位にしておくと秋や冬を容易に乗り切ることができる。

 筋骨は体のエネルギー倉庫であり、ストーブの役目をして、秋や冬を乗り切ってくれるのである。

 秋になれば、手足は夏の運動の後の整理体操程度の運動に押さえる。食事は内臓の疲れを考慮してほんのわずかで栄養価の高い物を食べるとよい。幸いにも、秋の食べ物は夏のエネルギーを十分に吸収した栄養がたっぷりつまったものである。これをほんの少し食べれば、内臓はあまり疲れずに効率よくエネルギーを吸収することが出来る。筋肉のストーブが体を内側から保温して皮膚下のエネルギー源を燃焼してくれる。

 秋には暖かい日に軽い散歩程度の運動を患者さんにすすめている。

 「食事は軽くしてますよ」と患者さんはいう。よく聞いてみると「果物をまるごと一個食べています」などという。秋の食べ物は極端に少なくしても少な過ぎるということはない。果物一個を家族で分けても人によっては多い場合がある。「適度の散歩と控えめな食事」を実行することで、「便秘が治った」「下痢が治った」「頭痛がとれた」「睡眠時間が短くても頭がさえている」「肩こりが治った」などというのは患者さんからよく聞く話である。

 涼しくなったから、運動しても汗をかかなくなったからと体を動かしてはならない。食べ物がおいしくなったからといってたくさん食べてはならない。秋は内臓は長期休暇願いを出したくてしかたがないという状態になっていることを忘れないでほしい。

 この内臓の希望を無視すると、内臓のエネルギーの循環がうまく行かなくなり、内臓の生命維持のための熱が暴走をはじめることがある。この熱が呼吸をくるわせて就寝時の空咳の原因になったり、頭に回って頭痛の原因になったりする。秋の終わりごろに床についたら、咳が出て寝付けないという患者さんが食事を控えて咳が出なくなった例は少なくない。

 内臓を疲れさせないように食べる量を減らしてやること。食べる量を減らしたことに伴い運動の量も徐々に減らしていくことになる。

 ここで内臓を疲れさせてしまえば、待っているのは、しつこい咳と微熱になやまされる寝正月ということになりかねない。

  適度の運動量とは

 食のところで述べたが、ここでも同様に隣の人のマネはだめである。また他人にすすめてもいけない。朝は山登り、昼は水泳で丁度よい人もいれば、数分の散歩で充分な人もいるからである。

 次の日に疲れや痛みを残すようであれば、量を減らすべきである。後が爽快で、翌日の食事や排便がスムーズであれば適当といえるのではないだろうか。

 運動は過ぎても、不足しても疲れの原因となる。適度の運動量をみつけて生涯継続することが健康維持にはかかせないのである。

14,姿勢と体

 「よい姿勢をしてください」とお願いすると、大抵は背筋をのばしてくれたり、座っていたら正座をしたり、腰掛けていたら足を組むのをやめたりしてくれます。みんな良い姿勢についてはご存じなんです。ここでは再確認だけをしておきます。

 まず、長い時間じっとしているのが体には悪い。じっとして仕事などをするときは必ず定期的に姿勢を変えたり、運動をすることが大切です。

 座っていなければならない時は、正座が一番のおすすめです。膝をはじめすべての関節に平等に負担がかかります。長時間正座していると。足がしびれたりして「体を動かせ」と教えてくれます。ただし正座をしてすぐにしびれたりするのは膝の曲げ方が正しくない場合が多い。たとえば本を閉じるときに真っ直ぐに閉じてやらないと、少しでも歪めて閉じたりすると、すぐにボロボロになってしまう。同じように膝も真っ直ぐにおりたたんでやれば、結構しびれないものである。

 横座りは背骨、骨盤、膝を必ず傷めます。そして、やがて関節の病気や神経痛を引き起こします。あぐらをかくのも、脚を組んで腰掛けるのも同じです。それから脚を前へそろえて投げ出して座る長座も膝の負担が少なく腰の負担が多い姿勢で、腰痛や脚痛の原因です。じっと立っているのもまた腰や膝に負担である。結局のところよい姿勢とは散歩すること運動することになってしまう。

 歩き方や靴の選び方などは専門家の意見を参考にするとよい。

 これから歩くことをはじめるのであれば、まずは平らな場所を選ぶと良い。慣れてくれば登り坂や会談を上るのもよい。階段や坂を下るのは一番、膝に負担がかかるということを覚えておいてほしい。

 その他に周辺の物にも工夫をしてみるとよい。例えば椅子や机、流し台や洗面台、車のシートの背もたれの角度、テレビやパソコンの画面の高さ等々、いくらでも考えられる。

 椅子は床からあまり高いと、腰掛けた時に太股の後ろを圧迫することになる。足先の血行障害の原因になる。また低すぎる椅子でも間接などに悪影響を及ぼす。車の背もたれに薄いクッションを入れてやるだけで腰痛が治ったという例もある。流し台の高さを変えたりできるものであれば工夫をしてみるべきだ。テレビの場所を変えただけで肩こりが減ったいう例もある。

15,深呼吸のすすめ

 食事が大地のエネルギーを取り込む作業なら、呼吸は天空のエネルギーを取り込む作業になる。

 天空のエネルギーも、大地のエネルギーと同じ大切なものです。意識してしっかり取り込むことが必要です。

「深呼吸を心がけて下さい」とお願いしないといけない患者さんが時々います。その場で「鼻から、お腹へ、しっかり吸い込んで、口からゆっくり、はいてください」とお願いしても、「なかなかうまく出来ない」といわれる患者さんもいます。「毎日、少しずつ練習してください。腕立て伏せと同じです。息をする筋肉が運動不足で弱っているんです。」とアドバイスすることがある。姿勢が悪く、浅い呼吸が身に付いてしまっている人は、食事にたとえれば慢性の栄養失調になっている。それが当たり前になっている。慢性的な呼吸不足は、栄養失調と同じでいろんな病気の原因になる。

 深呼吸を心がけるようになってから、「肩こりが楽になった」「便秘症が治った」という例もある。深呼吸の練習は結構、内臓の周囲の筋肉を動かさないと出来ない作業である。慢性的に衰弱していた筋肉を動かしはじめたのだから当然のことだ。

 呼吸をする筋肉も鍛えてやらないと、衰えてしまうのです。毎日、少しずつでも鍛え続けないと、どんどん衰弱してしまうのです。手足の筋肉と同じです。

 一日に何度か、毎日欠かさず深呼吸をすることが大切です。もちろん他のことと同じで、やりすぎはダメです。といっても呼吸の場合、食事や運動のように極端なやりすぎをする人を見たことはないのですが。

16,睡眠と体

 手足や頭が休み内蔵が休むとき。これが体の休息。運動はエネルギーの溢れる昼であるのに対して、エネルギーの少ない夜に休息をとることになる。

 一日で一番エネルギーが少ない二十三時から二時までの三時間は睡眠の時間にしておくことをおすすめしたい。この三時間を含む数時間が睡眠時間となる。人それぞれに睡眠時間は異なる。季節や生活習慣により時間が異なるのである。

 朝昼や春夏などエネルギーの溢れるときは、体の中は循環を活発にしたいために動こうとする。これに逆らって睡眠を取ろうとすれば、結果として心臓がひとりで循環に頑張ろうとすることになる。このとき運動していれば、手や足が循環を手伝ってくれるのだが、寝ていてはそれも期待できない。結果として心臓がひとりで頑張ることになり、心臓をはじめ内臓が疲れることになる。時を違えて睡眠をとれば結果として疲れることもあるのである。もちろん体の状態により、昼でも睡眠を必要とする場合がある。また昼食後などに一時的に休息をとることは体の疲れを取り除くことに役立つこともある。それぞれ試行錯誤して上手に睡眠をとるべきである。

 睡眠は疲労を回復させ、エネルギーの循環をスムーズにするために上手にとるものである。逆にいえば、疲労が少なければ睡眠は少なくても疲れないでよりたくさんの時間を活動に使うことができるということである。

 では、どんな時に疲れがより多く溜まるのだろうか。運動のし過ぎにより手足には疲労が溜まり内臓にも疲労が溜まる。先にも述べたが運動すべき時に運動をしない、つまり運動不足により特に内臓に疲労が蓄積される。

 内臓の疲労といえば、食べ過ぎにより内臓は消化・吸収・排泄などの仕事を必要以上に強いられることになり、疲労が蓄積する。春や夏はエネルギーの循環が活発に行われるので、内臓も活発に活動をしている。たくさん食べても必要なエネルギーを内臓がどんどん取り込み循環させるので、比較的に疲れを残さないことになる。だからと言って、いくら食べてもよいというわけではない。必要な量を的確に摂取しなければ、疲労が蓄積することに変わりはない。

 疲れを蓄積しないように生活に工夫をすることで、習慣をチェックすることで、睡眠がより深く充実したものになる。結果としてより短い睡眠でも、より活発な活動が可能になるのである。

 さらに睡眠の充実により精神状態も安定することになり手足や内臓の働きもよりスムーズになるのである。

17,温度・湿度と体

 ストーブをつけると、湿度がさがるのをご存じでしょうか。温度計と湿度計を見ておいて、ストーブをつけてやると、温度は上がってきて湿度は下がってきます。「湿度は、だいたい50パーセントで、温度は、だいたい20度くらいを保つようにして下さい」とお願いすると「湿度計がありません」という話になる。春や秋に咳が出てこまるという患者さんと、こんなやりとりをすることが多い。湿度が少ないと寒い。寒いから、ストーブの前に居ることが多くなる。腰や背中がストーブの熱で暖まると体の中では体温調節がパニックをおこしてしまう。咳が止まらなくなったり食欲異常になったり、何が起こるかわからない。「ストーブは体を温める道具ではないですよ。クーラーは体を冷やす道具ではない。部屋の温度を調整する道具ですよ。」ストーブ・クーラー・加湿器・除湿器は部屋の環境を調整する道具です。

 では、体の環境はどうするのかということになる。体の中にもストーブ・クーラー・加湿器・除湿器がちゃんと備わっている。その証拠に夏でも冬でも体温にはほとんど変化がない。この「体内環境調整装置」は、よほど急激な環境変化がない限り、ちゃんと働いてくれている。それを無視してストーブやクーラーで体温を調整しようとすると体内環境調整装置の故障の原因になってしまう。

 頭の先から足の先まで体内環境調整装置は休むことなく調整をしてくれている。むやみに足や腰をあたためたり、頭をひやしたりすることで、体調が悪くなることが多い。

 体のどこであっても、むやみに、念のために、温めておいた方が良い、あるいは、冷やしておいた方が良いという所はひとつもない。

 「冬になると頭痛がするんです」「体は布団をきているけれど頭は裸ん坊でしょ。ためしに寝るときに帽子をかぶってみてください」とお願いすると、数日して「頭痛が楽になりました」ということは、めずらしい話ではない。三月の暖かい日に「気分が悪い」といって来院した患者さんに「ずいぶん厚着をしてますね」といって、その場で何枚かを脱いでもらい、様子をみていると、それだけで「すっきりしてきた」ということがある。

 習慣で温めすぎている人が結構多い。夏に冷やしすぎたり運動不足をしたりして体内環境調整装置が壊れてしまって秋や冬に調子の悪い人が結構いるものである。

 もう一度、繰り返すが「体のどこであっても、むやみに、念のために、温めておいた方が良い、あるいは、冷やしておいた方が良いという所はひとつもない。」

もちろん冷やしたり温めたりすることが必要な場合がある。正常な状態に戻すことが目的であることを忘れないでほしい。

18,自分で守ろう自分の健康

 食べ過ぎる。内蔵は消化の仕事に専念しなくてはならなくなる。吸収・配布や貯蔵・排泄などの仕事にまで手がまわらなくなる。

 手足や頭は、エネルギーを配布してもらえない。結果として手足や頭は、またエネルギーの要求をすることになる。食べても食べても食べたりないということになる。食べ過ぎは手足や頭の栄養失調の原因になることもあるのである。栄養失調がつづけば、頭や手足の病気につながるのである。

 「たくさん食べているのに足腰の踏ん張りがきかない」「たくさん食べているのに頭の働きが悪い」「たくさん食べているのにイライラや便秘や体のだるさがある」

 食べ足りないと命の危険を招くが、食べ過ぎたら疲れて、やがて病気になる。たくさん食べることは常に善であるというのは間違いである。常に適度の量を食べなくてはならない。適度の量を決めるのはあなたである。鉄の胃腸を持つ知人ではない。胃腸の弱い友人ではないのである。あなたの熱心な試行錯誤によって決定するしかないのである。

 熟睡ができ起床時が爽快で、快便で、頭の回転がよく、手足がスムーズに動く状態は、どの程度の量を食べたときなのか、常に試行錯誤して、よりよい量を決定する努力が大切である。

 食べることだけではなく、睡眠や運動にも同様のことが言える。

 睡眠時間も不足すれば命の危険につながる。時間が長すぎると体の循環の低下の原因になり、やはり疲労につながるのである。

 食後に数分間の睡眠をとったり昼寝をすることで、めまいや頭痛がなくなったという患者さんもいる。食後の休息も二十分程度までなら、人によっては内臓の消化作用を促して、よい結果につながる場合がある。食後の休息で牛になるというのは悪いことではないのである。もちろん時間が長くなると、かえって疲れを残すことになる。例えば夏の朝などの起床時に、だらだらと布団にもぐっているとかえって体がだるい場合がある。これとは逆に秋や冬の起床時に目覚めてすぐに跳ね起きたりすると、後で頭痛を引き起こしたりする。気温が低い場合は、人にもよるが布団の中でゆっくり時間をかけてから起きあがった方がよい場合がある。

 運動も不足すれば循環が悪くなる。極端に運動が不足すると、体を支える筋肉や骨に栄養が行かなくなり弱ってくることもある。

 患者さんに多く見られるのであるが、脚の筋肉が痩せていて、むくみの目立つ人が結構いる。「脚の筋肉が痩せていますね」というと「そんな皮肉は言わないでください」といわれる。筋肉が痩せているのであって、脚の見た目がスマートだと言っているのではない。自転車、バイク、車は出来るだけ使わずに歩くことを進めている。これをきいてくれる患者さんの中には「便秘がなおった」「ふんばる力がついてきたような感じだ」「腰痛がなおった」などという人もいる。適度の運動により筋肉がついてくると、循環がよくなりむくみが減少することも多く、結果として見た目にスマートになるのである。しかし、筋肉がしっかりとついてくるので体重は減らないか、かえって少し増えたりするようだ。

 運動のやりすぎにも問題がある。事務の仕事で腱鞘炎になるのも運動のしすぎである。健康のためといって、いきなり階段を駆け上がる習慣をみにつけようとしたりすると膝に炎症がおきたりする。長い年月の間に少しずつ肩や肘に負担がかかり、例えば五十肩になったりする。これも運動のしすぎであることが多い。患者さんで、腕をあげようとすると肩に激痛がはしり夜もうずいて眠れないという人がいる。根性で痛みにたえて肩をまわしたり、冷やしたり、暖めたり、いろいろやる人がいる。長い年月をかけて運動をし過ぎて、何かのきっかけでひどい炎症がおきた場合は、とにかく休息が一番である。冷やさない、あたためない、休息が一番である。包丁を持たない。布団の上げ下ろしをしない。お風呂を洗わない。とにかく休息させてあげることだ。

 入浴も運動のうちだ。疲れたときは入浴をしないことだ。入浴すれば疲れがとれるという人は、入浴により循環を高めてその後で結果として疲労が取れる。しかし、入浴すると疲れるという人は疲れた体に鞭打つことになるのである。自分が入浴で疲れがとれるからといって、他人にもすすめてはならない。人により入浴の効能に違いがあることを知って欲しい。

 坂道や階段を歩くと運動不足が解消されるという人がいる。しかし、坂道や階段で膝や足首にかえって負担がかかり関節を痛める人もいるのである。

 患者さんには「平らな所を15分歩くことからはじめてください」とお願いしている。「下り坂道や階段は絶対にだめです」とすすめている。平らな道で自信がついたら、上りの坂道や階段も徐々にはじめて下さいとすすめている。下りは楽なようだが関節に一番ふたんがかかるらしい。膝の悪い患者さんのほとんどが下りは辛いと言っているし、下りが辛いと言う患者さんほど治るのに時間がかかっていることからも、下りには要注意である。

19,心と体

 怒り・恐れ・喜び・悲しみの感情は血液の流れや心臓の働きを急変させる。適度の感情の変化ならば時には体や心を刺激してやるのもよいのかもしれない。しかし、血液の流れや心臓の働きが頻繁に急変したのでは体の全体のバランスが壊れて病気になってしまう。

 自然界には変えることのできないエネルギーの流れがある。動物には変えることのできない本能がある。しかし、人間には本能をコントロールする思考という力がある。習慣を変更できる思考の力がある。この思考の力は、怒り・恐れ・喜び・悲しみの感情をもコントロールすることができる。より健康で楽しく毎日をすごすためにはどうしたらよいかをしっかりと考える心構えを持ったときに思考の力は大きな感情のエネルギーをコントロールすることができる。後で考えれば些細なことだと思う出来事にイライラしたり、根拠のないことにむやみにおびえたりするなどの感情を「健康になろう」という明確な目標をもつことで、自由に調整できるのである。

 明確な目標があれば、そのことに心を集中させていれば、些細なことで怒ったり、おびえたりしているヒマがなくなるものである。結果として、心のエネルギーが体のバランスを安定させる方向へ向かうのである。

 感情の野放しが体のエネルギーを暴走させるのに対して、明確な目的を持つことで感情のエネルギーも目的のために使いこなすことになる。

 具体的には、例えば年に一度はのんびりと旅行をする習慣を持とうと決めてみることだ。そんなことは所詮無理だと決めてしまえば、あなたがそう願っているのだから、そのとおりに莫大な感情のエネルギーが方向を定めてくれることになる。一方あきらめずに、考える位はタダだし、だれにも迷惑はかからないからと旅行のパンフレットを見てみることをはじめてみよう。莫大な思考のエネルギーは、楽しい旅行へと方向を定めることになる。イライラすることが頭をかすめたら、旅行のパンフレットを頭に描いてみよう。誰にも迷惑はかからないのだから。そして莫大なエネルギーは、体のバランスを破壊する働きを止めて、思考の力によってエネルギーの循環をスムーズにする方向へ向かうのである。誰にも迷惑をかけずに健康の方向へ体を変化させることができるのである。その積み重ねが、自分の感情を変え、表情を変化させ、イライラすることで不快にしていた周囲の人々に、新しい影響を与え、やがて楽しい旅行という現実を生み出すことになる。もし実際にそうならなくても、その方向に少しでもむかうだけで、体は暴走とは逆の健康の方向へむかうのである。あなたの心構え次第で。  心を自分が楽しいと思うことに集中させる習慣をつくる。心を野放しにしておくと、ついグチや文句やイライラや不安に流される。その心の変化のたびに、体のバランスは頻繁に乱れるのである。心の中をグチや文句やイライラで固める習慣のある人は、この習慣を自分自身の思考の力で楽しいことに集中する習慣に変更して欲しい。これが一番、自分の健康を自分で守る方法であるからだ。これが自分の健康を守る一番大きな力であるからだ。

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「山崎はり院」

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体からの手紙

作成日 2004年4月2日

著者 山崎 治

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