技術資料室
A03 許容電流と低減率について  y-326
許容電流とは    
許容電流とは、電線やケーブルに流すことので
きる電流の最大値です。

電線の許容電流を超過した電流を長時間流す
と、加熱された導体が絶縁物やシースを溶融し
てしまい火災事故につながります。   
温度による許容電流の変化    
許容電流は電線を被覆している絶縁体の種類

電線を敷設する場所の周囲温度

電線管やラック、ダクトに乗せるなど電線の
敷設方法の3つに大きく影響されます。

特に、電線管に収納したり、ケーブルラックに多
段積みした場合、放熱性能が悪化し、許容電流
の低減に繋がります。

許容電流による電線・ケーブル選定の原則
として

ケーブルの許容電流>遮断器容量>負荷電流 

とすることを留意し、配線設計を行います。

ただし、

動力負荷の場合は始動電流がある為、遮断器
容量が大きくなる事があります


単相3線式の負荷の場合、3本使用する電線の
うち1本は中性線である為、許容電流は2心の
数値を採用することができます。


たとえば、CVT100゜の場合の許容電流は290A
ですが計算上の許容電流はCVD100゜の310A
で計算することが可能です。

なお、3相3線式の場合は、3本全てが電源線
という扱いになる為、CVTケーブルの許容電流
値を採用し計算します。
         
許容電流の低減率    
屋内配線による幹線ケーブルは重たい為、一般
的に配管内に収めるか、ケーブルラックにより配
線することが多く、ケーブルどうしが密に接触す
るため、放熱性能が低下することにより許容電
流が低下します。    
         
ケーブルラックに1段積に敷き詰めて幹線を敷設
した場合、低減率が0.7の為許容電流が低下す
るので、ケーブルの許容電流値を低減して計算
します。

CVT100゜で計算した場合、許容電流290Aなの
で70%まで減ずると、203Aの許容電流になります
         
低減率0.7で幹線設計した場合、ラックへのケー
ブル多段積み禁止としなければなりません。
幹線ケーブルを多段積みで乗せた場合はさらに
低減率を大きくし何段も重ねる場合は低減率0.3
の許容電流となります    

CVT100゜許容電流290Aが低減率30%に減ずる
と87Aの許容電流となります。    
         
 
中心
間隔
1段     2段      
 1 7~20 8~20
 S=d 1.00 0.85 0.80 0.70 0.70  0.70 0.60 0.60 0.56 0.53 0.51 0.50 
 S=2d  1.00 0.95 0.95 0.90 0.80  0.90 0.90 0.85 0.73 0.72 0.71 0.70 
 S=3d  1.00 1.00 1.00 0.95 0.95 0.95 0.90

中心
間隔
 段 3段          
 列 9~10 11~12 13~15 16~19 20
S=d  0.48 0.41 0.37 0.34 0.32 0.31 0.30 0.30  0.30  0.30  0.30
S=2d 0.80 0.80 0.68 0.66 0.65 0.65 0.64 0.63  0.62  0.61  0.60
S=3d 0.85 0.85

基底温度による許容電流の補正    
基底温度とは、電力ケーブルを敷設した場所
の周囲温度によって決められた温度基準です

例えば、幹線で使用するCVケーブルやCVT
ケーブルは周囲温度40℃で許容電流が算出
されています。


例えば、屋外キュービクルから出る幹線の場
合ケーブル送出部分において直射日光の影
響で40℃になる可能性があります。

このように、周囲温度が著しく高くなると、許容
電流を低く考えなければ異常発熱の恐れが
出てきます。
CV  CVD  CVT ケーブルの許容電流一覧       
サイズ 600V
CV1C
600V
CV2C
600V
CV3C
600V
CVD
600V
CVT
6.6kv
CV-1C
6.6Kv
CVT
2.0 31  28  23 
3.5  44 39  33         
5.5  58 52  44         
 8  72 65  55      78   
 14  100 91  77  91  86  105  75 
 22  130 120  100  120  110  140  120 
 38  190 170  140  165  155  195  170 
 60  255 220  190  225  210  260  225 
 100  355 310  260  310  290  355  310 
 150  455 400  340  400  380  455  405 
 200  545 485  410  490  465  540  485 
 250  620 560  470  565  535  615  560 
 325  725 660  555  670  635  720  660 

実際の現場配線敷設の幹線ケーブルの選定に
負荷容量の条件による遮断器容量の選定
決定し遮断器容量によるケーブル保護の観点
からのケーブルサイズを選定

配線敷設距離による電圧降下を考慮しケーブ
ルサイズの選定

以降、上記基底温度による許容電流表を基に

温度による許容電流の変化
送電方式による許容電流の変化
敷設条件による低減率による許容電流の変化

を考慮しつつ、幹線ケーブルを選定すること。