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技術資料室

A19 直流と交流の違い・利点 欠点
y-326
直流と交流の違い

電気には、直流と交流があります。家庭用の
コンセントは100V、50Hz60Hzの交流電源
です。

それに対して、乾電池やACアダプターは直流
電源です。

直流電源は常に一定の電圧を維持している
電源で、乾電池 蓄電池は使用する程電圧
は低下していきますが、プラス方向の電圧で
あることは変わりません。

交流電源は一定の周期で電圧のプラスとマ
イナスが変化する電源となってます

実は、家庭で使用する電気機器は交流では
使用できなく、交流を直流に変換して電源を
供給してます。

また、小型の電気機器には100Vは過大電圧
であることが多く、5~24V程度の小さい電圧に
変換されています。

このように、家庭内で使用する電気のほとん
どが直流です、交流で送電される住宅では、
直流に変換する際の電力ロスが大きく発生
してます。

しかし、発電所から変電所を経て家庭に届け
られる電源は交流となってます。

このような実態から、電力会社の発電所にお
いて直流電源を作り、直流のまま家庭に送電
すればロスがなくなるのではと思いがちです
が、発電所から家庭まで直流で送電する方式
は普及してません。

これは、電力の送電と、保護の容易さが関係
しています。 
交流送電の利点

交流送電の最大の利点は変圧が可能である
こと。発電所から供給される電圧は数十万ボ
ルトという高い電圧で送電され、都心部に近
ずくにつれ降下させることが可能です。

例えば発電所から数十万ボルト、変電所から
住宅付近まで6600V、住宅付近の柱上変圧器
で200Vに降下するという、必要な所で電圧を
調整する方法が採用され、送配電の設備コスト
を最小限に留めることが可能である

交流電源の容易な電圧変換に対し、直流電源
を降下させるには、直流を交流に変換させる
コンバーターを通し、交流を変圧器で降下させ、
再びコンバーターを通し直流に変換するという
手順がひつようです。

高圧DC→高圧AC→変圧→低圧AC→低圧DC
と言う流れになります。
コンバーターの設置費用スペース、メンテナン
ス等増えてきます。

国内の直流電源方式の有名なものに、電気
鉄道の電源があります。

直流電源はモーター類の動作が良好で、低速
高速時の反応が良い為、電動機の運転がほ
とんどを占める電気鉄道には最適です。

しかし、業務施設、住宅には電力の汎用性が
重視され、交流送電が主流になっています。

交流電源の欠点

交流電源には欠点もあります。白熱電球や電
熱機器に電圧を印加したとき、交流電源は常
にプラスとマイナスの変化を繰り返しているた
め、電圧と電流が0になっている瞬間には発
熱できません。

その為、所定の熱量を得るためにはより大きな
電圧を与えなければなりません

交流電源を考える場合、正弦波の最大値とい
う考え方があります。一般的に100Vと言われ
るのは電圧の実効値であり、実際には141V~
0V~-141Vという電圧の移り変わりが発生して
いるのです。

この平均値を計算すると100Vの電圧を印加し
たのと同じになるのです

直流電源では、100Vは常に100Vのままであり
プラスマイナスの変動もなく一定値を示し
ます。

交流の場合は前述したように、電圧が変動す
るために141Vに耐えられる性能を求められ、
より高い電圧に耐えられる絶縁性能が必要と
なり、そのため電気機器が大きく、製造コスト
も高くなることが考えられます。

又、交流電源はコイル・コンデンサの影響を受
ける特性があります。フェランチ効果と呼ばれま
す。

送電端電圧よりも受電端電圧が高くなる現象
があります。
長距離で敷設した電力ケーブルでは、ケーブル
と大地に発生する静電容量により、進相コンデ
ンサを設置したのと同じように力率を進ませる
事があります。

電力系統が進み力率になると電圧が高くなる
傾向にありますので、交流電源系統の問題点
として対策がなされていますが、直流系統であ
ればフェランチ効果による電圧の影響がなくな
ります。
 
直流電源の利点 欠点

直流で送電する場合、交流送電と違い、プラス
とマイナス2本の電線で足りる為、電線のコスト
削減が可能。

電圧と電流に位相差がない為、進みや遅れが
発生しない。無効電力を0とし配電機器を設計
できる。

直流送電の欠点。
交流はプラス、ゼロ、マイナスと周期があり、
電源遮断時にゼロの瞬間を狙いもっともショック
の少ない電源遮断が可能である。

直流の場合は、常にプラス側に電圧が印加さ
れているため電流の大きく流れている中で強
制的に遮断しなければならず、遮断失敗の
リスクが大きい。

また、直流電源は常にプラス方向とマイナス方
向が一定であるため、マイナス側が腐食しや
すくなる特性があります。

電気鉄道など、枕木程度などでは、大地とレー
ルが完全に絶縁出来ない為、付近に迷走電流
を流失させ埋設している金属製の水道管や電
気配管を腐食させる問題が発生している。
 
直流と交流の発電方式の違い

交流の発電機は「鉄心を固定して磁石を回転
させる方式」の為、磁石の軸受部分がメンテナ
ンスの対象となる為、点検項目が少なくメンテ
ナンスにかかるコストが低減できる。そして、
機器の摩耗を最小限に留められます。

これに対し、直流の発電機は「磁石を固定し鉄
心を回転させる方式」の為、接点が多くなり
スリップリング・ブラシ部がすり減り清掃や交換
頻度が高くメンテナンスコストが大きくなります
地域による電源周波数と電圧の違い

電源周波数は静岡を分断する形で富士川を境
に東日本を50Hz西日本を60Hzに分かれてい
ます。

周波数の違いは、特に電動機の回転速度にそ
のまま影響します。

住宅用家庭製品では、インバーター等により入
力周波数を変換しどの地域でも使用できるよう
されていますが、一昔前までは洗濯機等は周
波数切り替えスイッチを設置され、周波数の違
う機器は仕様に制限がありました。

蛍光灯などヘルツフリー、ボルトフリーが一般
化されているのでどちらの周波数でも支障が
ないと思われますが、インバーター装置を持た
ない古い器具を使用している場合、周波数が
違うと発熱や点灯不良を起こしますので注意
が必要です。
 
 国内の周波数の違いの由来

管轄する電力会社の発電装置がどの国から購
入し運用したかという点が由来となっています。

東日本地区では、東京電燈(現在の東京電力)
が、ドイツから50Hzの発電装置を購入し運用
したため50Hzが定着しました。

一方、西日本では大阪電燈(現在の関西電力)
がアメリカから60Hzの発電装置を購入したこと
が60Hzの定着した由来になっています。
 国内の電圧が100Vに統一された由来

国内の周波数は東西で違いますが、電圧は
100Vに統一されています。

諸外国は200V前後が普及している中で100V
に設定されたのは、電圧を決定した1910年代
民間に普及していた電気機器はほとんどが
100Vの照明用電球であり、100V以上の電圧
をかけると寿命が著しく減少してしまうため
100Vで統一されたと言われています。
 電気機器の周波数の違いと使用可否

ヘルツフリーのインバーター式蛍光灯器具を
除きグロー式蛍光灯、ラビット式蛍光灯は決
められた周波数で使用する必要があります。
 グロー式蛍光灯の周波数の違い
グロー式蛍光灯は、60Hz専用安定器を50Hz
電源で使用した場合、明るさが増加しますが
ランプ寿命が短くなります。

50Hz専用安定器を60Hz電源で使用した場合
明るさが低下し、ランプ寿命が短くなります。

安定器の異常加熱は発生しませんが、始動不
良となり点灯しないことがあります。 
 ラビット式蛍光灯の周波数の違い

ラビット式蛍光灯の60Hz専用安定器を50Hz
電源で使用した場合、明るさは低下しランプ寿
命が短くなります。

50Hz専用安定器を60Hz電源で使用した場合
明るさは増加しますが、ランプ寿命は短くなり
ます。

安定器が異常加熱し入力電流も増加するため
発熱・発火などの危険性が発生します。

周波数の違いによって、蛍光灯安定器に過度
の負担が発生し、以上発熱や焼損事故の原因
となります。
また、ランプ寿命が著しく変化します。

ラビット蛍光灯とグロー式蛍光灯は周波数によ
り逆の現象となりますが、どちらの場合も安定
器の損傷する原因となりますので注意しましょ
う。
 
   HID照明の周波数の違い

周波数50Hzの電源に60Hz用のHID安定器を
接続すると、安定器の温度上昇につながり寿
命が短くなります。

逆に60Hzの周波数電源に50Hz用のHID安定
器を接続するとランプの安定点灯までの時間
が長くなり、ランプが暗くなります、寿命も短く
なります。
変圧器の周波数の違いによる使用可否

変圧器は、60Hz用変圧器と50Hz用変圧器を
別に製作しています。
地域により使い分けが必要です。

変圧器の特性上、50Hz変圧器は60Hzに使用
できますが、60Hz用変圧器を50Hz地域で使
用することはできません。

鉄心の磁束が、周波数の減少によって大きく
なってしまい、変圧器の断面積が不足するた
め励磁電流、励磁突入電流が増大し、また、
無負荷損失が大幅に増え、騒音や振動が非
常に大きくなります

50Hz用の変圧器を60Hz地域で使用した場合
励磁電流や無負荷損失が効率は良くなります
が短絡インピーダンスの増加や、電圧変動率
の増加という変化を起こします。

地域の特性を配慮し、設計された変圧器を使
用することが原則です。