MEMBER'S PAGE YOSHIKI(8)
HIDEのYOSHIKIに対する心象がどんなものであったかはわからない。しかし、世間の評判とは、かけ離れた心象を持っていたことは間違いない。1987年2月サーベルタイガーが解散し、一連の関係者に連絡して行く中で、最後がYOSHIKIであったとも言う。最後のリストに載せてあったというのが、HIDEの心のYOSHIKIへの結びつきをなにか表しているような印象だ。絶ちがたいロックの世界を、自分が素の世界に戻ってもYOSHIKIに託したかった。その思いをどう打ち明けて、バンドを辞めることを告げようかとHIDEは思案していたんじゃないか。なにか自分の愛したロックの思いをYOSHIKIに語りたかった。本心をもしかしたら分かってくれるかもしれない。こんなに好きだったロックをやめてしまうのは悔しいけれど、YOSHIKIなら、そんな内情を理解し分かってくれるんじゃないか。自分の心の置き所を、YOSHIKIの中に置くことによって、きれいさっぱり新しい世界へ踏み出そうと考えていたんじゃないか。いくつもの思いが出ていただろう。最後にYOSHIKIに話そう、それが自分のケジメの最後のセレモニーと位置付けていた。 昭和62(1987)年4月1日発行の『RANDOM』No.14号(P46以下)で、電話後の二人の対談が乗っている。解散とかの話の流れのなかで、
YOSHIKI
でもそういうのって、かえって触れたくないんだよね
このへんの気持ち他の人には分かんないね。
hide
君が一番分かると思うよ。
YOSHIKI
オレはメンバーチェンジには涙ものんだしね
ファンっていうのは、全く分かってくれないんだよね
こっちがどんなに深刻な事だったかっていうのも
結局クビにしたとか言われちゃうでしょ。
つらいものがあるね。
hide
でも、落ちこんでる時お前に電話してさ、
「解散したよ。」って言ったら、
「元気!」だって。(爆笑)
「このヤロー、元気なわけないだろー!」(笑)
YOSHIKI
それしか言えなかったんだよ。
何か言おうかと思ったけど。・・・
同じバンドのリーダーとして、いろんな苦労や辛酸をなめてきた二人には、心の底から理解しあえるものがあった。HIDEの「君が一番分かると思うよ」の言葉が、自分の決意と思いを最後に告げる人と腹決めていたHIDEの思いが伝わってくる。分かってくれる人に分かってもらいたい、そして俺が辞めたあとのロックをYOSHIKIに託したい。HIDEの悲痛な心の叫び、無念、・・・凝り固まっているHIDEの心に、「解散したよ」というのが精一杯の返事が「元気!」。HIDEは『どぉもー』とよって来たYOSHIKIを思い出したんじゃないか。コイツだけが何も言わなくても、俺の気持ちすべて分かってくれてる、そう思ったんじゃないか。そのあと、『もう1回やろうよ』という話があったんだろうが、HIDEはもう引き込まれていってしまった。みんなに辞めるとタンカ切った恥をも忘れ、「やってみようかな」と思ってしまった。苦しみから解放された瞬間だったんだろう。