MEMBER'S PAGE YOSHIKI(7)
ステージでのイメージとは大違いのトコトコと歩いて来た外人の子供が『どぉもー』。「もう聞くと見るとじゃ大違い」の印象を受けてしまったようだ。HIDE自身も、ステージやっているので、素人が楽屋に会いに行くよりも免疫が出来てるはずが、その落差に驚いた。「ステージではガンダムみたいな格好してたんですけど、そのころでいうDCブランドみたいな格好して、わりとちょっといいトコのおぼっちゃんみたいな感じの子が、なんかヒョロっとした感じの子が『どぉもー』ってニコニコしながら出て来たんですよね」。「“えっ!?”」っと思った。HIDEも、“なんじゃこら”と]と出会った誰もが最初に抱く驚きを、ここはYOSHIKI個人に持ったに違いない。HIDEの心に、印象付けられた](或いはYOSHIKI)の刻印、これがロックをやめて美容師で身を立てる決心を翻す一つの要因であったのかもしれない。「それがヨシキで、めちゃめちゃ愛想よくて、『打ち上げ来る〜?』みたいな感じで、もうめちゃめちゃ愛想よくて・・」。それからお互い別々なバンドであったが、YOSHIKIとの付き合いが始まったとの事。 1987年2月。HIDEのやっていたサーベルタイガーが、メンバーの脱退によって解散となる。現行のメンバーが1人でも欠けたらサーベルタイガーを辞め様と決心していたHIDEは、いろんな人―ライブハウスの人とかに「明日から美容師に戻ります」っていって電話をしていて、YOSHIKIにももちろん電話をした。「それで、あのーそうなんだけど、っていうと『そうか・・・』っていってたんだけれども、ヨシキがこう、誘ってくれたんですよね。『じゃあ]でもう1回やろうよ!俺ともう1回やろうよ』っていってくれたんですよね。」。それまで結構いろんなバンドに誘われたらしいが、不思議と「いや、明日からもう美容師になる。戻る。美容師1本でやって行く。ハサミしょって行くわ〜!」と話していたのに、「なぜだかヨッちゃんの一言には・・“やってみようかな”っていう気にまたガラッとさせられてしまった」。HIDEの本心は、ロックを続けたかった。しかしメンバーが欠ける時は、バンドを辞めると公言していた以上、自分自身のけじめとして、潮時かと悟ったんじゃないか。メンバー引き締めの意味も込め、このメンバーが俺には最高だのメッセージを印象付ける言い回しが、メンバー欠けたら辞めるとの言葉(辞めないとの確信もあったはず)になっていたんじゃないか。だから本心は、まだやり続けたかった。他のバンドメンバーからの誘いも、自分の悟りや心構えを崩すほどの心根に響くものでなかった。ところが、YOSHIKIの誘いの瞬間に、寂しい心にあの愛想よさの光景と驚きの感情がよみがえったんじゃなかろうか。言葉ではねつけていた自分の決意が、情感の世界に触れた瞬間に気持ちが溶ける何かを感じ、なぜか前向きの気持ちになっていた。人の心に触れる雰囲気が、YOSHIKIにはあったんだろう。「もうめちゃめちゃ愛想よくて・・」の言葉は、握手会に行った人なら、きっとこの感じが分かるだろう。あの人なっこさ、愛想よさ、笑顔、優しいまなざしで『どぉもー』って出てこられたら、だれだって参っちゃう。YOSHIKIの魅力の一つは、自身が発散するあの得体の知れないオーラなんだろう。(以上『Hide夢と自由』(株)扶桑社1999年1月20日初版p30〜39参照