2004・12・1   YOSHIKIジャパンプレミア東京国際フォーラム  papa

『思いは通じる。願いは叶う』というYOSHIKIの言葉を地で行くようなミラクル。事前の予想を遥かに凌駕して、東京フォーラムは運が花開いたような結果に酔いしれた。                    
 事前情報では、チケへの引き換えは並び順。しかもハガキの全員が入場可能とは行かない不安定要素があるようだった。俄然、気合が入る。とりあえずは入場を果たさなくては実も蓋もない。東京フォーラムのシートに着席するのが当面の第一目標。月末の忙しい1日を疲れながら夜を迎えたが、あすの午前0時を吉祥の出発時刻と決め、3時間ほど寝る事とした。気合の時間の1日0時、大阪を出発。途中3時間ほど仮眠を取り、12時前後に並ぶ予定。東京の午前の通勤ラッシュで大幅な所要時間がかかるだろうとの計算。入場の不安定要素が浜口パパになり気合いが入ったか。意識は明確、いつもの休憩牧の原SAも通過。そして朝6時半には東京フォーラムの駐車場入口に着いてしまった。通勤ラッシュは、まだ始まっていなかった。ノンストップ(給油のピットインのみ)でひた走った。湘南ナンバー1台がすでに並んでいた。並んでいたというのは、駐車場がまだ開場になっておらず、初めて7:00〜23:30の営業時間と知る。Cホールの入口の状態を確かめに行く。東京フォーラムホール棟Cホールに向かって、左右の入口がある(Aホールと同じ作りでキャパが小さいのみ)。向かって左の入口を確かめた所、2〜3人の方が並ばれていた。そこで相棒さんが並び、自分は車を入れた後、後を引き継ぐ事にした。マイチェアー&座布団を持参して6時40分、並び始める。7時10分、交代に左入口に行くと誰もいない。全員が右入口に並んでる。事情は、相棒さん右入口を確かめに行くとこちらにも並ばれてる。そこで尋ねたら、指示のない時は、右入口が正式な順番整列入口とのことで、全員が右入口に並び替えたとのこと。しばらくしてばっちりコスで並ばれた方も出てきて、]のライブの感じがしてきた(私の感覚は]のライブで統一されてる)。見た目にも素晴らしく、他人のコス衣装に憧れたが、実は先日TAIJIのライブで会った方で、双方知り合いであった。メイクが素晴らしく、元のイメージは芸術の域にかき消されていた。奥まったC入口前は、日も当たらず薄暗く深海の底冷えがする(寒かった!)。フォーラムガラス棟(南東棟)との空間には、温かそうな日光がやっと色づき始めたケヤキを通して、化粧石の上に温かい影を揺らしていたが、見るからに海面の暖かさは底冷えする深海には無情にも届かず、提灯アンコウの気持ちになって、携帯カイロで細々と暖をとった。12時前後には、係員が出入りするようになり、中を透かして見れば、赤じゅうたんのためし敷きがなされ、すぐしまわれた。C入口にも女性の係員が立ち、報道陣や届けられる用材の入場搬入に対応。1時15分、入口から2列になって並ぶようにとの指示。しかし、買出しで空席の方もいて、申し訳のポーズはとったが、列はすぐに形状記憶のように元に戻った。係員も役柄、指示だめしの感。2時半頃から、拡声器の整列を呼びかける音声が海面で聞こえ出したが、海底で凍り付いてる体には、荒れ出した海面の実感は届かず、相変わらずあんこうの提灯カイロの方が気になるぐらいだった。3時04分、「祝 YOSHIKI様 (株)東通(or電通)」の大きな花束が前を通って入った。3時50分、4時の引き換え開始に向けて、テンションが高まってきて、雨後のたけのこのようにひとり地面から立ち上がり、誰もが係員の指示の様子を伺っていたが、ガラス越しの会場内では打ち合わせやらパンフの整頓やらせわしく動く様子が見えたものの、深海底はここでも埒外の区域であるらしかった。雨後のたけのこも機先をそがれ、気持ちは立ち枯れの状態で、再び地に戻る物もあった(当方も、座りなおし)。海面の拡声器は、ずっと遠くへ呼びかけに出向いてるようで、小さく弱く聞こえた。やっと4時半、指示だめしの係員の本番が来た様で、遅くなったが今から引き換え開始の呼びかけ、2列になって入場。入口から直進して左折れたところにその机があった。ハガキ無しの付き添い者は、脇へそれるように指示、列は引き換え机の手前で大きく広がる。左入口の突き当たり、つまり引き換え位置の右手奥の控え室からは、赤じゅうたんがこちらに延びていて、入場後に上がる2連のエスカレーターの右側に手前を折れ曲がってつながれていた。YOSHIKIの、この赤いばらの色にも似たじゅうたんの上を歩く姿が、もう浮かんだ。チケとパンフをもらう。1階4列24と同25番。引き換え済みの人は後方のドアから外へ放たれ、開場6時までの自由をもらった。とにかく温かいものをと走り出した。B1で温かい食事、開場前にはエントランスのカフェで時間待ち。
 6時になり、後方のドアから出たのを逆に入口にして入った。中ではC右入口から入ってこられた人が直線で進んだ左に入場入口がもうけられていて、2方向の入場者が2つある入場口の堰を絞られ入るため、入口前は人の渦であった。事故もあったせいか、20〜30人が入ると一旦堰は止められ、入場者がエスカレーターに運ばれて行く様子を見ながら、堰は開けられて渦をさばいていた。入口入ってすぐ、2〜3の報道陣のカメラがライトを照らして撮影、さらに左の一般入場者エスカレーターを上がった右前、すなわち赤じゅうたんに続く右エスカレーター正面には、報道陣の多数のカメラ・マイク・照明が構えていて、ためし撮りの様に一般者の入場を撮影しているクルーもいた。その右エレベーターを上がって右折れ後ろ方向奥にも、報道陣のカメラの列が待ち構えていて、(私は)エスカを降り、左へ誘導された為、ちょうどホール中央吹き抜けをはさんでその反対側の手すりから向こうを眺めていると、係員に導かれた人のみ(導かれない人はその前にあるエスカでさらに上へ)ボードの前に向こう向きに立ってしきりにフラッシュがたかれて撮影されてるが、腰下が見えるだけで、ボードに隠れた晴れがましい様子や誰かさえも全く分からずじまい。しかし相棒さんは、エスカを降りた付近で待ち構えたらしく、「次は誰が来ます」と案内があって、報道陣(一般者にも)の準備に配慮がされていたらしい。河原崎長一郎や荻原流石が来たのは、遠くの手すりからも分かったが、芸能人や関係者が、夫婦ずれ、マネージャー同伴で来るが、エスカを上がるそれらの人の気取りやはにかみもいっせいにたかれるライト・フラッシュのともる場合とそうでない場合の明らかな様子を見て、視線は留まる場合と瞬時に次来る階下の入口に移る場合との自分の反応に気付いて、芸能人ならずとも旬の勢いはこういうことかと感じ入った。一般客はさみだれ的にエスカに運び上げられている。赤じゅうたん右折れる角には芸能人・関係者の受け付け机が置かれ2人が応対し、その辺りには関係者がうごめいて、それぞれの担当に当っているらしかった。6時30分頃には、3人のガードマンが棒立ちする赤じゅうたんがエスカへ右折れする前辺り、あるいはエスカを上った左折れ踊り場辺りには、お目当ての待ち人に触れる好位置を占めようと群集の人盛りが出来、さらに2階左折れの手すりを囲んで人が鈴なり埋め尽くす状態。6時50分、一般人や芸能人の入場が止んだ如くになり、係員も手持ち無沙汰の様子。入場が止まって、だんだん息詰まる雰囲気がざわめきの感じから敏感に満ちて来た。赤じゅうたん角には100人ぐらいのファンの人垣。エスカ踊り場は、人が通れないほどごった返してせめぎあってる。6時53分階下から「YOSHIKI!」のかけ声。視線は、控え室方向に。その場は肩透かしで登場はしなかったが、たぶん宝塚の経験から、控え室ドアから関係者が出てきた瞬間だったのだろう。54分コールがまき上がり、YOSHIKI、控え室より登場、一団のまん中に歩く姿が確認できる。YOSHIKIの名を叫ぶ甲高い声や悲鳴に、軽く会釈をしながらファンの声援に応えているらしかった。ゆっくりとエスカに乗る。YOSHIKIの3段前に主演の韓国の女優チョン・ジヒョンが大柄な体をドレス風衣装に包み、上がっている。片手をポケットに差し入れて、右手は手を軽く振ったり、軽く髪にそわしたり。YOSHIKIの後にも3段ぐらいの空き空間。上がった所で、いっせいにフラッシュ・ライトがともされ、まずは写真撮影が行われているらしかった。56分には、階下から大きなYOSHIKIコール。しばらくは写真撮影か。その後インタビューに答えているらしい。報道陣や人盛りで何も見えず。踊り場当たりに近づくと、向こう向きでインタビューされてる姿が垣間見えた。あちこちでYOSHIKIコール。4分頃までインタビューは続いていたが、終るとコールに答える振り向き姿があった。さらに右奥の写真撮影に進んでいくようであったが、私は席に急いだ。

チケをもって1階4列目へ急いだ。場内は木目模様のフローリングで、シートも上品ないい仕事をしてますねのシート。座り心地もよさそうだ。4列目は普通前に3列のシートが常識的に当然ある訳で、そこには芸能人や記者やカメラマンが座っているものと考えていた。ところが4列目は最前列になっている。本来あるはずの前3列のシートは、取り外されているようで、空いたフロアには整然とナップサックやカバン、2段脚立が並べられている。少なくともYOSHIKIに至近距離で会う事が出来るとは、出発の時点では夢物語であったのにミラクルだ。3億の宝くじかYOSHIKIの今日のシートいずれに運を使うとしたら、まあ3億にしようかと思ったものだが、正直最前のシートなら互角の所。気合が運に花開かせたと思った。12月の最初がいい運なら、やっぱり終わりもいい運にめぐり合いたい(頼むー!!)。余計な思案をめぐらしてる間に、相棒さんが来て、さらに今日来ている友人“ありんさん”もメール連絡が着いてそこに来てくれたので、再会を喜んでいたが、シートはと聞くと4列22番とのこと。一つ置いたお隣。ものすごい偶然にびっくりしてると23番の男性が席を22番に移動してくれて、3人は夢物語の正夢にありえない幸運を心から喜んだ。
 7時10分に予鈴のブザーが鳴る。15分にも再び鳴って「まもなく開演します。ロビーにおいでの方は、お席にお着き下さい」の場内放送。ステージは、後ろに大きなスクリーンが用意されていて、広々とした空間をつくっいる。そこに今日司会の女性が現われ、「本日はようこそ、ワーナーブラザーズ映画『僕の彼女を紹介します』のジャパンプレミアに。司会進行の海老澤(えびさわ)○○です。よろしくお願い致します。今日皆様にご覧頂く『僕の彼女を紹介します』はもうすでに、若い人たちの間では『僕カノ』。その『僕カノ』と普通トークでは呼ばれてますので、これからは私『僕カノ』で呼ばさせていただきましょう。その『僕カノ』ですが、代表作『猟奇的な彼女』の監督・主演女優のコンビが再び共作のラブストーリーです。今の日本は、びっくりするほどの韓流ブーム、そして純愛ブームです。なんとこの『僕カノ』は、その2つの要素をギューと詰め込んだ、それはそれは見事な恋愛映画の決定打。将にそれはNo.1と言っても過言でも不思議でもありません。思いっきり楽しんで、そしてキューと涙を絞られて、感動して、ハラハラして、ドキドキして、号泣するという忙しいですので心の準備してくださいね。それでは上映前の至福の時間、舞台挨拶とともに、素晴らしい皆さんが駆けつけてくれました。拍手で、お迎えしましょう。(主演女優チョン・ジヒョン、監督クァク・ジェヨン、プロデューサーアン・ホワンが入場)じゃ、カメラに向かってポーズをお願いします。ゴージャスなジャパンプレミア、記念すべきこの夜、どうか一般の皆様はお写真の方、ご遠慮願います、胸に焼き付けてください。視線を取って行きましょうか(と言って、右、中央、左と指示。カメラマンからも「こちらお願いします」「お願いします」の個々の要求が発せられ、視線を向けていた)。ではプロディーサーからのご挨拶、お願いします。

韓国語で挨拶。
通訳『本当に今日、たくさんの皆様にお集まり頂き、ありがとうございます。この映画に力を貸し、協力してくださった○○さん(複数人)ありがとうございます。そして皆様、今日この映画を楽しんでください』

監督より挨拶 
通訳『本日は皆様とこの作品を見ることが出来、幸運に思っております。韓国で公開されるより日本で公開されるほうが、うれしいような気がします。ゆったりとしております。新しいスタートを切るように思いますし、どうか皆様楽しんでください』

主演女優より挨拶 『みなさん、こんばんわ』と本人言って
通訳『皆様と今日、お会いできてうれしく思います。日本でこのように大きなイベントが出来て光栄です。これから皆様にこの映画をご覧頂くわけですが、今とてもいい雰囲気で盛り上がっていると思います。この雰囲気が公開まで続いて、公開後いい結果が出ればうれしいと思います。どうか皆さん楽しんでご覧ください』

司会:代表質問しますので答えてください。プロデューサーから     
司会:本日のみならず、アジア各国で、大変大人気です。その愛される理由はなんだとお思いですか。

通訳『さまざまな要素があるかと思いますが、何よりもまず、監督の感受性ではないかと思います。韓国のみならず、アジア、また世界に通じる非常に純粋な感性を持っていらっしゃる監督さんなんですね。その感性をチョン・ジヒョン、チャン・ヒョクの俳優さんたちもうまく素晴らしい演技で支えていたからではないかと思います』

司会:感性豊かな監督、ジヒョンさんと再び組んでの作品となりますが、ジヒョンさんの魅力とその理由は。

通訳『チョン・ジヒョンさんの魅力は、映画を見ればすべて分かると思います。本人を前にしてなかなか照れくさくてお話するのは苦手なんですが、彼女の本当の魅力はこの映画にたっぷりと現れています。私は何でも意欲的な彼女なんで、お慕いするようになって、彼女の魅力を引き出したいと思っています』

司会:そしてチョン・ジヒョンさんなんですが、『僕カノ』でちょっと勝気で、憎めなくて・・・そして誰からも愛されるキャラクターを演じて、このヒロインの役どころとご自身の重なる部分はありますか。

通訳『共通点は非常にかわいらしくて、愛らしいところです。これは冗談ですが、今まで私が演じた役、これから演じるであろう役に、必ず私自身の姿が入っていないと思いますが、ここには私自身の姿が入っていると思いますし、今は自然な演技をする事を心掛けています。まだまだ未熟な心があるんですけど、今一番、自然な演技をする事が大事なのではないかと思っております。この映画のキャラクターと言うのは、完全に100%私と同じでないかもしれませんが、似ているところもたくさんあります。一番違う点を挙げるなら、このように人をなぐったりしません。ヒロインは正義感溢れてる者ですが、私はちょっと足りないかなと思っております。女性署員は心が深いですが、私はちょっとないかもしれません』

司会:早く皆さん映画を見たいですよね。どんな風に仕上がってるのという感じですが、こんな大勢のジャパンプレミアの皆さんを初めてご覧になって、どう思います。
 
通訳:(同チョン・ジヒョン)『まず、この作品、多くの関心を寄せて頂き、とても感謝をしております。私はプロモートするのは3作目になるのですが、今日は一番温かく迎えてくださってる気がします。そして日本で居心地がいい時間を過ごしてるんですけれども、その理由は韓国監督の映画やドラマが日本に多く紹介されて、日本の方たちも親しんでくださってるからではないでしょうか。そのお陰で、私は自信を持って映画を紹介できますし、こういった現象は一時的なものでなく、ずっーと持続して頂いて、誰からも関心を持って頂いて、日本と韓国両国が1つになって、文化交流を続けていければと思ってます』

司会:ヒットの予感ですよね、プロデューサー、監督?

通訳:(プロデューサー)『皆さんの姿を見てますと、手ごたえがあるのじゃないかと思っております。』

司会:もちろんそうなると思います。昨日の記者会見といい、ジャパン・プレミアといい、多くの人があふれてしまいました。

通訳:(監督)『そうですね。私もそうなって欲しいと願っています。ここにいる皆さんもいい評価を出してくださってるじゃないかと思いますし、協力して頂ければいい結果が出ると思います。』

司会:そして本日はもうひと方、スペシャルゲストがお出でくださいました。この映画の挿入歌、そう、もうお分かりでしょう。元]JAPANと言えば、YOSHIKIさん・・ 
 
(ここから先は、YOSHIKIへの悲鳴喚声で聞き取れず。雄大な曲が場内に響き渡り、YOSHIKIが黒いブレザー&ズボン、黒シャツのいつもの姿で左手より現われる)

司会:ようこそお出でくださいました。ご挨拶を(と言ったような・・)。

YOSHIKI『あっ、こんばんわ』

司会:実は今まで、韓国の作品に日本の曲が使われたことがありません。初めてです、どう思いますか。

YOSHIKI『とても光栄です』

司会:そしてご自身の曲、Tearsが流れるシーンをご覧になって、如何でしたか。

YOSHIKI『Tearsは、なんか不思議だったんですけれど、映画自体はとても素晴らしくて、なんか涙が出てきたって言うか、なんか曲をそこまで理解してくれて、使ってくれたって言うのは、ほんと初めてなんで、いろんな意味で感激してます』

司会:監督がファンでいらっしゃって、ずっと仕事している間、おかけになってらしたんですよ。
 
YOSHIKI『僕もファンなんですよ』

司会:はい、どうも(笑)ありがとう。最後になるんですけど、YOSHIKIさんからメッセージを頂いて、映画、スタートとなります。

YOSHIKI『本当に素敵な映画だと思います。あれだけ素敵な警官なら、僕、逮捕されたいなとの思いです。・・・こんな感じです。』

司会:チョン・ジヒョンさんメッセージを。

通訳『皆さんに心から感謝しますし、映画も楽しんでください。そして映画と共に、]JAPANの歌も楽しんでください。本当にありがとうございました』

司会:クァク・ジェヨンさん。

通訳『本当にうれしくて、なんていったらいいのか分からないくらいです。心で見ていただければうれしく思います。ありがとうございました。』

司会:アン・ホワンさん。

通訳『心から感謝します。お忙しいのに、アメリカから駆けつけて下さったYOSHIKIさんにもお礼を申し上げたいと思います。それと皆様、本当にありがとうございました。』

司会:どうもありがとうございました。

 
 監督、主演女優、YOSHIKI、プロデューサーの順に4人がステージ上で並んで、写真撮影が始まった。撮影で前がふさがれ、見えないと聞こえよがしに苦情を言ってる人が一人横にいるようだったが、撮影を仕事としてる者たちは、動じない。せいの・・「YOSHIKI !」と右隣二人がYOSHIKIコールを送ると、“小さく手を振って、目線が来た”様に見えた。「やったねー!」と喜んでいたが、自意識が強い状況では客観性にやや問題ありかもしれない。3分前後の撮影時間が終るや否や、「YOSHIKI ー!!」と叫ぶ大コールや大歓声。YOSHIKI達が引き上げると、カメラマンも荷物を持って左へ引き上げていった。ステージと我々着席の椅子との間には、初めて何もない広場が出現した。

舞台挨拶が終って、司会者がこれから試写会を始めますと引き下がる際、映画の後に素敵なプレゼントがありますと告げてくれた。いわばそれが今日のメインディッシュ。メインディシュの前に、今から]JAPANの音楽GIGが開催される訳である。映画『僕の彼女を紹介します』の試写会は7時42分始まった。スクリーンには、出演者や映画に携わった人の字幕が、映画の主題歌(ボブ・ディランの名曲『Knockin' on Heaven's Door』(邦題:天国への扉)を韓国の人気シンガーYoume(ユミ)がカバー)にたたえられながら、スクリーンを湧き上がってきた。キャストを韓国の歌で送り出しながら、次第に場面は大都会の夜景が上空から遊覧するようにスクリーンを動いて行く。一つの大きなビルが視界の中に拡大され、その屋上の、地上から垂直に立ち上がった絶壁の上に、今から天国の彼の元に旅立とうとする彼女(チョン・ジヒョン演じるヨ・ギョンジン)が、半足はみだした地獄の空間を蹴って天国へ飛び上がろうとしている。彼女は正義感溢れる熱血婦人警官で、犯人を追い詰めた場所で、とっぴな出会いから始まった交際相手の彼(チャン・ヒョク演じる高校教師のミョンウ)の手伝いを受けた犯人逮捕がまさに完結しようとしていた矢先、誤って彼を撃ってしまったのである。そんな彼女を、風となって時に近くにあり、時に導き見守る天国の彼からの恋人紹介が、タイトル『僕の彼女を紹介します』のストーリーの中心を構成、アクション映画であり、純愛ラブストーリーであり、熱血青春編であり、そんな警官なら喜んで逮捕されようと犯罪に手を染めるヤカラが激増してしまう犯罪促進映画にもなってしまいそうな、コミカルな部分も忘れない映画であった。そして]ファンなら、天国から主人公の部屋に訪れた彼がもう行かなきゃと去ってゆく最後のシーンをどんな感慨で見てしまうだろう。背を翻して行かんとしている向こうには、白い雲が流れる青い空、Hideが向かったあの青い空を思い浮かべると、スクリーン一杯に映し出されるシュツエイションは、Hideのファンへの惜別シーンとダブってしまう。ミョンウをHideに置き換えるなら、熱いものがこみ上げる衝動をきっと押さえ切れないだろう。偶然にも]JAPANのTearsが挿入歌としてクライマックスで流れるが、最後のこのシーンにToshiの歌声、YOSHIKIのピアノのTearsを、Hideへの惜別のシーンとして思い浮かべる中にTearsが流れてくるなら(もう、涙が出てきたよぅ・・)、まだ実現していないHideの追悼コンサートが図らずも実現してしまう。本来の追悼コンサートは、正式最大限に東京ドームか代々木第一か武道館で実現できる日を一日千秋の思いで待っているが、このシーンにこそ]ファンのクァク監督に、も一度Tearsをエンディングで挿入してもらいたかった。もしそうなら、この映画は、YOSHIKIの気持ちをどこまでも深遠した、監督自身の自身をも含む]ファンに送るレクイエムとなった。私心は]のGIG(ライブ)の感覚での気合を込めた参加だったので、話は我田引水ご都合主義になってしまうが、その点を除けば面白いし心にこみ上げる小気味よい作品である。

 次第に体勢を傾けながら、天国へ飛翔するように体を翻して飛んでるギョンジンの記憶の中に、彼との出会いが回想されてゆく。泥棒と間違われ逃げてくるミョンウを、犯人だと誤認したキョンジン巡査が追いかけ手荒く捕まえた。警察署に引っぱられて行き、身分証提示。高校教師と判明するが、そこの壁に貼られている指名手配写真の犯人と酷似。絵を上手に描いて犯人でないことを証明、釈放される。何日か経って、再度カバンを盗んだと疑われ再逮捕。少年補導の任務から警察署へ主人公ギョンジンが帰ってくる。再会が2人の出会いになり、二人で食事。その帰り高校生チンピラ4人ともめる。タバコの吸殻をひらえと指示する巡査に反抗的な態度の高校生。切れたキョンジンは4人と遣り合ってしまい、一緒に食事をしたミョンウも混じっての格闘。そんな中、麻薬ディラーを発見。逃げようとする食事相手と自分の手を手錠で結び、麻薬犯を追いかけ出す。手錠のまま塀をよじ登ったりして追いかける。路地裏の陰気な所に取引に出向かう犯人を、引きずり追いかける。とある倉庫に入ってゆく。意を決してピストル構えてドアを蹴り倒して突入、その瞬間中では犯人グループ同士のいさかいが将に始まる瞬間で、巡査の発射するピストルをきっかけに両グループの抗争が火蓋を切る。拳銃で脅したり撃ち合ったり。2人手錠のまま追っかけ大乱闘。犯人を追い詰める。アンダーカバー(おとり警官)が出現、実は抗争はおとり捜査の最中で、二人はおとり捜査の計画を台無しにしてしまった。この捕り物のドサクサに、手錠のキーを無くしてしまい、そのまま警察署に戻る。その警察署には、チンピラ高校生の親の区議会議員が取り巻き4人を連れて怒鳴り込んでいた。息子の事でいかり心頭の父親に殴られる。侮辱もされる。それを見た手錠の相棒が怒りを爆発。重要殺人犯の芝居で何人殺すも同じだと演技して親を脅し、親に親に謝らせ、追い返してしまう。先生は演劇をやっていたとのこと。・・・鍵がなく2人は手錠のまま、かわるがわる手洗いや顔を洗う。同じく2人で寝る。朝起きるとキョンジンの手がするりと手錠を抜け出るが、その手で体を掻いた後また手錠の中に手を差し込んでしまう。寝ぼけ意識で手錠の外れた事が分かってなかったのである。・・・場面は2−6の高校教室へキョンジンがお弁当を持って尋ねてくる。どうもそのお弁当は落し物で、不在の先生をよいことに生徒に誰の弁当かと言わせ、『先生のだわ』との言質を得る。先生とは寝たこともあると生徒に告白。ひと悶着が起こる。・・・主人公の部屋に彼が荷物もって尋ねる。そこには衝立の写真入れの中に、恋人とよく似た女性が2人写っている。お姉さんであった。それには訳があって,キョンジンは黒い鍵盤を弾かないという。ピアノを弾く2人の姉妹だが、姉を思い私は白い鍵盤だけを弾くと。学校も別々に通っていたが、ピアノコンクールと卒業写真の日が重なり姉に卒業写真の出席を頼んだ所、姉は交通事故死・・・片やミョンウの高校時代の思い出話となり、自転車で骨折の話。2人の生活が始まりかけ、レストランに食事に。帰りは土砂降りの雨、その雨の中を2人は戯れる。雨に濡れた衣服を乾かす暖炉が出てくる。・・・誘拐犯の情報。ミョンウも犯人追跡を手助け。ビルの壁の合間に潜んだミョンウの前方で、邪魔だから殺すしかないと哀願する女性を突き刺す瞬間に、ミョンウの機転で回避。犯人がミョンウを殺そうとナイフを向けるが、ビルの谷間のせせこましい隙間に届ききらず、落としてしまう。そして逮捕されるのであった。
・・・制服のキョンジンは恋人の学校を訪ねる。職員室をのぞき聞いたが、帰った後。落胆して帰りかけるとジープに乗ったミョンウが走ってくる。校庭でジープを円軌道に走らせ、その中心でキョンジンが楽しくジープと遊ぶメリーゴーランド風シーン。やがて2人はドライブに出かけ、高原の頂上へ。そこには風がふんだんに舞っており、ミョンウは「前世は風。自由になりたい」と気持ちを述べる。山小屋の中での食事準備のシーンに変わり、その夜の夢の中の話か、昔の草原中央の国の姫の話が出てきて、姫は自分の結婚を指たてで決めようと決心。親指、卑猥な指を立てた王子を排除、小指を立てた王子と結婚。ところが戦争が起こって彼は10年経っても帰らず、止むに止まれず再婚を決意。小指の一番しっくり絡める人との条件で、来るもの拒わず選び続けるとこじきとの結婚になってしまった。実はそれは何を隠そう元王子だったのである。それは幻の王子で、王子はすでに死んでいるが、小指の約束に現われたのである・・・そんな話が山小屋で行われて、死んだら死ぬ、いや死なないという楽しい押し合いのムードでのキス、キョンジンの手には燃えさがしの枝が握られていて、キスの目閉じが災い、ミョンウの鼻先へ押し付けられてしまう。水たまりへ突入、大事には至らず。・・・ジープで下山。帰途、土砂崩れが発生、ジープが巻き込まれてしまい、がけ下へ、さらには水中へ。ミョンウは気絶、川に流され行くジープ。その水中の必死の救助でキョンジンはミョンウを助け、岸に運び上げる。8時41分このシーンにTearsが流れ出す。しかし鼓動が止まり、死んだかのような顔の表情に泣き叫び、雄たけび狂うキョンジン。人口呼吸の必死の処置、叫び、泣き、生き返るよう叫ぶ。ここ全体のシーンに流れるTears(オケバージョンだったか)が命の琴線を震わせたか、焼けになり取り乱した手が胸をうったら、げっぷの反応、息を吹き返す。・・・日常へ。キョンジンは警察の任務に忙しくしていると事件発生。カラオケ店で従業員の大量殺人。警部補が刺される。ミョンウも捜査に協力。犯人は脱獄犯。追跡の最中キョンジンも物陰に隠れていた犯人に刺される。それでも追跡をやめず、脱獄犯に発砲、犯人を撃ったつもりがタイミングよくそこに現われたミョンウを撃ってしまう。彼を見て、取り乱し、抱えて慟哭、死ぬな、夢だと・・・・。彼は搬送の病院で死す(8時55分)。キョンジンは睡眠薬自殺を図る。「僕は電話の届かない所にいる」とTEL。「私が行く。あなたの所へ」のナレーション。そしてビルから飛び降りる最初のシーンへ戻ってくる。が、子供に飛ぶ寸前呼び止められる。「飛び降り自殺か」と。おばさんと言うので癪にさわり、反論。「5万貸してくれ」と子供。「死んだら使えない」と。生意気な子供を追いかけ、ビルの下の道へ。家出の事情があり、お腹が減ってたのが原因。ピザを一緒食べる。「ピザを取ってきて、きゅうり以外」と子供に命じる(ここで一人笑う。きゅうりの嫌いな奴が前席で見ていたから)。子供らに交通費を渡して返す。・・・家に帰る。死なないでの約束を思い出すが、またビルの屋上へ戻ってしまう。そして今度は飛び降りてしまう。ビルの下ではイベントが行われていて、黄色い大きな手のアドバルーンが上げられていて、その手の中に拾われ、さらに反動で落下。人の家のベッドに落下。そそくさと家に逃げ帰る。ビルの外に出て「僕がいないときに吹く風は、僕だと思って」の彼の言葉を思い出す。紙飛行機が飛んでくる。それは2人が生活し出した時に彼が折ったいたずら紙飛行機。自分の雑誌の1ページを破ったものだと判明。その回想する場面にTears。「どこに 行くの・・・」とToshiが歌うTears。「ここにいるの。この風はミュンウ。答えて、ミョンウ。風になったの、風になったの・・信じられない」。振り向く部屋の中、その回想と紙飛行機の作り出す場面の中に、Tears。Toshiの歌うTears。かざぐるまをたくさん作って・・・風の吹く・・・31日はミョンウが永遠に去る日。会ってみせる。
新しい警察署の勤務が始まる。同僚と組んでキョウジン刑事さっそく速度違反の車の取締り。違反を犯してこっちに突入してくる車、キョウジン刑事の拳銃が放たれる。赤い車は目前で転覆。もれたガソリンに引火大爆発火災。・・・10月のカレンダーに7日までのけペケ印。その31日が最後の日。思い出の回想シーン、ピアノをあけると「ピアノを弾く君が見たい」・・・人質事件。犯人を追い詰める、思い出しピアノ・・・ビル倉庫に犯人、撃たれる・・・助けに来た刑事と犯人撃ち合い、駐車場での撃ち合い・・ミョンウの風の事を思い出しながら犯人を追う・・・49日目はミョンウが旅立つ日。警察車が突入してくる前に、乳母車が走り出してくる。助けに行くところを犯人に打たれて、キョウジン刑事は瀕死の状態。ミョンウをうわごとで言う。紙飛行機が飛び、キョウジンは病院へ搬送。その目に映る天井や医者の言葉のおぼろげな治療の現場。意識はさまよって窓の外、見つめる町、行き交う人、その人ごみの中に愛した彼、ミョンウを見つける。幻のミョンウは追いかけど走り去ってゆく。道にたたずむ男、ミョンウ。生きてた!。走れないのになぜ逃げた。「肺が一つ」と。こんな姿、もう昔の僕じゃない、別人だ。生きてると思うな−−死んだんだ。叫び、バスの乗り去ってしまう。バスを追うキョウジン、バスは去ってゆく。と言う自分の死す床での幻覚を見ている。・・・そして生き返る。生きて意識の戻ったその日は10月31日。紙飛行機が空を飛び、ミョンウが紙飛行機や風になり、町を飛んで行く。それを追うキョウジン。自宅の戻った部屋の中にはかざぐるまが回る。入って止まった風の音。窓の外には風がいっぱい。窓を開け、呼び込む風。その風に乗って一つの紙飛行機が入ってくる。拾い上げ(ここにTearsのオーケストラバージョンが入る)、部屋の中にはかざくるまが回る。突如、大きな風。ミョンウが戻ってきたかのような風。ミョンウと問い叫ぶ中へTears(9時30分)。落ちてる紙飛行機。本のページをめくる大きな風。泣きながら風を抱くキョウジン。そこにはミョンウが立っている(ずっとTearsが流れている)。「誰かが願いを叶えてくれた」ミョンウの生還、ミョンウが見えると泣く主人公。窓の外から強い光。「もう行かなきゃ」。青い空へ後ろずさり。振り向き帰りかける。「行くな、私も行く」「ダメだ。君は人生がある、まだ早い。僕のために悲しまないで・・。次に会うときは・・君の愛を胸に旅立たせて欲しい」と振り返り、白い雲の流れる青空へ歩いてゆく。その後姿に呼びかける「悲しまない。風でもいいから・・・」。手を振り、大空へ(9時36分)。6分間Tearsが流れる。
職場のキョウジン刑事が呼び出される。「誰かがあなたにと」の小包み。命の恩人キョウジンへ1冊の本。その本の間にはさまれた写真。「いつもそばにいる。僕は君のそばにいる」。誰が届けたかと尋ね、町の中に飛び出してゆく。人ごみの中探す。駅のホーム、見知らぬ人の顔をのぞく。見つめる。彼はそばにいると納得。「僕の彼女は、僕のために多くの涙を流してくれた」とのナレーション。これが『僕の彼女を紹介します』の意味なんだろう。キョウジン、よく似た駅のホームの他人を見て微笑む。(9時41分終了)

映画は良かった。メリハリのある小気味よいストーリーの展開であった。欲を言えば最後のエンディングにこそ、Toshiの歌うTearsが流れて欲しかった。気合で臨んでるこの場において、2時間に及ぶ映画に集中、代わりにいい感動に波打ってる神経ではあったが、気力は終ったスクリーンにもって行かれたようにないでいた。場内の様子がどうだったのか、全く記憶にない。意気を殺がれた様に朦朧と横たわる視界の中に、ステージ両端から3〜4基ひと束の照明がステージ方向を仰ぎ気味に照らしているのが、強い光線のまぶしさに生き残った視神経を刺激していた。最前のシートにもわきをそれた光線が漏れ来て、「まぶしいなぁ」と感じたのを覚えている。
 5分ぐらいの時が過ぎたのだろうか。まぶしい光線以外に記憶がないので、場内は映画の掃けた闇のままだったと思う。その闇の中に、静かにオーケストラの音色が流れ出してくる。02’の12月4日のシンフォのトップを飾ったあのTears。3日のトップは、Say Anythingだったので、その時1回限りの生オケ演奏のTearsが、あの時と同じように本演奏の開始を期待する気持ちの裏から、静かに静かに滑り込んできた。映画に興奮した神経をなだめるように、シーンと水を打った場内の水面にわずかにさざ波を立てるように、快い癒しの風を届けに来たようだった。静かな旋律のまどろみに続いて、寄り集まったバイオリンの旋律が後をたどってゆく。1分ぐらいの導入部を引き継いで1本のオーボエの旋律が、音の線を描くように意識を走ってゆく。その時の感情の有り様によっては、ぐっと食い込む哀愁の音色の線を彷彿とさせながら、意識の線から感情の線へとつながってゆく。生気を取り戻し、生きようとする生命の芽生えの気配が満ちてきた中に、力強さをやや増したバイオリンの旋律が夜明けの光のように輝き出して場内を華やかに包む。1本の芽生えた生命は、光を浴びてたくましく立ち上がろうとしている。生命を奏でるように、再びオーボエの旋律が一つの生命の歓喜の様に流れて、大地はこうして種々の生命が移り行くんだよと言い終った感がしたその瞬間、約3分間の物語のナレーションが終るかのように静かにボリュームが消えた。(9時49分)
 その瞬間、力強いピアノの旋律が第一音をやや強く、その余韻に次を重ねるように突然始まった。まずはご挨拶と言う旋律を伴わない和音があって、何秒後かには集まった和音は鍵盤をはじくピアノの旋律となり、こぼれる光の粒のように走り出した。20秒ぐらいのブラインド演奏が続いたあと、音のとばりが開くかのようにステージのどん帳が上がってゆく。夜明けの光が漏れステージ床が輝き、のぞかれるステージ内は光に満ちて、その輝きは昇る太陽のように客席をも照らし出した。どん帳がステージへの視線を開放するにつれ、ピアノの足が現われ、ステージに輝くYOSHIKIの姿が鮮明に見え出すと、そこかしこに喚声が沸きあがる。息の続く限りの喚声が息継ぎを始めるぐらいのタイミングを置いて、Tearsのボーカルが入ってきた。YOSHIKIの1点しか視線に入っていない]の観客は、とたんに振り向く素振りでToshiとは大違いの右側の音源を認めた。お世辞にもうまいとはいえないヴォーカルの歌い出しは、左の加熱の頭に右から冷水をかけるような違和感があった。Tearsのヴォーカルは、あの音質・あの高音・あの始まりでなくてはならない。その要件のどれにも当てはまらない違和感が、韓国の人なので仕方ないという妥協を差し引いてもまだ残った。KAWAIのクリスタルピアノが音響の羽を広げ、その羽にのみ照準を合わせたかの様なミラーボールの華やかな模様が羽に舞って、サングラスのYOSHIKIの体が、前に力を込め、後ろへ感情に押し戻されるように前後に揺れている。白いシャツ襟を黒ジャケットからのぞかせたラフな格好、肩をわずかに上下して、スイングをなめらかに楽しんでいるかのよう。ヴォーカルが途切れる所では、相づちのYOSHIKIコールの悲鳴がかけられた。すすり泣く声も聞こえ、待ち焦がれた愛しの人を目の当たりして、感情は制御不能に陥ってしまってる。ステージ天井には、1列の青い照明が神秘に輝き、バックを暗黒の背景にした無限大の雄大さが、映画音響のままの奥深い大音量でYOSHIKIのピアノを聞かせてくれる。Tearsの楽曲の素晴らしさは、12年前(’92)の紅白から成長し、進化をとげ、こんなにも感動的な楽曲として輝いてる。いい音楽の命を信じ、作曲に心血を注いだYOSHIKIの気概が、音楽を通した抜擢の経験をさらに得て、ますます輝いて今に花開いてきた事に、YOSHIKIのピアノはうなずかせてくれる。涙のこみ上げる目線を空中にそらせば、雲のようにスモークがYOSHIKIの上空に現われ、湧きあがる動きの縁を、青い照明が神秘に彩りして、白と群青の織り成すドラマチックなショーを見せていた。背景の無限の黒の前にはクリスタルの透き通るピアノ、サングラスとジャケットの黒の間に白(襟)がアクセントにのぞき、スポットライトに照らし出されたあでやかなブラウンヘアーが端正な顔立ちの輪郭に沿っている。スイングの動きは、チラッと客席に向けられることもあり、微笑んだ口元にはYOSHIKI自身も酔っている陶酔感が漂っていた。ピアノの旋律の後ろから、オーケストラの演奏が伴奏してピアノと渾然一体に同化してゆく。満ちた演奏がボリュームを上げる。押し上げていった演奏が、フェイントして引いた所へヴォーカルが入る。今まで意識の外を歌っていたのが急に飛び込んできた。歌も佳境の展開部。感情込めて歌っていたが、ほんの少しの間奏になり、とたんにYOSHIKIコールが入って、タイミングがずれ、次の出だしが一瞬遅れたような流れになった。伴奏のみを歩んできたYOSHIKIの演奏が、その瞬間この音に沿って歌いなさいというピアノのボーカル部分を際立たせてたたいた。その音に戸惑いは救われ、舟に乗ったと見たYOSHIKIは、伴奏にすぐ戻ったように見えた。一瞬の出来事であったが、明らかに伴奏の流れの中にボーカル部分を際立たせたのは、YOSHIKIの優しさだろう。YOSHIKIのリサイタルは、6分間の陶酔を与えてくれた。旋律が解きほぐされるように終息の域に差し掛かった。規則的でない音律をあやつって、一礼をするかのようにピアノにうずくまり、演奏は終った。(9時56分)

YOSHIKIの演奏中、ステージ下にはカメラマンが撮影に忙しそうだったが、YOSHIKIへの視線が邪魔されない限り、気にもならなかった。視点は一つしかなく、それさえ視覚の中にあれば・・その手から奏でられる音楽さえ鳴り響いていれば、これが今日の至福の時間、それ以外のものは遮断状態だった。
 ピアノの演奏を終えたYOSHIKIは、黒であったが鮮やかに見えるジャケットを椅子のまま脱いだ。一際高いYOSHIKIコールと悲鳴、拍手が巻き起こった。自然と口を突いて出る感嘆のコールや喚声。日常生活では自然と出てくることなど皆無。精神の興奮の極みを自然に発露させてくれる存在に、さらに視聴覚は釘ずけられて行く。そこに司会者が登場した。

司会:ありがとうございました。実は、YOSHIKIさんは、こうやって皆さんの前にご登場されたのは、久し振りだと言う事なんです。(きゃーーの悲鳴)

YOSHIKI『・・・・(反応なし)』

司会:そうなんですか?。久し振りでいらっしゃいますよね?

YOSHIKI『・・・・はぃ?』

司会:皆様の前にご登場なされたのは、久し振りだとか・・?

YOSHIKI『そうです。久し振りです』

司会:久し振りに皆様の前で、演奏なさって・・。

YOSHIKI『気持ちいいですね』

司会:気持ちいいですか(大笑い)。しかもYOSHIKIさんがプロデュースなさった、12月15日にデビューなさるロックバンド、本当に人気者なんだそうですけど、彼らなんですけど(タイフーンに向かって)どうもこんにちわ。
(YOSHIKIがピアノ前で座っていた為、カメラマンより立った方が良いですよね の声)
そうですね。

YOSHIKIが立つと、ズボンはひざの辺りがほころんだジーパン。落ちきらない油汚れの色も見えている。とたんに『かわいい!』のかけ声や歓声。近くで『相変わらず、かわいいですね』と大きく聞こえた。

司会:スコーピオのプロデュースをなさいましたが、Traxの魅力、教えていただければうれしいのですが・・。

YOSHIKI『かっこいいですね。皆さん、青少年で、まあ]JAPANもそうだったんですけど、実際演奏始めると・・・・似てますね』

司会:幸せな事ですね。YOSHIKI様がプロデュースなされたという事で・・・。初めてですね、皆様の前で歌われること、デビュー前に。

通訳(タイフーン)『皆さんの前で歌うのは、今日が初めてでした』

司会:どうでしたか。

通訳(タイフーン)『YOSHIKIさんのピアノの前で歌う事が出来て、本当に光栄です。とても緊張してしまったんですが、未だに緊張が取れなくて震えています』

司会:そうですね。他のTraxの皆さんも、今日、客席にお見えになっています。どこにいますか。(2階客席最前左側辺りに認めて)紹介しましょう。ローズさん、アタックさん、クリスマスさんでーす。ほんとにビジュアル系、実力派を兼ね備えていらっしゃるというか・・。

マイクを向けられたタイフーン『ありがとうございます』
次に向けられたYOSHIKI『ありがとうございます』

司会:せっかくなので、皆様にメッセージ頂けるとうれしいのですが・・。

通訳(タイフーン)『今日は、YOSHIKIさんと一緒に歌う事が出来て本当にうれしく思います。皆様も見守って下さってどうもありがとうございます。12月15日に私達のアルバムが出るんですけれども、これから一生懸命コンサートもやって行きたいと思いますので、皆さんどうか応援して下さい。ありがとうございました』

司会:どうもありがとうございました。Traxの皆さん、YOSHIKIさんでした。YOSHIKIさんは、今日のために、マイピアノで演奏してくださったんですよ。(あと、通訳の紹介や映画もこの方の通訳ということ話されたが・・去ってゆくYOSHIKIへの大歓声で後は分からず)(10時02分終了)場内には綺麗な音楽が流れ出した。

終るとステージそのままになってるマイピアノを撮影する為、どっと押し寄せて、めいめいカメラや携帯で撮影していた。いつまでも開いてるのかと思っていたどん帳もファンの写真撮影がひと段落したころあいを見計らって、降りてきた(10時04分)

どん帳の下がった客席は、出口に向かう流れとなった。こっちで「YOSHIKI、帰って来てくれてありがとう」、あっちで「YOSHIKI、ありがとう」とステージめがけて叫ぶファンがいた。

出待ちをしてみようとなった。フォーラムの駐車場の出口は1箇所。10時20分ごろ、出口には、10人前後の人が同じ思いに駆られて来ていた。その時刻までには出てきた様子はない。ライトをつけて上がって来る車毎に、視線は向けられる。しかし、どれも違う。帰りの時刻もあり、11時までに来ない時は帰ることにして、50分、自分の車を取りに行く。相棒は労せずして出口にいるのだから、拾えばいい。出てくると同じように、皆さん騙された視線を向けている。あっちの陣地にまぎれて、相棒さん、帰る気配がなさそう。仕方なく30mほど先に駐車してまた待つ。11時半間際、「もう公営の駐車場でも時間に閉まるでしょう、いや特別頼めばそうでないかも・・」と話してると、出口下の方からスタッフが一人駆け上ってきて、レシーバーで(or携帯だったか)『10名ほどです』とか連絡してる。ただいるだけだったが駐車場の警備員も一人出てきた。そのすぐ後、一際明るい黄色の光を揺らし、光の具合で今までとは違う光彩を通路に満たしながら、ロールスロイスが見えてきた。車左側にあたる位置で待っていた目の前に、車道に出る減速のスピードになって一旦止まりかけ、そしてすぐに出て行った。YOSHIKIのいる車窓はフィルムで覆われ、中は見えなかったが、微笑んでいたように見えた。(11時30分)

すぐに東名へ出て帰った。2時間ほど途中で休憩。9時頃大阪着。行く前と行った結果の落差が最大限で、ワンダフルミラクルな出来事になった。それも好意を頂いたお人のお陰。レポもいつになく、微に入り細をうがったものにした。その方がもし読んでくれるのなら、行ったと同じ状況が再現するようにと思ったから。映画の中に、あと2箇所短いTearsが流れたように思う。必死になってメモしている自分には、確認のために意識を向け切れなかったので、定かではない。11日から公開なので是非ご自分の目と耳で見届けて頂きたい。ハンカチも忘れずに。

間違えた所もたくさん有ると思いますが、最後まで読んで頂いて有難うございますm(__)m