2004・8・13  TAKARAZUKA舞夢YOSHIKI作曲『世界の終わりの夜に』         papa

どんなステージになるのだろう。どんな楽曲が流れるのだろう。
花組み公演第2ステージ『TAKARAZUKA舞夢』は、5時07分に始まった。次々変り行くステージの区切りを見究めるのが難しい流れの中で、1000円で求めたパンフの解説では、「トロイア戦争が終結し、廃墟と化した神殿に一人立つゼウス」の場面が、第19場。そこにYOSHIKI作曲『世界の終わりの夜に』が流れる。 
 3時ちょうど開始を告げた第1ステージでは、次々繰り出される音楽、踊り、セット、照明など、一つの場が終る前に次が始まりかけていると言う、息つく暇の無い完全無駄排除のステージ。観客を一瞬たりとも遊ばせない見事なステージは、反ってどこからが第何幕か判然としない。これでは、YOSHIKIの楽曲を聞き逃してしまうのじゃないかと、4時32分第1ステージ終了後第2ステージまでの35分間の休憩を利用して、必死に第2ステージのYOSHIKI楽曲部分にいたる事前場面のポイントをさがした。第17場「トロイア戦争」。「かき鳴らされるギターに載せてのダンス」とある。第18場も同じく「トロイア戦争」。「ヘラが夜の女に変装、へクトルを誘惑」とある。そして第19場「ゼウスの涙」「廃墟と化した神殿」。頭の中には「かき鳴らされるギター」は、ライブでいう必死でかきむしって演奏してるギターとその音量が想像され、「廃墟の神殿」は去年あった『戦場のピアニスト』の廃墟が想像された。これでばっちり、聞き漏らす事はまずないと安心して、少ない時間を休憩に当てた。
 第1ステージでは、せりふの多い劇を演じるという感じだったが、第2ステージは、歌とダンスのショーというステージ。初めから、宝塚の大階段がセットされ、そこにギリシャ風の神殿や代理石の柱が配置され、大階段をうまくショーの舞台としていた。ギリシャの神々の営み、中でも最高神ゼウスの誕生そして誘惑・浮気すなわち男神・女神の人間界の営みにも似た愛憎の世界を物語りにしたものだろう。ゼウスが3人の女神(嫉妬の女神ヘラ・知恵の女神アテナ・愛の女神アフロディテ)の誰を選ぶか、困ったためにトロイアの王子に審判を任せたのが、悲劇の始まり。トロイアは褒美のギリシャ王女の美しさに酔って、愛の女神を選んだ所、選外の王女は怒り、トロイアとギリシャの戦争=トロイア戦争が始まる。「かき鳴らされるギター」が始まってるはずだが、綺麗なギター演奏で「かき鳴らす」ギターではない(宝塚の「かき鳴らす」とロック系ライブの「かき鳴らす」の歴然とした落差)。スマートで綺麗な音質のギターが鳴って、戸惑いのうちに、第18場「ヘラが夜の女に変装」の場面が分からないが、中央3つの扉から、大(背丈ほど)・中(たるぐらい)・小(りんごサイズ)のりんごが現れ、大りんごから一人の美女あらわれる。カミナリ、ギターの音色・・トロイヤの廃墟らしいセットがあらわれる。それは、『戦場のピアニスト』から想像した「廃墟」ではなく、木の階段がねじまがった様なものがステージ中央にセットされている、あまりにもかけ離れた美しい「廃墟」であった。場面は、遠い夜空に変り、静寂のステージにピアノの旋律が静かに鳴り出す。ピアノを聴いた瞬間、YOSHIKIの楽曲とわかるメロディ、音質が響いてゆく。やや押さえ気味に歌いだした春野寿美礼の歌声が、次第にボリュームを上げて行き、大劇場のホールいっぱいに響き渡るという朗々とした声量で、会場隅々まで圧倒。ギターやバイオリンも入った美しい曲で、春野の声量が『世界の終わりの夜に』の歌詞を、YOSHIKIの好むこぼれ落ちるピアノの旋律一粒ずつに真心込めて歌い上げると言う歌唱力であった。広い大きな夜空の空間に、スケール大きく歌い上げる様は見事であった。2人の踊り子が踊る舞台から、春野は前ステージへ。薄くスモークがステージ上に流れ出し、15人ぐらいの踊り手が、戻った春野とおどる。バックは青の遠い夜空。オーロラのようにライトの影が背景の中に揺れ動く。静かなピアノ、金筋のどん帳のとばりが下りて、春野はステージ下へ沈んで行った。6時50分、約5分間のYOSHIKI楽曲は、見事に宝塚に調和していた。
 どんなステージ、どんな楽曲の目的かは達成し、満足に思った。パンフには2ページに渡って、YOSHIKIのMessageとプロフィールが乗せられている。『記念すべき時に作曲のお話を頂き、嬉しく思っている』こと、『90年の歴史ある伝統を持つ宝塚は、華麗妖艶そして豪華絢爛なステージとして、日本を代表するエンタテイメントのひとつと思っている』こと、『本作ギリシャ神話に見る愛の形という壮大でスケール感溢れる作品世界を、音楽においても盛り上げられるよう表現できればと思っている』ことの3つが中心のメッセージ。また春野寿美礼の公演コメントの中に『YOSHIKIさん作曲の“世界は終わりの夜に”は、とても綺麗なメロディーで、YOSHIKIさん独特の雰囲気が溢れた素敵な曲ですから、歌わせて頂くのが今からとても楽しみです』の話が載せられている。2人の思いは、歌に共鳴して生きていたように思う。

間違えた所もたくさん有ると思いますが、最後まで読んで頂いて有難うございますm(__)m