10時54分、ピアノ演奏とToshIのボーカルが始まった。10曲目となる『seize the light』が、２人の音源以外の静寂の中を、進んでゆく。ToshI側ピアノでのYOSHIKIの演奏は、私の位置からは体左半分を真正面に見る形に見える。彼の左足は、長くピアノの下へ差し伸ばされ、踏ん張ると言う状態ではない。悪く言えば、投げ出したという左足の状態でのリラックスな演奏に見える。将に至近の演奏姿は、また別な発見を新たにしてくれる。演奏途中、何かリラックスとは言いがたいYOSHIKIの体の動きが生じ始める。観客には何が起こっているのか、前例のないことだけに不可思議な動きが理解できない。ピアノの右足元への指図と言うか、アゴでの表現と言うか、何かを顔の動き・首の動きでしきりに指示していると言う形容。ピアノ演奏は途切れることなく進んでいるし、ボーカルは２台のピアノの間ぐらいの手前側で続いている。ToshIも何かの異常に気が付いたのか、ボーカルのマイクを手放すことなく歌いながら、YOSHIKIの体右下ステージ床に置かれてい楽譜の入ったファイルへ手を伸ばし、あと１枚の楽譜をピアノ譜面台にのせた。観客は、異常なYOSHIKIの動作が、楽譜出し忘れという単純な問題だったと言うことを理解でき安心したのは良かったのだが、次に襲ってくる何とも言えないおかしさに自分の感情を抑える事が出来ず、相好を崩すという事態になった。至極の悦に酔ってる状態での究極の喜劇。アクシデントと言えばそうだし、ハプニングと言えばそうだが、これこそ今日一番のサプライズ！。YOSHIKIは自分の演奏曲の楽譜が何枚かを忘れ、確かに１枚は乗せた時に楽譜は載せたと早とちりしたのだろう。さっき“「（６〜７年前の曲）間違ったらどうしよう」”と不安を吐露していた心理を考えれば、曲の演奏のことで頭が一杯であったにちがいない。ピアノ演奏を続けながら、ボーカルに床の楽譜を拾わせると言う妙技、２人の演奏・ボーカルは、「わかんねえや」という状態で進んでいたが、２人の体の動きがいみじくも暴露した事態、後に語り継がれるX伝説の１つに加えられたことは間違いない。その歴史的な出来事をつぶさに目の当たりに出来たこと、忘れることはないだろう。５８’演奏終わる。
　安堵の色を残して、ほっとしてる２人と観客の一瞬の静寂の空白に、客「アルバムわ？」と波紋を投げかける。昨年の１２月までには発売し、出来ない時は切腹ものと堅い決意を語っていたYOSHIKIへの辛らつな一言。この成り行きに再び固唾（かたず）を呑む一瞬。どうYOSHIKIは答えるのか、ここに来た全員の耳が聞き耳を立てる。ToshI「俺の聞けないことを聞くな！」と間髪を挟まず切り返す。一同、発言者へのよく聞いてくれたとの感謝と、それをいとも簡単に不問に付すToshIの一言。アルバムの話は、すぐさま立ち消えとなり、YOSHIKI「この曲は、ToshIと再会するきっかけとなった曲、こうしてやってるけど、奇蹟だよねー」と次ぎの曲の紹介。ToshIとの再会の曲、何？何？何？・・と、もう客もYOSHIKIマジックに操られてゆく。そして11：06弾きだした曲は『Without You』。私の乏しい楽曲の知識では、これはhideへの追憶・別れ・決別の曲ではなかったか！。えーなんで、それがToshIとの再会の曲になるの？。hideがToshIとの再会を縁持ちしてくれた？。この曲を初めて聞いたのは、確かhideの７回忌のhideミューでの献花式会場に入った時。朝から並んだ空模様は、冷たい雨の吹っさらしの荒れた日だった。うみかぜ公園の自動販売機のホットドリンクは全て売り切れ。あの寒い中を長時間並んで入ったファンへのYOSHIKIからのこころ温まるプレゼントであり、遺影の中、芝生上こちらへ足を投げ出したhideからの心温まるプレゼントであった。その曲がToshIとの再会の曲とは、初めて聞く事実である。私の心理としては、もうこの曲は演奏されない曲の範疇に入ったと認識していた。最近の悲しい出来事に付随するあおりで、それも止むなしの心境でいた。それが、YOSHIKIの口から新たな事実を告げられ、XJAPAN再結成活動の原動力の２人の“再会”の記念すべき仲立ちの曲・再会の曲となれば、YOSHIKI氏はこの曲を忘れることはないだろうし、この奇蹟を作った曲の演奏が今後もToshIとの活動のなかで演奏される曲であると言う心証を得たことは、これまた嬉しいサプライズであった。再会の曲は、熱いファンへの新たな希望を描いて１１時１１分まで演奏された。「いい曲だねー」とToshI。「イントロのところが一番好きだなぁー」と述懐するToshI。そうか、ToshIのこころを動かしたのは、誰もが切なく涙溢れる感情になるこのイントロだったのだろう。YOSHIKIは、音楽の力で、自分の作った音楽の力で、ToshIを引き戻してくれたのだ！。

Y「Xって、（演奏時）みな冷静にやってるんだけど、僕は感情的になってくる。そして感動してしまうんだよねー。（ここで青い薔薇のプレゼント）青い薔薇はこの世にない花。この世に咲かない花で好きだった」と青い薔薇の意味を話す。すぐさまToshIが「青い血は？」と聞いた。Y「青い血は、・・青い血がながれてる」。ここで花束を届ける人が多くステージへ集まるが、結局スタッフに制止された。11：20『Say Anything』のピアノ演奏が始まった。イントロと曲のボーカル部分へ入ってしばらく、演奏を止め「この曲、ずっとやってないねー。次の日本のコンサートで」とYOSHIKI。T「まあ、YOSHIKIの話なので」と混ぜ返し、曲を中途でやめたまま、ToshIとの話に花が咲いてゆく。“未知との遭遇”の話は、中学１年の時、いたずらをして先生に丸坊主にされた。それまでYOSHIKIは、髪を切ったことがなく、頭の表面は青白く、顔は案外もっと小さく見えて、当時はやっていた映画の宇宙人に似てたので、そう呼ばれたらしい。また“時差ボケ”の話もあった。“ねぎ焼き”の話に“シャワー”の話。ネギヤキは、京都？大阪？とか聞いて、また食べたいみたいなことだったし、シャワーは、今日もシャワーで何かあった話し振り。さらに日産スタジアムではシャワーが出なかったらしい。シャワーがないといけない性質（たち）で、日産では立ってるだけで汗が出るのに、まだ体を動かしてやるから大変と言う意味のことを言って、要するに「日産で、どれだけ大変だったか、それを言いたかった」とシャワーの件は、落ち着いた。11：28『Endless Rain』が始まる。32’ミラーボールが回り出し、空間に光と星空の模様が動く。演奏が止むと、客の自発的な歌が続いてゆく。35’終わる。YOSHIKI立って、すぐ退場して行った。ToshI「皆さん、本当に今日有難うございます。皆さんに御迷惑をかけてしまいましたが、童心に戻ったようで、子供心に戻ったようで・・・今日を再スタートとして頑張って行きます。皆さんのこころ強い力に支えられ、YOSHIKIと歩んで行きたいと思います。有難うございます」と挨拶、手を振ってステージから去っていった。１１時３７分、本日のディナーショー終了。