REPORT  10

2005・4・1   YOSHIKI楽天ホーム開幕試合プレゼンター   papa

可愛い子には旅をさせろ、ひねたペアーには思いっきり遠出をさせろと芭蕉が言ったかどうかは知らないが、車での遠出に“みちのく”は初めてだった。大阪から仙台、東京以北の未知の部分が緊張感を作ってくる。31日は月末&年度の最終日で忙しかった。夜7時過ぎには家に帰りそれからの準備で必需品のみ持って、9時半大阪を出た。中央道高井戸には朝5時50分、外環川口JCT6時半、そこから仙台330キロ約4時間と予定が立った。東北道は走りよい高速道で100キロ先の宇都宮までは3車線、そこから2車線になるが、ゆるやかなカーブと高低差の少ない平坦道で視界が開け、左遠くに連なる山脈連山の頂や中腹にかけては神々しい真っ白な雪化粧、近く灰色の産毛に包まれた雑木林の近景とのコントラストは消えかかる最後の冬景色を残していた。
 試合開始3時間前(3時10分)から予約の駐車場が利用可、ホテルチェックインも3時から、となるとゆっくり時間をその辺に合わせて到着を図った。それでも急ぐ心は先を目指し、球場のある運動公園に1時半頃到着。駐車場入口に行ってみると「2時半しか開けられないんですよ」のお言葉。ホテルへ行っても手続きできないし、再度来るのも邪魔くさいしで、路駐で時間待ちをすることに。建物の日陰を選んで止ったそこは、赤レンガの建物が校舎風に建っていて天文ドームも屋上にある。学校かな?とはためく旗の字を読み取ると「仙台育英学園高等学校」とある。高校野球や駅伝で有名な「仙台育英」高校かも知れないと思った。
 2時半駐車場に行くと予約券を確認して直ぐに入れてくれた。まだ来る車も少なく一番奥に誘導される。50mぐらい歩くとセンタースコアボードの裏手に出る。寒いと聞いていたので完璧な防寒対策をまとって球場に出向いた。すでにたくさんの人がうごめいていて、芝生自由席を求める長い列や何処かの少年野球が写真撮影に興じているにぎやかな気勢の取材、楽天のユニフォームを着込んだ幼い兄弟も同じく取材陣の的になっていた。当方外野指定席E−8列76,77はレフト側になるので、センターボードを通り過ぎて直進してゆくと楽天のグッズや帽子に防寒対策を織り交ぜながら、子供連れカップル友達同士という個々のまとまりが行き交う。改修費用をかけた真新しい外野スタンドが梁の上に覆いかぶさって寒い影を落としている脇に、「レフト側外野指定席ご入場最後尾」のプラカードを持った黄色い楽天ロゴ入りウインドブレーカーのお姉さん、その前には20名ぐらいのファンを確保している。相棒は、球場全体の様子を写真に収めるため、さらに前進して消えていった。開場は4時10分、大きな楽天の翼マークのごみ箱、歩く舗装も楽天エンジカラー、真新しい改修跡に黄色いスタッフが華やかなお祭りムードを漂わせてくれる。外内野スタンド最上部には、広告板が防音壁のように新調設置され、塗装やゴミ箱ひとつも新しい新鮮さが伺える。戻ってきた相棒さん、向こうの方に「来賓者云々」のものがあるという。偵察は写真撮影に隠れた重要な使命か。案内を見失わないようくっついてゆくと、センター反対側になるホームベース裏手側には中央入口のような広場もった正面玄関があり、内野バックネット裏スタンドの構造物がその上にそびえている。1階にはお祝いの花束が気品良く並べられ、大勢の人のよそ見を誘っている。さらに前進すると一塁側内野スタンドの入口があり、そこから一塁側内野スタンド全体の梁をめぐらす構造物が関係者の入口設備を兼ねていて、車寄せや搬入車のスペースを作っている。向こうには「来賓者受付」のテーブルがあり、さらにその先にはVIP用の駐車スペースが銀色のフェンスの扉を隔てて設けられている。「来賓者・・」のプラカードをもった関係者もフェンス向こうに立っている。そこまで来ると球場一周となり、さっき駐車場から入ったセンター裏が直ぐ向こうになる。YOSHIKIが来るとしたらこの一帯、しかもVIPの駐車スペースで降り、歩いて一塁内野スタンド側に入ると予想でき、この辺が偵察成果の核心位置取りスポットとなるらしい。周りを見渡すと、顔見知りの女性2人を含む4人がおられ、「来るとしたらここらしいねえ」と同感の感想を交換した。時々、関係者らしき人がそこを出て何処に行けば良いのかフェンス前のガードマンに尋ねている。納得の方向は来賓者受付のテーブル方向だった。空には取材のへりが5機ほど舞い、場内やその辺の拡声器や警備笛が敏感に反応しかけている心理に響いてくる。3時半過ぎより、フェンス入口には女性が2人待ちだす。同じ目的の最終場所を選んだ人が増えたぐらいに思っていたが、3時50分フェンスが開いた向こうに黒の乗用車が入ってきて、後部左側よりサングラスの人が降り、直ぐにサングラスをはずすと三木谷社長であった。秘書の女性に代わった2人は直ぐに車に走りよった。社長は歩いてフェンスを過ぎたあたりで、一般入場者の我々に一瞥の微笑みをなげかけてくれた。そこにすかさず握手の手を差し出して近づく相棒に何の違和感も無く自然に握手の手を出して握手をする。気さくな人だなぁと思ったが、唖然として社長との遭遇に停止している我々を出し抜く挙に出れる機転は場慣れの成果か。4時5分、ライトスタンド外野席の入場が開始されたのか、向こうに見える列が動いている。4時15分、関係者2人がお菓子の箱を抱えてフェンスに近づいた所で落としてしまった。「あっ」と声に出したが、案外落ち着いて拾いなおし入っていった。袋入りゆえ心配ないが、誰かに当たる運命。フェンス前の球場側ではグッズが売られていたが、まだ繁盛するまで行ってない。4時30分、関係者が出てきて、ガードマンも配置になり、フェンスを越えて車が内野スタンドのスペースまで直進する雰囲気。2台の黒塗りの乗用車がスピード半殺しで入ってきた。緊張と人の波が駆け寄り動くが、すかして見える人影はYOSHIKIでは無く、関係者には大事でも人の動きは直ぐに散らばる。YOSHIKI待ちは20人前後という所か。5時10分、ワゴンタイプのタクシーが3台入ってくる。フェンスを越えて内野下まで直行。そんな車で来るはずがないと思いつつ、降り人を遠くのぞいていると、香西かおりが黒の着物姿で降り立った。その後さらに2台のワゴン車が入ってきて、人を降ろした後脇に寄せられて駐車された。その周りにはフェンスが仕切られ、そこに群がって観客が重なってくる。フェンスをのけてパトカーが出てきて正面入口あたりに止る。フェンスあたりは人も動かず。次第にあたりは関係者の打ち合わせや携帯、ひそひそ行動が目立ち、警備と記載したカードをぶら下げたスタッフがフェンスに対面しだす。しかもワゴン車を動かしてフェンスの前に目隠しのように移動しだす。フェンス前に陣取っていた人は、中をのぞくことも出来ず、すいていった。向こうのほうも同じ目隠しが立てられたのか、人はまばらに空いてしまう。時刻は5時半を過ぎ、セレモニーは5時40分から開始となっおり、ここで待っていても見られないし、早く場内に入ったほうが得策にも思え、小走りにちょうど反対側のレフト外野入口に急ぐ。観客席は人で詰まっており、席に行く見当もつかない。スタッフにたずねるとその前の階段を下りた前より8列目。相席の友人が手を振ってくれて席がわかった。付くと直ぐにモーニング娘の踊りが始まった。セカンドベースあたりで踊って歌っている。6時国歌斉唱。6時3分、スタンドから入るときの貰った新聞の楽天の赤い広告紙面を中に見せるようにアナウンス。6時5分、始球式のアナウンス(BSテレビ中継が全国放送で入ったはず)
。センターボードの下のスクリーンには「始球式」の大文字。抽選で選ばれた2人の小学生が三木谷社長と出てくる。そしてYOSHIKIの紹介で、始球式ボールを持ったYOSHIKIが出てきて2人にボールを渡した。

YOSHIKI登場からさかのぼる事数分、「それでは選手の皆さん、ポジションについてください。いよいよ試合開始です」のアナウンスがセレモニーに一息ついた場内にこだました。「まもなく試合開始に先立ちまして、始球式を行ってまいります。始球式、マウンドに向かいますのは、応募総数実に3百有余の中から選ばれたお二人です」。選手がグランドのポジションめがけて走り出し、センタースコアボードのスクリーンには、始球式の3文字が楽天カラー(クレムゾンレッド)の中に浮かび上がる。威勢良く楽天応援歌が大音量で流れ、楽天マスコットがホームベース上で観客に合図を投げかけている。選手が内野外野で球の回し合い、肩慣らしを行ってる。「さあそれでは試合に先立ちまして、始球式を行います。(始球式を行う)お二人を迎えましょう。野本大介君12歳、相原ひとみさん3歳(アナウンスでは確かにこう言った。小学3年と3歳の原稿間違えか)です。そしてエスコート役は我らが楽天イーグルスの三木谷社長です。3名を拍手で迎えましょう」。場内には拍手と歓声が舞い上がり、3塁ダッグアウト付近から、右に女の子左に男の子の手をつないだ三木谷社長ら3人がゆっくりとマウンドに進み出す。男の子は空いてる左手にはめたグローブを回しながら、女の子は帽子を振って声援に応えている。社長の濃紺のスーツに一際目立つシャツ開襟の白がマウンドを見据えた横顔の下にくっきり浮き出ている。後ろから審判が従っている。3塁白線へ近づく《〔ここからテレビ中継がON。場内には聞こえないが、自宅での再生では〕さすがに冷え込んで春まだ浅い東北仙台ですが、その寒さを吹き飛ばすようなファンの熱気を感じます。いよいよ新規参入、東北楽天ゴールデンイーグルス、地元での開幕戦です。仙台のフルキャストスタジアム宮城、3月の20日に開港なったばかりの真新しい球場です・・・〔とアナウンス。以下2重カッコはテレビの内容》3人を場内アナウンスが盛り立てる。さらに監督を呼び出すアナウンス。「西武ライオンズ伊藤監督、楽天イーグルス監督の田尾やすし監督です」。社長ら3人がマウンドに着き、会釈の素振りで振り返り、センタースクリーンにはその3人の表情が大写しにアップ。ざわめきの充満が10秒ほど続いた後、「さあ始球式のプレゼンターは・・(後は聞き取れず)登場です。YOSHIKI登場!」。控えの楽天選手がダッグアウト前に出て拍手する中、ホワイトシャツのYOSHIKIが左ポッケのポーズで登場。5〜6歩進んだところで右手を振り上げざま右振り返りで客に応え、さらに5〜6歩進んで一瞬顔を左向けると両手を振り上げ左振り返り。振り上げた手はポケ入れポーズの歩み姿にすぐ戻る。顔はマウンド方向正面を向いている。さらに3歩進んで軽く礼をして内野白線を越えて行く。白線越えのところからポケ入れの手が表に躍動しかけ、高まる興奮をはにかむように3歩目下向き加減(軽い礼かな)の一瞬の姿勢、5〜6進んで顔だけ左振り、直後右手にボールを握りなおしたように腕が少し上がって動き出し、4歩目には歩みを緩めて軽い会釈で男の子に右手のボールを渡した。さらにその先にいる女の子に左から右手に持ちかえたボールを会釈で渡し、後ろに控えてる三木谷社長に右手の握手を差し出す。YOSHIKIがボールを手渡すころから盛り立てのアナウンスが響いてゆく。三木谷社長との握手を終えるやホームベースに振り返り、男の子の後ろに控えて髪の毛を振り払う素振り。興奮と緊張をひと息抜いて、両手を後ろでくみ出す。アナウンスがその辺で終わり拍手が巻き上がると、社長が拍手を始めYOSHIKIも拍手に乗ってゆく。その拍手の手が急に上がって両髪をかきわける。始球式が将に開始される瞬間で、さらに少し後ろずさりで始球の空間を取った。両髪をかき分けた手は前に降ろされて組まれ、始球式の瞬間を見届けるように止まった。マウンド少し前からボールが始球され、アナウンスが「さあ、どうだ!」と行方を追うとボールはホームベースから右手にそれたようで打者の後ろに立っている選手が大きくバットを振った(2人投げたので男の子の方は初めから右側だったかも)。場内の緊張が通り過ぎると拍手が起こり、YOSHIKIもその安堵に直立の体が揺れ、すばやく組んでた両手が両髪をかき上げる。ボールが拾われ、マスコットが招く格好でマウンドへ走りよる中、湧きあがる拍手に加わり余韻が続くまでYOSHIKIは拍手を続けていた。アナウンスが始球式お膳立ての立役者をねぎらい「そしてYOSHIKIさん、三木谷オーナー、田尾伊藤両監督ありがとうございました。」と呼びかけると、マウンドのピッチャープレート前に一同は進む。YOSHIKIは田尾監督の差し出す手に握手をし、左より三木谷、伊藤、YOSHIKI、田尾、2人の子供にマスコットが整列した記念写真に及んだ。5〜6秒の静止のポーズにストロボが光って写真撮影が終るや軽く二三度礼をして前に進み出すと、すぐに監督や報道が散らかって広がる空間に三木谷社長とYOSHIKI、2人の子供とマスコットが残されて歩いてゆく。マスコットが跳ね上がってYOSHIKIの背中をぽんとたたき、同時に三木谷社長がYOSHIKIの背中に手を回して話しかけてるように見えた。労をねぎらっていたのかも。YOSHIKIは何度もうなずきながら2人はくっついて戻って行く。その前をマスコットに抱かれた2人の子供達が大役から解き放たれた開放感をみなぎらせて進んでゆく。内野白線を超えたところで、右手を髪に添えたかと思うと前方客席から「YOSHIKI!」の渾身の叫び声。瞬時の反応で右手を振り上げ向けた視線は、その声援の主と交叉したようだった。続けて2回目の「YOSHIKI!」その他のYOSHIKIコールが聞こえた。次第にYOSHIKIの歩みは出口にごった返す人波に妨げられてゆるまり、足元をのぞき後ろを振り返り球場退出口に近づくYOSHIKIの前に、赤い大きなウエーブがタイミングよくうねりとなって押し寄せた。レフトから見ている我々にはYOSHIKIの後光が客席に反射したかのように観客の赤があおられ、反射を変える様に移って行った。YOSHIKIはそのウエーブには気付いていない素振りで自分の進路を探しているようだった。立ち止まりまた進んで関係者の陰となって消えていった 
《テレビ中継は、上記アナウンサーの前置きの間、3塁側から出てきた三木谷社長と二人の子供がマウンドに歩む姿を引いたカメラ映像でとらえている。前置きが終った頃にはちょうどマウンドに到着、笑顔の社長が子供を見やりながら振り向く。一瞬、マスコットの映像が邪魔をして、すぐにマウンドのやや緊張気味の少年のアップ映像に切り替わる。「グラウンドではこれから始球式が行われます」。映像はニコニコ顔の女の子に変り、グローブを胸にもじもじ姿の笑顔がアップ。「地元の小学校6年生の野本大介君と小学2年生の相原ひとみさん、球団が募集しました作文とそして・・」といった所で、突然YOSHIKIがマウンドに進む姿に切り替わる。映像はどアップでYOSHIKIの腰から上が至近距離のカメラマンによって撮影されている。YOSHIKIの移動を前方から捉え、YOSHIKIが追い越してゆく。映像に入ってすぐ遠くかすかに甲高い声が入ると左を振り返り、両手を上げるシーン。ファンのYOSHIKIコールが届いたようだ。振り返りマウンドを向きなおした笑顔には、こぼれる歯が横写し〔ここから後姿〕に苦笑いの口元からのぞいた。その自分の苦笑いをまた照れ隠しするようなうつむき加減の姿勢がつながって、少し首を振り、内野白線手前寒さにぶるっとして右向くしぐさ。映像はカメラを離れてゆくYOSHIKIの全身後姿を追っている。テレビ画面のYOSHIKIの左上には照明のライトが大きな光源を放ち、遠くブルーの薄暮に横流しの墨絵を描いたような雲影。白シャツの下は薄汚れたジーンズで破れ提灯のような裂け目がおしり下の両側に見える。右手にはボールを包み、左ポッケの手は、ジーンズに入れておらずポケ辺りに添わしているようなポーズ。シャツの腰の庇が死角に隠して、手の置き所もボールの握り具合も判別できない。内野に入って少し下を向き前に進む姿が急に切り替わり、再びYOSHIKIの胸から上のどアップ映像。映像は、キュと口元を引き締める姿を捉え、直後左を振り返る姿、さらに顔の表情の小刻みな変化も捉え、その変化が笑顔に振れると目の前の男の子にボールを渡す寸前。「YOSHIKIさんも始球式に加わるようです」のアナウンサーの声。YOSHIKI登場の画面に切り替わってすぐ、アナウンサーはしゃべるのをここまで中断していたと気付いた。場内のざわめきとYOSHIKIの一挙手一頭足がリアルに流れ、初めて無言の映像の迫力が、臨場感で自分がYOSHIKIのそばを歩き、そして後姿を見送っているような錯覚に集中していたんだと気付かされた。YOSHIKIがボールを渡す姿勢に前かがみで少年にボールを渡して少年が軽くうつむき会釈、さらに表情がゆるんで死角の影から出た手で右手にボールを持ち替え、白い歯をこぼしながら暖かいまなざしで女の子にボールを手渡した。歩く歩幅をやや緩めた速度で少年と女の子にボールを渡して通過すると、さらに笑顔がはじけてそこに控えている三木谷社長としっかりと握手。二三度、YOSHIKIの髪が揺さぶられた。すぐに正面ホームベース方向に向き直し後ろ手に組み手をすると、場内アナウンスの声高と湧きあがる拍手に応えて、笑顔で場内に挨拶。三木谷社長も一生懸命拍手を送っている。皆の声援に小刻みに体が動き、流れは後ろ手が前に流れて組み直し、軽い会釈で両髪をかき分け、横に視線を向け、笑顔で後ろに下がるまで続いた。この間、拍手の音のみがテレビから流れた。「そしてこの始球式のボール、二人のボールを受けるのは両チームの監督です。
審判のプレーボールの合図の右手が上がり、投球ホームに入る2人をYOSHIKIは交互に見やった。「右に田尾監督、そして左に伊藤監督」のアナウンスの瞬間、2人の始球式のボールが両監督めがけて投げ出された。テレビの映像は、2人の子供を画面中央に置き、その二人の間にYOSHIKIが立っているセンターからの後ろ映像。ボールがキャッチャーまで届く間、YOSHIKIは微動だにせず、自分の渡したボールの行く先を追っていた。男の子のボールはワンバウンドで空振りを誘い、女の子のボールは、ずっと手前に落ちて転がりながらホームベースをめざしたが、届くか届かないかの微妙な所。片方のボールが空振りを取って監督のミットに納まる頃合をを見計らって、場内アナウンスが大きく盛り立て、瞬間YOSHIKIの両手が髪をかきあげ、拍手を打った。瞬時画面は、バックネット側からの映像に移り、こちら向きのYOSHIKIは、場内の歓声と同じくほころんだ笑みを満面にこぼしながら、記念の一瞬をたたえる拍手を送っている。ちょっと首をすっこめ、寒さか感動かの導線に触れたしぐさを残しながら、すぐに画面は左へ移ってYOSHIKIの映像はなくなった。始球式が終わり、勝利の終わりのようにマウンドへ集まる人の流れを映像は捉えながら、少年の抱える病気の話や田尾監督から記念のボールを受け取るシーン、さらに伊藤監督と三木谷社長の握手のシーンへ移った右端に、YOSHIKIの後姿があり、すぐに誰かと握手をした姿勢が映ったが、田尾監督との握手だったのだろう。次の瞬間、バックネット側の映像に切り替わり、自分の左右から差し出す伊藤・田尾監督の握手を見守るYOSHIKIのまん中の姿が入ったが、一瞬のうちにカメラは球場全体を映す画面に引いてしまい、プレート上での記念撮影の姿を捉えている。記念撮影が終ると、小さな人の群れは左の3塁側に移動を始め、かすかにマスコットが飛び跳ねて子供らを抱くようであったが、その後ろのYOSHIKIと三木谷社長の姿は群れの中に混同してしまってよくわからない。そして画面はダッグアウトの風景になって行き、YOSHIKIの映像はもう映らなかった。YOSHIKI登場から85秒のドラマであった。》

間違えた所もたくさん有ると思いますが、最後まで読んで頂いて有難うございますm(__)m