REPORT 5

  2008,03,28  X JAPAN攻撃再開2008 破壊の夜 東京ドーム  papa

いよいよXJAPAN攻撃再開の一日前となった前日、今夜9時半に大阪自宅を出発、明日の朝は東京ドームに早めに到着し、混むであろうグッズを先に購入して…という段取りだが、自分の用意は何もできてない。いつものライブのように、簡単な必要品を準備して、予定の時刻、普通に出発となった。10年振りのX再結成という特別な感慨、自分にとっては94年12月30日の青い夜以来の東京ドームXJAPAN生ライブという、夢のような出来事が明日実現するという、こみ上げる感情はまだ押し寄せていない。深夜1時ごろ、浜松あたりのサービスエリアで3時間の仮眠、4時東京へ向け再出発、7時東名用賀、首都高5号西神田で首都高下車、8時にドーム横の遊園地地下駐車場に到着。すぐに相棒と、東京ドームの状況確認に出向く。まばらな人影、まだまだ閑散としている状況、ケヤキの芽吹きの淡い黄緑や桜の開花の白も見えて、天気も何とか持ちそうな空模様。22番ゲート前でグッズ販売という情報なので、そちらに向かうと、「グッズ売り場入り口」のプラカードを掲げたスタッフ。22番ゲート正面に広がる階段広場には、階段の高みに設営されたテント内に青いスタッフコートの女性がグッズの準備をはじめている。階段を下がる辺りには、人の流れを裁く仕切り柵が設けられ、柵の中には腰を下ろしたグッズ販売を待つファン100名ぐらいが、すでに到着している。先頭の人は三重県からの人で、5時に来て、並ぶのが6時からで、1番で並んだとのこと)。皆さんの気合のすごさを感じた。その鉄柵の端のほうには「グッズ売り場最後尾」のプラカードを掲げたスタッフ。人の最後尾は柵の中ほどで、今のプラカードは柵の最後尾(入り口)というところ。ドームの周辺の広場は、まばらな通行人しか見当たらないのに、グッズ待ちの人が後ろに湧き出るようにつながってゆく。広場が広大すぎて閑散と見えるだけなのか、不思議な面持ちがした。40mほどのグッズ販売テントは、いくつかのブース単位で動いているようで、商品の箱出しが終わると、小集団にまとまって打ち合わせとか確認とか、ブースの販売責任者の指示で作業を先へ進めているようだった。階段下辺りには、警備の責任者らしいスーツ姿の人が、トランシーバみたいなのでたまに連絡を取ってるが、手持ち無沙汰もいいとこで、まだ柵をあふれる人は詰め掛けていない。見てるとどこからか「グッズ売り場最後尾」の看板を持ってきて、柵の下段中央にくくりつけていた。ドーム広場へ入ってくる友人2人連れや親子は、22番ゲート上部に掲げられている『XJAPAN攻撃再開2008I.V.〜破滅に向かって〜in東京ドーム』の看板を、携帯カメラに収めている。その動作に、今日のドームがどれだけ待ち遠しかったかが垣間見れる。8時55分、グッズ売り場のテント屋根の下へ、FFFEEEDDD・・・の番号札を、GIANTSの円状マークを背に描いたコート着用の人がF→@へ、向こうからこちら側へ張り出している。同一番号3枚ずつを張りだしている。同一の番号が一ブース、3口の売り場を有しているらしい。
 9時になって、ドーム前の人の流れが、増えたかというとそうでもない。心なしか通過する人が足早になったように思われるぐらいである。まばら、閑散としている。9時7分、水色のジャンパー風コートに黄腕章をつけた15人ほどの一団が、ドームの方向からこっちへ進んできて、柵の入り口辺りを通過したと思うとどこかに消えた。しばらくして、ドーム前の地下道から上がってくる通路口に、同じジャンパー姿の何人かが出てきたので、配置に付いたり、別の場所へという動きだったか。22番ゲート右側の小さなドーム全体配置図の前には、別の警備の一団が寄っている。9時を過ぎて警備の仕事が動き始めたという感じがする。グッズ売り場も、ブース毎の仕上がり具合から、6〜7名のブース一団がドーム方向へ歩いていったり、ブース内で真剣な説明・打ち合わせがなされてるなど、準備の進捗状況ごとに動いているらしい。ブース前にはさっきまでなかった柵が、売り場と客の仕切りのように設置されている。さらにブースを表示する番号札中、等間隔に、「グッズをお求めの皆様へ」という黄色い札が4箇所張り出されている。中身の注意書きはよく見えない。番号札の上には、販売グッズの商品紹介の看板が立てられているところがある。Bのテントの上には、4分割のメンバー写真のグッズ紹介、さらに2枚目の3分割(Xの文字が見え、冊子紹介)のグッズ紹介の看板があげられようとしている。E、FにはTシャツの紹介看板が上げらている。各ブースごとに、扱う商品の看板が、逐次上げられてゆくようだ。9時26分、グッズ売り場の女性スタッフ全員が、Dのテント前総勢40〜50名集合させられて、中心の男性スタッフから説明を受けている。3分程で終わると、各自それぞれのブースに戻ったり、テント裏へ連れ立って歩いて行ったりした。9時30分、警備員が拡声器で、グッズ販売開始が10時に早まったので、列整理をすると案内。腰下ろしの状態で待っていた購入希望者は、急に立ち上がり列を前に詰めだすと、列の半分ぐらいが短縮した形に縮まった。それから10時過ぎまでスタンディングで待っていたが、10時7分、先頭の方からグッズ販売に導き入れられた。徐々に動いて行った列は、止まることもなく、販売区画へ入ることができた。各ブースで番号札ごとに列を作って順番待ち。そこからがなかなか進まない。皆さん、何万単位で購入されているようだった。@〜DはXJAPANのツアーグッズ、EFがメンバー個人のグッズと拡声器で案内されている。買った人は、その場で荷物の整理などしないようにとか、立ち止まらずに出口へとか注意がなされているが、一応の注意喚起のようで、混みあってるという状況でもなく、それを連呼する任務のスタッフは、仕方なく仕事で言わせてもらってる風に大目に見過ごしているようだった。10時半過ぎには、グッズも買い終え、後は車に戻って一眠りとした。2時のドーム待ち合わせの時間まで、携帯圏外の地下駐車場で寝ていたので、連絡をくれたいろんな人に迷惑をかけてしまった。東京の民間駐車場の地下1階は圏外とは、ちょっと意外に感じるが、申し訳なかった。
絡がつかないとやきもきしている皆さんを尻目に、よく眠った。連絡もこないし、そろそろ行きますかと外に出たとたん、とんでもないメールラッシュ。東京ドームまでの道のりは、連絡パニックに近い。その先、東京ドームの広場は、さっきとは打って変わって、色とりどりのXライブに生き返るコスプレやグッズを身にまとった晴れやかな人の流れ。Xのライブはこうでなくちゃ と華やいだ会場の雰囲気にうれしくなってくる。いよいよ、その日のその瞬間が近づきつつあった。連絡を取った人と落ち合うと、用事を済ませ、いったんホテルにチェックイン。車もそこの安い駐車場に置いて、服も形だけ仕替えて出直し、あとはドームでライブ開場開演を待つことに。遊園地駐車場から目と鼻の先のホテルへ行くはずが、通りを一つ間違ってとんでもない大回り。東京ドームには3時40分ごろの到着となってしまった。集まった人と話をしたり、久しぶりの邂逅の積もる話などしているうちに、4時半開場の時間も過ぎて5時となり、それぞれのゲートへ分かれることになった。バルコニー1塁側30ゲートへ行こうとするのだが、22ゲート正面を横切れる状態ではない。22ゲート左階段から、22ゲート右階段側へ行くのに、グッズ売り場の辺りの柵の際を動きようなく進む列に身を任せて、流されるままに行かざるを得ない。ケヤキ街路の辺りへ出て、大回りをして、やっと30ゲートの入場階段についた。このゲートは入場者が少なく、ゆったりと階段を幅広く占有して待つことができた。階段中段で待つ間、周囲の状況を見たりすると、すぐ向こうの20ゲート入場者は、ぎゅうぎゅうの状態で待っている。30ゲート階段下も、だんだん人が詰まって、ドームの巨大なひさしの外側では、雨も落ちてるようで、傘の動きが見て取れる。雨も降ってきたのなら、早く開場してほしいと思ったが、会場内の準備ができてないとのことで、もうしばらく時間を要するようであった。5時20分「場内の照明の準備ができてないので、開場することができません。もうしばらくお待ちください」と30ゲートに並ぶ階段下の警備員が拡声器で案内。「30番ゲートのチケットを確かめてお並びください」とも言う。時間とともに、1階のゲート前の止まった集団に圧倒されて、人の流れが向こうへ追いやられ細く硬直化してゆくように見える。5時半になった。事態は変わらない。5時40分、辺りが少し暗くなってきたように感じる。階段を照らす照明が、明るさを増してるように思え、ビルのネオンサインも際立って目立つ。アクアランドの照明も、きれいに輝いてる。5時55分「館内、・・・何か利用できない状態になっています」と警備員が言ってるがよく聞き取れない。ドームの庇の外は雨が降っている。人の並ぶ外側は傘が開かれている。並ぶ人の顔にも、歓喜の表情から疲れと沈みがちな表情に移りつつある。6時、拡声器の案内が待たせているお詫びと「リハーサルが終了次第・・・」に変わった。場内の「照明」問題と「利用できない」状態が解消されて、リハーサルに移行したのは事態の進行としてありがたいが、今からリハーサルをして「いつ終わるのか」、「終わり次第」の時間の目安を与えてくれれば、不安が鎮められるのに・・。5分ほどして「リハーサルが終了次第・・」と繰り返す。期せずして、22ゲートの方角から、気合入れの掛け声が聞こえ出す。16分「リハーサルが終了次第・・・」の案内。外はすっかり暗くなってきたようだが、空は、薄暮の色なのか、日の落ちた暗さが、東京の照明でこれ以上暗くなれないのか、わからない色合い。久々に待つことも、Xのライブの本来のライブらしさも、再結成とともに戻ってきていいのかもしれない。待って当たり前のX。6時20分「リハーサルが終了次第、開場します。そのままお待ちください」。24分「開演時間が近づいてますが、ゆっくりご協力のほうお願いします」。26分「お待たせしました!」。大歓声と拍手が巻き起こり、階段に座り込んで待っていた自分達は、いっせいに立ち上がり、階段上に向きなおす。30分、入場が開始される。手前の机を通るときにカメラ等チェック。入場のゲートでチケットを手渡し、半券を切って戻してくれる。ホールの入り口では、それぞれパンフを前後に立つ人が1種づつ渡してくれる。17通路−3列−15番。2階席の前から3列目。客席が少ないので入ってくる人もまばら。34分すぐに席は見つかり着席。
着席した席は、バルコニー一塁側と表示してあるが、2階席ということだろう。94年の時はレフト側3階席で、左下にステージがあったが、本日は一塁側内野席の2階という位置になるらしい。ホームベース後ろのバックネットを左右両側へ引っ張る上部ワイヤーが右へ伸びて、その先端がすぐ上の天井で固定されている。あまりの空間の巨大さに、適正な尺度での遠近感や大小が測定できない。センターを中心に、レフト・ライト両側へ伸びる巨大なステージ、センターの位置に薄いベールで覆われた四角い中心ステージが見え、ライトの位置及びレフトの位置辺りに、巨大なXがデコレイトされて建っている。その巨大なXを挟むように、4本の鉄組みの塔が、巨大Xの上辺高まで立ち上がり、塔の上部を連結するように4本の上部を渡す鉄組が組まれ、前面ステージ全体を四角く囲っている。前面ステージ4本の塔の内、中二本がベールに包まれた四角い中心ステージの前部2本の骨組みを兼ね、四角の後方二本の鉄柱も同様の規格で組まれて四角い中心ベールを作っているように見える。その背後にも複雑な骨組みが組まれていて、照明機材やいろんな装置が取り付けられているらしい。前面ステージ4本の塔の外側2本には、中程度の高さに巨大なバラの花が、内側二本と後方二本の塔には、やや低い位置にバラの花が取り付けられている。前面塔の上部をつなぐ上辺骨組みの上(天井部)にも、唐草的なデコレイトの飾りやバラの花、そして中央にXの文字が立っている。中心ベールの中は、かすかに透けて見える。2本の巨大なモニュメントが斜交いに組まれているのが見えるが、Xという文字を造形してあるのか、この位置からでは確認できない。ステージ両側に立つ巨大なデコレイトの中心クロス辺りに、四角い薄い長方形が見えている。スクリーンというには、後ろのXの文字が透けて見えるので、ガラス製のスクリーンらしい。いったいこの巨大なステージやXの文字をどう測定して実感できるのか。どのくらいの大きさなのか、そもそもホール自体の大きさがつかめないので、その中の構造物の大きさも測定できないという迷路に陥ってしまった。そこでステージ上を動く人の大きさから大体の寸法を出して見ると、ステージの両翼幅80〜100m高さ5m、巨大デコレイトXの高さ20m幅10m、バラの花びら3m、巨大Xクロス付近のスクリーン3×5mとみた。6時43分Xクロスのスクリーンが点燈、「春がきた」というナレーションで始まるコマーシャルが始まった。「春がきた」でドキッ!としたが、単なるコマーシャルが始まっただけだった。2〜3分のコマーシャル(数社分)が終わるとXの文字がスクリーン一杯に映し出され、赤い電飾に輝いたXの文字は、巨大な白いXの心臓のように輝き続けてゆくのであった。この電飾の大きさは、天井部のXと同じ大きさに見えた。巨大なステージからアリーナ席に向かって、3本の長い通路(花道)が伸びている。ステージ中央部から1本、ステージ両端から各1本ずつの計3本。さらのアリーナ席のど真ん中に、ステージに平行に通路が切られている(センター通路)。これはお客さんの通行路であって平面、ステージからの3本の花道は高さ3mぐらいのショーやパーファーマンスの立体通路である。花道とセンター通路で仕切られる区画が、アリーナ席のAから始まるシートとなっているようで、見晴らしよく階下に広がるアリーナ席は、センター通路のステージ側と後方側で分かれ、ステージ側は中央花道の両側と両サイドの花道で区切られる4箇所、後方側は両サイド花道がセンター通路を越えて伸びてる中央部と両端側3角形の3箇所のようである。中央花道はセンター通路までしか伸びてないが、両サイド花道は、それを通り過ぎ、その先には、音響・映像機材のブースが設けられたスペースにつながっているようである。その音響ブースのスペースから、大きな塔が立ち上がっていて、2階席の自分の目線よりさらに上空へ立ちあがっている。目線の辺りの水平高にはテレビカメラ用のデッキ上下3箇所の真中デッキがあり、上部のデッキはさらに上、その数m上までの高い塔が、両側花道先に2本、さらにステージ側アリーナ両端の3角スペースに2本、計4本が高くそびえている。スタンドからの距離20mぐらいを、アリーナの後方シートを回り込むように設置してあって、テレビデッキ3箇所の下には照明用ライトが何十個と取り付け、上方からは大きなスピーカーが吊り下げられている。アリーナ側の2本の塔にはテレビデッキはなく、巨大スピーカーと照明用ライトが取り付けられている。巨大スピーカーはステージ前部の塔にも吊り下げられてある。アリーナ上空には、何やらワイヤーが、目線よりやや下に張られているようである。ステージを正面範囲に見るスタンドの客席は、1階から3階までレフト・ライトホームランポールの位置まで観客席になっていて、ステージ斜め後方の両サイド一部(外野席の一部)もスタンド観客席になっている。センターボードやセンタービジョン、外野スタンド客席の残りの外野席は濃緑シートで覆われて、ボードや設備やシートの色はない。スタンド客席にも、人の入らない部分があったが、それはアリーナ塔の死角になる位置らしかった。ホール内の明かりは、ドーム屋根の照明が担っているが、照明の半分ぐらいしか光っていないようで、野球時の光度ほど今は必要ではなく、足元を安全に照らす光量にしてあるようだ。
 静かな低音のクラッシックが流れる場内、6:46現在、アリーナ1割、スタンド1〜2割ぐらいの入りである。7:00、2回目の場内アナウンスがあり、開演の遅れのお詫び、注意事項が放送されえる。アリーナは2割、スタンドは3〜4割の入り。7:15アリーナ・スタンド5割ぐらいの入り。アリーナ上空空間にはスモークが立ち込め始めたようである。7:20女性アナウンスが、場内に繰り返される。開演遅れのお詫び、役員指示に従うこと、喫煙は所定場所、録画・録音・カメラ携帯の禁止、違反の場合は公演中止・停止など。クロススクリーンに、再び「春が来た」で始まるコマーシャル。またドキッとするのである。一連のコマーシャルが終わると、赤いXの文字がスクリーンに点灯、そして静かなクラッシックが場内に流れ出す。目を凝らして、設営の細部やお客さんの動きを見ていると、もう疲れて来た感じ。すごいイベントだなと思う。ありえない夢が、今、現実に始まっている。そして、10年前のラストライブ以来の、このドームの夢再びでは、経験者も未経験者も、再びXJAPANの攻撃再開第2幕が切って落とされ、且つ今後もこの攻撃が続けられると信じたい。場内には、全体にスモークが満たされ、朝もやの目覚めをイメージできる。7:30、7〜8割のアリーナ、スタンド。人の着席部分とそうでない部分が、シートの青色の浮き出しで鮮明に区別されるようになって、内野からレフト側への1・2階スタンドには、10列に1列の割でシートの縦の青い幅が見える(塔の死角の影響かと推測)。この入場ペースだと、8時開演になるのかもしれない。場内に流れているクラッシックは、やや寂しい曲調。7:40また「春が来た」のコマーシャルが始まる。家電の宣伝。7:41再び女性アナウンス。7:45人の流れ動きが、目立って少なくなってきた。8〜9割の入りに見える。アリーナの各ブロック(ステージ側には4ブロック、後方には中央の大ブロックと両側三角の3ブロック)の白い鉄柵の中に着席した人の粒は、各ブロックのさやに果実が実った感じに見え、壮観。上から眺める壮観さとアリーナで感じる平面の人肩の列には、感じ方に違いはあろうがすごい光景だと思う。7:50場内の騒音がなくなり、拡声器もなく、アナウンスもなく、静かなクラッシックが流れるだけの一瞬もあり、人の動きもまばらになる。7:55「まもなく開演予定時刻となっております」と遠くで拡声器。8:00場内の動きが、ほとんど止まって、ピアノの旋律が流れている。どんな開演になるのか、その瞬間に期待が膨らむ。両側花道先の音響ブースには、スタッフが張り付いているようである。しかし、塔のカメラデッキには、各3箇所6人のカメラマンは、配置についてない。開演となればここにカメラマンが付くはずであり、まだ少し開演までかかりそうである。8:05ステージでギターのチューニングの音がしだす。8:07再び女性アナウンスで注意事項、もう聞き飽きたと思った最後に「開演まで、今しばらくお待ちください」。解散して10年経って、これだけの人が集まるバンド、5万人の心を捉えたものは何なのだろう。客席は、色とりどりの花が咲いている平原や丘に見える。8:19ドラムの試し叩きの音が少し聞こえる。アリーナの鉄柵には、規則正しく係員が整列して、アリーナ内を見張るように内向きに立っている。センター通路を行き交う人は、まばらだが、縦の通路を行き交う人は途絶えたという感じ。機は熟し、その瞬間の期待に、気持ちも膨張。スタンドの客席通路の上がりも下りもほとんどなくなっている。ピアノの旋律が心に響く。塔のカメラは自動操作かな。カメラマンが上らなくてもいいのかも とふと思う。8:30塔にヘルメットを被ったカメラマンが登ってくる。塔の中の狭い階段を、背をかがめ、体をすり抜ける様に配置につく。電力会社の社員のようにも見える。カメラマン席3段の中段が、同じ目線の高さ。最上段はさらに高く、足場の見通せる鉄塔を垂直に上ってくるのは、相当な強心臓でなくてはできない。8:33、6人のカメラマンが、カメラケースを腰掛に、ヘルメットを脱ぎヘッドホーンマイクを取り付け、書類に目を通したり、各自の点検をしている。アリーナ席から、熟れた実がこぼれるように人がセンター通路に落ちて、走ってゆく。間近の開演前の生理状態を整えるためか。ドームには、スモークが視界不良好に充満。ドーム天井の水銀灯の光線が、わずかに放射状の光線を作り出している。8:43アリーナから自然発生的に拍手が湧き上がる。ステージには異変はなく、ホールの音楽にも異変はない。1分程して拍手は次第に静まりだすも、そろそろのお出ましの催告だったか。すると又一際大きな歓声と拍手が湧き上がる。拍手は規則的な手拍子に形づくられるように見えたが立ち消えた。8:45再びアリーナで大歓声。そして立ち上がっている。ステージ右手から、特殊なスタッフの一団が出てきた。アリーナ前の方で歓声、すぐ消える。また歓声、ステージ近くでは拍手、それがホール全体の拍手となって鳴り響く。アリーナ前方で大崩落の歓声が巻き起こり、スタンドへ津波込む時、8:47ホールのライトが消滅暗転。

その瞬間が来た。待ちに待った瞬間が切って落とされた。ついに始まった。XJAPANの再結成なんて、夢のまた夢だったのに、その夢が現実に始まり出した。ホールのライトが落とされ、怒涛の歓声が突きあがると、感極まって、目頭がもう堰き切れようとする。俺の手には、ペンライトは握られてないが、この瞬間を、原始的な方法で切り取ろうとペンに小ノート、場違いなものを握ってる俺の心も、満天の夜空に輝く無数の星ぼしの投影が如く、満場の景色を作る美しいライトと同じ共感で揺れている。ペンライトを握り締めている手にも、こぶしを突き上げている腕にも、叫び上げてる歓声にも、感涙に声にならない震えにも、思わず抱き合ってしまった抱擁体にも、この瞬間を迎える形は違っても、待ちに待った瞬間、叶うはずない夢が叶う瞬間、その瞬間にいま等しく立ち会っている。歓声を追いかけるように、ピアノの旋律が暗い場内に届いてくる。再び歓声が波立ち渦まく。その旋律が、誰の手によってどこから発せられてるか、そう、最後の終わりを打った曲名に注意が向きだすと、歓声の波は引いて行く。『Last
Song』。攻撃再開の戦端の火蓋を何で切るか、誰の心にも立ち上った問題の答えを、彼はこの瞬間にふさわしい曲及び音として選んだのだ。暗く終わって退場していった曲を、暗闇の中から始まって登場する曲に選んだのだ。途切れた長い時間が、今繋がったのだ。1曲のプレイに、10年を費やして、長い沈黙のステージ、やっと登場してまた演奏を始めてくれたのだ。ラストソングを、スタートソングとして、表現を変えれば続きのソングとして選んだ彼の思いは、どこにあるのだろう。彼の心の内を想像すれば、あの日から演奏も、熱い思いも、ファンへの思いも、hideへの思いも、何一つあの日と変わりない、昨日からのライブを今日続けているメッセージなのか。ピアノの旋律に弦楽器の音が添いだすと、雰囲気が変わるような気配を漂わせて、旋律に力みなぎり始める。そして、もう続きのライブに取り込まれた観客は、聞き耳を立てるように、集中してゆく。暗いステージ、]の巨大モニュメントが照明に照らす出され、しだいにラストソングのボリュームが上がり、おびただしい光の渦が揺れ動いてゆく。ドーム全体を一望できる視界からは、すばらしいパノラマをみるようで圧巻の景色。何かが空中を横切ってゆく(空中カメラが移動)。目頭が熱くなる。感動の旋律、感動のオープニング。照明が天井に反映して模様を描いている。ラストソングの展開部が一際大きく流れると、ペンライトのゆるやかな波がドーム全体を揺さぶるように光りなびいて揺れる。伴奏がちょっと間延びしたと思った瞬間、「終わらない雨」と言うフレーズが、まさに帰ってきた彼によって、XJAPANのライブによみがえった確かな声で、発せられた。ベールの中心ステージ、繭の中に新しい生命が宿った如くにライトがシルエット状にともると、形を作った懐かしい彼の声の動作や影が大きく揺れ動き、さらにもう一つの音の影がその特徴ある揺動を透かして見せている。ベールに映る一つのシルエットの主人公とその中の壇上に動くピアノの主人公、その二つが同じまゆの中にうごめいて、続きのソングを始めている。2つがそこに存在することの夢、さらにはまゆのような薄い殻をまとった同一体の中に存在することの夢、XJAPANは切っても切れない声と音のつながりをここに取り戻した。声と音の夢のコラボが場内に突き刺さると、悲鳴とも嗚咽とも取れる待ち望んだ立会人たちの感動の叫びが、このコラボに加わった。ああ、待っていた、まさにこの瞬間。「終わらない雨  抱きしめた 夜が朝を向かえる 心はまだ濡れたまま」のフレーズが崇高な声で、かみしめ、歌いつながれてゆく。耳に響くこの感触、この音質、この音響、究極の癒しであり、無限の安堵であり、至福の時間。“夜が朝を向かえる”の歌声が、ひときわ心に突き刺さる。声と音の主人公にも客席のみんなにも、夜が終わってほしい、朝がやってきてほしいの願いは、共通した願いだったろう。今、これほど似合う歌詞が状況的に続きのソング中にぴったり存在していたとは・・・。何もかもありえない偶然の重なりが、この瞬間を作っているのではないか。なぜ10年間、ステージを降りていたバンドが、現役最高到達点の東京ドーム3DAYSを、復活最初から可能にするのだ。しかも瞬殺チケット裁きで。なぜ終わりの曲が始まりの曲にこんなにふさわしいのだ。不思議なバンドだし不思議なファン。君には参ったよ。暴れさせて、美しくバラードで心を持ってゆくんだから。俺はそんな髪型する奴に、ろくな奴、いねえと思ってたんだ。そんな髪型でテレビから、心に響くSay
Anythingを歌いやがって、なんだこいつら、俺の常識とは違うだろう!!。そして、ドームのみんなも、自己の常識破られたんだろう。勇気付けてくれる。有頂天にさせてくれる。癒してくれるし和ませても。あまりの衝撃に、一目ぼれ、バンドに恋しちゃった。そして、ストーカーになってしまったんかなあ、追っかけまわすって・・・。洗われる思いのするよみがえった歌声が、一つの区切りを迎えると、ピアノは急にリズムを速め、やや乱雑に荒々しく一区切りを演奏すると、ボーカルの次の出だしを聞き、また曲調を戻して旋律を乗せてゆく。「傷つくだけ  傷ついて  解ったはずの答えを  どうしてまだ  問いかけてる」とのフレーズを歌って、最後部分を長く伸ばす間にピアノは消え、ボーカルが伸ばし切ると、シルエットが消え、また闇がやって来た。会場にざわめきとペンライトが振られる。
攻撃再開のはなむけに、長い沈黙のステージの始まりは、続きのLast Song、そして帰って来た友との登場。ファンにまず、切れた断面に攻撃再開の断面を接合するこのツーショットのシーンをまず見せたかった。断面の接合を意識させるに十分な時間が経てば、後はもう全力で走りだす。感傷に慕ってる時間などXJAPANには無い。Last Songは途中の歌詞で演奏を終え、次への準備のための闇を迎えた。その闇がステージで発光するランダムな雷光に切り裂かれ、中心ステージでは、ベール内モニュメントが発色して巨大な造形を浮かび上がらせる。斜交いに組まれた造形物は、自分の視点からは形が整わず、何を表示しているのか不明だが(正面からの映像では、巨大な背倒しXに見える)、赤く照明されてステージセットの中心テーマを言わんとしているはずだ。女性声の英語のナレーションが同時に始まる。ステージ後方、全面の壁面が巨大なスクリーンとなってステージ背景を演出する模様を浮き上がらせる。唐草模様のイメージか、天井にはオーロラをイメージする青い光帯が行き交い、曲線模様が壁面スクリーンをはみ出して天井へ伝い上がる。音響は、音階無く一定の音を鳴らし続けている。詩境のナレーションが終わるとXJAPANと大きく呼んで、続けてJAPANの連呼が始まりだす。その声が強度を高めるに度合いに、ステージの照明が青に変色、背景スクリーン全面が青を放ち、ステージ袖やステージを見下ろす青い照明ライトの光線が、水平から上昇へ、JAPANの連呼を吸い込んでいっせいに起き上がり、光線の機首を真上に伸び上がらせる。一際青い光度が瞬きを強め、30回目のJAPAN連呼の瞬間に、ステージ後方スクリーンが赤く燃えた球体を出現させた。超新星爆発だ。まさに巨星の最後が赤く膨張して、この爆発をして最後の一瞬を迎える。そしてまた、宇宙に散らばった構成物がガスの中から、新しい星を作り出す。XJAPANの構成物も、超新星爆発になぞらえて、長い沈黙のステージを爆発の膨張期間にあてがえば、この爆発を最後に木っ端微塵に宇宙空間に散らばって、そしてまた想像もつかない短時間に構成物の結合が始まりだす。こんな想像を抱かせる燃えた赤い球体は、一瞬に消えた。目に残る残影の中に、球体出現と同時に点火したステージ天井梁に置かれたXの電飾が、消え遅れて残る。消えると同時に『RUSTY NAIL』のイントロが始まりだし、無数の稲妻が飛び交い四方八方に光線が飛び散って行く。ドラムが超新星爆発の導火線になって口火を切ると、大爆発の発光がステージを包み、ステージ袖から火炎の火柱が天を突いて立ち上った。「行くぞー!」と甲高く、Toshiの気合の一声。呼応する会場のトキの声。Toshiのあまりの気合に、声が裏返してしまった。天井梁のXが光り輝き、ステージ両側の巨大なXが発光して輝く。YOSHIKIの裸体が躍動して、交差の腕を通してステックをはじき、天を仰ぎ見る。hideの赤いエナメル衣装が、目を射る。Toshiのサングラスを通して見える決意の表情。ステージ上空には、6〜7コマのスクリーンがあって、PATA、heathを含むメンバー各人の個別の表情を写し出している。巨大なXのクロス部のスクリーンには、上空スクリーンのコマ数の画面から、一個を大写しで引き抜いて映し出している。ステージのメンバーは小さくて、視線が追い求めることは難しいが、クロススクリーンが一番の頼れる映像で、視線の焦点はそこ合わさってゆく。ステージはおびただしい光に輝き、YOSHIKIのドラムに反射して、ドラム自体が発光状態に見える。会場は歓喜の表情をみなぎらせ、腕を振り出す動作が、アリーナ・スタンド一様な模様を息づかせている。テンポにあわせて、引くと出すとの交互の表面が表裏を繰り返す。Toshiの力唱、メンバーの晴れやかな表情、hideのにこやかな笑み、5人のメンバーがついに揃ってここに存在する。XJAPANのライブが、ここに展開されている。サングラスのToshiは、何か大人になった様な余裕の表情。歌詞の一区切りを歌い終わると、「オレー!」と活を入れた。歌詞部が終わって最後の伴奏になってゆくと、ものすごい光と光線が瞬き、ステージ後方スクリーンも光り輝き、ストロボ光線が乱光する。曲が終わって、はぐれたたきの如く、シンバルへステックをたたきつけると、Toshiがすかさず「会いたかったぜー」、場内はオーと言う身振りで応えた。「会いたかったぞー、東京ドーム!」と叫ぶと歓声が反応する。YOSHIKIが伸び上がって、うれしそうな表情。「元気だったかー!」と叫ぶ、相づちにギター音が入り、またオーと答える観衆。。ステージ上を移動しながら、この感触を味わっている表情のToshiが「だいぶ待たせて、申しわけ無かったぜよ。YOSHIKIがちょっと、遅れたぜよー」というと、YOSHIKI、ちがうちがうの首をふるが、にこやかに笑ってる。ToshiがYOSHIKIに近寄っていって、マイクを手渡し、「何か、言えよ」と言う笑顔を向けると、YOSHIKI「では」と言って、笑いこらえられずの表情で「暴れんぼ将軍でいけよ、こら」と軽くテレ草笑ったが、Toshiに確かめ、気合を入れて「暴れん坊将軍で、いけよ、こらー」と叫んだ。観衆は喜び勇んで呼応した。Toshiが「今のを訳すと、今日は、暴れん坊将軍で行けよ」。そして消灯となった。
消灯の一瞬の暗闇が、ありありと今の光景を思い出させる夢の時間となった。YOSHIKIとToshiの、こんな仲のいい掛け合い、雰囲気、コンタクト、何よりのプレゼンだった。渋谷タワレコのトークショーの映像が、ふと思い出されて、PATAに言ったら「面白い、面白い」とPATA口調をまね、Toshiに言ったら「やりましょう」、heathに言ったら「いいですね」なんて、一人でプロモのエピソードを語る、なんとも楽しそうなYOSHIKIの一人はしゃぎと「お前ら、やる気、あんのかよ」と毒づくにこにこ笑顔。この時、信頼となじみがすでに復活していた。父母のけんかをはらはらしながら、仲直り状況を盗み見てる子供心のファンの心配を、いっぺんに打ち消したあの喜び、再びMC内に漂うほのぼの笑顔の二人の表情の中に見つけて、大きな信頼に裏打ちされた間違いない復活を実感した。5人揃ったXJAPAN、記念すべき復活第1曲目は、心配性のファンの気持ちを心底開放し、心置きなくまどろみの海に投げ出す。もはやライブに酔い、夢見心地に、思いのたけを楽しみたい。心配と言う垣根が取り払われて、垣根の向こう(ステージ)とこっちは、抱き合って一つのオルガスム。のぞを潤すToshi。そこに『WEEK END』の導入繰り返しのプロローグが響いた。大きな夜光虫の体を走る自発電源が波打つように、ステージモニュメントからビッグXへ、体内を抜ける電源が波状となって横切り抜けてゆく。メンバー全員の思いをリーダーYOSHIKIを通してお前ら(観衆)に届けとばかりに、ステージモニュメントのクロスからは、遠大なはるか無限のXを形容する、その無限のクロスを背にするYOSHIKIの思いを電源にうつしかえてるよう光源が光って波状となってゆく。鐘をしばくドラムの打音が連発する、口火のお膳立て音が入る、心をノックする歯切れよいToshiの口上が唇をたたく。激しく迫って来い、打ちのめして俺を通過して行ってくれ。口上のリズムを取ってカット伴奏が相づちを挟むと、銃口を発射する言葉が飛び出す。銃音がこだまして押し寄せるように伴奏の展開が始まる。観衆はもう総立ちとなって縦揺れを走っている。「オレー」と一発叫んで、Toshiが駆け出してゆく。
怖いもの知らずのインデーーズ時代、髪をおっ立てステージを我が物顔で席巻したToshiの駆け出し姿がダブる。復活は過去遠く、さかのぼれるだけ遡って、その動作、表情、MC、雰囲気、何もかもの始まりから復活を遂げてくれたら、申し分ないが、その片鱗、そのかじりの部分、何かをイメージできる一端でもうれしいものだ。ステージ左後ろの方へ、立って歌ってる。左端のステージにスポットライトを浴び、そして左アリーナ通路へ飛び出し出てゆく。PATAの静止の弾き姿。hideのギターさばき。Toshiがステージに戻り、アリーナ眺め渡し歌う姿。ホール全体は、右手でエールの波が揺れている。自席からは、クロススクリーンに視線の焦点が合うも、ステージ上空のスクリーンがどこにあるのか、暗いホールのはるか向こうのことは解らない。ステージ最後尾の壁面スクリーンのその上に、横並びにあるのだろう(と想像していた)。すさまじい勢いで、ホールが躍動している。Toshiの気合の一声が飛んで「ウィーケン・ウィーケン・・」の繰り出しには、背面スクリーンが火花を巻き上げ、同時にビッグXが喜びの点滅に縁取られる瞬きを走らせる。「生」の体感、これが待っていたライブの一瞬一瞬の刹那だと。間奏の主役がスクリーンに映し出される。hideは、誰の目に焼きついた永遠のhideコスチュームにイエローハート。PATAは、Ra:INの弾き姿と同じ。Ra:INのライブでは、お客が3人であろうと、何百人であろうと、お客の多寡は問わず、全力で勤めて行くと言う精神を語っていたが、まさに日本のライブ最高ホールのしかも満席の客の前でも、弾き姿は変わらない。heathは、lynxのライブより静かな弾き姿。YOSHIKIは、汗にじませ、白い肌にライトブラウンなヘアー色をかき混ぜるように空間を回遊。またひとしきり動の部分が歌い継がれて、静の部分が訪れる。ステージや音響は、静の部分へ衣替えをするように、モニュメントXや照明が固まり、音が定音状態に引っ張られて伸ばされる。ステージライトが落電、異次元の空間にワークした青の世界が浮き上がり、瞬きの命が動き始めるように、照明が息づくと、ピアノの音色が鍵盤の白黒コントラストのように、燃えた熱気の空間に清涼な音を注ぎ始める。「鏡を見つめながら・・・」とかがみ姿で搾り出す声を、清涼なピアノに載せると、ややかすれ声の効いた苦味を味わわせるように、詩的な世界が広がる。ロックにピアノ、世界でYOSHIKIだけにしか表現できないこの稀有な世界、しかもそれが群を抜いて、心に響き渡ってくる。そうだった、YOSHIKIのシンフォニーを聴きに行ったんだった。東京へロックのライブにと言ったら遊びに取られてしまうが、東京へクラッシックコンサートで と言えば、俺への見方も相当変化するだろう。その両局面(曲面?)を奏でるクリスタルピアノは、KAWAI。YOSHIKIを体現するこの楽器を前に、竹馬の友の声によみがえる世界、YOSHIK自身が最も心酔いしれてる放心表情が、この世界のコントラストの真髄を物語る。上半身を浮遊させながら、しばしのまどろみを終えて、勢いよく元の世界へ走り出る助走を駆け出すように、鍵盤を走り出す指の駆動。
鍵盤を疾走する指の力を借りてジャンプしたYOSHIKIはドラムへ移動。その時間差を越えるわずかな静止には、ビッグXが青白く夜光を発して、巨大なステージ艦をつなぎとめる碇のように闇の海底に突き刺さる。大観衆の声援が、ひときわ闇のしじまに巻き上がる。動の世界へ戻ったノックを叩くように、ドラムのシンバルが合図すると、WEEKENDの力強い音楽が展開され、右手エールの観客の振り出すペンライトが、会場全統一的に振り出されてゆく。巨大Xが黄色の点滅に縁取られ、ステージの照明は、色とりどり同じ瞬きのリズムで揺れている。Toshiがheathに近寄り、タワレコ会見の来てくれるとうれしいを、マイクを持ち替え、右手を差し伸べ望み叶えると、襟巻きショールが小刻みにリズムの振動を反映、コーラスのheathの顔が、右に左にうれしさを踊るようにターン。YOSHIKIの笑顔が、ステックを伸ばす腕の上で踊ってる。曲の最後「ウィーケン、ウィーケン・・」が始まると、この歓喜にhideのコーラスが映るも、終わりの断面を映すスクリーンの表情はやや落ち込んで、hideをこの場にいたせたかった思いは、現実の夢にもう一枠の夢を重ねてしまう。もしいたら、どんなコスチュームで登場するんだろ。髪はやっぱめでたい赤か、コスにはダイオード電飾で七変変化か。Toshiの気合の一声が再び突き上げられると、ウィーケン大合唱の間隙にToshiのアドリブ的ウィーケンがタイミングよく挿まれ、会場に突き出すマイクが、更に観衆をヒートアップ。そして、最後、動乱を鎮めるように、祈りをささげる二つ折れの腰に左手を添えて、「ウィーーーケンーーーン」とお辞儀をするのであった。会場は夜のしじま、青い碇が浮かび上がる。9:10終了。
 暗闇の中、ステージ前をものすごい光が動き、ゆったりした音調が流れ出してくる。背面の大スクリーンに夕暮れ空の雲の模様が映し出され、大きな足音が近づいてくる。クロススクリーンに突如、hideが登場。ラストライブの映像で駆けつけたのであった。観衆はいっせいに「hide-!」と呼びかける。イエローハートが、曲の伴奏を入れる。『SCARS』のイントロが、hide流原曲の幽玄な世界をいざなって、hideの仕手が、薪能ならぬロックの幽玄を演じ始める。たいまつの炎の揺らぎが照明に具現され、仕手の語りが始まり出すと、ステージ上数コマスクリーンにも同じhideが躍り出て、仕手の大舞台が春満開桜、東京の夜に繰り広げられる。hideの東京ドームロック能。語り口調はロック能、口腔と舌の回転を極度に高めて、おもむろに言葉を勿体出す。体の動きは、ゆったりくねらすように脱皮を繰り返す。背景には、空青い中を雲白く流れ急ぐ彼の行った世界を垣間見せ、幽玄の語りは、時にニラ見つけるように、くやし思いを搾り出すように、「あたえよう・・・あたえよう・・・あたえよう・・」を繰り返して締め
幽玄の余韻たなびく闇に、Toshiの切っ先をきらめく光線の声が耳朶を刺すように、脳幹を突き刺して聞こえてくる。これまでの曲順は、ラストライブのはじめの曲順を踏襲していたが、ここに来て初めて、その曲順をそれて、YOSHIKI(リーダー) が行き先を決断したのは『Silent Jealousy』。6時半開演が2時間17分押して、もはや予定のセットリストは叶わない。何を切り、何を上げるかの決断を、幕間に考え、且つ10時までのドーム規定に沿うよう進めなければいけない。徹夜の準備の疲れに、さらに1曲1曲の曲間に方向指示が強いられてくる。もしかしたら、オープニングの『THE LAST SONG』も、hideの『SCARS』も、時間短縮のあおりを受けて短めに切り詰めたのかもしれない。1曲丸ごと没にした部分もあるかもしれない。部分削除で済んだとしても、初日の破壊の夜を演出する曲順を全曲全演奏で満たす水槽へ、わずかな量の継ぎ足しは、もうYOSHIKIの完璧主義から言えば、我慢にならない仕儀になってたはずだ。原木を削って削って、最後に完成される仏像等の完成品の如く、今日のライブリストは、本来の提供を予定していた製品を、さらに強制的に削り取って仕上げた究極のリストであろう。本来の起承転結を考えれば、10年間のさまざまな思いを凝縮した「起」を完璧に提供してこそ、YOSHIKI達の思いをファンに伝える手段としていたと思う。それが最初から、断片の仕儀に立ち至ったこと、ストレスのボルテージは急上昇に近かったはず。予定したこれだけのものを出して、喜ぶ歓喜の顔が見たかった。それがYOSHIKI(メンバー一同)の公演決定後、切磋琢磨してきた願いだったに違いないが、奇しくも状況はそれを許さなかった。それでもおそらく「起」の意趣を受け継ぎ、「承」の展開のはじめに予定されていたのが『Silent Jealousy』だろう。どんな事態になろうとも、頑強に演奏欲望の主幹をなしていたと思われるこの曲は、Xファンの多くが好きな曲に押してる(もちろん私も)。そしてメンバ一人一人も、このハイスピードで落差ある疾走感、隣のラクアジェットコースターが、開場待ちするおしくら観衆に、悲鳴と桂林の山の尾根を突っ走る乗車体の航跡をもって何度となく羨望の意識を抱かせたのと同じく、メンバーもその疾走感に乗ってみたいはず。Xのメンバーといえど、自分たちの曲でありながら、演奏楽曲のうちソロを省いては、悲しいかな他のメンバーの力を借りなければ曲の全体を満喫できないのである。この曲の生を聴きたいというファンの思いは、Xメンバーも同じで、生で自分たちの曲を聴きたいのは5人揃わなければ実現しない。Xの曲は、メンバーもファンと同じく、演奏してみたい(ほしい)を個人のパーツだけ一歩、曲に近寄ってるに過ぎず、全体の曲感を満足する条件は、ファンの立場と変わらないのである。
 ラストライブの曲順から道をそれた話に、私の話が何もそれることはないわけだが、ついついこの曲が始まると聞くだけで意気が高揚してしまった。刀剣の切っ先が、キラッと闇夜に光る。命の危険、恐怖のおののき、その緊迫の一瞬が背筋を貫通するが如く、Toshiの高音が闇夜を突っきっ切る。「 Silent  Jealousy     Don't you Leave me alon   悲しみに乱れて  戻れない愛を飾る  繰り返す孤独の中に 」と歌いだすアカペラの闇夜の戦慄に、凍りついたようにクロススクリーンが青鈍く光り、天井唐草模様にバラの装飾、それらに囲まれたXが青く光る。戦慄を青色と孤独感で語るステージ道具の孤独な少なさ、その中をアカペラのToshiの声が隙間風の身震いを催させるように吹き渡ってゆく。

ステージ上、搾り出す声の反動に腹筋を縮め、かがみ姿勢に前方へつんのめりながら、Toshiのボーカルがブロンズ感あふれる衣装に守られた体内から空間にほとばしる。その雄姿を、スポットライトが下から照らし上げる。天井Xは、血を吹き込まれたように黄色くよみがえり、ステージの大きなブロンズは、何度も姿勢を引き起こしながら、「繰り返すー、孤独の」までたどり着くと、ドラムの号令が連音の打響を発して、「中にー」に重複して、大号令に呼応した大音量の伴奏が孤独と悲しみを粉砕する。両サイド花道から列なすライトが歓喜の放射光を吹き上げ、すさまじいライトが夜陰を駆逐、天井Xが電飾黄金に輝き、おおらかに光あふれる空間を謳歌しているように、音の主人公達は飛びはね躍動をはじめた。YOSHIKIの大きく丸まった後姿の中に、両腕の筋力を押し出す骨格の動きをあらわに出し、PATAは、見つめるギターのネックに滑らす指先の動きに首のリズムを合わせ、「イョー」と奮起を促すToshiの一声に、YOSHIKIはヘドハン状態にステックとヘッドを乱舞する。heathは船頭の櫓(ろ)こぎ姿の如くに前後をこぎ出し、ヘルプのSUGIZOがスクリーンに初登場、リズムと音の振動を首と顔面に響き渡らせてギターを操っている。大音量の潮目が変わると、「ギター、SUGIZOー!」の紹介が、かん高く告げられ、吠えるようにSUGIZOが合図を繰り出し、右手を突き上げる。hideの演奏姿が挟まれると、立て板に水の如く英詩の「I'm looking for you   Trying to reach your roses   Carries away by the time」が一気のみされ、きっぷうよく溜飲を下げて歌われた。クロススクリーンにはバラの花が点滅し、ステージを飛び交う光線のやじり。左半身をやや開き気味に、サングラスをヘアーすそに埋めながら、その視線を前方に落とし、歌詞の一のみを咽喉に下し終えると、すぐさま体勢を右半開き左手マイクへ移し、背後の何かをまさぐるように右手を後方へさし上げる。英詞の高速歌いが、快く鼓膜を刺激する。私には追いすがることは至難の領域だが、和詞をたどる言葉が自分の領域に飛び込んでくれる。「花束を探す」で息継ぎのような間を少し取って、さらに次の2つのセンテンスが一気飲みに干されると、左手腰に沿わせ、前かがみの、居心地のよさそうなポーズで、一段と力を込めるように、和詞の部分を歌いつなぐ。一度は姿勢を引き起こし、正面を見据えたが、「くるい咲く記憶を消してー」とステージの引力に体を折ると、長い伴奏が時をつないで入ってきた。YOSHIKIが笑ってる。大きく開けた口元、開ききれないほどの大開放の口がい、そして激しくヘドハンへ、「全身で自分達の楽曲、最高!」の意思表示を全身で表している。hideを含めたベース・ギター連は、プレイの方が必死の様相だが、これだけの高速プレイ、むべなるかな。「カーッ!」とToshiの叫びが体をしゃくるように、ドラム横で打ち上げられる。瞬時に対応するYOSHIKIが一段の力演を表し、Toshiを振り返る。YOSHIKIのドラムのリズムに合わせるように天井Xの黄金のまたたき。再び「ウリャー!」と同じドラム横でToshiの活!。自らも軽いヘドハンをわずかに続けると、立ち止まり笑い出す口元、それをYOSHIKIが暖かいまなざしで見やっていく。再び「トォー!」と気合を叫ぶと、YOSHIKIのヘドハン狂い連打が繰り出され、Toshiは次の2群のセンテンスを一気に歌う為に、ステージのドラムセットの階段を下りた。ブロンズの前かがみポーズを、この消化のために取り終えると、SUGIZOに接近、彼のプレイを紹介するように自分に当たるスポットライトを受けさせ、そのパーフォーマンスへ視線を導いた。「Kill meー,loveー」の歌詞が終わると、ドラム下をゆっくり移動。PATA側ステージでは、PATAにheathが大接近、ついに2人並びのプレイセッションが見られたのであった。曲が終わりを打つギターの雄たけびが上げられると、Toshiは右手突き上げ、会場へアピール。YOSHIKIはよたりながら、シンバルを打ちあぐねる不安定な平衡感覚の中、もうろう意識の残りかすを頼りに、シンバルスタンドを掴み取ると、後ろへよろめき出て、Xライブの小道具大ドラを右足でセット下に蹴り落とし、握ったスタンドを引きずりながら、ドラムセットに焦点を合わせると、一回転振り回したスタンドをドラムセットの中に殴りこんだ。その後を追うように自分もドラムセットの中にダイビング。埋もれたセットの中から立ち上がると、ピアノ側への抜け出しにもうシンバルスタンドをつかみ出て、クリスタルをかすめるか当たるぎりぎりを回転させて、何かを狙い定めて投げ込んだ。小太鼓を拾い上げ、再びドラ側から思いっきりセットに投げ込むと、小太鼓は闇のセット下へ転がり込んでいった。反動でYOSHIKIはステージに転がったが、起き上がる表情の中に笑い浮かべる表状が見え、久々にパーフォーマンスを楽しんだと言う感じ。今日の機材トラブル乃至は時間を押したことの袖下がり思案采配など、ここらでうっぷん晴らしをやらせてもらわないと、やってられるかい 。見ていた自分達は、ちょっと早いんじゃない?と思ったが、YOSHIKIの内心は、もろもろのストレスに満ち潮の堰が溢れ出た状態にいたことは、想像に難くない。再びよろめきながら、スタンドを引っ張りだしたYOSHIKIは、セットの階段を引きずり下りて、不安定な足取りをドラム正面に近づけると、正面下から思いっきりスタンドを投げ入れた。セットの整列が衝撃にまた揺らいだ。一度、ステージへよろめき倒れて起き上がると、足元不如意な酔っ払い千鳥で、袖口へ向かい出したが、途中、振り返りざま、両手を高々と頭上に押し上げ、観客の声援に応えた。
9:20暗転。暗闇の中でドラムセットが治されているらしい。塔の支柱のライトが赤く、4本交互に点滅を繰り返し、心臓の鼓動のような音がかすかに響いている。ビッグXの巨大な立体像が、夜間の警告灯のリズムで照明に写しだされ、場内しばしの静止で休んでいる。ざわめいてる場内、YOSHIKIと叫ぶかけ声が散発的に上る。9:24音楽が始まった瞬間に、主要スクリーンに映像、hideの部屋の映像が、hide拡声器声を発して展開し始めた。ステージ後方の巨大な壁面スクリーン、ビッグXのクロススクリーン、そして天井部の数コマスクリーン(3つ)の大小6画面が同じ映像を映しながら、hideのライブ映像に、ドーム演出を加味して、hideの部屋が始まった。ステージでは踊り子が出てきて踊りながら、スクリーンのhideが、エレベーターでステージに登場するという設定。登場すると、hideの部屋のパロディで、踊り子が中央花道に躍り出してゆく。花道を移動しながら演奏されるPATAのギター。heathも花道で演奏。PATAの存在は、hideのコンサートのなじみの顔なので、ここの登場は懐かしいし、heathも彼をXに招いてくれた恩人の部屋に登場できたことは、このXの復活あればこそで、いい機会に登場できてうれしかったことだろう。『POSE』の軽快な踊り出すリズムに、hideのかけ声が場を盛り上げて、ステージ花道へ進んでゆく映像に、PATAやheathも花道へ進んで行く。踊り子達も中央花道へ、hideがそこにいてまつわるように踊り進んでゆく。ステージから中央花道へ出てゆく辺りから発射されるレーザー光線が交差して開いてゆく運動を繰り返し、花道の両端には、回転灯がスクリーン内のにぎやかさと同じような回転を動いてる。だみ声に変換されたhideの声と動作が、すでに脳裏に焼きついているので、映像が展開されてると言うより、脳裏の映像をなぞって映し出されているようなものであり、hideの動作は脳裏の記憶を進んでゆく形に見える。PATAがステージで演奏し、花道で踊り子が悩ましく魅惑のポーズで踊っている真ん中に、壁面スクリーンの巨大な映像がhideのボーカル姿と運動を映してゆくと、全体としてみれば、hideがそこにいてカメラがアップで引き抜き、スクリーンに映し出してる錯覚が起こり、あたかも現実に演じてるhideを違和感なく実感できるのであった。スクリーンのhideがレーザー光を発射してる輝きにあわせてステージの照明が工夫され、曲が終わると同時に水蒸気の噴煙がスクリーンン内で発射されると、ドームのステージでも同じタイミングでステージ上に水蒸気が噴射されて、一体感を駆使してhideの部屋が見事に再現された。
 スクリーンが消されると、アリーナ3本の通路両端の回転灯が(回転せず)赤く点滅、ステージの前部のヘッジや、天井の直線が点滅して消えた。ライトの照らし方で、ステージが大きな神秘の世界になる。 暗い世界に音楽が流れ出してくる。ビッグXが、怪獣の肌のような曲線を浮き立たせ、圧倒的な存在を見せている。3〜4分そんな状態が続くと、YOSHIKIと叫ぶ歓声が盛り上がって、そして引いてゆく。暗いステージがかすかなライトで照らし出されると、PATA、Toshi、heathが出てきて、椅子にかけると、Toshi『どうもありがとうー』と大きく叫んだ。ギターを抱えながらToshiのMCが始まった。『今日はほんとに、えー、10年ぶりに、東京ドームに戻ってきました(ざわめきが止まず、続いてる)。えー、まあ、あの、その間、いろんなことがありましたが、またこうして、みんなと、ここで会えたことをほんとにうれしく思います(大拍手)。(ギターの和音を2度出して) ちょっと、あの、今日は(声がうわずる)、僕は10年間、癒し系をやってきたので、今日一発目に叫んだ時に、声がひっくり返ってしまいました(笑いと手を叩く音)。ごめんなさい、慣れない事をしたら、声がひっくり返っちゃった(Toshi,にこやかな表情)。えー、と言うことで今日はあの-(で、また声がひっくり変える音)、えへぇ、またひっくり返りました(PATAがなにやらToshiを指差して話してる)。お、お、お、ウッ。まああの、オ、オ、オーッ(と言って、ゲラ笑い)。それじゃ、えー、3人で1曲やりますんで、みんなもよかったら一緒に歌ってください』
わっと盛り上がった歓声が、ライトが落とされるとつるべ落としのように場内から引いていった。Toshiの、始める前のつかみのMCは、話す方も聞く側にとっても、大きな枠の中に立場があって、むきにならずともわかってもらえる立場と、疑心暗鬼にならずとも自然に話が聞ける立場とが隣同士となって、Toshiのにこやかな余裕、会場の暖かく聞こうとする余裕が、和やかな一体感を作り出している。初日のライブが始まってここに至るまでに、YOSHIKIの表情やToshiの表情から、どれだけ2人が元の関係に戻っているかを敏感に感じ取ってる場内の10万(5万×2)の瞳は、すでに暖かくウオーマーな視線を注いで行くことで、互いの立場の急速な接近を、ToshiはToshiなりに強く感じていたに違いない。静寂のホールのとてつもない重圧の中にあっても、おだやかに、振る舞いを支えてる暖かい空気に抱かれながら、「ワン、ツースリー」と軽く出だしのタイミングを合わすと、PATAとheathは楽譜を見ながら、ToshiはPATAを見やる余裕を見せながら、すぐに『Say Anything』の歌詞が言葉をついて出てきた。「騒めきだけが  心を刺して  聞こえない  胸の吐息・・・」。この一角だけスポットライトに照らされ、闇の黒を背景にくっきりと浮き上がって見える3人、Toshiの澄み切った癒しの歌声が、照明に照らされる闇の透明感の中に吸い込まれてゆく。ペンライトが動き出す。ギター伴奏を強め、「時を忘れて 求め彷徨う 」と歌うと、入れ込んだ力を抜く動作を瞬発して、「高鳴る想い  濡らして」と高らかに響き渡らせる。観衆の一際大きな声援がこだますると、息継ぎながらの笑顔がにじむ。。PATAがToshiを一瞥、黙示のシグナルを送った。「Run away from reality  I've  been crying in the dream  凍りついた時間(とき)に震えて」。すがすがしい歌声に、背後をスモークが白い濃淡を変えながらゆったりと流れてゆく。正面を向くグラスの奥の目はおそらく瞑られ、この歌が人の情感をそそる場面に歌われたGIGのように、Toshiのまぶたの奥には、凍りついた時間(とき)の10年が走馬灯のように思い駆け巡っていたのかもしれない。「歪んで見えない  記憶重ねる  悲しみが  消えるまで 」と歌うと、場内自然発生的にToshiに寄り添うコーラスが大きく始まり、次の大きな節の歌詞「You say anything・・・・演じきれない心に」まで歌われる時には、Toshiの歌声がホール空間にやまびこの音響を引き起こすように、重なり合う歌声がやや遅れて後を追い続けてこだました。XJAPANのライブに戻ってきたToshiへの、そしてXJAPANの聖地東京ドームに戻った来たことへの、静かなエール、静かな感謝を歌っているように聞こえた。「If I can go back to where I've been」と歌って、PATAの方を向いてにこにこ笑い、「夢の中だけに生きて」を歌って、マイクを外した正面向きの顔ににこやかな笑いをため、「終わらない雨に濡れる」を終えて、下向き加減にうつむいて、と、感情のゆらぎをマイク外しの動作のなかに落としながら、次の英詩の「You say anything・・・You can dry my every tear」までを一気に歌った。やまびこはずっと後を追い続けており、揺られ続けるペンライトは1リズムごとにたなびいて、この光景を見れば胸が熱くなり、Toshiも震える感情に満たされたことだろう。英詩の一群を歌い終わる寸前、終わりを告げる一瞬のきらめきのように、Toshiが語尾を強調し、引き伸ばして歌が切れたので、紛らわしく早とちりをするのも仕方ないような一瞬になった。楽曲が切れたのか、ここで終わったのか、完全に伴奏は聞こえずボーカルも鳴り止んだ間隙が訪れ、間の持たない歓声がどっと沸きあがり、たなびいていたペンライトが規律を外れていっせいに振られた。この6〜7秒のフェイントを挟んで、歌いだされたのは、語り口調「灯りの消えた On the stage  1人見つめて  通り過ぎた日々に抱かれる  壊してくれ  何もかも  飾った愛も  時の砂に消えるまで 」を終えると、repeat 部分へ、伴奏を戻して歌い継がれていった。「You say anything 」の歌い出し後,Toshiがボーカルを止めて口パクで身を乗り出し観客に促すと、観客のコーラスが潜行から浮上するように輝きを受けて、にわかに大合唱に力が入って「傷つけ合う言葉でも  Say anything   断ち切れない心に 」とホールに響き渡たり、Toshiが後を受けて「You say anything just tell me all your sweet lies」と歌って「Hey!」と相づちを高らかに発すると、次のセンテンスの「Say anything 演じきれない心に」の大合唱が観客のよって歌われたのであった。次の1群のセンテンス「Close your eyes annd I'll kill you in the rain 綺麗に殺し合えば  造花の薔薇に埋もれた」と歌って、マイク外しに、にこっと笑って「詩人の涙は記憶に流されて」と力唱し、伴奏のギターに力を込めれば大きく上半身を振り動かす。「Time may change  my life ・・・My love  for you never change」を歌って、次のセンテンス「You say anything」だけを歌うと。口パクの動作を繰り返し、「傷つけ合う言葉でも Say anything  断ち切れない心に 」を、観客に進めるのであった。最後の「You say anything ・・・Say anything   Now you've gone away   Where can I go from here? Say anything・・・Say Anything 」と歌い終えると、後方外野スタンドの観衆から大きな声援があったのか、後ろ向きに体をターンして、笑顔を返し、再び正面を向きなおし「Say anything   Say anything 」と歌い、再度もう1回繰り返して、アコースティックライブは終わった。heath側、PATA側に一度ずつお辞儀をし(Toshiが2人に目線を合わせたと思うのだが)、「どうもありがとうー」と叫んでギターをスタンドに立てかけた。PATAもheathも、それぞれの楽器をスタンドにゆだねてライブを終えた。Toshiの白いシャツ姿に黒い背景、透き通る声、静かな伴奏、追いかける大合唱、すばらしいSay anythingであった。大拍手で観衆は応えた。9:45終わる。
ステージが暗転。天井からの照明が、鈍くステージを照らしている。両クロススクリーンには、場内の光のうごめきが映し出され、暗いホールには静かな曲が流れている。静かな曲の続きが、次第にボリュームが上って行き、拍手が起こる頃には、YOSHIKIが左袖より、ゆるやかな歩みを進めて、ステージに入って来ていた。その存在を認めた観衆が、大きな歓声をとどろかせたが、YOSHIKIにはステージ中央、ドラムセットの真ん中辺りの階段に腰を下ろすまで、スポットライトがなぜか当たらない。腰を下ろすと同時に、ライトの焦点が当てられ、右手に1束、左手に2束の真紅の薔薇をつかみ、にこやかに髪を払う動作をして、1束を大きく回転させて観客に合図を送った。すぐに立ち上がると、中央花道方向に数歩進んだだけで、左周りに体を絞り思いっきり右回転の推進をつけて1束をアリーナに投げ込み、中央花道アリーナ坂を、花束を右手へ移し変えた空の左手をポケットに差し入れ下ると、坂ノ下辺りで、1束をポケットから出した手に移し、右手で1束をやさしくアリーナ前方(ステージに向かって右側)に投げ入れ、最後の1束を右手に移し変え、後ろ花束から左回転に空中、よく飛ぶ角度に投げ出した。その落下軌跡は見えないが、軌道の時間辺りにスポット光線の光の幹を横切って落下してゆく花束の影が認められた。投げ終わった体勢が、足のつまずきをしたように見えたが、体を翻してステージへ戻るYOSHIKI.は、空いた両手を下に流していたが、白いシャツのボタンに手をやり、ボタンを外すしぐさを終えて、再び左手を腰(orポケット)に添えて坂道を上ると、薔薇の運命を見届けるように振り向きざま、軽い会釈を向けてくれた。6段のセットの階段をうつむきながら、そして髪を払うしぐさやチョーカーを確認するしぐさをすばやく動作に織り交ぜ、ピアノの寸前には両手指を組み合わせて腕と指に気合を伝え、ピアノ椅子の前に立つと、黒パンを腰高に調節、すぐに座って椅子の前後を確認した。会場は、YOSHIKIの登場からここまで、大音量をしのぐ歓声が絶えることなく、叫び続けられた。椅子に座って観客を見て、両手を前につき、横お辞儀をするように体を低めて、にこっと笑う。この瞬間、テレビ放映を見ている誰しも(女性は100%)が、胸元をグサッと突き刺されたに違いない。この愛嬌、美しい笑顔、かわいい素振り、“私のYOSHIKI”が飛び込んだ瞬間であろう。やや起き上がった体勢をまっすぐに、一段と笑いを向け、口元を緩め、首をすぼめるように身震い、その動きを髪の払いへ顔を上向き上げると、ピアノ正面に向き合って、うつむき、仰ぎ姿勢、視線斜め下と言う振れ気味な行動を沈めるように黙然する時間が占めだすのであった。最後の微動をして、両手を椅子のヘリに支え置き、神経を統一すると、ピアノに向かい両手指をスタンバイして、静止をすると、高速の旋律が音階を上下に走り出し、と同時に体のフィット具合を調節して、ピアノの感触を取り入れてるような時間を費やすと、椅子を確かめ、仰向いて髪を横顔へ払って、鍵盤をじっと見つめ、そして会場側に軽く会釈を入れて始まったのが、『Without You』。伴奏が、この曲を聴いたhide7回忌の、両足を投げ出す笑顔を伴って特別な感情を引き起こすよう届けられ、同じフレーズを繰り返されると、歓声が一際上ってToshiが登場、ここにToshiによる、hideへの鎮魂歌・哀悼歌・追想曲が実現。彼に歌ってもらいたいと願ったYOSHIKIの切なる願いとファンに共通の同じ思いが、この東京ドームのhideとのラストライブを行った、そしてXJAPANを見送り、今ここで迎える新生XJAPANの大舞台で始まろうとしている。
9:50YOSHIKIのピアノ演奏が始まった。旋律の一粒一粒がはじき出されると、会場からどよめきが起こり、声を伴う歓声に移った。繰り返しの旋律に移ると、スクリーンには昔のXの映像が映しだされ、5人が通りすぎてる映像(幼稚園行進の出す足へ手を振り出すなど)や髪立てのhideなどが郷愁をそそると、再び大きな歓声が湧き上がった。うつむき加減にYOSHIKIのピアノにはべるToshiも、歓声に顔を上げ、口元を動かした。「歩き疲れた  夜にたたずむ」と右手マイクの神妙な表情で歌い始めると、「流れる涙を  記憶に重ねて」と入魂の表情に眉間にしわを寄せる。「出会いの数だけ  別れはあるけど」と力が入り、左手の腕がひとり持ち上げられ、小気味なリズムに体を沈めて搾り出す。「限りない時が続くと信じてた」。hideに続く正面の空間に、やるせなさを向ける。その無念を叩きつけるように「傷つけあった  言葉さえ今は抱きしめ 」。クロススクリーンには、昔のライブのステージや花道をはねる姿がスローで映っていく。「振り返るだけ  ・・・」 と歌って、口元を閉める。「・・・・  ・・・・・  Without You」と思いっきり力を込めて体をゆがめ、「数え切れない  思い出や時間を  埋めつくす」 気を静めるように静かに力を抜いてゆく。hideのスナップがゆっくりとスクリーンを通り過ぎてゆく。YOSHIKIの伴奏が一息挟まれる。スクリーンには、かつてのドーム公演後に戯れるhideとYOSHIKIの映像。「あなたを愛して あなたに傷ついて」。会場からもコーラスの声が流れ始める。「愛という言葉の  深さに気づいた」。Toshiが体をよじってYOSHIKIの方を向く。「・・・メンバー   答えのない明日に」YOSHIKIがhideを背負って歩く、背負い困難をhideが喜んでいるようなスナップ。「夢を求めてた  日々を」。YOSHIKIピアノ演奏の向こうに、Toshiの歌い始める姿が、こめた力によってピアノに沈み込む。「ああ、限りなく 広がる空にも一度  生まれた意味  今を生きる意味を  問いかけて」「・・・・・   ・・・・・・  Without You 終わりのない  愛の歌を  今 あなたに」。YOSHIKIが客席に軽く見る。最後の伴奏をするYOSHIKIを、じっと見つめるToshi。スクリーンには、ライブ終了後の5人で万歳に向かう動作が映し出されている。伴奏を終えると、割れんばかりの拍手を送る客席に会釈をするYOSHIKI、そして自分をみてるToshiと視線を交わした。 暗転。数コマスクリーンの3つだけに、Toshiの表情。鼻に手をやり、そして涙落ちる時の鼻もむ所作をする(涙が落ちていたのかどうかは不明)。セットの階段を下りて、少し歩いて何かを手に取る。上から見てるYOSHIKIに気づく。YOSHIKIがにこやかにToshiへ向きながら、「大丈夫、うん?」とToshiを労わる。まるで親が子供をいたわり、心配するようにやさしく話しかける。アットホームな、場内の視線などお構いなしの、2人だけの会話がそこにあった。Toshiが階段を上る、その姿をにこやかに見守って微笑み続けているYOSHIKI。ToshiがYOSHIKIのそばに立ち、「どうもありがとう」と会場へ大きく叫ぶ。大きな歓声が上る。YOSHIKIがToshiに視線を向ける。Toshiがマイクを差し向けると、首を振って、ダメダメと体を反転。反転で気づかない姿勢に、またマイクを突き出す。苦笑いと子供のイヤイヤの素振りで裏返ってゆくように体を遠ざける。そこへまたマイクを向ける。なんともほほえましくもあり、楽しそうでもあり。正面をむくToshiに体勢を戻したYOSHIKIがピアノを弾き始める。少しだけメロディを引いて、階段を下りたToshiを見やると、ToshiのMCが始まった。「あの、ほんとに、10年ぶりの、東京ドームの、コンサートですが、こんなにたくさんの人に、迎えてもらって、とてもうれしく思います(拍手と大歓声)。どうもありがとう(大きく叫ぶ)。(YOSHIKIがメロディを止め、Toshiの方へ、体を差し出して、何かコンタクト)。じゅあ、新生Xの、今新しいWithout You と言う曲を聴いてもらいましたが、もう1曲、みんなが知っている、I.V.を・・(と言うと、次の言葉を発せないほどの大声援が湧き上がる)。YOSHIKIのリクエストで、ここのところ(後ろ指差す)、みんなに歌ってほしいと言うんだ。」
YOSHIKIのピアノ伴奏が、ToshiのMCの間も軽やかに続いていたが、「YOSHIKIのリクエストでここのところ歌ってほしいと言うんだ」とToshiが言うと、YOSHIKIも客席側へ合図のような顔を向け、伴奏に、出だしのタイミングを計る様、首を肯かせた。Toshiが中央花道を進みながら、「in the rain」と歌い(I.V.の歌詞は全く憶測、正式な歌詞は不明)、体を振り向かせる。その間、YOSHIKIの伴奏は歌詞を進み、コーラス部分になるとToshiが「find a way」と歌う。歌詞部分をYOSHIKIが進んでコーラス部分「feel my pain」とToshiが歌い、同じく次のところを「life is pain」と先にコーラス部分だけをToshiが見本を見せた。後方壁面スクリーンにはI.V.の歌詞が映し出される。最初、観客はきょとんとしていたが、次第に様子が飲み込めて、コーラス部だけを見本と歌ったToshiが、2回目の最初を、客席にマイクを突き上げてコーラスを促すと、「in the rain」と心細く歌いだした。そのコーラスを受けて、今度はToshiが歌詞部分「I'm calling you,dear」をやさしく補ってゆく。「 find a way」コーラスは要領を飲み込んだ様に自然に曲に乗り、Toshiが「Can’t you see me standing right here」と本気に歌ってくれると、「feel the pain」とコーラス、Toshiの「Life is bleeding from fear」コーラス「life is pain」と歌って、次の部分をToshiは聞き流しで飛ばし、最初のコーラス「in the rain」をToshi自ら歌うと、客席とのコラボの仕上げのように本番のように歌い始めた。このときステージには、PATA、heath、SUGIZOをが登場してそれぞれの持ち場についた。最後まで行くと、歌は最初に戻り、コーラス部分を求める時は両手を肩で開けるポーズをとりながら、歌いつつToshiはステージに歩いて戻った。Toshiがステージに戻った時点での歌の終わりまでYOSHIKIのピアノ演奏は続いた。ステージで、出だしを2回ほど繰り返し、YOSHIKIのドラムの準備の進み具合を計りながら、最後の仕上げを完成させるように、Toshiが「in the rain 」から歌い始めると、講習が実を結んだ生徒のように観衆がコーラスを差し挟んで歌って行く。最後の歌詞を引き伸ばすと、YOSHIKIのドラムのシンバルが合図の連打音を響かせるや、轟音と共に場内のライトが落電、I.V.のロックバージョンが始まった。照明が点滅、天井のX両側の薔薇や唐草が交互に点滅、ステージライトがストロボ状の無数の光線を放っていく。壁面スクリーンには大きなワシの翼が旋回して、白い「I.V.」の文字を形作ると、瞬時に粉々に破壊されて、破片がスクリーン一面を風に舞う桜の姿になって散ってゆく。SUGIZOのギターが雄たけびを発し、会場のペンライトが力強く漕ぎ出す。ドームを揺るがす大音響が、慣れたロックとはいえ、その迫力に度肝が抜ける。Toshiの声が、この大音響にかき消されることなく、そのままの声として場内に突き進み、メンバーも歌うコーラスには、教え子のコーラスも一緒に添えられた。PATAのギターが図太い旋律を放っている。旋律の主導的なリズムを担ってる姿は、いつもの地味な姿のPATA。ここはパーフォーマンスで、回転ぐらい効かせたらどうかなぁ?。圧倒されてる間に、曲は点火させた花火を爆発させて、打ち上げ、そして玉切れのように煙をたなびかせた。実際の時間は、長かっただろうが、脳しんとうでも起こしていたんだろう、曲は、もうおわり と言う以外さで終わった。
I.V.ロックバージョンは、5分ぐらい演奏された(10:02〜10:07)。東京ドームの、音の制限時間が過ぎた。場内漆黒の状況の中、ステージが赤く染まって終止を打った様子がスクリーンに映し出されたが、天井の3コマスクリーンが消え、クロススクリーンの映像が消え、朝焼けのように赤く残されてるステージの照明も、消される瞬間が近づきつつあると感じられた。消されるタイミングに合うように「紅」のシンフォニーが流れてきた。逆転の展開に加え、X真髄の曲目のシンフォニー、観客は割れんばかりの喝采に大喜びの狂喜を表した。シンフォニーのイントロが終わり、次の音までの間隔が長いなぁと思ってる間に、ステージの赤の照明が闇に吸い取られるようにゆっくり消えていった。15秒ぐらいの不安と期待であったが、突如クロス及び3コマスクリーンに、hideのラストライブ、紅イントロの映像と音が流れ出した。hideへの歓声があちこちで叫ばれ、無表情に正面を向くhideの表情が、一瞬口元をゆるめほほえむと再び大歓声が舞い上がった。しかし、その歓声が瞬時に収まり、hideのギターの音色に耳を澄まし、大写しの顔面に吸いよせられ、その表情を食い入るように見つめてゆくのであった。hideのイントロの中ほどで、Toshiのボーカルが滑り込んでくる。I.V.の時と同じ白(シャツ&カーディガン)で、腰に左手を添え、打ち解けたポーズで歌い始めた。Toshiのボーカルが始まると、ステージ奥からレーザー光線が打ち出された。静かなイントロに添うボーカルが終わると真っ暗にすべてが消えた。数秒後YOSHIKIのドラムがスクリーンに映され、シンバルに振動音を作り、はじけるかと思うとそれも静かにやめてしまい、うつむき姿勢に戻ってしまう。Toshiの白い背中が映し出されると、同時に「紅だー!」と一喝の叫び。YOSHIKIの3連打を皮切りに、ステージには渦巻く照明が入り乱れ、ドーム天井から轟音の機軸を合わすように発射音が響き、銀テープが空間を被いかぶせるよいうに降りそそいで落下して行く。ステージ先端からは、多数の火柱が地割れの口を引き裂いて垂直に火舌を揺らめかせた。赤いボンボンが揺れている、Toshiが花道へ飛び込んでゆく。そしてその勢いを緩めて歩きながら、歌詞を歌いはじめる。ボンボンの波が、勢いよく前方めがけて振り出される。ワンクールの歌詞が終わると、ボンボンはいっせいに花吹雪のように秩序なく乱舞して、心の表現を叫んだ。hideやPATA、heathそしてYOSHIKIのドラムにToshiのボーカルによって紅が演奏されてる現実、1年前はありえない夢の話だった。間奏に入る。Toshiが「カッー!」と気合を入れる。YOSHIKIのそばに行って、ステックを手に持ち、思いっきり左シンバルをたたき、右シンバルも叩いている。それをYOSHIKIが演奏しながら笑い飛ばして眺めてゆく。「hideー!」と紹介。スクリーンの映像は、口先を尖らした愛嬌のhideがあって、Toshiの紹介に呼応してポーズを作り出したように見えた。YOSHIKIの背に張り付いているToshiは、紅のリズムに乗って上下の揺れを作って、ドラムの動きとダブらせてゆく。2人とも屈託ない笑い顔して、楽しそうである。「行くぞー!」のかけ声から「紅に染まったこの俺を・・・」と右手を斜めに突き上げながらYOSHIKIの後ろでうたうToshiに、YOSHIKIが顔を摺り寄せるように顔を上げると、吹っ切れるほど首を振り回してドラムを乱打していった。「YOSHIKI-!」とコールすると、ひとしきりYOSHIKIのドラムのソロ、Toshiはそこを離れた。中央花道を前に続きを歌うと、間奏と同時に花道へ入ってゆく。両手を広げた手を下から上にあおるようなジェスチャーをして、観客の更なる歌声を求めると、「紅に染まった」と歌って「カッー」と叫ぶと、右手マイクを空中に突き上げて、続きの歌詞を求めて進んだ。ワンクールの歌声を引き取って「紅に染まった、この俺を慰める奴はもういない  もう二度と」で歌い止めると、マイクを突き上げて続きを求めてゆく。何度かの観客との掛け合いを持って「紅」の最後を「Crying in deep red」で終わると、花道をもどるToshiは2回ほど気合を叫んだ。YOSHIKIもPATAもheathも笑顔である。YOSHIKIのドラムが最後のしんがりを打ち止めると、「どうもありがとう、また会おうぜ、バイバイ」のToshiのマイクが入った。メンバーが袖に消えて行く中、最後にセットの階段をおりてきたYOSHIKIが、ステックを右手で1本、客席に思いっきり投げ出し、右手をしくじったのか手首をぶらつかせ、のこり1本を回転を加えて投げ込んで、すぐに袖に消えた。10:15終わる。
Toshiの「また、会おうぜバイバイ」と言う一言は、ちょっと意外に感じた。ちょっと早いかなぁ と思った。しかし東京ドームの制限時間は過ぎているし、仕方ないと言うところだろう。会場のムードもそんな感じに思えた。一瞬、豆鉄砲を食らわされたハトのように、事態がすんなり飲めこめない戸惑いが感じられた。YOSHIKIがスティックを投げ込むところでは、歓声が湧き上がったが、袖に隠れてしまうと、予期せぬ気持ちの整理に戸惑いとも狼狽とも表現できる一瞬が衝撃的に襲った。しかし気持ちを持ち直した次の瞬間、アンコールを求める手拍子が湧き上がってきたが、やはりそれを維持する心強さは、ショックの方が揺り戻してきたように萎えてしまって、消滅して行った。どよめきの中、大きな衝撃音。機材の調整が、手元が狂って出てしまったと言う音であった。何かを失って、考えもまとまらず、立ち尽くすと言う状況には、この衝撃音は、少しは効果があったかもしれない。しばらくしてまたアンコールの手拍子が湧き上がったが、やはり立ち消えた。暗転中のホール、4本の支柱に赤い照明が全灯し、スタンドを照らした。暗い中で歓声が湧き上がり、4本の支柱の最長上部の一際明るい照明がつく。まぶしい!。ウェーブがスタンドを走り出す。ウェーブ(1周約50秒)は、場内ライトが消えた後も、そのまま続行、歓声や拍手の声援が送られた。ウェーブは、バルコニー席の私のところを、4〜5回通過していったが、やはり風圧にあおられて空に舞い上がってしまった。みんなでつかの間を遊ぶウェーブ、94年もあったように思うし、宮城フルキャストスタジアム(今は別名)の楽天のプロ野球初戦の始球式、YOSHIKIが始球式を終えてダッグアウトに入ろうかと言う時に、その上をウェーブが通過していったのを思い出す。これからも続くXJAPANの各地各国の幕間の恒例行事になるかも知れない。
 ライトが点灯。YOSHIKIがステージへ飛び出してくる(10:23)。そのまま中央花道へ走りこんで行き、先端まで行って、再び歩いて戻り出し、途中から走ってステージへ。ステージ中央にいるToshiが「ありがとう」とマイクで叫ぶ。YOSHIKIがピアノの前で準備、ピアノへ座る。ライトが半分消されると、Toshi「じゃ、今日の最後に、この曲を贈ります」。そしてライトが落とされピアノの旋律が始まる(10:25)。すぐに場内にはどよめきが上ったが、俺自身は何の曲?、すぐにはわからない。バックにシンフォニーが流れ出し、そしてToshiが歌い始めて、ひょっとして?・・やっと鈍感な認識が曲名に辿り着きはじめた。「ART OF LIFE」。ええ・・??制限時間過ぎてるのに、最長の曲をやるなんて、そりゃ無謀と言うことじゃないですか!。しかし、ライブでは93年でしたか、はじめて公演でやって(2DAYSの2回)それ以来やることがなかったこの曲を、ここのアンコールにもってくるとは、誰の予想も外れたすごい選曲。何が起こるかわからないXJAPANの、2時間17分のお待たせご迷惑ハプニングに、どでかい1曲をお詫びおかえしハプニングにはめ込むと言う気概、何をしでかすかわからないはらはら感は、やはり、やはり健在!。そりゃ無茶苦茶やがなぁと言う喜ばせ方、天下一品!。解散から10年、ファンは忘れることなく延々と応援してきたその気持ちを、YOSHIKIやメンバーはしっかり受け止めてくれたんだろう復活コンサートの生ライブで、少数の人以外は初の「ART OF LIFE」の生の音源を、状況的に非常な困難(時間制限や体力的なこと)を覚悟してここで感謝を込めてプレゼント演奏してくれてることに、云も言われぬ静かな感動のようなものを覚えた。Toshiのボーカルが始まる。会場は、大きな感動的な歓声を巻き上げる。明るくない照明の中で歌うToshiの白シャツには、影の濃淡があたかも模様の如く浮き上がり、うつむき加減な姿勢に映えて、この歌の持つイメージが投影されているような感じもした。YOSHIKIが自分で、楽面をめくっている。楽譜めくりは昔は梅さんだったようだが、その任務は、4ヶ月前の悲しい出来事から、空席になってしまったのか。そして、Toshiが高音の声を絞り出す、YOSHIKIがピアノを肘でねじ伏せて音をはじき出し、導入部が終わり、暗転、YOSHIKIがドラムに移行する。3連打が響き、ロックの伴奏が始まると、スクリーンに白くぼやけた(ステージにも小さく揺れ動く映像)hideの演奏姿が現れた。しかし、遠くから見てる映像の質が、蜃気楼の中に浮かぶhideの、霧状の小刻みに震えるような映像。何か変な映像?と言う感触だったが、翌日の新聞によれば、これがホログラム(プリズム効果による光の反射技術)で立体に見える映像、とのことだった。この演出で1.5億。すごいセットだったが、それまでのスクリーンに映るくっきりhideに比べれば、輪郭がぼやけたどこか焦点の合わない感じがして、立体感はなく、映りの悪い映像ぐらいに感じてしまった。無知とは恐ろしい。ホログラムの元の映像も数コマスクリーンに同時に映っていた。すごい映像が飛び出すという前もっての報道があれば、期待もし、映像登場時にはこれが例のすごい映像か と感動もしたのに、私的には無知が大きな感動を台無しにしてしまった(WOWOWの映像では、立体感があって、綺麗に写っている。実際に見るのとでは違うのだろうか?)。「ART OF LIFE」は、かつて演奏するだけで必死で、遊ぶ余裕など無いとhideが語っていたが、ロックの展開部に入ると、ステージのストロボや照明の点滅、すごい音響に比べ、演奏は直立系の地味なうつむき演奏に入ってしまった。彼らの技量からしても余裕すらない難しい曲を、アンコールの最後に置いた演奏は、おそらく2度とない(普通でも、今後ないかもしれない)。そう思えば、ここはよーく脳裏に叩き込んでおかねばならぬ瞬間であった。同じような曲感を2度激しく演奏の中でうたったToshiが、「カーッ!」と気合を搾り出して、ステージ右へ走り、右後ろスタンドへ手をさし上げている。最初のゆっくりした曲調に戻って、また演奏が長く続く間奏があって、Toshiの歌が差し挟まれた、一つの物語が終わったと言うところで場内が暗転、静かなシンフォニーが流れる中、ステージ後ろの壁面スクリーンには、蝶のような羽の中に、蝶の胴体であり、別の動物体であり、人間の化身のような、いくつか取り合わせた数コマの映像が映り、英語のナレーションが女性のボイスで流れると、再び演奏とToshiのボーカルが始まった。hideの蜃気楼の映像も出てきて、ゆったりながらも力強い曲調が展開、その最後部分に差し掛かった時に、YOSHIKIがドラムから中腰に立ち上がりかけて、バランスが崩れてドラムの中になだれ込んで行く。なだれ落ちる自分の体を支える力も無いような状態で、崩れ落ちていった。Toshiが見つめている。スタッフが駆け寄って、意識等を確認したのであろう、状況は深刻との判断が確認された数十秒後からは、慌てるような動作で、ドラムのセットを退け、1人のスタッフが後ろから抱え上げ、前後を2人のスタッフ(足の方は松本裕士氏)が介添えしながら、セットの階段を降りて行く。悲鳴や、安否を心配して上げる叫びが、突然の事態に不安のうねりとなってドームを震撼させて行った。袖に入ってしまった頃には、少し声は収まり出したが、突然のYOSHIKI倒れるの、スタッフの慌て振りから想像される懸念を思うと、3日間ライブでのYOSHIKIの体が心配と言う声が現実となったことの驚きの中で、心配は余計募った。たいした間を置かず「以上を持ちまして、本日のすべての公演は終了いたしました」の女性の場内アナウンス。10:43本日の公演は終了、Say Anything のボーカルが静かに流れ出した。「以上を持ちまして、本日の公演は、すべて終了しました。規制退場にご協力・・・ご自分のお席にお着きください・・・」と男性のアナウンス。退場は指示に従って整然となされた。感想は、感動的なライブであったの一言。多くの外国のファンも見えておられたが、日本のファンも外国のファンも、本日のステージに不満を覚えた人は、皆無だろう。すばらしかった。YOSHIKI、Toshi、hide、PATA、heathみんなすばらしかった。“ありがとう”の一言に尽きる。         (破壊の夜  完)



間違えた所もたくさん有ると思いますが、最後まで読んで頂いて有難うございますm(__)m