運命ではない死





私の住むマンションで、

高校生か中学生と思しき女の子が一人、自らの命を絶った。

私はワイドショーのレポーターではないので、

彼女が誰で、彼女に何があったのか興味は無い。



唯想う。

どれだけ努力しても、どれだけ財産を叩いても、今ある自分しかない。

そして、それは二度と手に入らない無二のものだ。

私は無神論者であるが、運命論者でもある。

偶然、偶発、幸運、不運、天命、人を超越した何かの悪戯。

人の抑止力が効くことのないもの。

ただそれは、連綿としたものではない。

断続した事象。

それらあらゆることが、運命だと思っている。



彼女は流れを突然止めてしまった。自らの力で。

彼女に係わる全ての人にとっても、また運命ではない突然の非業。

断じて言うが、私は彼女に同情はしていない。憐憫の情の欠片もない。

戦争で、病気で、事故で亡くなった方とは違う。

死んだら負けだ、などと教訓めいたなんてことも思わない。

だけど、死んだら損だ。たった一つの命なのに。

自分という存在は、たった一度切りなのに。



どれだけ望んでも、誰も決して手に入れることの出来ないもの。

今そこにいる自分なのに。