若狭小浜殺人紀行

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 コスミックインターナショナル 石川真介著 若狭小浜殺人紀行 838円

東京から若狭へ帰るある週末、何気なく見渡した東京駅のKIOSKで、とある本に目がとまりました。 「若狭小浜」という文字が視野に入ったからです。 「ほ〜っ、小浜を舞台にした本なのか。」 著者は、福井県出身で現役のトヨタ自動車社員でありながら、推理もので鮎川哲也賞を受賞した実績のある人でした。  
旅情ミステリーシリーズとなっている通り、若狭の名物や地形がよく(部分的には実物以上に)表現されていて、若狭を知らない人にはおもしろいかも。 一方、ウッキーのような若狭出身者には、実在するホテルの名前だとか道路の分岐点、名物料理の描写から、頭に情景を思い浮かべつつ読む格別の楽しみがあります。 たぶん著者はごく最近若狭で取材されたのでしょう。 小浜線電化工事のように、かなりローカルな最近の話題も随所にちりばめられていました。

さて、話は主人公の吉本紀子という人気女流作家が、ある週刊誌からの依頼で、小浜でおきた迷宮入りバラバラ殺人事件の取材をするところから始まります。 そして、偶然知り合った地元有力者の妻、三浦嘉代との繋がりから誘拐事件と、さらなる殺人事件に巻き込まれていくという展開になります。 凝ったトリックの本格推理ものと言うより、話が進むに連れてすこしずつ謎解きをしていくタイプの推理もので、気楽に読めます。 特徴的なのは、著者が福井県鯖江市の出身だからでしょう、越前と若狭人の描き方に独特のものがあると言うことです。 ウッキーのホームページで紹介している佐久間艇長の逸話も出てきて、その行動や功績を若狭出身者の気質と絡めて描いていきます。 そして、このエピソードもストーリーに大きな役割を果たすことになります。 若狭を描いた推理小説はいくつかありますが、地元福井県出身者が、福井県人気質を踏まえて書いた物語という点で、目新しさを感じました。

2002年5月24日加筆
この書評をアップしてまもなく、なんと著者自身からメールをいただきました。 たまたま知人から知らされて、ウッキーのページを見ていただいたそうです。 個別にメールしない主義だそうですが、ウッキーには異例にメールいただき、大変感激しました。

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