「自分の木」の下で

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 朝日新聞社 大江健三郎著 1200円

ノーベル文学賞作家が書いた、本人曰く「今までで一番易しい言葉で書いた本」。 ウッキーは著者の本を一冊もっているけれど、買って何年もの間「つん読」してあるので、読破した本はありません。 そして、たまたま本人がこの本を紹介しているのを見て、興味が再燃して買ってみました。 言葉は易しいはずです。 この本は、小学校上級から大学受験生くらいを対象にした、雑誌の連載記事を元にして編纂された出版物でした。 しかし、易しく書かれているからといって、内容が薄いわけではありません。 
タイトルになっている「自分の木」とは、著者が幼い頃に祖母から聞いた話、「人は誰でも自分の木があって、魂はそこから降りてきて人間の体に入る。 死ぬと、魂はまたその木に帰っていく。」という話からとられています。 

この本の中で、著者は見えない若者に向かって、多くのことを語りかけます。
  ○なぜ、学ぶのか。著者はどうやって本を読み、学んできたのか。
  ○障害を持って生まれてきた自分の子供のこと。 その子と家族の生き方。
  ○自分の幼い頃のこと。 家族や周りの人たちのこと。
  ○戦争のこと。

この本を読むと大江の真摯な生き方、著作に対する厳しい姿勢が随所に表れています。 
この文豪でさえ、自分の文章を何回も何回も推敲するといいます。 たった数行の引用を探すために、何日も文献を検索するといいます。 そして、この本の中で大江健三郎の世界の一端を、子供でもわかるように、平易な文章で表しています。

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左の写真は表紙のカバーを掛けた状態、右はカバーをはずしたところです。 表紙や挿画は、奥さんの大江ゆかりさん(故伊丹十三さんの妹にあたります)が描いていて、落ち着いた綺麗な装丁に仕上がっています。 ウッキーが安心しておすすめできる一冊です。

 

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