ザ・ゴール

    表紙へ戻る   

goal.jpg (20644 バイト)

 ダイヤモンド社  エリヤフ・ゴールドラット著/三本木亮訳 1600円

ウッキーは、ビジネス書が嫌いです。 ほとんど読みません。 特にhow to物のビジネス書は毛嫌いしています。 そういう類のビジネス書に学ぶよりも、教えを請うべき優秀な先輩や同僚に恵まれているので、むしろそのような生きた教材や自分が直面した現実的な業務から学ぶことが大事だと考えています。 もっとも、反面教師でしかない先輩、同僚が多いのも確かですが・・・。 まあ、それも教材には違いありません。

ところで、この本も、ビジネス書と言えばそうなのでしょうが、形式的には読み物です。 ただ、扱っている題材はビジネス(一言で言えば全体最適化の手法)に間違いありません。 アメリカでは、企業やMBAコースの副読本として採用されたりして、長年ベストセラーに名前を連ねているようです。 また、著者はこの内容が日本の企業に普及することを恐れて、和訳することを渋っていたとか。

異例と言えば異例づくめの本で、著者は元々物理学者。 読むだけで生産管理、新しい会計方法、問題解決手法をわかりやすく学ぶことができる例のないビジネス書もどきの小説。 アメリカで15年以上にわたりベストセラーであったにもかかわらず、和訳されることがなかった本。 

翻訳が出てから、すでに40万部を上回る売れ行きだとか。 今月第二弾「ザ・ゴール2 思考プロセス」が発売されて話題になっています。 読み終わったら、書評をアップします。 (2002年3月追記)

さて、そのストーリーは、3ヶ月後に工場閉鎖を宣告された機械メーカーの工場長アレックス・ロゴが恩師である物理学者ジョナの指導を得て、わずか3ヶ月間で工場の抱える多くの問題を科学的に分析・解決して、劇的に収益を改善していくというサクセス・ストーリーです。 訳者の功績もあるのでしょうが、翻訳本でありながら読みやすいし、「読むだけで仕事を改善できる」というと大変語弊がありますが、副読本としては楽しく読めて、たくさんのヒントを与えてくれる優れた本であることは間違いないと思います。

この本の中で、従来の管理は、各人の目の届く範囲の部分的な最適化に終始していたと指摘しています。 一人一人が把握できる範囲は限られているし、大切なのは工場やシステム全体の最適化なのです。 全体をみてベストにするためには、一番支障となるボトルネックをつかまえて、それに合わせて最適化を図るべきだと説きます。 実は、そうするとボトルネック以外で、すごく閑になる部署や機械や工程が出てきてしまいます。 従来の考え方なら、人を遊ばせてはいけないので、その閑な工程の稼働率を無理矢理上げるようにしてきました。 しかし、全体のスループットは、ボトムネックで制限されているから、無理矢理稼働率を上げた、本来閑なはずの工程は、逆に余剰の仕掛品を生み出してマイナスの効果をもたらすのです。 こんな改善の過程を、小説仕立てで楽しく読むことができます。  

2001年9月29日夜、NHK衛星放送でこの本の書評がありました。 出演者の講評で愉快だったのは、「このストーリーはアメリカのB級映画だ。 ビジネス書としては優れているが、小説としては冗長。 同じ内容を3分の1の頁数で書ける。」という意見がありました。 だからといって、この本の価値を下げるものでは無いけれど、ウッキーも同感です。 (9月30日追記)

 

   表紙へ戻る